斬魔大聖デモンベイン

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
83★★★

これは好き嫌いが別れるであろう、ある意味問題作。
「"Hello,world."」ほどの明らかな失敗作でもないし、総じて手堅くまとまっている。
が、往年の虚淵玄節に慣れてしまったニトロファンには、受け入れられるテキストかどうか、というのが非常に重くのしかかってくるのだ。
あちらがコクもキレも鋭い、重厚な円熟味を感じる安定した古酒の味わいなら、こちらは若さとパンチ力に満ちた新酒といった趣。

とにかく勢いはある。だが、対象を違う言葉で何度も繰り返して表現する手法が多用されており、ともすればしつこすぎるきらいがあるため、マシンガントークが上滑りしている印象を受ける。
虚淵氏が極力無駄を書かないことで物語のテーマや輪郭をくっきりと浮かび上がらせているのとは対照的に、訴えたいことをあらゆる方面から何度も畳みかける、この絨毯爆撃的な手法はある種諸刃の剣。
好きな人なら気にならないだろうが、一度鼻についてしまうとうっとうしさがまとわりつく。
特に、ゲーム・漫画・アニメのパロディ的なネタも多く、多少ならお遊びとして許容できるのだが、これまた相当多用されている上に、かなりシリアスな場面にも登場するのは少々やりすぎの感が否めない。
良くも悪くもライトノベル臭が強く、この手のテキストに慣れていない人はつらいかもしれない。
今回のシナリオライターは鋼屋ジン氏だが、私が以前読んだSSとはだいぶスタイルが変わっているような。
ゲームのシナリオと小説とは形態が違うので、あえてこの手の形式にしたのかもしれない。

だが、そういったテキストの方向性に目をつぶれば、ストーリー的にはかなり読ませる力作。
ニトロプラスのゲームであることを十二分に念頭に置いた、熱く、スピード感に溢れ、時には切ない各エピソードが、これだけのボリュームを持ちながら、伏線を破綻させずにきちんと収束していく様は圧巻。
ルートごとにヒロインが変わるのはもちろんのこと、それに合わせて最後の敵すらも変わってしまう。
もちろんエンディングも世界の秘密をしっかり提示し、据わりが良く、納得に足る出来であるため、死ぬほど長い苦痛を延々と与えられた挙げ句、ヒロイン全員のエンドが同じという同メーカーの超ボリュームを誇る某ゲーム(相当心の傷)とは満足度が雲泥の差。
さらに、エンディングの扱い方が相当に巧い。長大なボリューム、クトゥルー神話というネタの設定を最大限に生かし、かつ後味に爽快感を伴うという、ニトロ作品には珍しい一本となっている。

音楽は臨場感たっぷりで、ボリュームあるゲームにふさわしく曲数も多め。
曲のタイトルも奮ってるし相変わらず良い仕事をする音屋さんたちです。
テーマソングは生沢佑一氏。静かなイントロから壮大なサビへと情感たっぷりでOPにふさわしい、熱い盛り上がりを予感させる良い仕上がり。
一方音声は、せっかくの超豪華声優陣なのに、しゃべる場所が全体量から見てかなり少なめ。
尺の長い物語なので仕方がないと言えばそれまでなのだが、残念な感は否めない。
PS版はフルボイスらしいので(しかも我が愛する矢尾一樹氏や若本規夫氏、中田譲治氏という豪華っぷり!!)、ぜひこのキャストをPC版で……と嘆き悲しんでいる次第。

システムは微妙に使いづらい。私は大丈夫だったが、プロテクトの誤爆が多発しているらしいし、バックログがホイールで見られないのが致命的。
システム周りは直感的なインターフェースで操作できることが大前提で、細かい設定などは二の次だと思うのだが、今作はそれが逆になってしまっているのが残念。
大作とも呼べるボリュームのゲームなだけに、やはり気持ち良い操作感は必須だと痛感した。

