カルタグラ~ツキ狂イノ病~
| シナリオ | 絵 | 音楽 | 演出 | システム | 総合評価 | オススメ度 |
| 7 | 9 | 8 | 9 | 8 | 78 | ★★★ |
新ブランド、Innocent Grayの第一弾。
評点を見てもらえば分かるとおり、全部の水準がなかなかの高アベレージであり、安定感は抜群。
猟奇サスペンスが平気な人になら、まず勧めてもいいと言えるレベルで仕上がっており、非常に手堅い作り。
だが、その分図抜けてここが素晴らしい、と言える特色もない。
そこそこ面白いのだが、想定範囲内に収まってしまっており、新ブランドが持つがむしゃらなパワーのようなものが感じられないのがやや残念。
とはいえ、シナリオが多少弱い以外は、押し並べて高クオリティを維持しており、早くも次作以降に期待できる。
システムは上々。必要な機能は充分に備えているし、CG・サウンドモードもシーン回想もある。
ホイールバックログでの音声再生も対応、エフェクトのオンオフも3段階で切り替えられて便利。
既選択肢の色が変わるのも分かりやすくて助かる。おかげで補完はかなり楽。
絵はものすごく丁寧。雰囲気も出ているし、何より、物語の尺のわりに差分なしで200枚というかなりの数のCGが用意されていることで視覚的な満足度も高い。
背景も手を抜かず、彩度を抑え気味にして、陰鬱な猟奇殺人を扱う物語に相応しい舞台を作り上げている。
音楽も、殺害から立ち回り、哀切溢れるシーンやちょっと笑いの入った箇所まで、様々な場面を盛り上げる、しっかりとした作り。
ただ、一番印象深くあるはずのOP曲のインパクトが薄く、ボーカルの歌唱力にも難があるのが残念。
とか言ってたら、このボーカリスト結構人気ある人だったのね。すいません、無知で。
でもこの曲だけ聞いたら、歌あんまり上手くないと……思うよ?(←弱気)
ちなみに全編フルボイス。キャスティングはまぁまぁ。
が!!! 主人公の元上司で警視庁の辣腕刑事役の方、「嶋和成」氏となってますが、中田譲治氏(マイラヴv)に聞こえるのは私の幻聴ですか?
誰か真相教えて下さい。
良い絵・良い音楽が揃い、演出が問題となってくるが、今作はそれがかなり奮っている。
カットインが多用され、停滞しがちな物語に緩急をつけるのにも一役買っているし、幕間劇で殺人者や他者の視点になった際は、縦書きになるのもいい。
物語後半、犯人側にザッピングする箇所があり、倒叙物の雰囲気を味わえるのも良。
しかも、これらの挿入タイミングが絶妙で、シナリオのテンポの悪さをカバーしている。
また、少ないながらも戦闘シーンもあり、そこでの画面エフェクトもスピードと緊迫感のあるものに仕上がっており、演出に関してはかなり洗練されたものを感じた。
ただし、シーン切替時にかなりの頻度でアイキャッチが入り、これが少々うっとうしい。
エフェクトを切ればすっ飛ばせるが、この点はもう少し見せ方を工夫するべき。
そして、シナリオ。
残念ながら、当方重度のミステリ好きを自認しているため、おおよその事件のからくりが容易に見えてしまい、お手軽感が否めなかった。
それというのも、どれもこれもどこかで見たことのあるようなエピソードばかりで、ほとんどひねりがなく、特別新たなアイディアも盛りこまれていなかったから。
最後の大仕掛けであるはずの(ネタバレ→!!)生者と死者、さらに双子間の二重の入れ替わりは、大昔からそれこそ何度も取り沙汰されてきた手口だし、死体の背中に羽根を生やす・串刺しになって死ぬなんてのも、最近では「多重人格探偵サイコ」が記憶に新しい。
憑き物筋の家系に姉妹、財閥令嬢に全寮制のミッションスクールとくれば、あれあれ、それは京極夏彦では? と、そういったモチーフが透けて見えてしまって乗り切れない上に、事件自体がなかなか進展しないために途中で飽きてしまう。
おまけに、時代背景を昭和初期としているのに、それをまるで無視した台詞回しや行動が多すぎて、かなり鼻に付く。
昭和初期の人間は、普通エッチするとか言わないと思うぞ。女性が「~ッス」なんて言葉遣いもしないと思うぞ。
なのに、地の文にはふりがなを振らないと読めないような難解な言い回しが平気で使われており、そういった文章に対する無頓着さや、大雑把すぎる時代考証が気になって仕方がない。(そんなの私だけか?)
