天使ノ二挺拳銃 -Angelos Armas-

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
67★★

ニトロやっちまいました。ブランド名(火薬)に引火して、アチチチ助けて119番、な状態です。
この、とてもニトロ作品とは思えない点数を叩き出したすべての根元は、システムの大失敗
これじゃなくて、通常のAVGかノベルスタイルだったら、たぶん点数はニ割増しだったと思う。
(それでも80点台は付けられませんが)

悪い点が多すぎるので、とりあえず良い点から。
絵、音楽に関してはもう安定の一言。抑えた色調の中央東口氏の絵は、終末感漂うこの作品にベストマッチしている。
ニトロの他の絵師では、とてもこの雰囲気を出せないだろう。
相変わらず、チンピラ・オヤジ・化物のニトロ三大必須キャラが群を抜いてお上手であらせられます。大好きだー!
萌え絵ばかりが綺麗であとはお粗末、という作品に比べて、格段に物語に厚みを与えている。
皺や髭を付け足しただけであとは若者と一緒、という絵を描いてしまう絵師が増えてきた中で、この描き分けの達者さはかなり貴重なものだと思う。
(言っておくが女性も上手だ。というかものすごい進歩を遂げた)

音楽はおなじみ、ZIZZ STUDIO。もうコツが分かっているというか、そぐわないというBGMがほとんどないので安心して聞いていられる。
毎回質の高いボーカル曲を出してくるが、今回のEDテーマも相当に良かった。ED自体はアレだがな。

さて。さてさてさて。今回のメインぶった切られ悪役(市中引き回しの上、磔獄門)であるシステム。
いったい今までの作品の蓄積は何だったのか、と頭を抱えたくなるほどにまるでなってない。
普通、作品数が増えれば増えるほどに、システム周りは洗練されていくものじゃないの?
そもそも、セーブデータをロードするのに10秒近く待たせられるエロゲなんてプレイしたことがありません。
これはPSのゲームですか? それとも記録媒体がテープレコーダだったころのアレ?
(若いプレイヤーは知らないだろうが、パソコンにはそういう時代があったのです。しかし私はそこまで歳取ってないよ)

1G以上もフルインストさせておいて、ディスクレスにならないこと、レスポンスが激悪なことも納得いかない。
何かするたびに必ずワンテンポ遅れるし、今回初搭載のうざったらしいエフェクトも切れない。
念のため書き添えるが、私のマシンは05年8月の現時点でも比較的高スペックな方です。
なので、マシンが原因という可能性はかなり薄いはず。

一番最悪なのは、AVGでありながら既読スキップがないこと。
ぶっちゃけ、最初と最後だけ読めば、中盤はどうでもいいシナリオなのDEATHがね。
それだって、既読スキップなんて搭載されて当たり前の機能、なぜあえて外してしまったのか問い詰めたい。
小一時間問い詰めたい。
おかげでこっちは、画面眺めたままの高速スキップ併用というアホな作業を繰り返すことに。

これでただでさえイライラが募るのに、このシステム、異常に不安定で何かの拍子にいきなり落ちます。
私なんぞ、あと2,3回画面送ればエンディング、という箇所でいきなり落ちた。
当然やる気は下降線。むしろマイナス。そんな状態が幾度かあり、既読スキップもないのだから、途中、セーブしないで延々とプレイしてると確実に泣きを見ます。(ホント泣けたよ……)
私のマシンだけかと思ったが、他にもそういう事例が多々あるようなので、間違いなくバグと言えよう。

頼むよー、こんなボリュームの少ない作品でそんな致命的なミス犯すなよー。
普段のニトロなら考えられないのだが、今回は、AVGとしてのシステムを一から構築したせいで仕方ないのだろう。
だが、新しいものを導入するときは、それに見合った保守を。安全性はシステムの最根幹を担う要素だ。

そして、よりバリエーションに豊んだ演出を表現しようとして採用されたであろうこのシステム、はっきり言ってウザいだけなのは私だけですか?
マンガのようにセリフや説明が吹き出しで表現され、一枚絵の背景にそれを喋るキャラがカットインで挿入される、という手法なのだが、ただでさえ説明が多く、難解で重いテーマがある設定であるのに、それを白抜きの吹き出しで小出しにポコポコ表示されるような真似をされちゃったら、読みづらいことこの上ない。
おまけにその吹き出しの出現位置が定まらないので、視線をあちこちに動かさねばならず、文との一体感、スピード感が全然味わえないのだ。
マンガなら右から左、ノベルタイプなら左から右、といった日本人共通のお約束をいとも簡単に飛び越えられてしまい、普通のゲームスタイルに慣れていればいるほど、こちらのリズムを簡単に狂わせられてしまう。
この点、もしノベルタイプだったら、文章のリズムを崩すことなく、違和感なく世界観に入っていけたと思われるのがまず失敗の一点。

さらに、これだけどシリアスな物語をこの手法でやっちゃったら、どんなに気を付けても

下手なアメコミみたいな三文芝居

にしかなりえないということ。
カットインのタイミングや絵、画面効果などは本当に見事なのだが、すべてに吹き出しが表示されるせいで、どう好意的に見ても陳腐なデジコミとしか思えないのだ。
おかげで、世界観に入りこむ前に作品に対する熱が氷点下まで下がってしまい、物語を楽しむどころではなくなる。

