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塵骸魔京

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
74★★★

かなり重度のニトロファンである私から見ても、凡作としか評価しようのない出来。
ABC段階ならBマイナスといったところか。

いつもながら、絵や音楽、演出なんかはかなりのハイレベル。
主人公がちと不気味(肌が土気色だし!)なのを除けば、原画も塗りも安定しているし、背景はもちろん、お得意の3DCGだってバッチリ。
画面のレイアウトやデザインなども、雰囲気を壊さない、統一感のある仕上がり。

ただ、OPは無理にアニメを入れなくてもよかったな、と思う。公式サイトで多用されているフラッシュや、作中の演出を見ても分かる通り、静止画でも充分にセンス良く、見ごたえのあるものを作っているのだから、何でもかんでも動かせばいいってもんじゃない。
原画の持ち味を生かすには、ベターッとしたアニメ塗りは不要。これでちょっと気が削がれました。
それに、ムービー部分はブロックノイズが多すぎ。どうせならもっと高画質で圧縮してくれ。

音楽には文句のつけようなどございません。さすがZIZZ。
いとうかなこ嬢のソウルフルなボーカルと、オリエンタルな楽曲とが非常に良くマッチしており、単品で聞いても、かなりのレベルを感じさせる。
むしろ、シナリオがいまいち盛り上がらないのを、音楽が奮闘してギリギリの線を支えている気すら。

システムはニトロのいつもの。設定は細かく変更でき、ショートカットも充実。
バックログの音声再生にも対応しており、過不足のない実直な作り。無問題。

このように、シナリオ以外は実によくまとまった、非常にハイレベルな出来なのだが、悲しいかな、私が評価の際に、一番重要視するのはシナリオなのですよ。

とにかくもう、決定的に説明不足。重要な伏線や、サブエピソードのほとんどが尻切れで終わってしまう。
ライターの脳内では既知の設定なのだろうが、それが本文中では説明されず、エンドロールを過ぎても、「……で? だからどうなったんだよォォ!」という状態になってしまう。
しかも、その伏線の方が、本筋よりもずっと面白そうなのだから始末が悪い。
結果的に、一つの作品を終えた、という達成感、爽快感に乏しい。それが第一の敗因。

第二の敗因は、主人公の設定ミス。
何でもない会話シーンにも、いちいち理屈っぽい論理展開がなされるもんだから、一度は面白くても、二度目以降は飽きるし、いい加減うんざりしてくる。
種々の薀蓄を含んだその理屈は、それぞれに興味深く、面白くもあるのだけれど、そっちに気を取られていると、「ところで、本編どうなってたっけ?」という弊害が起きる。
おかげでこのシナリオ、妙に間延びした印象を受けるのだが、展開は決して遅くなく、冗長なわけでもない。
ヒロインごとにストーリーも別れており、共通パートもさほど多くない、と、本来ならば長所になるべき数々の点が、まったく生かされていないのだ。

個々の設定やキャラは結構面白く、魅力的でもあるのだが、それが一つになったとたん、何だかうすらぼやけた味に。
まるで、出汁の入っていない湯にそのまま具材だけ突っ込んで、煮えすぎた鍋みたいだ。
決してつまらないわけじゃない。ただ、面白くはない。
確かに、盛り込まれている雑多な知識は相当のものだし、それを話に絡めてくる手腕も認めよう。
ただし、学者が文豪であるとは限らないように、知識だけでは面白い物語にはならない
このライター、そこのところを決定的に踏み誤ってしまったのでは。

同じ異界・人外のものを扱った同メーカーの作品に「斬魔大聖デモンベイン」があるが、あちらは、どうにかしてユーザーを楽しませてやろうという気概、異形のものを魅力的に書きたい、そういう作品が好きでたまらないというライターの魂を感じられた。
だが、今作にはそれがない。異界もある、異形もある、バトルもある、漢の友情も、エロも(一応)ある。
でも、そんないつものスタイルを盛っておきながら、結局何がしたかったのかがまるではっきりしない。
一番印象に残ったのと言えば、音楽の良さと、しつこいくらいに垂れ流された理屈ばかり。
メインディッシュよりも付け合せの方が美味な料理って、成功なの、失敗なの?

