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キラル盛

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
84キラル好きなら
★★★★

※これはBLゲームブランド、ニトロプラスキラル作品のアミューズメントディスクです。ミニゲームが3本収録されているので、それぞれについて書いてあります。


■猫打(タイピングゲーム)

Lamentoキャラによるタイピングゲーム。
だがお遊びと侮ることなかれ。見た目はものすごくかわいいのだが、難易度は結構高め(らしい)。
私はそこそこタイピングが得意な方なので(7~8打/秒くらい)ノーミスでクリアできたが、他のユーザーのブログやらサイトやらを見て回ったら、あちこちでかなり悲鳴に近い声が。
どうやら通常レベルの速度では、ラストバトル付近はかなり苦しいらしいのでお覚悟を。
と言ってもそこはそれゲームなので、一行分の入力を丸々スキップできる特殊技を実装し、ちゃんとクリアできるようにバランスは取ってあります。
実は攻略中は1回も使わなかったので、効用が全然分からなかったマヌケっぷり。
チュートリアル読んで初めて知ったよ。
ちなみにこのチュートリアル、不親切なことにインストールされたプログラムフォルダ内にあります。これ、知らない人が結構いると思う。
どうしてゲームトップに記載してないのかは謎だが、ご一読を。

ところでこのミニゲーム、真の敵は難易度よりもそのシナリオの笑撃度にあると思う。
淵井鏑氏、ギャグシナリオ超上手すぎ。笑いすぎでキーを打ち損なう危険性の方が高かったよ。
「Lamento」本編を楽しめた人なら、腹抱えて笑えること間違いなし。
よりにもよって帝王・森川智之氏に「にゃー」と言わせるとか、どんな鬼畜の所業か。危うく死にかけたよ。
その他にも、本編では拝めなかったかなりほのぼの系のシナリオも搭載されているのでプレイして損はなし。
「キラル盛」に収録されている3本中、これが真打ちだと思うほど作り込みが細やかで面白かった。超お勧め。

あと、アミューズメントディスクのわりに推奨スペックが異常に高いのはニトロの伝統です。
兄ブランドに慣らされているので私は平気だが、大変にお嘆きのお嬢さん方が多かったようなので。


■クイムス(パズルゲーム)

ちょっとだけ新ルールを加えた、よくある落ち物パズル。
こちらの難易度は「猫打」と違ってやたらと低め。
長丁場になっても落下スピードが大して速くならないので緊張感がなく、いまいち盛り上がりに欠ける。
新録のボイスとゆーぽん氏のちみキャラを楽しむため、と割り切ってゲームにはあまりこだわらない方がいいかも。
また、シナリオというほどのエピソードもなく、基本的にパートナーに誰を選んでも展開はほぼ同じ。
「猫打」ほど特筆するほどのものはなかったのが正直なところ。
ただ、3人全員をクリアすると隠しキャラをパートナーにできるので、それまでは頑張るべし。
それにしても、やはり、「Lamento」だけで2本作るのは少々大変なんじゃ、と思う。
どうせお遊びなら、「Lamento」「咎狗」のクロスオーバーで1本とかにすれば面白かったような気が。


■咎狗ポーカー(カードゲーム)

その名の通り、咎狗キャラ同士で対戦するポーカー。
「必殺技」を使ったイカサマプレイができるが、使用の可否は選べるので、至極真っ当なカードゲームとして遊ぶことも可能。
(と言っても、わざわざオフにする人はさほどいないと思うが)
難易度はこれまた低め。使用キャラによって違うが、必殺技がかなりのイカサマ具合なので。
使いどころのタイミングを間違えず、あと運さえ絶望的に悪くなければ(必殺技は失敗することもある)ほぼ勝てる。
ちなみに最強イカサマ師は処刑人コンビかナノ。この二人を使って負けることはまずありえない。
反対にまったく使えないのが源泉。おいちゃん、CPU相手にその技はマジで使えないよ……!
これにもシナリオと呼ぶほどのものはなく、各キャラのミニエピソード程度。
その代わり、使用可能キャラがかなり多めなのでバラエティには富んでいる。
実際に発売されたグッズである「咎狗の血トランプ」の絵柄をそのまま採用しているので、現物を持っていない人にはそちらも見どころかも。

ところでスタッフクレジットですが。
PS2版で声優名が解禁になったからって、かつて源氏名だった人をそのまま載せちゃっても大丈夫なんですか。
確かに今作は18禁要素はないけど、オラ思わず余計なこと心配しちゃったよ。

MinDeaD BlooD~支配者の為の狂死曲~ DVD Special Edition

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
85★★★

今までプレイしてなくてすみませんでした。猛省。
何で発売当時にチェックしてなかったんだ。バカバカバカ。私のバカ。死んじゃえ!(無理言うな)
というわけで、「お前のようなド腐れ頭のプレイヤーにはピッタリだからやっておけ」……と言われたわけではないが、複数の方からお勧めをいただいた本作。
自分よりも他人の方が、私の趣味を理解してるってどうなのよ。
ボリューム・内容ともに高レベルのバランスでまとまっており、過激なエログロ描写に耐性がある人になら安心してお勧めできる力作。
実は正直、ここまで真っ当なシナリオを盛り込んだ作品だと思ってませんでした。どうせエロメインの、取って付けたようなシナリオなんだろうと高をくくってました。
くくらなきゃいけなかったのは私の首だ。

絵はかなりのボリューム。特に差分はハンパでなく多い
一つのシチュエーションに対し差分が10枚以上あることもザラ。最高40枚。しかも拷問シーン。ありえない。
エロCGに関しては頑張りすぎるくらいに頑張っている。
塗りも丁寧に仕上げられているし、キャラの描き分けもしっかりしていて安心して楽しめる。
ただ、立ち絵に関しては、所々CGと差があったのが残念。
最初に「エログロ描写」と書いたが、本作のグロ描写はハンパでない。質量共にやばい。
全CG中、6割がエロCGだとすれば、その中の4割はグロを伴うものだ。
多少の流血・触手程度ならともかく、限界まで精液を飲まされた挙げ句の吐瀉物や糞尿なんかも平気で描かれているし、硫酸浣腸だの人体破壊だの、ナイフをブッ刺してそこへ挿入、当然内臓はみ出しといった、過激というよりは酸鼻を極めるものまで。
この手の描写に弱い人なら2,30回は余裕で気絶できるのでくれぐれもご注意。
反対に、この手の過激かつアブノーマルなエロが好きな人にはたまらないだろうというくらいの膨大なシチュエーション。
当然、純愛(?)的ルートにもこの手のシーンは登場するので、本作をクリアするのに避けては通れない道。

音楽は重厚で物々しく、特筆するほどのレベルではないが雰囲気はまずまず。
単調な音楽に比べてSEの奮いっぷりは素晴らしい。牙やナイフを突き立てる音、銃撃の音、頭の潰れる音、拷問時の効果音等、主に「そっちはあまりリアルに頑張らなくてもいい」と言われる方面が充実している。
また、主題歌の出来が大変良く、作品世界を大いに盛り上げるのに一役買っている。
正直、電気式華憐音楽集団は歌唱力がアレなのでそこは少々気になるのだが、ちょっとつたない感じの歌い方と雰囲気、ハードなナンバーがやけにハマっていて、この作品にはこの曲じゃないとダメだと思わせるベストマッチぶり。

私がプレイしたのはDVD版のため、CD版をプレイしたファンの願いだったフルボイスが実装。
フルボイスの名に恥じず、名もない通行人やザコキャラにもきちんと声が付いている。
キャスティングも総じてミスはなく、特に男性陣は安定していた。
ただ、キャラによって音声ボリュームに差があったように思う。もう少し平準化してくれるとありがたかったのだが。
それにしても、今まで色々な作品をプレイしてきたが、こんなに悲鳴だの哀願の声が多いものはなかったよ。

演出はかなり派手め。
元が2004年の作品であるので実は大して期待していなかったが、ここまでバリバリに動くとは思っていなかった。
また、その動かし方・エフェクトのかけ方も巧みで、戦闘の臨場感や印象的なシーンの盛り上げに大いに貢献している。
カメラアングルもセンス良く、また、くどいほどの演出でもなく、絶妙のさじ加減と言ったところ。
しかし、拡大縮小で動きを付ける場合はできれば専用のCGに差し替えてほしかった。贅沢な要求ではあるのだが。
どうしても元の絵を拡大したものでは、ラインのギザギザが気になってしまう。

ゲームシステムは最近はあまり見なくなったマップ移動方式のAVGだが、あまりにも難しすぎる
作中、ヒントやTIPSがまったくと言っていいほど提示されず、おまけにルート判定条件がものすごく厳しい。
それが本作最大の問題点であると思う。つまり、ルートフラグを立てることに失敗すると、各マップで起こるイベントだけに終始せざるをえなくなる。シナリオの連続性がなくなってしまうのだ。
結果、攻略の難しさも相まって、いつまで経っても単発エピソードを集めるだけの単調なゲームになりかねない。
一周目、ご多分に漏れずデッドエンドを迎えた私は、おとなしくヘタレのチキンに成り下がることに。
涙目でDVD版の特典に付いてきた完全攻略ガイドを見てみたら。
できるかボケェェェ!
と叫んだことは言うまでもない。
フラグを一つ一つ潰すことに快感を覚える攻略マニアならいざ知らず、普通のプレイヤーにはハードルが高すぎる。
プレイには攻略チャート必須であると断言する。見ないでプレイは軽く無謀。マゾのすることだ。

ところで、ルートクリア後にゲーム内容とは全く関係のないミニゲームが2本楽しめる。
なかなか面白く、こちらは手応えもちょうどよいので攻略に疲れたらお試しあれ。

システムは基本的な機能を備えていて過不足なしだが、ホイールでメッセージを送れればもっとよかった。
ログの読み返しはホイール対応しているので、メッセージ送りも当然、と思っていたらできなかったのが残念。
スキップももっと高速だとよかったのだが、最悪の場合F5で次の選択肢までカッ飛ぶ(未読既読構わず。サポート対象外)のでギリギリ許容範囲内か。
シーンの他にOP・EDの回想モードがあるのはかなりうれしい。