何でこの作品でこの手法取っちゃったんだろう。これは、もっと甘酸っぱ~いメルヘンラヴな世界か、この手法の効果すらギャグとして笑えるようなコメディ作品にしか通用しないのでは。
少なくとも、私は演出方法とシナリオとの間に深い溝を感じた。
もともと大したシナリオでもないのに、演出によってさらにその魅力が半減。こんなゲーム初めてだ。
(普通は、シナリオはいいのに演出は、とかその逆が多数を占める)

カットインのセンスには並々ならぬものを感じたので演出に8点を付けたが、吹き出しだけなら3点クラス。
もう二度と使わないでほしい。頼む。本当頼む。これ以上やられたら、ディスク叩き割りたくなる。
どうしても使いたいのなら、吹き出しかノベル式か選べるようにしてくれ。じゃないと忍耐が保たない。

そして、その最悪の演出とイヤな相乗効果を生み出してしまったシナリオ。
残念ながら、このテーマを扱うには、現時点では決定的に力量不足。
同社内に虚淵玄という卓越しすぎたライターがいるもんだから、その点をかわいそうには思うし、ある程度情状酌量の余地はあるのだが、どうしても比べざるをえない。
同じライターでも、いっそのこと鋼屋ジン氏(デモンベインのライター)のように、全然違う角度から切りこめばよかったのだろうが、終末という閉塞した世界観、異形の種、狂気の愛、ポン刀銃器カーチェイス祭り、どれもこれも虚淵氏の得意フィールドばかり。
となれば、あとは地力の差が出てしまうに決まっている。

案の定、最近流行りの「アンチハッピーエンド」に仕上げてしまったのだが、それがまず間違いの始まり。

安易なハッピーエンドには罵声を。下手くそなエンドには制裁を。

アンチハッピーエンドってのはものすごーく難しいのです。受け手に衝撃を与えつつ、それでも納得に足る結末を与えなければならないのだから。
そこのところを無視して、ざらつきだけを残すようなエンドってのは、そのときは確かに強烈に印象に残っても、結局は不快感しか残っていないもの。
むしろ、最後まで右往左往してるようなおバカちんが主人公の今作では、
「お前がグズで腑抜けだからこうなっちまったんだ、ボケ!」
としか言われないのが関の山かと。

さらに、黒幕の行動原理がもうすっっっっっっっっっごくチープ

今どき、

「女にフラレた(そもそも、好かれてると勘違いしてた)」→「誰も理解してくれない」→「ボク寂しんぼ」

くらいで世界を滅ぼそうとする短絡思考の悪役がいたんですね。思わず生ぬるい微笑を浮かべてしまいました。
火曜サスペンス劇場だって、もうちょっと気のきいた動機を思いつくぞ。
どうせ鬱を狙うなら、もっと救いがなく、もっとどす黒い、魂が汚濁されるかのような理由を。
おまけに君たち天使なのに、輪廻を信じるんですか。天使はブディストだなんて初めて知りました。

とにかく、一生懸命資料に当たって勉強はしたんだろう。それは感じられるものの、付け焼刃感が強すぎて、結果的に一つのストーリーとしてまとまりがなくなっている。
風子ルートでペーターが語った嘘の定義が、実はエンディングの伏線であるなど端々に光るエピソードも結構あったし、後半のアクションシーンはスピード感も出てきてよかったのだが、いかんせん途中のダラダラした展開が長すぎて、後半に入る頃には「もういいから早く終わってくれ」と祈るしかなくなる。
こういう話なら、各人の心理描写が重要になってくるのに、それがおろそかで状況説明ばかりがくどくどしく入るため、とにかく「うざい」という印象しか持てない。

今作に新人を起用したのは大きなミステイク。メーカーとライター、双方にとって不幸な結末しか生んでないし、実験作では新人の力を測れない。
シナリオ自体、確かに力量不足の感は否めないけれど、たぶん、ノベルタイプだったらもうほんのちょっとは高評価できたであろうので、演出に邪魔されたことを差し引いて、あと1,2作は様子を見たい。
過度の期待はしないが、成長の余地はかなりある。基本的には悪くないものを持っているとは思うので、正統派のゲームスタイルで、きちんとした監修の付いたものをプレイしてみたい。
「」内に句点を付けてしまうような凡ミスに気を付けて、精進してくれることを切に願う。
(↑私はこれが許せない。今作に限らず、結構間違ってる作品多々あり。日本語勉強し直してくれ)

メーカーとしては、これ以上私を苦しませないでほしい。この演出は、個人的に再度の使用を禁止します。
ファンディスク等のギャグ系作品じゃない限り、これを搭載したら私は買わない。徹底回避させていただきます。
それにしてもウロブッチー、ホモゲーのディレクションしてる場合じゃないっすよ! 屋台骨の危機っすよ!
ここらで一発、ガツンとメインシナリオかましてください!
こんな状態が続いたら、私はきっと死ぬ。_| ̄|○~0