たぶん、別のライターがこの設定を使って書いたらば、ひょっとしたら、最近低迷気味のニトロにとって、起死回生の一発になったかもしれないことが非常に悔やまれる。
そろそろ本腰入れて建て直しをしないと、非常にまずいと思います。すでにユーザー離れは進んでいるぞ!

ニトロ作品コンプリーターを自認する人、積みゲーは一切なく、超ヒマで何でもいいからやりたい人はどうぞ。
でも、あえてプレイするほどの作品じゃありません。
発売したそばから忘れられていく、大量生産の一環でしかない、そんな作品でした。

SchoolDays

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
77★★★

途中からの展開のあまりの凄まじさに、「すごい鬱ゲー」として新聞沙汰(東スポですが)にまでなった問題作がとうとう当レビューにも登場。
はっきり言って、ぱっと見は全編フルアニメであるだけが売りの普通の学園物に見えたので、まったくのノーチェックだったのですが。
プレイした方たちの地獄絵図な叫びと、ネットでの大評判を聞きつけ、慌ててレビュー対象作品にした次第です。

このゲーム、一言で言うならまさにアレ。「寝取られる 殺る やるドラ」。
豊富な選択肢とED、極めて限定された舞台と関係を軸に、じっくりと濃密な展開が繰り広げられる。
30分アニメ70話分という驚異的なボリュームは、総インストール約8Gという他に類を見ないふざけた数字にも表れているが、せめてパッケージには書いといてくれや。
私は公式サイトで初めて知って、目が飛び出ましたよ。

そして、度重なるパッチの嵐。
確かに、これだけの分岐を管理し、かつあらゆる種類のPCに標準化させるのは骨の折れる作業だろうが、それにしたってもう少しテストを重ねるべきなんじゃないのか。
とにかくシステム周りが雑。高スペックを要求してくるわりに安定とはほど遠く、よく落ちる。
パッチを当てないことには攻略すら不可能だし、フラグ管理もかなり甘い。
そのルートでは起きてないイベントが、翌日には起こったものとして話が進められていたり、作中で齟齬が生じるケースが多すぎ。
フルアニメという性質上、やむをえない点もあるが、それでもこれだけボリュームある作品で、既読スキップがないのもいただけない。(4倍速再生はできる)
分岐条件がいまいちファジーで攻略が難しく、それなのに十数種類の多彩なEDを備え、再プレイ必至である今作では、シーンスキップ機能を実装するべきであるのに、プレイを重ねるたびに繰り返し同じシーンを見せられ、いい加減うんざりしてくる。
次にはいったいどんな鬱展開が待ち受けているのかだけが楽しみで、ひたすら我慢の一手でプレイしたが、それでもこれは大きなマイナス要因でした。

音楽やボイスはかなり豪華。この業界なら誰もが名前を知っている歌い手や声優が、もうインフレ気味なくらいにわんさか登場し、売りのわりにいまいちな出来のアニメに華を添えている。
各話ごとに挿入されるOP・ED、最終話でのEDテーマは内容に沿って少しずつ違っており、かなり手の込んだ作り。
だが、本当の売りであるはずのアニメ自体の出来は、実は大したものではなく、よくあるエロゲのOVA化作品レベル。
止め絵になることもままあるし、口パクのない箇所もザラ。
わざとロングカットにして動きの少なさをカバーしようとしている箇所もかなり多い。
正直、他作品で見られるような、要所要所で挿入される高品質なアニメのレベルには到底至らない。
おそらく確信犯として質より量を取ったのであろう、1ルートにつき1話30分×6話の構成は。
それをすべて動かすというのは並大抵の作業量ではないだろうし、そのボリュームから考えると全体的にはまずまずの出来。
アップ以外は最初から大した作画レベルじゃないので、崩れても大差ないという皮肉に満ちた結果ではありますが。
むしろ、肌つやが良すぎたり、髪の影が顔に落ちすぎなことの方が気になったよ。
いったいどんな分厚い髪の毛ですか。全員ナチュラルマープ?