メインとなるシナリオは3本。
吸血鬼としての生き方を模索する「Vampire Hunter」、吸血鬼となるまでの過去を思い出し、それを踏まえた上での選択をする「過去への贖罪」、過去も現在の業も背負って踏み出す「未来への旅立ち」。
一つエンドを終えれば次のルートがオープンになるのだが、そのたびにオープニングが変わったりタイトル画面が変わったりと非常に凝っている。
吸血鬼としての体と人間としての心を持つゆえの苦悩や、敵対する立場にありながら惹かれ合う焦燥感・もどかしさが丁寧に、じっくりと描かれている点も好印象。
かと思うと、要所要所で戦闘などの動きのあるシーンが入り、途中で飽きさせるということがない。
そこから導き出されるEDはどれも王道・予定調和と言える展開ではあるのだが、それゆえの抜群の安定感がある。
特に、「過去への贖罪」「未来への旅立ち」はラストの扱いが非常に巧みで、決して諸手をあげてのハッピーエンドではないそれらが、単に面白いだけではない深い余韻を味わわせてくれる。
物語の骨子とテキストが実にしっかりとしていて、頭の悪いギャグに走ったり、日和見的なあれもこれも詰め込み型のシナリオでない、書きたいことをきちんと見極めた実直な仕事ぶりは賞賛に値する。

各ルート以外のエピソードもかなり高レベルで仕上げられており、特に田上と東の扱いについては、18禁であるからこそできるはっちゃけた作り。
相当にエログロと狂気の描写が強く、「吸血鬼」という存在に対しての恐怖心や嫌悪感を大いに煽り、サイドからメインルートを盛り上げることに成功している。
本作はどのシナリオもだが、展開上、エロを避けて通れないものとしてきちんと包含しているのが素晴らしい。
年齢制限なくしてこのシナリオはありえない。

ただ、惜しむらくはエピソードにあと一押しが足りないこと。あまりにも語られなさすぎるのだ。
シン然り、マスターの正体とその娘の行方然り。
本来ならメインルートができそうな麻由と麻奈ですら、いまいち影が薄い。
麻奈なんて相当怪物性の強い側面がある。それをもっともっと見てみたい。
それに、どうせ吸血鬼となったのなら自分が支配者として君臨してみたい。
そういった、おそらく多数のプレイヤーが望むであろう点がことごとく抜け落ちてしまっていて、良作にあと一歩手が届かない歯がゆさがある。
メインルートの出来は問題ないのだが、全体的には力作というレベルで落ち着いてしまう。
上に挙げた点は多くがファンディスクで補完されているのだが、どうせDVD版を出すのなら、これらを本編へと盛り込んだリニューアル版としてくれればよかったと思う。
(CD版ユーザーには迷惑だろうが)

エロもグロも物語性も盛り込み、エンターテインメントとしての面目は充分。
ただ、どうしてもこのグロと難易度がある限り、メジャー路線に躍り出ることはないかと思う。
でもそれでいい。年齢制限を課された作品とはかくあるべき
私はこの作風を大いに気に入った。以降、メーカー買い決定。
吸血鬼ネタが好きで、陰惨な狂気・エログロに耐性のある方。ぜひプレイすることをお勧めします。
そして鼻血が出るほどの難易度に涙するといいのだわ。

Bullet Butlers

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
84前作プレイ済:★★★
前作未プレイ:★★★★

今どき珍しいくらい、実に王道のファンタジーAVG。
そして、「執事」というものにハンパでないこだわりを感じさせる展開で、まさにタイトルに偽りなし。
ちなみにもちろん私は、戦う執事は大好物です。
ただ、良くも悪くも、王道であるがゆえに意外性には欠け、前作「あやかしびと」ほどの高揚感はなかった。
全体的には非常に良くまとまっていて、大抵の人が楽しめるエンターテインメントであるのは間違いないのだが。
どうしても前作の影がちらついてしまい、自分でも意外だが、のめりこむ、というほどではなかったのが残念。

絵は前作と同様、中央東口氏。
以前からは女性キャラの作風が少しだけ変わったようだが、相変わらずイッちゃってる殺人鬼とか抜群に上手い。
(※褒めてます)
また、渋い爺様とか亜人とか、とにかく通常のエロゲでは要しないはずのキャラが大変によろしい。
背景も、世界観を壊さないようきちんと配慮されたもので、好感が持てた。
両方とも塗りも丁寧で、質には問題がなかったのだが、物語の尺の割に使い回しが散見されたことが残念。
特に、戦闘シーンのバリエーションがやや少なく、できれば別の一枚絵を用意してほしかった箇所もあった。

システムは前作より大幅に改善され、大変好印象。ユーザーの声にちゃんと耳を傾けているのだな、と感心した。
何と言ってもボリュームのある作品なので、既読スキップが超強力なのがうれしい。
キー一つで一瞬にして未読部分に飛ぶので、スキップしている間に待たせられるといったイライラもない。
これは今後、主流になるべきシステムだと思う。もちろん、制作側はフラグ管理が大変にはなるだろうが。
バックログにきちんとルビが表示されるのも良い。特に今作はかなりルビを多用しているので、ログを辿ったときにルビがないと何じゃこりゃ、ということになりかねないので。
ただ、戻れる量も多く、音声再生にも対応しているのはいいのだが、表示のされ方が今一つ。
メッセージボックス内に表示されたものがそのままログとして表示されるので、奇妙にスペースが空いていて若干読みにくい。
手間を考えると仕方がないのかもしれないが、文に重きを置くAVGとして、これは改善の余地あり。

音楽は、前作同様可もなく不可もなく。
所々、おっと思わせる曲もあるのだが、無音の箇所も多く、同じような曲も多く、大した印象に残る感じではない。
ただ、SEの出来はなかなか良かった。
キャストは前回同様やりすぎ
声優ファンなら、制作サイドはいったい何を考えてるんだとツッコミたくなるほどの超豪華キャスト。
このキャストを起用して、本当にこの価格で売ってペイするのか疑わしくなるほどだ。
中の人ファンなら、TVよりこっちの方が喋るセリフも時間も長いだけ、お得な気分になれることうけあい。
むしろ、これだけのキャストを用意する番組自体がないよ。
一部、前作とも被ってますが、多くは皆実力派、ビッグネーム揃いで、もちろんキャスティングもばっちり。

演出はこれまたド派手。
アニメはないけれど、カットインやスクロール、拡大縮小と各種エフェクトを存分に駆使しており、迫力ある戦闘シーンの見応えは充分。
また、へたれ絵も用意されているが、今回は舞台が硬質な設定を持つ異世界であるため、少し浮いている印象を受けた。
前作は舞台が日本、そして学園物であったので、そこまでの違和感を感じずに楽しめたのだが。

シナリオはとにかく、「惜しい」の一言。
これだけの魅力的な世界観、広げればもっと広げられたであろう風呂敷を、無理に途中で畳んでしまった印象が否めない。
剣と魔法(と銃)のファンタジーだったら、最後は魔王が復活し、仲間と共に世界の命運を決する戦いに挑む展開に決まってる! と勝手に意気込んでいただけに、壮大な内輪もめで収まってしまい、思わぬ肩すかしを食らった気分だ。
時間がないのか、開発費がないのか、その他諸々の事情によるものかは分からないが、この設定なら、DVD2枚組のボリュームにだって耐えうる仕様であるだけに、残念で仕方がない。
おそらく、東出氏が小説で出してたらもっとボリュームがあったと思う。

私としては、全世界に散る”末裔たる者”とその執事たちが入り乱れてすったもんだという展開を期待していたのですよ。
「バトラーズ」というくらいなのだから。
それに、個人的趣味で申し訳ないが、老獪な初老執事が大活躍しなかったのが悔しくて×100(以下略)
執事と言ったら初老! 片眼鏡! 燕尾服! それが三種の神器なのにウワァァァァ!(バカですいません)

閑話休題。

もちろん今作には、そんな個人的趣味を補って余りある多数の魅力的キャラが存在する。特に男が。
東出氏は本当にキャラ造形とキャラ立てが抜群に巧い。いらないキャラ、どうでもいいキャラというのがおらず、それぞれにきっちりと活躍の場を与え、それを描ききるという点では、希有の才能を持っている。
特に、ガラの格好良さは異常。リザードマンなのに!
私は通常、人外キャラは非常に苦手、もちろん論外なのだが、それでもここまで格好いいと思わせる力がすごい。
もっとも、剣と魔法と銃と、ゴブリンだのドワーフだのエルフだのが普通に文化的生活を過ごしている日常とがミックスされた、とんでもない世界観を、違和感なく描いている時点でかなり非凡なのだが。

シリアスと掛け合いの緩急のつけ方も相変わらず巧みだし、無理矢理笑わされている感じがなくて、自然に楽しめる。
何より、肝心の執事がもうそれはきっちりと執事していて、最近の、「流行だから一応執事ってことにしときましたー」みたいないい加減さが微塵もなく、その徹底ぶりがとてもうれしい。
そういった作品自体の雰囲気は抜群だし、キャラたちが皆魅力的なこともあり、プレイ中、退屈や中だるみすることはないのだが、それでも、傑作であった前作とどうしても比べてしまい、あの破壊力には届かないのだよなあと我に返ってしまうのが残念でならない。

特にバトルが、使えば命を削ると分かっている「悪鬼喰」を多用しすぎている感があり、どうも重みに欠けるのだ。
だから、何も知らない最初と、総力を尽くすラストバトルこそ燃えるものの、中盤はピンチらしいピンチとして受け取ることができず、また、ピンチを気力で乗りきるといった、ある種体育会系的なノリにも辟易。
そりゃ、何の伏線もなしに特殊能力が発動とか、ご都合な展開だとうんざりするが、毎度が毎度、「イヤボーン」ならぬ「ご主人様ボーン」では、最後に勝つのは主人公に決まってる。
これでは、いかなバトルシーンを用意しても緊迫感が薄れてしまうというもの。
もっと、銃撃戦の中にも頭脳戦とか、バリエーションをつけてほしかった。
なまじ、古代竜VS欠落者のドラゴンブレス対決とか、不死者VSドラゴンブレスとか、拳銃使い同士の早撃ち対決とか、ラストバトルの燃え度がハンパでなかっただけに、そこが返す返すも残念。