シナリオは真っ向勝負の力技。
小手先のテクニックに頼らない、逃げも裏技もない愚直なまでの正面突破
虚渕氏に比べれば確かに青臭く、つたない点もあるけれど、それは個人の好みの問題だと思う。
とにかく複雑きわまるクトゥルー神話体系を題材に取りながら、これだけ綺麗かつ納得に足る帰着を見せたという点。
これだけでも、他の些末な問題点には目をつぶってもいいくらい高く評価できる。

大方の予想通り、私はクトゥルー関連もわりと好きで色々読んではいたが、例のダーレスによって付け加えられた設定を包含しつつ、それを効果的に生かしたストーリーには大いに感心させられた。
物語ではアルノーマルエンドにあたるエピソードだが、これは鳥肌めいたものを感じるほど印象に残った。

たった二人の善なる神。
それは邪神を封じるために永遠なる時を戦い続けるアルと九郎の姿であり、本来なら選ばねばならない道を選べず、彼と共にあることを願ってしまったアルによって顕現した世界。

誰からも責められる事のない罪。
故に。
誰からも赦される事の無い罪。
(ゲーム本文より、アルの独白)

たった一つの、ラストの選択肢によってハッピーエンドへと至れることを知っているプレイヤーなら、その切なさに胸をかきむしられるであろう心震えるラストだが、そこで彼らを善なる神として扱うことで、「邪神群を封じる旧神」を存在させたダーレスの設定を見事に説明できている。
それは、なぜ「旧支配者同士の対立」が存在するのか、という疑問への答えにもなっているという周到さ。
希望などない、邪神に支配された世界に生まれたたった一筋の光。
それがアルと九郎であり、「選ぶべき選択肢」を選ばなかったが故にハッピーエンドへ至れなかったプレイヤーに残された次への希望でもある。

ゲーム自体のボリュームと寄り道表記の多さのため、実はプレイ途中で結構中だるみしてしまったのだが、罪の意識に苛まれながらも己の幸せを貫き、痛みを伴う幸福を得るこのラストは大変に私好みのため、評価はかなり高い。
哀しくも美しいこの手の味わいのラストは、覇道瑠璃のルートでも味わうことができる。

いつ終わるともしれない、その「いつか」のために戦い続ける物語。
決して己の想いを口にすることはできず、たった一人の少女を護るために何度敗れようとも立ち上がり、回り続ける物語。
それが切なく、毅然とした印象であるがゆえに、そのループが破れたときに訪れる優しいエンディングの感動は大きい。

と、ここまで書いておいてなんだが、どうでもいいことが気になったので一つ。
瑠璃は財閥のお嬢様のくせに下着ダサすぎ
オーバドゥやラ・ペルラくらい着てろや、と思わずツッコミを入れたくなりました。
エメラルドクリーンと白のストライプはないだろう、今どき。(しかもあれは絶対綿パンツだ)
あれで超萎えたのは私だけではないはずだ……と思っていたら、ネットでは萌えてる人多数ですげぇビックリ。
やはり、オタク層には受ける記号だったのですか、エメラルドクリーンと白のストライプ綿パンは!
私が男なら、脱がした時点でその場で回れ右して帰りたくなるくらい萎えたのですが。

あと、九郎がデカすぎ。(何が? ナニが)
絶対入らねぇ。むしろ裂ける。間違いなく。しかも相手はロリだし。痛いっつーの!!
男は大きさよりテクです。これ絶対。
大きいのは痛いだけ。良くも何ともありません。これ真実。
こちとら、正真正銘の女が言うんだから間違いない。
(いや中には「大きくなきゃイヤ~ン」という方がいるかもしれないが。つーか下品ですいません)

というわけで、熱い物語、ロボット物、絶望的な状況からの逆転劇、人外ロリ、クトゥルーなどのキーワードに敏感に反応してしまう方にお勧め。

あ、ライカルートについて書き忘れた。が、ボスが違うだけで普通。特筆すべきとこはないです。私にとっては。
リューガとの殺し愛は結構ツボだったのですが。
仮面ラ●ダー的な懊悩する主人公が好きな人ならいいかもね。