声優陣はミスキャストはないのだが、妙に演技が間延びして聞こえるのは気のせいか。
これは、アニメに合わせて再生速度を落としただけか?
基本的に物語のペースが鈍重なので、私はほぼ2倍速でプレイしましたが、それでも普通にセリフ聞き取れました。
間を読めない奴ですいません。だってのろすぎるんだもん。

そんな感じで、基本的には普通の作品なのだが、この作品を異質たらしめているのは、何と言ってもそのシナリオ。
甘酸っぱい学園物でちょっと三角関係、最後は切ないけれどハッピーな純愛物語をくれぐれも期待してはいけません。
後々、きっと心の傷となって、夜毎うなされる羽目になるでしょう。
それぐらいインパクトのある各EDをご用意してございます。

主な登場人物は3名。プレイヤーである主人公と、クラスメートで密かに主人公に想いを寄せる世界(人名だよ)、主人公が電車の中でこっそり憧れているだけだった、隣のクラスの美少女、言葉(これも人名。「ことのは」です)。
なんだ、普通じゃん、と思ってはいけない。この3人のうち、2人がエロゲ史上類のないキャラ造詣なのだ。

まず主人公。こいつは、かのヘタレで名高い「君望」の主人公をも凌駕する、まさにエロゲ史上最低のヘタレ男。
最後の最後まで態度が煮えきらず、二人のヒロインの間で揺れ動き悩むふりをしながら、寄ってくる女は片っ端から食いまくり。(エロゲだから仕方ないが)
プレイヤーの意志とは裏腹に、下半身の状況に従って勝手に行動を決められるもんだから、おいおい、私が今までせっせと上げた好感度メーターって何だったの? と(゚Д゚)ポカーン状態になることもしばしば。
これじゃこのメーターシステムいらないじゃん。むしろ、チ○コメーターでも付けた方がよかったのでは。

そんな脳と下半身が直結している男が、なぜか校内ではモテ系。誰も彼もが奴に好意を持ってます。
この学校、よっぽど男のレベル低いですか? むしろ、世界の男性の半分は死滅してるような有様とか?
私が知らないだけで、ひょっとしてこれってSF作品だったりしますか?
主人公の友人も、主人公に輪を掛けた最低野郎なので、私にそう思われても仕方がありません。

そして言葉。こいつは、私が今までプレイしたエロゲの中で最凶のブチギレヒロイン認定。
ホラーでもサスペンスでも伝奇でもないのに、ここまで血しぶきを撒き散らし、刃物を持ち出すヒロインっていなかったよ。

よく考えてみりゃ、恋愛で刃傷沙汰になるケースってのは現実では溢れてるのに、エロゲでは少なかったな、と。
あてつけがましく自傷行為に走る奴もたくさんいるのに、そんな真似してみせるヒロインもいなかったな、と。
それが、結局は「従順でかわいい女の子」を心の底で欲しているメルヘン心理の現れなわけだが、このヒロイン、そんな兄さんたちの願いを、いとも簡単に蹴り飛ばしてくれちゃいます。

血と脳漿撒き散らして死んでみせるヒロインが初めてなら、
EDでヒロインの墓参りをさせられる恋愛物も初めてです。

しかも、パッケージにも宣伝材料にも、一言も「これは鬱ゲーです」なんて書いてないもんだから、何の情報もなく、無邪気にこの作品に足を踏み入れた人たちがパニックに陥るのも容易に想像できて気の毒になったり。
そりゃ、話題にもなるわな。

もう一人のヒロインも決して負けてはおらず、別の女とガキまで作ったヤリチンの主人公をブッ刺してみたり、こっそりと友達使ってライバルをいじめたり。

あのね。
これじゃ、あまりにリアルすぎて、現実に耐性のない真性のオタクはドン引きするから。

自分を傷つけない優しい世界で、無条件に慕ってくれる頭の弱いヒロインとひとときの夢を楽しみたいオタクが、こんな女のドロドロした部分がど真ん中直球にくる恋愛話、受け入れられるはずがなかろう。
「鬱だ」と言われる要因は、その辺にもあるのでは。