各エピソードの処理の仕方にはどれもそつがなく、各敵役にきちんとスポットが当てられ、破綻なく着地しているのだが。
全体的にこぢんまりとしすぎていて、突き抜けた爽快感というものが薄い。
予定調和には予定調和なりの美しさや良さがあるのは分かる。コードを守るというのが実は意外に難しいことも分かる。
だが基本、フィクションというのは「何でもあり」だ。プレイヤーを騙し通せるのなら、何をやったって構わない。
だから、もっとひとつの街だけでなく、あらゆるところで暴れまくってほしかった。
これだけ広大な舞台を持ち、それを使える設定なのだから。

だが、各ラストの、負けた敵の扱い方は非常に胸に残った。ある意味、各キャラのエピローグより燃える。
特に(ネタバレ危険→)シドとアルフレッド。虚無から解放された二人が、今度こそ本当の主従の関係を取り戻すというエピソード。
やむをえない事情を背負い、本来ならば戦いたくなかった相手だからこそに許される救い。
トゥルールート、大団円に相応しいエピソードであると思う。

できることなら、追加シナリオやファンディスクを熱望。続編でも可。
それだけ世界観は魅力的だった。キャラ立ちも前作に勝るとも劣らないほど良かった。執事? もう最高だ。
でも、もっと高く飛べるはずだったのに、自らを律しすぎてかえって中空飛行になってしまった。そんな感じ。
もちろん、あらゆる部分で手堅く、決して失敗作でないことは認める。むしろ、かなりなレベルで誰もが楽しめる一作なことは間違いない。
ただ、前作を知らなければ。

よって、どちらも未プレイの方は今作→前作とやるのがいいかもしれない。
きちんとした執事物を求め、ついでにファンタジーの世界観についていける人には大変お勧め。
相当に力量のあるライターであることは事実なので、次作はもっと、いい意味ではっちゃけてくれるとうれしいのだが。

続・殺戮のジャンゴ -地獄の賞金首-

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
84虚淵玄ファン:★★★★
普通の人:★★★

ゲームシナリオとしては4年ぶりとなる虚淵玄氏の新作。
全ニトロファンの期待を背負い、制作発表がなされたのが今年(07年)の3月。
そして提示されたジャンル、「SF+マカロニウエスタン」、しかも主人公は女。しかも悪女。
これは、ヤバイ。
極めつき・重度のニトロファンである私でさえそう思った。
SFもウエスタンも非常にマニア嗜好の強いジャンルだし、何より、主人公が男でないエロゲというのは、通常のプレイヤーには感情移入しにくい。
特に、脳天パーで精神年齢小学生以下な、目だけがやたらとデカくて、ブローくらいしろよとツッコミたくなるほど髪の毛の収まりが悪い美少女と、どーでもいい日常をダラダラ過ごすのがエロゲーと勘違いしてる輩にとっては。
こりゃたぶん売れないだろうな。私は買うけど。
そう覚悟を決めた今年の春。

案の定、「ニトロ史上、最悪の予約率」(クリア後に見れるライナーノーツより)だったらしく。
うわー、業界のユーザー層ってのは分かりやすいもんだな、と思わず苦笑したものだ。
だが、あえて言おう。

虚淵玄は天才だと。

私が購入したのは「皆殺しパック」(定価9,240円 公式通販割引で8,180円)だったのだが、正直、このコストパフォーマンスの悪さはありえない。
総プレイ時間、5時間。1時間あたりの単価、1,636円。映画より高いよ。
それでもあえて言おう。

虚淵ファンならプレイ必至だと。

もうね、全編匂いまくりなのです。虚淵節が。
悪業に悪びれない。悪党であることに何の気負いもない。
「腹が減ったら奪えばいい。ムカつく野郎は殺ればいい」で、「ないモンは、ある所からかっぱらってくればいいんだよ」(いずれも作品本文より引用)という、実に分かりやすいキャラたちの人生哲学。
ゲーム序盤から、徒党を組んでいた仲間がバッタバッタと撃ち殺されます。そこには何の悲哀もなく、ただ事実があるだけ。
人間が死ぬことに関して、ウザったい逡巡も、殴りつけたくなる堂々巡りも一切なし。殺すか、殺されるかのみ。
殺られたら殺りかえせ。犯られたら犯りかえせ。盗られたら盗りかえせ。
この殺伐とした、けれどシンプルであっけらかんとした世界観を、実に魅力的に、何も考えることなく、ただ純粋に楽しませてくれる
こんな芸当、虚淵玄以外に誰ができるか。

絵はメーカーから独立し、フリーとなったお馴染みNiθ氏。
肉体の描写やキャラの描き分け、人外キャラにも定評がある氏だが、今作のコンセプトには、特にベストマッチ。
悪女は皆ムチムチのボイーン、衣装はこれでもかとボディラインを強調し、相変わらずのにし~皺も健在。扇情的なことこの上ない。
男キャラの筋肉っぷりもナイス。一歩間違えばクリーチャーになりかねない亜人(馬頭とか豚頭とか獅子頭とか触手とか)のキャラデザも相当奮っている。
グラフィックチームの仕事はもう言うに及ばずで、完璧。
ただ、モブシーンが32ビット機のポリゴンみたいなどうでもいいキャラだったのはちょっと減点。
たぶん、「わざとらしいB級くささ」を出すための演出だというのは理解できるが、どうしても安っぽさが否めない。
せっかく高レベルのグラフィッカーを多数要しているのだから、モブくらい描いてもいいのではと思ってしまう。
それ以外では、武器や蒸気機関車、建物等、お得意の3Dとの融合もバッチリ。世界観に華を添えている。

演出はもうハンパでないくらいよく動く。
動きすぎて、スペックの低いマシンだとおそらく相当つらいことになると思われる。
作中、銃撃戦になる箇所では、マウス連打(実は押しっぱなしでもOK)によって、3Dグラフィックで描かれた建物内を探索することになるのだが、これなど、ロースペックマシンだと下手すりゃフリーズする危険性大なのでは。
とにかく、砂埃が舞い上がったり、拡大縮小したりと、動きのないシーンの方が少ないんじゃないかと思えるくらいだ。
ド派手な演出が、このどこまでもB級くさい(※褒め言葉)世界観を大いに盛り上げていると思う。

システムは毎度同じのニトロ仕様。
相変わらず、過不足はないのだが、今一つ使いづらい。
ロード時に若干間があるし、起動時に毎回ディスクを要するのも手間だ。初回起動時だけにならないものか。
今作は短かったからいいものの、長時間プレイを強いられる作品では、もはやこのレベルのシステムでは我慢しがたいと思う。
次作までに切なる改善を望む。

音楽担当も毎度のZIZZ。
しかしこの集団、実に幅が広い。
またもや、こんな特異な舞台設定をしてくるニトロに、しっかりと合ったものを用意してくる。
また、主題歌を担当するワタナベカズヒロ氏の声と、西部劇の曲調とが絶妙にマッチ。
劇中の、いとうかなこ氏が歌うカントリー風の歌も素晴らしい。
ことニトロに関しては、音楽の失敗というのは考え難いかも。

さて、虚淵玄ですよ、お客さん。
鬼哭街沙耶の唄白貌の伝道師Fate-Zeroと、「どシリアス救いなしエンド」ロードを爆進してきた氏だが、こんな作品も書けるんだと、その器用さには舌を巻かずにはいられない。
たかだか総プレイ5~6時間の間に、状況はめまぐるしく変化し、さっきの敵は今の友、とも言うべき凄まじい立ち位置の変化が何度も訪れる。
今の今まで殺し合いをしていた相手と、次の瞬間には共闘するのだから、その変化がスリリングで目が離せない。
逆を返せば、すぐにでも寝首をかかれるということもあるわけだから、キャラたちの腹の読み合いにドキドキしっぱなし。
復讐と裏切りはマカロニウエスタンの醍醐味であるから、当然の展開ではあるのだが、その忠実な再現っぷりがもう楽しくて思わずニヤニヤしてしまう。

いつもの、無駄を省いた硬質の文体ながら、今までにはなかった下品なギャグや、絶妙なバカさ加減、苦手と言われていたエロシーンをあえて笑いに転化してしまう手法も面白い。
バッドエンド後に示される、「ガンマン十戒」などのシャレも気が利いていて非常に笑える。(しかもちゃんと10個ある)
かと思えば、もちろん震えるほどに格好いい燃える話も用意されており、もはやこのライターには死角はないのかと思ってしまう。
強盗にレイプ、大量殺人に騙し合い、そんな悪行のオンパレードだが、どれもこれもうまい具合に陰湿さを取っ払ってあり、それを魅力的に、とっておきのフィクションとして昇華しているので、罪悪感や不快感といったものがない。
実に良質のピカレスク・ロマンであり、娯楽作品としてこれ以上の評価があるだろうか。

電子機器の使用ができず、レトロな銃器に頼るしかない舞台設定に、思いっきりSFな設定を盛り込んでいるのだが、それに関してこの先どうなるのか、そして、銀河連盟や軍部との関係はどう転がっていくのか、もうこの続きはないのだと分かっていても、夢想せずにはいられない。
ただ、革命物やマカロニウエスタンのスタイルを踏襲するならば、この先に待ち受けるのは決してハッピーエンドではないことだけは分かっているのが、虚淵玄の意地の悪いところ。
考えれば考えるほど、いつも通りの救いなしラストに突入してしまうことはもはや明白(※1)なのだが、そこをあえて描かず、すっきりと爽やかなエンドに見せかけているあたりが巧妙で、ほくそ笑んでしまう。
(※1:なぜかと思う人は、(ネタバレ危険→)スイートウォーターにはレアメタルが眠っていること、銀河連盟に属する財団はその存在を知っていること、軍の上層部もそれを知っていると思われることを考えると明白。
採掘するにはプロトゾアンを滅しなければならないが、もしプロトゾアンと戦えば、地表生物は生存不可のダメージを食らうだろうということは作中明言されている。
ついでに、プロトゾアンと共存しようとする革命軍の命など、おそらくレアメタルより軽いと思われるので、銀河連盟が電子機器を持って介入してくれば革命軍の壊滅は必至