これだけでも、せっかくの舞台の雰囲気が台無しに。
また、主人公が警察を辞めることになった経緯や、過去に携わった事件の顛末等、ストーリーに密接に絡んでくるわりには
語られないことが多すぎて、どうにも消化不良気味。
事件の根幹に関わる由良との関係だって、描写が薄いせいで、「それでそんなに執着されてもなぁ」という気分を払拭できないし、事件を複雑にしすぎようとして失敗したという、中途半端な印象が否めない。
キャラ造形もちと痛い。
勘が鋭く、明敏な探偵であると言われている主人公は狂言回しでしかなく、しかも決定的に鈍臭くて頭も悪い。
肝心の探偵役すら妹(性格に相当難あり。かなり好き嫌いが分かれる。ちなみに実兄妹EDあり)に奪われてしまい、やってることはといえば、あっちの女にフラフラ、今度はこっちの女にフラフラと手を出してばかり。
(エロゲだから仕方ないが)
そのせいで、片っ端から被害者を増やしているという体たらく。はっきり言って、諸悪の根元はこいつだ。
こんなダメ主人公、久しぶりに見ました。「君望」のアホ之以来じゃないか?
このアホウぶりのせいでいっこうに事件が進まず、とにかくスピーディーに先に進みたい諸兄には不向き。
ミステリのスピード感ってものすごく重要なのですよ。
加速して、加速して、最高にスピードに乗り切ったところで崖から突き落とされるくらいの勢いがなければ、衝撃の謎解き、という感覚は得られないので。
ところがこのシナリオ、その最後の謎解きの部分ですら、自分はノータッチで次々と真実が語られていき、つくづく俺の役目っていったい何? と悲しくなる。
一方的に情報開示されるのをボケーっと聞くしかない様は、決定的にミステリの爽快感に欠ける。
その謎が、誰にも解けないような驚きに満ち溢れたものならよいのだが、最初に書いた通り、実にありがちな展開をたどるため、それもない。
せめて論理的に破綻がないようなものを。
事件の第一犯人として、それまで名前すら出てこなかったような人間を突如として挙げるのは反則です。
さらに、メインヒロインが私の「嫌いツボ」をしたたかに刺激する、
「明るく前向きでちょっとドジっ娘、一生懸命で健気」
という最悪の造形。(普通はたぶん好かれるんだと思う……独自偏見路線突っ走ってすんません)
当然、このキャラがトゥルーエンドの鍵を握るため、その脳天気で抜けた言動に辟易しながらプレイする羽目に。
物語が陰惨な展開であるだけに、このキャラの言動に救われるという向きもあるのだろうが、私には邪魔でしかなかった。
暗く、どこまでも暗く深くて光など差さない奈落の底に。
感動はいらん。希望もいらん。嘆きと妄執と呪詛に彩られ、最後には凄惨なカタストロフを。
それこそが猟奇サスペンスの醍醐味だと思うのだが、あっさりとこう救いを用意されてはかなりしょんぼり。
(↑言っておくが私は危ないヤツではない。念のため)
人の妄執をテーマにしているわりに、そういった細部の扱いがずさんなので、心底肝が冷えるということがない。
もっとぞくりとさせてもらいたかった。
例えばラスト。(以下、超ネタバレ。未プレイの人・トゥルーエンド未到達の人は見ちゃダメ!!)
和菜は結局人知れず殺されており、主人公は入れ替わりに気付かず(どうせバカだしな)、プレイヤーのみにだけ包帯の取れた由良のCGを提示して、入れ替わりの事実に気付かせるとか。
その際は憑き物筋らしく、獣目にするとか。瞳の色が違うくらいでは全然ビビれませんわ。
当然、いずれ真実にたどり着く危険性のある妹にはご退場(殺害)願いたい。
その計画を練りながら画面フェードアウト。スタッフロール。
……のような、「救いこれっぽっちもなしED」が見たかったのです。
(↑本当にやったら、たぶん各所レビューで袋叩きに遭うと思うが。私は支持しますよ?)
ちなみに、グロ表現はかなり頑張っている。目玉抉ったり、首手足ちょん切られたり。
もちろんばっちりCGもありますので、嫌いな方はお気を付けて。
全体的にシナリオはとにかくぬるめの印象。詰めが甘いと言ってもよい。
あれもこれもとやりたい気持ちは分かるのだが、一つ一つのエピソードが煮え切らないものが多すぎ、結果的に全部が生煮えという典型的な失敗料理になりかけている。
各ヒロインのEDも、メインヒロイン以外は事件が放ったらかしになってしまうのでラブラブどころじゃないし、ほとんどがバッドエンド。
おまけに、何で出てきたか分からないような必要性のないヒロインも用意されていて、余計に事件が進まない。
シナリオ以外の部分はかなり好印象であるので、作品レベルとしては平均以上なのだが、かえすがえすもこの点が惜しい。
自分の身近な人間も容赦なく死んでしまうので、そういった惨劇に耐えられない人は回れ右。
グロいの嫌い。血なんてもってのほか。切断面なんて見たら倒れちゃいますという人も回れ右。
超本格的なミステリ物を! 破綻なんて容赦しないぜ! という人は走って回れ右。
それ以外の、エログロ猟奇・サスペンスフルなギャルゲーがやりたいな、という人にはオススメ。
過大な期待すらしなければ、そこそこ楽しめると思います。(エロゲにしては)ちょっぴり値段も安めだしね。