言っておくが、女はこれくらいのこと普通にやります。
そりゃ、刃物持ち出したり、飛び降りたりするのは最終手段だけど、そこまでの思考には簡単に行き着けちゃう生き物なのですよ。
友達使って裏工作? OKOK、そんなの今どき中学生でもやるわ。
カップル喧嘩中に付け込む? OKOK、付け込まれる隙を作る方が悪いんだよ。
「女の情念」と言うように、古来より、男が絡むと女は豹変する生き物なのだ。

それが分かってるから、私は「エロゲもとうとうここまで描くようになったか」とは思ったけれど、別段ひどいとは思わなかった。
ただ、何てことをするんだとは思ったが。メーカーが自ら「エロゲファンタジー」の掟を破っていいのか。
そういう点で、私はライターのしたたかな悪意を感じた。
「ほーら、これに耐えられるか、お前たち?」みたいな。
「どうせお約束の学園物だと思ってたんだろ? だが見事に騙してやったぜ、どうだ?」みたいな。
この叫びを聞きたかったのだろうなぁ、と思うと、その思惑は完全に成功したとしか言いようがないのですよ。

鬱展開を誇張するあまり、それを通り越して笑うしかない話になっちゃってたり、登場人物全員が学生のくせに、いとも簡単にガキを生む決心をしてたり、突っ込むべき点は正直ありすぎる。
一応のハッピーエンドはあるものの、むしろこのEDの2,3日後には、誰かが血を見る羽目になるだろそりゃ、というレベルのおざなりな解決しか見せない。確実にバッドEDの方が強烈だし、きちんとオチてる。
そういう点では全体的にまとまりがなく、結局何がしたかったの? と問われるような今作ですが。

ただ、この話をアニメでやったのは正解だとは思う。
ゲーム世界を俯瞰で見ることによって、臨場感がものすごく伝わってくる場面がいくつもある。
これは、リアルタイムで映像と音があるからこその演出。言葉が勝手に主人公の家に上がりこんでいるのに、それを知らない主人公と世界がHしちゃってる状況とかね。
表現方法を最大限に活用した点は大いに評価。世の中には「アニメ(やムービー)にする意味あんの?」と問いたくなる作品で溢れてますので。
業界に確実に一石を投じたことは確か。作品の全体的な質よりも、その作品性によって。
そういう意味では、怪作という表現がぴったりだと思います。

壊れるヒロインに耐性のある人、ドロドロなんてへっちゃらさ、という人、アニメが嫌じゃない人はどうぞ。
内気で繊細、現実の女性に夢を持っている、典型的なオタク像そのものな人はやっちゃだめよ。

……泣きたいなら、止めはしませんがね。

カルタグラ~ツキ狂イノ病~

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
78★★★

新ブランド、Innocent Grayの第一弾。
評点を見てもらえば分かるとおり、全部の水準がなかなかの高アベレージであり、安定感は抜群
猟奇サスペンスが平気な人になら、まず勧めてもいいと言えるレベルで仕上がっており、非常に手堅い作り。
だが、その分図抜けてここが素晴らしい、と言える特色もない。
そこそこ面白いのだが、想定範囲内に収まってしまっており、新ブランドが持つがむしゃらなパワーのようなものが感じられないのがやや残念。
とはいえ、シナリオが多少弱い以外は、押し並べて高クオリティを維持しており、早くも次作以降に期待できる。

システムは上々。必要な機能は充分に備えているし、CG・サウンドモードもシーン回想もある。
ホイールバックログでの音声再生も対応、エフェクトのオンオフも3段階で切り替えられて便利。
既選択肢の色が変わるのも分かりやすくて助かる。おかげで補完はかなり楽。

絵はものすごく丁寧。雰囲気も出ているし、何より、物語の尺のわりに差分なしで200枚というかなりの数のCGが用意されていることで視覚的な満足度も高い
背景も手を抜かず、彩度を抑え気味にして、陰鬱な猟奇殺人を扱う物語に相応しい舞台を作り上げている。