正直言って、あまりにもコストパフォーマンスが悪すぎ、そしてあまりにもネタが特異すぎるので、とても一般エロゲーマーにはお勧めできかねる。
普通のニトロファンにすら勧めづらいくらいだ。
これはもう、筋金入りの虚淵ファン、もしくはこの全編に漂うB級くささにトキメキを覚える、お脳をやられてそうな人向け。
私はもう大好きです。こういうのを平気で出してきちゃったりするのがニトロのニトロたる所以。
例え売れなかろうが、好きなことを好きなようにやっちゃえるのがこの業界のいいところだよ。
利益は他の作品で出せばいい、という大手メーカーならではの体力と自信、それでも作品の作り込みはきっちりとする姿勢に漢を見た。

「さすがニトロ! 他のメーカーができないことを平然とやってのけるッ! そこに痺れる憧れるゥ!」

この精神を失わない限り、私は買い続けます。たぶん。

月光のカルネヴァーレ

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
80★★★

購入後、半年以上放置してからようやくプレイ。
それほどまで、ここ最近のニトロ作品には、「是が非でもやりたい」と思わせる力が欠けていたわけですが。
もたもたしていたら「ジャンゴ」が発売してしまい、いくら何でもこれはまずいと焦ってプレイ開始。
で、蓋を開けてみたら、意外や意外、きちんと面白かった。良作とまではないけれど、力作。
むしろ、万事に及第点すぎて、いつもの、
「さすがニトロ! 他のメーカーができないことを平然とやってのけるッ! そこに痺れる憧れるゥ!」
という荒唐無稽さはないものの。
むしろ、ニトロ初心者に勧められるような、ブランドのカラーをきっちりと踏襲した作品であると思う。

絵・音楽・演出は、毎度のことながらどれも実にそつのない作り。
ビジュアル面は、異国情緒溢れる背景と可憐な女性キャラ、渋くて猛々しい男性キャラ、CGと、それぞれが非常にハイレベルな融合を遂げていて、特に彩色は素晴らしく、光の表現がものすごく美しかった。
また、武器や不気味な人形のCGも奮っており、専門の3Dチームの力を存分に発揮している。
枚数自体は物語の尺のわりに若干少なめかとも思うが、それぞれの質が相当のものであるので、特に不満は感じなかった。

ただ、演出に関しては、同時期に開発していたはずの「Lamento」がバリバリに動きのあるものであったため、今作もそうであろうと思っていたら、ごく正統的なAVGスタイルだったのには拍子抜け。
ライターの文章力が高いのならそれでも力押しでどうにかなるだろうが、もはや動的演出の強化は業界の標準だ。
決して全体的に下手というわけではないが、戦闘シーンでは特に間延びした印象が強いため、できればこれを動きで補ってほしかった。

音声は、もはややりすぎだ。
ニトロ作品に出演する声優陣に慣れてしまうと、自分内デフォルト値が上がってしまう恐れがある。
それほどハイレベルなベテラン声優を、とんでもねー役でゴリゴリ起用しちゃってます。よろしよろし。
他も、キャスティングの妙を感じさせる実に巧みな選出で、物語を大いに盛り上げていると思う。
中の人スキーなら、それだけで買っても損はしないかもしれない。全キャラにわたって、かなりセリフが多いので。
あと、保村氏のキレキャラの巧さと、ダヴィデのイッちゃってる演技は異常。
保村氏、「あやかしびと」みたいな影の薄い主人公より、こっちの方が断然合ってるし光ってるよ。
(そういや、「あやかしびと」でもブラック主人公の方が格段に良かった)

音楽はいつものZIZZ。
主題歌は上野洋子氏。てっきり、お馴染みのいとうかなこ氏かワタナベカズヒロ氏がやるもんだとばかり思っていたので思わずビックリ。しかもビッグネームだし。
が、これが大正解。元々、半音移行のコード進行を多用し、エキセントリックで幻想的な曲調を得意とする上野氏と、この世界観とがしっくりくる。
もちろん、エンディングを手がける上記二氏と、挿入歌の小野正利氏のそれぞれの個性に合った歌も素晴らしい。
ただ、今回BGMで一部違和感のあるものが。
BGM自体の質ではなく、Hシーンに日常生活のBGMを持ってきたり、使用箇所に問題があったと思う。
いつもの圧倒的な曲数と選曲センスを誇るニトロらしくない。

システムはいつものニトロ仕様だが、さすがにそろそろ改良の余地があるかも。
一度に見れるバックログがやけに少なかったり、戻るのにわざわざマウスを動かしてEXITを押さなければいけなかったり。
右クリック解除くらいは、別に難しい制御でもなんでもないのでは。
それに、右クリックを押してからメニューが表示されるまで微妙な間があり、とにかくもっさりしている。
何にリソースを使っているのか素人には分からないが、エロゲの世界も日進月歩。
根本的な足回りを見直さなければ、このままでは他メーカーにどんどん水を開けられていくだけだと思う。

さて、「思ったよりは」ずっと面白いし、筋立ても真っ当だったシナリオ。
ニトロお得意の、人と人外と武器とが入り乱れ、複数の思惑が錯綜する群像劇だ。
どの陣営も、目的と立ち位置がはっきりと書かれており、それがブレたり説明不足だったりすることはないので、ストーリーは非常に追いやすい
また、エピソードもバランス良く割り振られてあって、どれかに偏るということもなく、かなり練り込まれていると感じた。
多数のキャラが登場するが、それぞれが作中できちんと役割を果たし、群像劇にありがちな、「このキャラいらない」といった蛇足感もないので、以上の点では極めて優秀な作品であると言える。
むしろ、一番いらないのは主人公だ

こいつたぶん、ニトロの歴代主人公中、最高のヘタレ。
かつてオルマ・ロッサというマフィア組織内で、冷静沈着で最強の暗殺者だったという謳い文句のわりには、さほど強さも感じないし、何をするにもはっきりしない。
恋人を失い、親友に裏切られ、自暴自棄になっているからという設定を差し引いても、物語の主人公はこれじゃダメだ。
少なくとも、ニトロのような、ユーザーが「燃え」を大いに期待するメーカーである以上は。
ストーリーの途中でどん底に落ちるような展開があり、一時的にヘタレになるのはいい。それは演出のうちだ。
だがコイツ、やることなすこと中途半端で、ホントにヒロインたちに惹かれているのかすら疑問に感じるほど感情の起伏にも乏しく、お世辞にもプレイヤーが「格好いい」とは思えないキャラなのだ。

それなのに、やたらと戦闘シーンが多いシナリオ。
その戦い方のパターンも決まりきっており、「銀器を出され大ピンチ→力押し→味方の助けが入るor辛勝」の繰り返しのため、バトルの爽快感は乏しく、むしろ、冗長に感じてしまう。
いっそのこと、要所要所でのボスクラスのキャラとだけの戦闘にした方が、全体的には引き締まったのではないかと思う。
この悪しき戦闘シーンのおかげで、作品全体がスピード感に欠け、おかげで物語に緊迫感がない。
シナリオ自体はかなりよくできた部類で、先を読ませる力もあるのだが、どうも間延びした印象が拭えないのだ。

また、脇を固める男キャラが、皆非常に魅力的なのに対し、肝心の女性キャラは、アンナ以外、今一つ。
この辺の伝統もニトロだから、と言ってしまえば身も蓋もないのだが、どれもこれも決して悪くないキャラ立てのため、あまりにも惜しすぎる。
ルナリアとかレベッカとか、すわ、殺し愛か! と色めき立ってみれば、どれもそこまで突き抜けるでもなく、中途半端なエンドを迎えてしまう。
違うだろ! そこはもっと病まなきゃダメなんだよ!(私は危ない人間ではありません)
殺し愛なら、妹ブランドのメインライター、淵井鏑氏に聞いてこい。氏の殺し愛展開は神レベルだ。
(マジで。この人、絶対私の妄想を具現化してるに違いないってほどツボをついてくる魔人)

今作でのエンディングの順位としては、アンナハッピー>ノエルノーマル>>>越えられない壁>>>ルナリア=レベッカ。
特にルナリアの扱いはもう残念の一言。これはいくら何でもありえない。
本来なら、外見も中身も、間違いなく人気沸騰、話題騒然、業界を席巻することすらできたかもしれないのに。
それが、「ルナリア? ……ああ、かわいいよね」レベルで終わらせてしまうとはどういうことだ。
どうせ壊れるのなら、完膚無きまでに壊れなきゃダメなのよ。病むなら頭がおかしくなるくらい病まなきゃダメなのよ。
(ネタバレ危険!→)シリンダが欠け、記憶を失うエンドはともかく、他の姉妹と一緒にドサ回りをするエンドのどこに幸せを見出せと?
しかもこっちがハッピーエンドだろう。ああ、もったいない、もったいない。
もっと、世界に二人きり、互いが互いしか見ておらず、そしてそれは絶対的な主従というエンドは作れなかったのか。
そもそもこの作品は、人狼と、それを殺すための人形との恋愛物なのだ。
もっとヒリヒリするような殺愛、心かきむしる葛藤を見たいと思って何が悪い。いやそれこそがユーザーの本望。
(私は決して危ない人間ではありません)

それに、全体的にエピソードの扱いが綺麗すぎた。
もっと血みどろ、もっとドロドロ、もっと情念を。
ノエルやレベッカが捉えられたら陵辱を受けて当然だし、ピウスのような非人間的な主人の元では、人形たちだってもっと苛酷な扱いを受けているはず。
ルナリアがダヴィデを毛嫌いする理由も、具体的に陰惨なエピソードを用いれば、後にその呪縛から解放された際のカタルシスをもっと味わえたかもしれないのに。

以上がシナリオで残念だった点。
挙げすぎだと思われるかもしれないが、むしろ、これしかないのだと好意的に見てほしい。
だって、それ以外はほぼ合格点だったんだもの。

とにかく、多数のキャラが絡み合う構図を、プレイヤーが混乱することなく把握できるよう、きっちりと説明しきった力量は確かなものだし、世界観は実に魅力的。
ルートごとにまったく別の展開を用意してあり、キャラのエンディングが全然被らないのも高評価。
エンディング自体も、ご都合主義が薄く、どれも手放しで喜べるようなハッピーではなく、切ないエンドが多いのも高評価。
何と言っても、セリフ回しがかなりこなれていて、ダラダラとつまらないギャグを垂れ流すエロゲが多い中、会話シーンはかなり楽しめた。
特にカルメロ。麻薬中毒のイッちゃってるキャラだが、そのアッパーなセリフの数々ときたら、戦闘シーンで退屈してしまったプレイヤーのやる気を再び起こさせるに充分。(重ねて言うが、保村氏は最高の演技だった)
ジェルマーノとアンナのやりとりも微笑ましく、ペルラの性格破綻者ぶりには戦慄。
そういった、キャラの立たせ方には非常に長けていて、また、ルートによって立ち位置が変わり、多彩な面を見せてくれるのだから、何だかんだ言いつつも、すっかりこのシナリオに魅了はされていたのですよ。
特に男キャラの漢っぷりの良さはさすがのニトロ節であり、これで主人公がもっと格好良ければ、手放しで良作と言えたのに、と返す返すも残念でならない。

