塵骸魔京
| シナリオ | 絵 | 音楽 | 演出 | システム | 総合評価 | オススメ度 |
| 7 | 8 | 9 | 8 | 8 | 74 | ★★★ |
かなり重度のニトロファンである私から見ても、凡作としか評価しようのない出来。
ABC段階ならBマイナスといったところか。
いつもながら、絵や音楽、演出なんかはかなりのハイレベル。
主人公がちと不気味(肌が土気色だし!)なのを除けば、原画も塗りも安定しているし、背景はもちろん、お得意の3DCGだってバッチリ。
画面のレイアウトやデザインなども、雰囲気を壊さない、統一感のある仕上がり。
ただ、OPは無理にアニメを入れなくてもよかったな、と思う。公式サイトで多用されているフラッシュや、作中の演出を見ても分かる通り、静止画でも充分にセンス良く、見ごたえのあるものを作っているのだから、何でもかんでも動かせばいいってもんじゃない。
原画の持ち味を生かすには、ベターッとしたアニメ塗りは不要。これでちょっと気が削がれました。
それに、ムービー部分はブロックノイズが多すぎ。どうせならもっと高画質で圧縮してくれ。
音楽には文句のつけようなどございません。さすがZIZZ。
いとうかなこ嬢のソウルフルなボーカルと、オリエンタルな楽曲とが非常に良くマッチしており、単品で聞いても、かなりのレベルを感じさせる。
むしろ、シナリオがいまいち盛り上がらないのを、音楽が奮闘してギリギリの線を支えている気すら。
システムはニトロのいつもの。設定は細かく変更でき、ショートカットも充実。
バックログの音声再生にも対応しており、過不足のない実直な作り。無問題。
このように、シナリオ以外は実によくまとまった、非常にハイレベルな出来なのだが、悲しいかな、私が評価の際に、一番重要視するのはシナリオなのですよ。
とにかくもう、決定的に説明不足。重要な伏線や、サブエピソードのほとんどが尻切れで終わってしまう。
ライターの脳内では既知の設定なのだろうが、それが本文中では説明されず、エンドロールを過ぎても、「……で? だからどうなったんだよォォ!」という状態になってしまう。
しかも、その伏線の方が、本筋よりもずっと面白そうなのだから始末が悪い。
結果的に、一つの作品を終えた、という達成感、爽快感に乏しい。それが第一の敗因。
第二の敗因は、主人公の設定ミス。
何でもない会話シーンにも、いちいち理屈っぽい論理展開がなされるもんだから、一度は面白くても、二度目以降は飽きるし、いい加減うんざりしてくる。
種々の薀蓄を含んだその理屈は、それぞれに興味深く、面白くもあるのだけれど、そっちに気を取られていると、「ところで、本編どうなってたっけ?」という弊害が起きる。
おかげでこのシナリオ、妙に間延びした印象を受けるのだが、展開は決して遅くなく、冗長なわけでもない。
ヒロインごとにストーリーも別れており、共通パートもさほど多くない、と、本来ならば長所になるべき数々の点が、まったく生かされていないのだ。
個々の設定やキャラは結構面白く、魅力的でもあるのだが、それが一つになったとたん、何だかうすらぼやけた味に。
まるで、出汁の入っていない湯にそのまま具材だけ突っ込んで、煮えすぎた鍋みたいだ。
決してつまらないわけじゃない。ただ、面白くはない。
確かに、盛り込まれている雑多な知識は相当のものだし、それを話に絡めてくる手腕も認めよう。
ただし、学者が文豪であるとは限らないように、知識だけでは面白い物語にはならない。
このライター、そこのところを決定的に踏み誤ってしまったのでは。
同じ異界・人外のものを扱った同メーカーの作品に「斬魔大聖デモンベイン」があるが、あちらは、どうにかしてユーザーを楽しませてやろうという気概、異形のものを魅力的に書きたい、そういう作品が好きでたまらないというライターの魂を感じられた。
だが、今作にはそれがない。異界もある、異形もある、バトルもある、漢の友情も、エロも(一応)ある。
でも、そんないつものスタイルを盛っておきながら、結局何がしたかったのかがまるではっきりしない。
一番印象に残ったのと言えば、音楽の良さと、しつこいくらいに垂れ流された理屈ばかり。
メインディッシュよりも付け合せの方が美味な料理って、成功なの、失敗なの?
たぶん、別のライターがこの設定を使って書いたらば、ひょっとしたら、最近低迷気味のニトロにとって、起死回生の一発になったかもしれないことが非常に悔やまれる。
そろそろ本腰入れて建て直しをしないと、非常にまずいと思います。すでにユーザー離れは進んでいるぞ!
ニトロ作品コンプリーターを自認する人、積みゲーは一切なく、超ヒマで何でもいいからやりたい人はどうぞ。
でも、あえてプレイするほどの作品じゃありません。
発売したそばから忘れられていく、大量生産の一環でしかない、そんな作品でした。