音楽も、殺害から立ち回り、哀切溢れるシーンやちょっと笑いの入った箇所まで、様々な場面を盛り上げる、しっかりとした作り。
ただ、一番印象深くあるはずのOP曲のインパクトが薄く、ボーカルの歌唱力にも難があるのが残念。
とか言ってたら、このボーカリスト結構人気ある人だったのね。すいません、無知で。
でもこの曲だけ聞いたら、歌あんまり上手くないと……思うよ?(←弱気)
ちなみに全編フルボイス。キャスティングはまぁまぁ。
が!!! 主人公の元上司で警視庁の辣腕刑事役の方、「嶋和成」氏となってますが、中田譲治氏(マイラヴ)に聞こえるのは私の幻聴ですか?
誰か真相教えて下さい。

良い絵・良い音楽が揃い、演出が問題となってくるが、今作はそれがかなり奮っている。
カットインが多用され、停滞しがちな物語に緩急をつけるのにも一役買っているし、幕間劇で殺人者や他者の視点になった際は、縦書きになるのもいい。
物語後半、犯人側にザッピングする箇所があり、倒叙物の雰囲気を味わえるのも良。
しかも、これらの挿入タイミングが絶妙で、シナリオのテンポの悪さをカバーしている。
また、少ないながらも戦闘シーンもあり、そこでの画面エフェクトもスピードと緊迫感のあるものに仕上がっており、演出に関してはかなり洗練されたものを感じた。
ただし、シーン切替時にかなりの頻度でアイキャッチが入り、これが少々うっとうしい。
エフェクトを切ればすっ飛ばせるが、この点はもう少し見せ方を工夫するべき。

そして、シナリオ。
残念ながら、当方重度のミステリ好きを自認しているため、おおよその事件のからくりが容易に見えてしまい、お手軽感が否めなかった。
それというのも、どれもこれもどこかで見たことのあるようなエピソードばかりで、ほとんどひねりがなく、特別新たなアイディアも盛りこまれていなかったから。

最後の大仕掛けであるはずの(ネタバレ→!!)生者と死者、さらに双子間の二重の入れ替わりは、大昔からそれこそ何度も取り沙汰されてきた手口だし、死体の背中に羽根を生やす・串刺しになって死ぬなんてのも、最近では「多重人格探偵サイコ」が記憶に新しい。
憑き物筋の家系に姉妹、財閥令嬢に全寮制のミッションスクールとくれば、あれあれ、それは京極夏彦では? と、そういったモチーフが透けて見えてしまって乗り切れない上に、事件自体がなかなか進展しないために途中で飽きてしまう。

おまけに、時代背景を昭和初期としているのに、それをまるで無視した台詞回しや行動が多すぎて、かなり鼻に付く。
昭和初期の人間は、普通エッチするとか言わないと思うぞ。女性が「~ッス」なんて言葉遣いもしないと思うぞ。
なのに、地の文にはふりがなを振らないと読めないような難解な言い回しが平気で使われており、そういった文章に対する無頓着さや、大雑把すぎる時代考証が気になって仕方がない。(そんなの私だけか?)
これだけでも、せっかくの舞台の雰囲気が台無しに。

また、主人公が警察を辞めることになった経緯や、過去に携わった事件の顛末等、ストーリーに密接に絡んでくるわりには
語られないことが多すぎて、どうにも消化不良気味。
事件の根幹に関わる由良との関係だって、描写が薄いせいで、「それでそんなに執着されてもなぁ」という気分を払拭できないし、事件を複雑にしすぎようとして失敗したという、中途半端な印象が否めない。

キャラ造形もちと痛い。
勘が鋭く、明敏な探偵であると言われている主人公は狂言回しでしかなく、しかも決定的に鈍臭くて頭も悪い。
肝心の探偵役すら妹(性格に相当難あり。かなり好き嫌いが分かれる。ちなみに実兄妹EDあり)に奪われてしまい、やってることはといえば、あっちの女にフラフラ、今度はこっちの女にフラフラと手を出してばかり。
(エロゲだから仕方ないが)
そのせいで、片っ端から被害者を増やしているという体たらく。はっきり言って、諸悪の根元はこいつだ。
こんなダメ主人公、久しぶりに見ました。「君望」のアホ之以来じゃないか?

