マブラヴ
| シナリオ | 絵 | 音楽 | 演出 | システム | 総合評価 | オススメ度 |
| 6 | 8 | 8 | 10 | 10 | 55 | ★ |
もう知らない人はほとんどいないはずだから、最初から断言する。
このゲーム、完結してません。
そして、発売日当日に続編とおぼしき「マブラヴ オルタネイティブ」が発表された、という問題作。
本来なら完結していない作品など評価対象外なのだが、よりにもよってメーカー自身が、
「マブラヴは単独で完結している作品であり、オルタネイティブは続編というわけではなく、別エンドや別ルートのような存在に当たる」
と死刑執行書に自らサインをしたも同然の公式発表を出したので、当方もそのつもりで評価させていただきます。
「君が望む永遠」で一躍トップブランドに躍り出、多くのユーザーが心待ちにしていた今作。
「超王道学園恋愛AVG」と銘打ち、鳴り物入りで発売されたまではよかったが。
まず、学園パートの「エクストラ編」。
これが王道だとは片腹痛い。製作者は王道の意味を取り違えてるとしか思えない。
そもそも、王道の面白さというのは骨格がしっかりしてこそ生きてくるものだ。
その、肝心の骨格を形成するべきキャラ造形からして失敗している。
個性的にしようとしていじくり回した挙げ句、結局没個性になってしまった感が拭えないヒロイン達。
確かに一部キャラを除いて、登場人物のほとんどはハイテンション。突き抜けた行動も多く、それを笑いに消化させようとしている思惑も分かる。
が、分かるだけ。それで笑えるかと言えば全然笑えない。
おまけにキャラそれぞれがやたらと自分勝手で、しかも何だかんだと破綻した理屈を押し付けてくるもんだから、当然18歳以上の年齢と経験を兼ね備えている(はずの)プレイヤーとしては、「このガキムカつく」という思いが先に立ってしまい、どうにも乗りきれないのだ。
結果、王道と言うくらいだから、ある程度分かりきったギャグや展開なので笑うことができず、ヒロインが悩んでいても、「どうせ勝手な理屈こねて納得できない方向に行っちゃうんだろう」と半ば諦めつつプレイすることになり、全然世界観に入れ込めないままぼへーっと進行してしまう。
かように、王道物であるべき姿の、先が読めるがゆえの「くるぞ、くるぞ」といった期待感が薄い上に、その上を滑って行ってしまうのだから始末が悪い。
ストーリーはぶっちゃけ「ラブひな」。
今どき「落ち物」(ある日突然主人公と女の子が同居することになる設定の作品の総称)なんて珍しくも何ともないし、だからこその王道、というにはシナリオに力がなさすぎる。
5人もヒロインがいるのに、共通ルートが多すぎて再プレイが面倒だし、しかもヒロインごとの個別ルートにも特に印象深いエピソードが皆無。
学園物らしく主人公との掛け合いに多数のキャラが参加するが、これが賑やかというよりはだんだんうざくなってくる。
いつもガチャガチャゴチャゴチャと騒ぎ立てる芸人が面白くないのと同様に、緩急のテンポがないのだ。
こうした展開のせいで、勢いはあるものの空振りしている感が否めない。
各ヒロインのルートをクリアしても、達成感より徒労感の方がつきまとう。
盛り上がりのない、それなのに長丁場のゲームってのはかなり辛い。(ex.ハロワ)
誤解なきように言っておくと、このゲーム、シナリオ以外の出来は本当に素晴らしい。
高スペックマシンに限定されるが、システムは考えられる必要な機能+αをすべて網羅し、かつ安定しているし、そこから繰り出される演出の数々は他に類を見ない出来映え。
システム・演出だけを評価するなら、現在業界トップレベルなんじゃなかろうか。
キャラは所狭しとくるくる動き回り、画面は拡大縮小自在に変化し、登場人物の吐く息まで白い。
見ていて飽きさせない画面効果は圧巻の一言。が、演出効果をオフにできないのは再プレイ時にちょっと困った。
音楽も一部流用があるようだが、ほぼすべてシーン各所にマッチしており、特に主題歌の力の入りようはすごい。
聞いていて耳触りの良い、それでいてゲーム本編の邪魔をしないきっちりした仕事だし、ボイスもはずしたキャスティングがなく、安心して聞いていられるレベル。
CGも、キャラデザインについては各自好みが別れるであろうが、基本的には万人向け。
塗りが雑だったり、手を抜かれていたりするところもなく、多少エロが薄い以外はすべてにおいて丁寧な作り。
だが、ここで当レビューの一番上を見ていただきたい。
絵8、音楽8、システム10、演出10、未だかつてこれほどまで高アベレージの評点を付けたゲームはない。
それでも総合評価が55ってどういうこと!? と疑問に思う諸氏も多いかと思う。
そのほとんどすべての元凶が、以下挙げていく「アンリミテッド編」に集約される。
「超学園恋愛AVG」だったはずの本作に、突如現れたパラレルワールドシナリオ「アンリミテッド編」。
そういう隠し球を持っていたことは別に構わない。そんなゲーム、他にいくらだってある。
問題は、それが、
完結していない&オリジナリティ皆無
だということだ。
多くのレビューサイトで語られていることなので本当に今更だが、はっきり言ってこのシナリオ、
まんま「ガンパレード・マーチ」。
人死にも、戦争の生々しさも、まるで救いのない厳然たる現実も持ち合わせない、出来損ないのガンパレだけれども。
エクストラ編とはうって変わってシリアスに、熱く進もうとする本編。
だが、ガンパレが内包していたすべての破壊力をどこかに置いてきてしまったような、こんな気の抜けたシナリオでは、説得力などない、ただのお話に成り下がっている。
それでもいくつかはオリジナルの謎があるので、その解明を求めてラストへ辿り着いたプレイヤーを待つものは。
誰も予測しなかったであろう、まるで打ち切りかのような唐突なエンディング。
しかも、どのヒロインを選んでも、そのエンディングは変わるところなく全員まったく同じ。
もちろん、伏線の回収どころかまともに納得できる解決すら迎えていない。
例えて言うなら、推理小説で「犯人は貴方です」と指摘された場面で、次のページをめくらないと犯人がまだ分からない状態に酷似している。
そして、その次のページは破られていて新たに本を購入しなければ読めないのだ。
こんなバカらしいことってあるだろうか。
そもそもパラレルワールドを持ち出すからには、元の世界との整合性をどう取るかが謎の主軸となってくる。
その解決や何もかもを放ったらかしにしておいて、次作は「続編ではない」と言い切る鉄面皮ぶり。
ユーザーの大半が怒るのも無理はない。
続編でないならそれでもいい。それなら、このエンディングは納得できないので、この点数は変わらない。
いや、やはり続編だったというのなら、あまりユーザーをなめるな、という意味でこの点数は変えられない。
こんな中途半端なルートを作ってしまうのなら、いっそのことこれをばっさりカットし、その分の余力をエクストラ編のブラッシュアップに回した方がずっと良い作品ができたし、次作のためにもなったはずだ。
そうすれば、例え次作が発売日同時発表となっても、非難よりも期待値の方が高まったはずなのに。
すべてにおいて、中途半端と失敗という印象が拭えない、何とも無惨な大作。
未購入の人はもう少し待った方が無難。絶対、次作が出てから全部入った「完全版」とか出そうな気がするから。