全体的に、そつなく、小ぎれいにまとまっている。クラスに一人はいる良い子の典型的見本だ。
往年のニトロの破天荒さこそないものの、実に手堅く、大抵の人は楽しめる作り。
特に、伝奇物はやってみたいけど、あまりにエロがキツかったり、描写がどぎついのは嫌、という人には勧めやすい作品だと思う。
女性でも取っつきやすいエロゲの一つかもしれない。

ここのところずっと下降線だったニトロの、起死回生とまではいかないが、上昇に向けての足がかりになりうる作品。
ただ、ニトロ以外のメーカーだったら大成功に入るのだが、ニトロの魅力は、何と言ってもその突き抜けたパワーと、血がたぎり、圧倒的に燃えたつ戦闘シーンにある。
次作こそは、燃える主人公が、刀振り回したり、銃ぶっ放したり、車で追いつ追われつしたり、死んだり死なせたりする作品をやりたいです。

Forest

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
87覚悟があるなら
★★★★

名作、「腐り姫」の製作スタッフによるライアーソフト第11弾。
私にとっての「腐り姫」は、マイベストエロゲートップ5に入るほどに文句なしの名作だったため、今作も発表当時から気にはなっていたが、あまりにも遊び手を選ぶという評に二の足を踏んだのと、他の膨大な積みゲーを片付けるのに忙しく、しばらく放ったらかしになっていた。
ところが、「いいからやれ」「とにかくやれ」「すぐやれ」という意見が非常に多く、それほど望まれるならと覚悟を決めたとたん、ちょうどメーカーサイトでのダウンロード販売が開始に。
こういうのも悪魔の導きと申せましょうか。

さて、もうどこのレビューサイトでも言及されていることだが、あえて言います。
この作品、ありえないほどに受け手を選びます。合う人にとってはべらぼうに琴線に触れる作風なのだが、合わない人は5分でリタイアする可能性大。
それほどまでに冒頭から不条理でナンセンスな展開。もちろんプレイヤーに対するフォローというものは一切なし。
むしろ、「ついてこれないならこなくていいよ」という、エンターテインメントにあるまじき傲岸不遜ささえ感じさせる。
だが、その気位の高さがある種の様式美を生んでもいて、それが心地良いとすら思える。
正直、エロゲとしてはまったくと言っていいほど実用性に欠けるが、それでもこのフィールドじゃないと出てこなかったであろう作品。

システムはおおむね良好。かつて、初版に修正ディスクを同梱するという離れ業さえやってのけたライアーとは思えないほどバグもなく、各機能もスムーズ。
2年前の作品のためか、ホイールでのバックログ閲覧に対応していないのが少々気になったが、それくらいか。

絵は非常にクセがある。シナリオ同様、かなり好き嫌いが別れる作風。
ただ、現実世界を浸食して突如現れる「森」や、妖精や異形の生物がこれでもかと登場するシュールな世界観の今作では、この一風変わったデザインや色彩などが、作品を構成する上でかなり重要な要素となっていると思う。
私自身はちょっと子供くさすぎてあまり好きな絵柄ではないのだが、この作品にはこの絵でなくては、とも思う。
特に登場人物たちの衣装は、まさに舞台衣装とも言うべき奇抜さなのだが、これが実に作品とマッチしている。
また、頻出する人外のキャラクターたちにはテクスチャー処理が施されており、奇をてらったデザインやリアルさを持ち込むより、ずっと気が利いていてなおかつ高い効果を上げている。
背景は写真取り込みだが、現実のものなのに奇妙に現実感を喪失した雰囲気が出ていて面白い。

音楽はもう本当に素晴らしい。「腐り姫」のときも思ったが、このレベルはハンパでない。
中途半端なボーカル曲などは使用せず、コミカルからシリアスまで、作品世界へのマッチングを徹底的に意識した仕事が、この強烈な世界を彩る重要な要素の一つとなっている。
耳触り良く、作品を盛り上げて邪魔をせず、かといって忘れてしまうような印象の薄さではなく。
BGMというかなり限定された制約を受け、しかもどんな既存作品とも違う独自の世界観を持つ作品に対し、こうまで質の高い楽曲を制作した音屋さんたちの仕事にプライドを感じる。

キャスティングも非常に巧い。始めはどのキャラも何だか大仰でわざとらしい演技だと思っていたのだが、実はそれが演出だということに気付いてからは、どんどんキャラクターが生き生きしてくる。
そこにはミスマッチということがまったくなく、特にキャラの二面性の表現が図抜けている。
普通の作品で求められる自然さとかかわいらしさの他に、特殊な節回しや演劇のような演技を求められる作品であるだけに、収録時の苦労は並大抵でなかったに違いない。

その音声を実に効果的に利用した演出も光った。
セリフの一部はメッセージボックス内にテキストが表示されない。だが暗転した画面のバックで流れるセリフは実に印象的
で、否が応にもプレイヤーの想像力をかき立てる。
実は最初、いきなり画面が黒くなったので「もしやバグか!?」と疑った。ライアーさんごめんなさい。でも過去の所業が悪いと思うの。
主人公のセリフがテキストが表示されるのを待って会話相手の音声が再生され、あたかも主人公(プレイヤー)とキャラが
リアルに会話しているかのような仕掛けもある。
この場合も会話相手のテキストが表示されないので、またまた「バグか!?」と疑った。ライアーさんごめんなさい。
でも以下略。

さて、プレイヤーの間では思いっきり見事に賛否両論が別れるシナリオ。
あらかじめ言っておくと、今回はシナリオの中身については大して言及していない。否、できない。
だって、やってみなければ分からない仕様、説明のしようがない作りになってるんだから仕方がない。
なので今回は、主に作品構成についての考察となるのでご了承を。

かつて、こんなにエロゲとして用を成さないのに、エロゲのフィールドを必要とする作品ってあっただろうか。
いわゆるエロゲのマーケットというのは、コンシューマーに比べたら実に狭小ではあるけれど、その代わり手堅いペイが見
込める場でもある。
さらに、プレイヤーは18歳以上であるという事実を約束されている。
つまり、プレイヤーがある程度の知識と思考力を備えているということを前提にできるわけで、余計な説明もお子様に対するフォローもいらない、その分、作品世界を練ることができるフィールドということだ。
そうして編み上げられたのが、類がないほどに実験的なこの作品。
この限られたフィールドの、限られたプレイヤーをさらにふるいにかけるような好戦的な姿勢。
その気の強さと挑発とに思わずニヤついてしまう。
クリエイターはこれくらい自分の世界を信じていなければいけない。自身の世界にすらぐらつきを覚えているようでは、たかがエロゲオタ一人も騙せるものか。

冒頭にも書いたが、この作品にはプレイヤーが知らないことを説明してくれる親切さは皆無、むしろ「知らないお前が悪い」
と言い切ってしまうような高慢ささえ漂う。
だがその突き放しを「まことにごもっとも。私が悪うございます」と認めざるをえないほど、奇妙な説得力と有無を言わせぬ緊張感、そしてプレイヤーの足元を危うくする酩酊感に満ちている。
雑多なジャンルから様々な、特にイギリス児童文学の分野からは有名無名問わずこれでもかとネタを盛り込んであり、その
姿はさながらカオスのワンダーランド。
ともすれば衒学的で鼻につくとされてしまいがちなそれを、作品全体に漂う適度な胡散臭さやいい加減さ(※どちらも褒め
言葉です)がうまい具合に和らげていて、ただただ作品に翻弄され、踊らされるのが楽しい。
明らかに虚構だと分かっていて、なおかつそれを真剣に楽しむというファンタジーやおとぎ話のある種シニカルな作法を十二分に知り尽くし、それを手玉に取ってみせたライターの力量に脱帽。

今作では、作中のキャラが「自分が誰かの物語に内包されるキャラクター」であるということに気付くメタ構造が発生する。
下手なライターが書くとわけが分からなくなる上、反則を犯された気分になってげんなりしてしまう危うい手法(だが昨今やけに流行している)だが、それが実に違和感なく行われている。
自然にその展開へと誘導していく構成も見事なら、「何が起こっても不思議ではない」ナンセンスな世界観をプレイヤーに納得させるテクニックも見事。
それを可能たらしめているのが、実に読みやすく分かりやすい、洗練されたテキスト。
ときにリズミカルな韻を踏んだり、言葉遊びを仕掛けたり、緩急の差も絶妙でテンポよく読み進められる。
本当に力のあるライターというのは、どんな猥雑な言葉を使っても、下世話なエピソードを書いても、決して作品自体が下品にはならないのだよ。
その辺の二流三流ライターは、売れている作品の上辺の世界観だけ真似るんじゃなくて、こういう基礎力をもっと見習え。

星空めてお氏の作品には品がある。エロゲに品とか持ち出すなと言われればそれまでだが、自身が構築した世界観に
対するプライドと、たとえ業界の流れを無視してでもこの作品を作り上げるという気概。
それに絵と音楽が見事に融合し、かつてない独自の世界へと到達したと思う。
その姿は、ある種クリエイターにとって理想の形だ。私が知る限り、業界での評判はやけに高かったのを覚えている。
会社組織である以上、ペイしなければいけないのが第一だが、あえて危険を冒してでもこの作品を作り上げたことの意味。
萌え、燃え、泣きといった通り一遍のカテゴライズに当てはまらず、荒野を切り開いてそこに立とうとする姿勢。
会社として(いい意味で)暴挙に出たとしか思えない行為だが、想像力を売り物にする商売、これくらいできないでどうする
という最高の見本。

私はもう大好きです。面白い面白くないというレベルを超えて、正直震えました。
たかだかCD二枚の作品が、DVD数枚組という馬鹿みたいなボリュームの作品をいともたやすく組み伏せる、その圧倒的
な力量差を見せつけてもらったから。
クリエイターを目指す人、シナリオ重視派だが最近はどうもなぁとエロゲに食傷気味の方はぜひ。

薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
80★★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!