このアホウぶりのせいでいっこうに事件が進まず、とにかくスピーディーに先に進みたい諸兄には不向き。
ミステリのスピード感ってものすごく重要なのですよ。
加速して、加速して、最高にスピードに乗り切ったところで崖から突き落とされるくらいの勢いがなければ、衝撃の謎解き、という感覚は得られないので。

ところがこのシナリオ、その最後の謎解きの部分ですら、自分はノータッチで次々と真実が語られていき、つくづく俺の役目っていったい何? と悲しくなる。
一方的に情報開示されるのをボケーっと聞くしかない様は、決定的にミステリの爽快感に欠ける。
その謎が、誰にも解けないような驚きに満ち溢れたものならよいのだが、最初に書いた通り、実にありがちな展開をたどるため、それもない。
せめて論理的に破綻がないようなものを。
事件の第一犯人として、それまで名前すら出てこなかったような人間を突如として挙げるのは反則です。

さらに、メインヒロインが私の「嫌いツボ」をしたたかに刺激する、
「明るく前向きでちょっとドジっ娘、一生懸命で健気」
という最悪の造形。(普通はたぶん好かれるんだと思う……独自偏見路線突っ走ってすんません)
当然、このキャラがトゥルーエンドの鍵を握るため、その脳天気で抜けた言動に辟易しながらプレイする羽目に。
物語が陰惨な展開であるだけに、このキャラの言動に救われるという向きもあるのだろうが、私には邪魔でしかなかった。

暗く、どこまでも暗く深くて光など差さない奈落の底に。
感動はいらん。希望もいらん。嘆きと妄執と呪詛に彩られ、最後には凄惨なカタストロフを。

それこそが猟奇サスペンスの醍醐味だと思うのだが、あっさりとこう救いを用意されてはかなりしょんぼり。
(↑言っておくが私は危ないヤツではない。念のため)
人の妄執をテーマにしているわりに、そういった細部の扱いがずさんなので、心底肝が冷えるということがない。
もっとぞくりとさせてもらいたかった。

例えばラスト。(以下、超ネタバレ。未プレイの人・トゥルーエンド未到達の人は見ちゃダメ!!)
和菜は結局人知れず殺されており、主人公は入れ替わりに気付かず(どうせバカだしな)、プレイヤーのみにだけ包帯の取れた由良のCGを提示して、入れ替わりの事実に気付かせるとか。
その際は憑き物筋らしく、獣目にするとか。瞳の色が違うくらいでは全然ビビれませんわ。
当然、いずれ真実にたどり着く危険性のある妹にはご退場(殺害)願いたい。
その計画を練りながら画面フェードアウト。スタッフロール。

……のような、「救いこれっぽっちもなしED」が見たかったのです。
(↑本当にやったら、たぶん各所レビューで袋叩きに遭うと思うが。私は支持しますよ?)

ちなみに、グロ表現はかなり頑張っている。目玉抉ったり、首手足ちょん切られたり。
もちろんばっちりCGもありますので、嫌いな方はお気を付けて。

全体的にシナリオはとにかくぬるめの印象。詰めが甘いと言ってもよい。
あれもこれもとやりたい気持ちは分かるのだが、一つ一つのエピソードが煮え切らないものが多すぎ、結果的に全部が生煮えという典型的な失敗料理になりかけている。
各ヒロインのEDも、メインヒロイン以外は事件が放ったらかしになってしまうのでラブラブどころじゃないし、ほとんどがバッドエンド。
おまけに、何で出てきたか分からないような必要性のないヒロインも用意されていて、余計に事件が進まない。
シナリオ以外の部分はかなり好印象であるので、作品レベルとしては平均以上なのだが、かえすがえすもこの点が惜しい。

自分の身近な人間も容赦なく死んでしまうので、そういった惨劇に耐えられない人は回れ右。
グロいの嫌い。血なんてもってのほか。切断面なんて見たら倒れちゃいますという人も回れ右。
超本格的なミステリ物を! 破綻なんて容赦しないぜ! という人は走って回れ右。
それ以外の、エログロ猟奇・サスペンスフルなギャルゲーがやりたいな、という人にはオススメ。
過大な期待すらしなければ、そこそこ楽しめると思います。(エロゲにしては)ちょっぴり値段も安めだしね。

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