ファントム Phantom of Inferno(DVD版)
| シナリオ | 絵 | 音楽 | 演出 | システム | 総合評価 | オススメ度 |
| 9 | 8 | 8 | 9 | 7 | 90 | ★★★★★ |
レビューの前に一言。
「決してPS2(もしくは等速オンリーのDVDプレイヤー)でプレイしてはいかん!!!」
はっきり言って、本筋に対して関係ないところで印象悪くします。
再生速度を替えられないと、地獄のようなプレイ環境になること間違いなし。
それほどまでに、なぜかこのソフト、スローペースです。
物語自体は緊迫した、スピード感と哀切溢れる秀作。
記憶を失くし、過去を忘れ、生きる意味を問いながら手を血に染め続ける登場人物たち。
マフィアの頂点に立たんとする組織、「インフェルノ」。
そして、組織の暗殺者で最高位の者に与えられる称号「ファントム」。
主人公は、その「ファントム」としての生き方を余儀なくされたアイン、ツヴァイ、ドライ。
それをとりまく組織の幹部や対立する人間、渦巻く陰謀、これでもかと登場する重火器等、品揃えは一級品。
何と言っても、冗長な部分や無駄が少ない。
緩急ある展開や周到な伏線、印象的な場面設定や音楽等、せっかく築き上げた世界観を壊さないよう、細部にも気を使っている。
特に感心したのが後半に宗教の持つ「救い」の作用を絡めたこと。
比類なき暗殺者としてその名を轟かせた「初代ファントム」であるアインが、宗教に関心を持ち、教会に出入りし、祈りを捧げ、賛美歌を歌う。
この一見相反する行為が物語の悲壮感を一層高め、結果、このゲーム一番の見せ場と言っても過言ではない、
「アイン(初代ファントム)とドライ(3代目ファントム)の教会での一騎打ち」
に発展する。
「暗殺者」としての呪縛から逃れられない苦しみ。
「人」として救われたい気持ち。
「愛する人」を救いたい気持ち。
人は、己一人の力で立つしかなく、自身は決して贖えない罪を背負っていることを嫌というほど知っているアインが、それでも神への祈りを捧げずにはいられない気持ちを忖度し、プレイヤーはそれに心を引きずられる。
「暗殺者」「組織」「血と硝煙」「陰謀と抗争」「純愛」と、並べただけではありがちな各パーツが、「宗教」の持つファクターを一枚噛ませてやるだけで、これだけの演出効果を導き出す。
ここだけ取り上げても、絶対的にやるべき要素満載。
私は3章のヒロイン美緒は正ヒロインと思っていないので除外するが(ひでえ)、
アインと迎える、彼女が自分のアイデンティティの拠り所を取り戻す感動的なラストも、
ドライと迎える、ある種突き抜けた感のあるラストも、
賛否両論別れる、クロウディアのエンディング2種も、
どれも納得できる出来だった。
敢えて言うなら、アインのラストは別格だろう。
なんせ1章から「草原」の伏線を張って用意してあるんだから。
ちなみに、クロウディアはああいう展開になるだろうってことはよく分かってた。
だって私も(一応)女だもん(笑)
エゴイスティックこそ女の本性ですよ、世の男性諸君。
組織の幹部になるほどの実力を持つ女ならなおさら。
ただ、頂点に登りつめたときに、失ったものに思いを馳せるかそうでないかが、「悪女」と「計算高い女」の違いなんじゃないのかな。
クロウディアは悪女にはなりきれない、そういう部分が魅力的な女なんだと私は思いますが。
そりゃ、こういう女は18禁ゲーのキャラ造形としては受けないわな。私は好きです。
冒頭の緊張感から、学校でのラストバトルに至るまで、全編中だるみや破綻がなく、怒濤の展開を繰り広げます。
ドラマティックでスケールが大きく、まさに珠玉のエンターテインメント。
映画的なノリが好きで、ストーリー重視派の方、ぜひプレイを。