雑記にてお勧めのBL作品を問うたところ、この作品を推す人が非常に多かったので、勇んでプレイすることに。
が、私は甘かった。砂糖菓子を水飴コーティングし、その上から粉砂糖をまんべんなく振りかけたほどに甘かった。
要するに、百戦錬磨の姐さんたちと、ヒヨッ子の自分のスキル差を全然自覚していなかったのDEATH。
まさかこの作品、キャラ総当たりの陵辱・純愛ルートが用意されている上、Hシーンごとに受攻リバ有り、という破滅的な組み合わせの多さだなんて、攻略サイトを見るまで全然気にしてなかったのDEATH。
(とにかく攻略が大変だという話は聞いていたので、今回は最初から攻略サイト併用です。ヘタレご容赦)
が、知ってしまったとしても後の祭り。もうプレイする宣言をしてしまったし、何よりインストールもしてしまった。
半泣きのまま決死の覚悟を決め、とにかく突撃。

すでに数年前の作品であるので、演出は確かに古いのだが、男子校で起こった陵辱事件の犯人を追うというストーリーは、大正~昭和初期という世界観も相まって、退廃的で背徳感溢れる雰囲気を醸している。
これなら、むしろ画面が著しく動いたりしない方が吉。
その代わり、カーソルが薔薇だったり、メニューが蝶だったり、カップリングを選ぶメイン画面では花吹雪が舞っていたりと、バリバリに耽美を主張する凝った作り。
メニューを選択するたびに、「セーブするのか?」とか、「おや? 止めるんですか?」とかキャラが喋り、気恥ずかしいくらいの凝りっぷりだ。

システムはオーソドックスなAVGで、パッチを当てれば進行には問題なし。
ホイールバックログや音声再生にも対応しているし、膨大なルート攻略に必要なセーブ数も万全。
また、CGモードでは、Hシーンだけでなく、イベントシーン再現もできるのがとても親切。
何しろ、かなりのボリュームがある作品なので、もう一度あのシーンが見たいと思っても、再プレイするほどの根性はなかなか出てこないと思うのだ。

他の点ではかなり頑張っている印象を受ける作品だが、残念ながら、音楽面はかなり寂しい。
曲数も少ないし、無音の箇所もままある。
プレイ後に覚えているのは、オープニングタイトルの物々しいBGMだけという空気っぷりで、これがもう少し頑張っていればもっと単調さを防げたかもしれない。
声はHシーンと一部重要シーンのみのパートボイスとなっており、今となってはやはり物足りない印象が拭えない。
それに、中の人によってえらく出来に差がありすぎるように感じる。
受攻総当たりなのだから、どちらもできる人を起用すべきだったのだろうが、一部の人が、攻はいいが受が聞くに堪えないレベルだったのが気になって仕方なかった。
レトロ感溢れる台詞を、現代の声優さんたちが喋るのはなかなか面白く、その点はかなり楽しめたのだが。

立ち絵のバリエーションはさほどないのだが、イベント絵はかなりのクオリティで仕上げられており、見ごたえは充分。
ただ、一昔前の少女マンガ的絵柄なため、好き嫌いが分かれるかもしれない。
何しろ、日本人と英国人のハーフが金髪碧眼で出てくるレトロさだ。うわーすげー超劣性遺伝
……などと思ってはいけない。たかだか十数年前の少女マンガには、こういうブッ飛び設定のハーフキャラが跋扈しており、それは乙女な小説の世界でも同様だったからだ。

さて、突撃した私は、まずはトゥルーEDから最も遠そうな陵辱ルートから始めることにしたのだが。
基本的に、作品はコンプリートすることを前提にしているので、CG100%を目指したまではよかったが、当然、その反復回数はシャレにならないことに。
特に、陵辱ルートは相手を落とした後のエピソードが著しく単調なため、すぐに飽きて幽体離脱。
進めども進めども、ただひたすらに容疑者(?)を拿捕→支配下にするの繰り返し。
肝心の犯人は、始まってものの10分で(ネタバレ危険→)下手すりゃパッケ見ただけで分かる仕様になっているので、主人公の間抜けっぷりがまどろっこしく、お願いだからもう解放してくれと、何度囚われの受のごとく泣き叫ぶところだったか。
正直言って、凌辱ルートは、とにかくHシーンが好きという人じゃないと耐えられない。
私は、よほど好みのシチュか、めちゃくちゃエロいとかでない限り、別段そんなにHシーンが好きなわけではないので、これには本気でまいった。
それが、攻略キャラ5人×リバ×H回数=死亡。
私が、ゲームスタートから陵辱ルート終了までに1ヶ月以上かかった気持ちがお分かりになるだろうか。
見かねた常連さんから、動作保証対象外の超速スキップ技を教えてもらわなければ、私は確実にあの世へ旅立っていた。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとう、某姐さん!

そんなわけで、まさか純愛ルートもこんなんだったらどうしよう、勧めてくれた姐さんたちを恨んでやる、と八つ当たりしつつ、取りかかるまでさらに半月を要したのは、萎えた心を奮い立たせるのに必要な時間でした。申し訳ありません。

が、着手してみてビックリ。純愛ルートは各キャラの掘り下げがぐっと深くなっており、エピソードも重複するものが少なく、オーソドックスなシナリオながら、それぞれに楽しめた。
また、時代設定を巧みに生かしたエピソードやEDが多く、非常に据わりが良い。これならお勧めされたのも納得の出来。
このギャップは何なのだ。
普通、これだけのキャラが出てきてしかも総当たりとなると、一つくらいはやっつけ仕事が出てきそうなものだが、どのエピソードもとても丁寧に綴られていて破綻がない。
そのバラエティに富んだエピソードが、単調極まりない陵辱パートにもあれば紛れもなく名作となったのであろうが、物語の構成上、これは仕方がないのだろう。
そもそも支配者は隷属する者の事情など鑑みないものだし、エピソードの発露には、陵辱・純愛との分岐選択にて純愛を選び、両者が心を通わせるようになることが条件となっているからだ。

とにかくクリアまでの道のりが異常に大変なので、途中で放棄した人も多いかと思うのだが、付録に「手記」が出るまでは頑張ってプレイしてほしい。(純愛グッドED後に出現するらしい)
これこそがこの作品の真骨頂、これを読まずして真のクリアとは言えないからだ。
ある程度予想の範疇ではあったけれど、それでもその強烈なカタルシスのあまり、各キャラEDを食ってしまう危険性があったからか、あえて本シナリオから外され、「付録」という形にされたラストエピソード。
その、すべての元凶となった想いをぜひ味わってみてほしい。

この作品、確かに多数のプレイヤーにお勧めされるだけの力作ではあるのだが、惜しむらくは、前述の通り、犯人やその動機が分かりやすすぎること、シナリオやキャラがステレオタイプすぎて、斬新な目新しさがないこと。
ただ、意外性がない分、安定感は抜群で、BLというよりは古風なJUNE小説を読んでいるかのような印象を受けた。
ある意味、伝統的な作品だと思う。こういう作風って、今はむしろ貴重なのでは。
閉鎖空間で濃密に展開される物語が好きな人、レトロな時代観が好きな人向け。
軽めのBLに飽きた人、原点を求めたい人なども。

Lamento -BEYOND THE VOID-

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
82★★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!

処女作、「咎狗の血」によって、一躍BLブランドの雄にのし上がったニトロプラスキラルの二作目。
まぐれと実力の違いがはっきりする運命の二作目、なるほど、こうきたかという気分です。
一作目では総合力を、二作目ではハンパでないキャラ萌えを見せつけてくれるとは。

もちろん、作品としてのクオリティもきちんと追求されている。
今回は起動と進行に関する大きいバグがあり、プレイできないユーザーから、「作品自体がツンデレだ」などと揶揄されたが、それでも、兄ブランドで培った技術を惜しみなく投入した、他の単なる紙芝居AVGとは一線を画す仕上がり。
効果音や一枚絵だけでなく、カットインやエフェクト、スクロールを多用する、最近のエロゲ界では流行の演出をかなり積極的に取り入れているが、付け焼き刃感は全然なく、実に板についたもの。
これが総合力か、と思い知らされる。
だが、その動きの多い演出が、通常のAVGに慣れたユーザーには不評を買ったようなのだが、私は素直に感心した。
まだ二作目、色々なことにチャレンジしないでどうする。真に冒険できるのは今のうちだけだ。
ましてや、それは失敗ではなく、確実に効果を上げているのだから。
(余談だが、兄ブランドは「天使の二挺拳銃」で冒険しすぎて失敗した)

しかし、先ほども書いたが、一部ユーザーが起動できない、進行途中でいきなり落ちるというバグを出したのは大問題。
別に差別なわけではないが、特に女性ユーザーでこういうアクシデントに自力対処できる人はまだまだ少ない。
メーカーPCを買ったままの状態で使っているという人も少なくないはずだし、そこをもっと踏まえて、初心者レベルで優しいシステム構築を。
また、推奨スペックを余裕で上回る私のマシンでも、画面のもたつきやセーブ、ロードの切り替えの遅さが気になった。
コンシューマーじゃないのだし、せっかくHDへフルインストールできる環境、もっと快適なインターフェースという面を考慮しなくては意味がない。
コンフィグは細かく変更できて便利だが、それより一歩前の段階で、もっと見直すべき点があると思う。

さて、今作では、「歌」が重要なファクターとなっているが、それに伴って音楽はかなりの力作揃い。
複数のボーカル曲に加え、どのシーンにも落ち着いて品のある、作品の雰囲気をさらに高める楽曲が使われており、さすが
のZIZZクオリティ。まったく問題なし。むしろサントラは買いだ。
キャスト? 誰が文句を付けられるというのだ。BLの帝王、森川智之氏が満を持しての登場だというのに。
本来なら一作目にこそ持ってくるような人材だから、きっといつかはと思っていたが、まさか「猫」に持ってくるとは。
もう、森川氏の「……馬鹿猫が」に萌えて萌えて萌え狂った身としては、文句などあろうはずがありません。
周りが実力派揃いすぎて、主役が一番イマイチなのだが、前作の先割れスプーン氏と比べるのも酷なので、これはこれで。
初々しさがあるので、運命に翻弄される様はよく表現されていて、それが好きな人も多かろうと思った。
個人的には、フラウドの笹沼晃氏とラゼルの犬野忠輔氏がツボ。サドっぽさのあるエロい声と重低音ボイスに弱いので。
何と言っても犬野氏、先に発表した源氏名がヤバすぎて改名させられたいわく付きだし。

絵は相変わらず非常に好み。たたなかな氏は本当にセンスが良い。
尻尾が付いたり角が付いたりすれば、もうそれだけでバランスが崩れそうなものなのに、まったく違和感なくそれを表現してくるし、個体差がきちんと描き分けられているのにも感心。
人種(?)や年齢によってキャラの体格が違うのは当たり前のことだが、そこを身長差や色分け程度でしか描けていない原画家が多い中で、ちゃんと筋肉の付き方や体格そのものを描き分けられるというのは貴重だと思う。
悪魔のデザインも実に秀逸。フラウドのデザインが発表された当時、公式サイトを見てブッ飛んだよ。
キラルいったい何作ってるんだ!? と本気で心配しました。

正直言って、今回は私が大の苦手とする人外キャラだし、まったく期待していなかったのだが、どうやら私は淵井鏑&たたなかなのコンビをまだまだ侮っていたということに気づかされました。
萌えまくったよ、コンチクショウ。まさか人外に落ちる日がくるとは思わなかったよ。一生ありえないと思ってたのに。
最初は、「ネコミミ? もう次回作は買うのやーめた」と思ってたくらい忌避していたのに。

とにかく設定が非常に巧妙。パケ買い狙いの、単なる記号としての耳や尻尾じゃなく、かなりきっちりと「猫」していて、その徹底ぶりが小気味よい。
急所や身のこなし、毛づくろいといった習性を巧みに用いたエピソードの妙には、またもやしてやられた。
なぜ世界には雄が多いのか、なぜ人外なのか、そういう根本的なことを無視する作品が多い中で、こうした細かい設定のフォローは非常に重要だと思う。
今回は、咎狗のときのように事前設定が語り足りないということもなく、すんなりと世界観を受け入れられるよう、かなり気も配られている。

ただ、構造的に1本のメインエピソードを、攻略対象キャラ3人で共有しているので、それぞれの関係は丁寧に描かれてはいるのだが、どのルートを進んでも、基本的に結果は一つしかない(相手はもちろん違うが)。
10人近くも攻略しろと言われても困る(むしろ嫌だ)が、3人という、最近の作品にしては非常に少ない数だからこそ、もっと大々的にシナリオ自体をがらりと変えてしまってもよかったと思う。
これは咎狗のときも同様の構造だったので、次回作への課題。
1本から派生するのではなく、複数ルートが絡み合って1本となる手法の方が、もっと各エピソードが生きてくるのでは。

今作は、過去との決別や自己と対峙することを軸に成立しているので、キャラの逡巡や苦悩を描くシーンが多く、かなりのもどかしさがある。
また、バトルシーンも、名のある敵との死闘というわけではなく、暗殺者に付きまとわれる類のものなので、燃え成分は薄め。
結果的に爽快感に欠け、人によっては飽きてしまう危険性もある。
作中の謎に関しても、途中で解決をみるものが少なく、先へ先へと延ばされてしまうため、どうしても暗闇の中をそろそろと歩くような不確かさばかりが際立ってしまい、全体的にテンポが鈍く感じてしまう。
スピード狂の私としては、それが非常に残念。
物語の内容からすればこれで正解なのだろうが、一ユーザーのわがままとしては、もっと緩急のテンポ差、時には息詰まるほどの疾走感を味わいたかった。

ところで、この作品を楽しむために、ユーザーに求められる重要なことが一つある。
それは、キャラ萌えできるかということだ。
どんな作品でもそうだが、ハマるキャラがいるのといないのとでは、その作品に対する意識は雲泥の差となってしまう。
この作品は特にその傾向が強く、ハマったキャラのルートは非常に楽しいのだが、それ以外はそこそこ、といった印象になりがち。
物語の展開自体はさほど目新しいこともなく、斬新な驚きという点には期待できないからだ。
ただ、その分を補ってあまりあるキャラの数々。ヒャッホウ眼帯、ヒャッホウ悪魔、もう最高!!

……すいません、取り乱しました。

ともかく、実に多彩な肉付けをされたキャラ立ちの良い面々が、そりゃもう様々なシチュエーションでもって、私のような不感症気味の腐女子魂をも大いに奮い立たせてくれます。
淵井鏑氏は本当にツボを心得ている。(ネタバレ危険!→)闇に囚われたかつての師弟が殺しあうエンドだなんて、もうそれだけでご飯3杯はいけます。(食うなよ)
さらに、狂気に支配されたライとの約束を果たすため、自らの手で殺そうとするエンドだなんて、
もうそれだけでご飯5杯は以下略。(食い過ぎだ)
咎狗と同じく、バッドエンドに出色のものが多いような気がするのは、単に私の好みだからか?
ちなみに、殺愛好きにはもうたまりません。ご飯全部で一升はいけます。

以上、今回が以降のユーザー層を分けたであろう今作、私はこのシナリオ&原画コンビがマジで好きだという結論に達してしまったので、引き続き購入させていただきます。
そもそも人外が大好きだという人は文句なしに買い。悶えるくらいに萌え死ねます
私のように、他に惹かれる点はあるが、どうしても人外が嫌で躊躇している人。その辺の、ケモノ耳や尻尾が付いただけの「なんちゃって人外」なんて、足元にも及びません。
ましてや、世界観できっちりとその理由が語られているので、違和感はかなり薄め。
思いきってプレイされることをお勧めします。特に中の人が好きならなおさら。帝王バンザイ! 帝王ブラボー!!

近未来バイオレンス、異世界ファンタジーときて、次は学園伝奇物なんてやってみたいが、さてどうなることか。

機神飛翔デモンベイン

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
基本部分 8
ACT部分-2
82★★★

※この作品は非18禁ですが、「斬魔大聖デモンベイン」の続編にあたるため、こちらに分類しました。
ちなみに、前作のプレイは必須。最低でもアルトゥルーEDをクリアしていないと、内容が理解できません。

「斬魔大聖デモンベイン」=「機神咆吼デモンベイン」の続編にあたる今作。
前作のアルトゥルーED後の世界観を継承し、デモンベインをプレイヤーが実際に動かせるということで、鳴り物入りで登場したわけだが。
フルポリンゴンモデルをリアルタイムで動かす作品のため、当然、相当のマシンスペックを要される上、18禁ではなく、一般作品として発売、と判明した時点から、嫌な予感は拭い去れずにいた。
正直言って、ニトロ作品って、メーカー自身が思っているほどには、変わったシステムを搭載した作品の評価は高くないと思っていたので。

案の定、嫌な予感は大当たり。
シナリオに関してはさすがの出来栄え。燃えも萌えも笑いもふんだんに盛り込まれた、前作に恥じないレベルのものを出してきたのに対し、最大の売りであったはずの格闘パートはもうボロボロ。
はっきり言って、格闘要素は全部取り除いて、4~5千円台のファンディスクか外伝として売り出してほしかった。
それならば、手放しで良作と褒められたのに。
とにかく、操作性とレスポンスの悪さが、納得しがたい難易度の高さを引き起こしている。私は最初、ノーマルで始めたが、すぐに断念してイージーにチェンジした。
ノーマルではおそらく、いつまで経ってもクリアできない。

そもそも、基本的なACTとしてのバランスがまるでなっていない。デバッガー陣が異常にACTスキルが高いのか、それとも
一般レベルを誤解しているのかは定かではないが、このバランスでは、慣れる前に嫌になってしまう。
そりゃあ、私はACTはどちらかと言えば苦手分野だ。ただ、ゲーマーとして年季は入っているので、決して上手くはないが、
ド下手クソというわけでもない。
一般的に難易度が高いと言われる作品だって、それなりにクリアしてきている。
だが、そんな経験値などまるで役に立たない、極悪な操作性とバランス。
何より、3D格闘ゲームだというのに、相手との距離感がかなり掴みづらい
おかげで攻撃は当たらないし、回避できたつもりでも、そうでないこともしばしば。
キャラの動き自体は実になめらかで、処理落ちもなく、家庭用PCでこれだけ動かせれば合格というラインを大きく凌駕している。
しかし、肝心のキーレスポンスが鈍く、コマンドもやたらと細かく煩雑に分けられているため、ACTの醍醐味である爽快感を
まるで味わえない。
結果的に、戦闘に負ける→コンティニュー→シナリオが進まない、という、悪しきスパイラルに陥ってしまう。
ゲーム性以外の点では、どの要素もほとんど文句のつけようがないレベルに仕上がっているため、この点が惜しまれてならない。

これは、「ニトロウォーズ」や「戒厳聖都」を遊んでみて感じたのだが(いずれも「サバト鍋」収録)、ひょっとしてこのメーカー、
プレイヤーの忍耐力や能力を過信してるのではと思う。
手触りといい、難易度といい、どれもこれも決して一般向きとは言えないレベルなのに、それを改善するパッチなども出てこないし、これくらいなら普通にクリアできる、と思われているのではないだろうか。
この温度差が、今作にも如実に反映されてしまったため、実に残念な結果に終わってしまったのだが。
(※なお、現在公式サイトでバランス調整パッチ配布中)

先ほども少し書いたが、ゲーム性さえ除けば、他の要素はメーカーの名に恥じないさすがの仕上がり。
グラフィックは質量共に申し分なく、お得意の3DCGも、実に違和感なく溶け込んでいる。
所々挿入されるムービーも高いクオリティを維持しており、特に、格闘パートでの必殺技を決める際の演出は、ド派手で見ごたえも充分。
「デモンベイン」といえば多数のボーカル曲が存在するが、それを要所要所のシーンで惜しみなく投入し、さらにお馴染みの
BGMに加え、雰囲気バッチリの新曲ももちろん登場して、嫌が応にも盛り上がる。
基本的な足回りはいつも通りで、ゲームを進める上で、まったく支障がない。

シナリオは当然、前作に引き続き鋼屋ジン氏。
自ら生み出した作品世界を少しも損なうことなく、さらなる飛躍を感じさせるものであり、大変満足。
ルビを多用した、相変わらずの畳みかけ表記が、やはり人によっては好き嫌いが分かれるだろうが、それでも、ここまで王道的な構造をした物語を、ちっとも飽きさせずに一気呵成にエンディングへと持ち込む手腕はすごい。
また、前作でもそうだったが、広げた風呂敷の畳み方が実に鮮やかで、今作のEDも、「真・デモンベイントゥルーエンド」とでも言うべきものとなっており、前作プレイヤーは必見。
「荒唐無稽」や「ご都合主義」という批判を、物語自体のネタとして取り込んでしまうという力技を駆使し、さらには、メディア
ミックス展開された小説の内容をも包含し、相当無茶をしてるのに無理がない。
続編としての位置付けや展開に、有無を言わせず、疑問を抱かせないのだ。
また今作は、前作ほどの中だるみがなく、かといって性急過ぎることもなく、シナリオ自体は実に無駄のない、スマートで洗練されたものに仕上がっていると思う。

だから、本来なら中編ほどもないこの話を、単品で一作品にしてしまおうという企画自体が無理なのだ。
「デモンベイン」はニトロの代表作の一つであり、メーカーにとってもある程度のペイを見込める貴重な作品のはずだ。
それを、こういう売り方で評判を下げてしまうのは非常にもったいない。
もしコンシューマーに移植するのであれば、格闘パートは最初から見直しを図った方がいいと思う。

前作が非常に良作だったからこそ残念だったし、ここ最近のニトロの低迷ぶりを、「デモベ」なら何とかしてくれるんじゃないだろうかと思っていたから、そして、格闘パート以外は期待以上の出来だったから、余計に惜しいと思う。
「デモンベイン」の世界観がたまらなく好きな人、鋼屋ジン氏のファンにはお勧め。
本当ならこのシナリオ、前作プレイ者には問答無用でやってほしいのだが、格闘パートがそれを阻むため、「短い、高い、
めんどくさい」を克服する覚悟を決めた人のみ。

マブラヴ オルタネイティブ

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1086★★★★

※注! この作品は、「マブラヴ」の続編です。単品でも遊べますが、内容理解のために、事前プレイを強く推奨。
なお、作品の性質上、「マブラヴ」のネタバレが含まれます。文中での「前作」は、すべて「マブラヴ」を指します。

発売日当日の分割商法発表、「続編ではない」と開き直った公式コメント、挙句の果てに3年、複数回に渡る発売延期。
「人類を無礼るな(なめるな)」というキャッチコピーに対し、「ユーザーをなめるな」とツッコまれるのも無理はない、ネガティブなイメージが先行してしまった本作ですが。

なるほど、と思った。これを作っていたのなら、前作から3年の制作期間を要したのも頷ける。
はっきり言って、その辺の有象無象を作っているメーカーなど、裸足で逃げ出すクオリティだ。
実は私も、プレイ前までは前作が「未完」という、作品として評価以前のレベルだったこと、そもそも全然面白くなかったことも相まって、今作は間違いなく地雷だと思っていた。
素直に撤回しよう。多少の好悪の差といくつかの問題点はあれど、これはある意味、業界で最高レベルの作品だ。
一度プレイしてみても損はない。

今作をプレイすると、前作は本当にプロローグでしかなかったことが分かる。
だからこそ、前作から3年もの歳月が流れてしまったことが悔やまれるのだが。そんなに前にばらまかれた伏線、よっぽどやり込んだユーザー以外、いちいち覚えてるわけがない。
2本同時発売、もしくは、シナリオをもっとシェイプして1本にまとめあげてくれてさえいれば、途方もない破壊力を振るったであろうことが、返す返すも惜しまれてならない。

絵は総じて合格点。この奇異なキャラクターデザインが受け入れられるかどうかによって、だいぶ印象は変わってくるが、CGの出来自体は悪くない。髪の毛痛そうだけどね。尖りすぎだ。
枚数も作品の尺に対してちょうどよい割合だし、とにかくよく動く演出によって、大幅な底上げが図られているため、「見せる」という点に関しての満足度はかなり高い。
ただ、一部ユーザーを恐慌に陥れたグロ画像は確かに存在するので、気になる人は対策パッチを使用する手も。
だが、理由はシナリオのパートで後述するが、これを正面きって受け入れられない人は、この作品自体が受け入れられない可能性がある。

音楽は、マッチングに関しては文句のつけようがない。
私はJAM Projectの大ファンなので、多少のひいき目はあるかもしれないが、作品世界をこれほど体現したテーマソングは、なかなかないと言っていいと思う。
また、挿入歌も名曲で、使いどころがおいしすぎるもんだから、作中、数回しか流れないのに、印象の強さは格別。
だが逆に、BGMは前作からの流用がほとんどで、曲のレベルは悪くないが、ボリューム的には物足りなかった。
プレイ時間が長時間に及ぶため、そう感じるだけかもしれないが。

さて、ageご自慢の演出システム、「AGES-ACS」と、ゲームシステムのrUGP。
この作品の必要性の8割は、このシステムによってもたらされる表現力にある、と断言する。
確実に他のメーカーより頭抜けている。これより上を行くことは、現時点では難しいだろう。
その驚異的な力は、これで静止画の限界かと思われた「Fate/hollow ataraxia」をも上回る。
(ただし、カメラワークやセンスは向こうの方が上)
夕暮れから夜へと刻々と移りゆく背景を、まったく違和感を感じさせずにシームレスで行うシステムなど、今までお目にかかったことがない。
さらに、正面が基本であるAVGにおいて、自分と並んで歩いているキャラが、主人公(プレイヤー)から見て、ちゃんと隣に見える視点移動が可能だとは思わなかった。
二次元の制約上、戦術機の動きなどはどうしても平面っぽく見えてしまうのだが、それでも段違いの迫力。
また、視点がコクピット内に移動すれば戦術機のモニタ画面が現れるのだが、これが実に細かい。データのやりとり、各キャラとの通信をするたびにウインドウが目まぐるしく入れ替わり、挙句、シナリオ内で使用したと記述のある弾薬が、きちんと表示から減っていく。
普通なら、まず間違いなく一枚絵で済ませるところだ。
そういう、ある種、偏執的なまでのこだわりが感じられ、おかげで臨場感はたっぷり。

このように表現力では現行最強レベルのシステムを有しているのだが、環境面では細かい点がいくつか気になった。
とにかく、テキスト周りがかなりひどい。
映画を意識した作りなので、AVGにはお馴染みのメッセージボックスがなく、セリフや説明は字幕のように表示される。
だが、2~3行しか現れず、それなのに細かい設定が多いため、異常に多い説明量。
さらに、全文にセンタリングがかかってしまい、変な箇所で折り返しが入ると、大変に読みにくい。
また、見せ場らしき箇所になると、途端に文章送りを受け付けなくなり、いともたやすくコントロールを奪われてしまう。
最初から、「読ませる」ということは念頭にないようだ。
ゆえに、特殊な読みにルビを振ってあることも一切なし。突撃前衛隊長(ストーム・バンガード・ワン)とか、普通読めないよ。
音声を聞くことが当然と言わんばかりの仕様になっていて、AVGとしてのスタイルはもはや意味を成さない。

「こう遊んでほしい」という、製作側が抱く望ましいスタイルがあるのは分かるし、それは当然だと思う。
だが、その意識があまりに強すぎて、結果的に押し付けがましさを感じてしまい、わずかな不快感を伴う結果となっている。
「ゲーム」として売り出すのなら、ユーザーを長時間モニタ前に縛り付けることに配慮したシステムを構築するべき。
個人的には解像度のワイド化も苦手だ。どうしても、800×600に慣れてしまっているので。

さて、それでは、前作は途中でぶん投げられてしまったシナリオ。
基本的に、シナリオ自体に目新しさはない。
ネタ自体はそもそも、「宇宙からの侵略者に対抗する地球人」という、ありがちすぎてもう誰も使わなくなった素材だし、「並行・ループする世界」に至っては、この業界内に限定したって、太刀打ち不可能な名作がいくつかある。
作中で謎扱いされている脳髄だって、その正体や使われ方を看破するのは難しくもなんともない。

だが、ストーリーを重視する作品には、大きく分けて2タイプある。
一つは、斬新なアイディアで、誰も知らないワクワク感を提供するもの。
もう一つは、結末は誰もが知っている(または予測できる)けれど、それを見届けたいと思わせる勢いを持つもの。
そしてその後者こそが「王道」と呼ばれるものであり、この作品が目指したものだ。

基本的な流れは、どん底とそこからの脱却、希望が見えてまたどん底、の繰り返しなので、精神的な揺さぶりが苦手な人にはきついかもしれない。
特に、持ち上げた後の叩き落し方は、本当に容赦がない。その演出力には空恐ろしいものがある。
もっとも、それが行き過ぎて、グロ画像云々で騒がれる羽目になったのだが。
実際は、画像自体のグロ度は、さほどひどくはないと思う。普通に妖怪とか異生物とかと大して違わないレベルよ?
ただ、その使われ方があまりにも衝撃的なため、度肝を抜かれた人が多かったわけなのだが。
でもそれって演出の勝利なのだから、ユーザーは受け入れるべきだ。

むしろ最大の難所は、どうしてこのメーカーは、ヘタレばかりを主人公に据えるのか、ということなんですが。
とにかくもう、最初から最後まで腰抜け丸出し

悲劇のヒーロー気取りでぐちぐち悩む → 仲間・上官に助けられる。または説教される → ちょっと浮上。俺頑張るよ、今度こそ成長しなきゃ! → どん底に叩き落される → スタートに戻る

と、総プレイが30時間近くかかる作中、延々とこれの繰り返し。およそ、学習するということがない。
これじゃ、ループしてるのは世界じゃなくて主人公の思考だ。
しかもこの状態がラストバトルまで続き、もういい加減にしてくれ、とげんなりしてしまう。

せっかくラストバトルに赴く前に、若本声による超かっこいい演説&かなり高品質の渾身のアニメが入り、ボルテージは最高潮になっていたというのに、そのテンションが主人公のせいで長続きしないという皮肉な結果に。
そもそも、今まで苦楽を共にしてきた肝心の207分隊出身者が、どれもこれも大して魅力がなく、感情移入もできない。
この面々では、中盤以降の立役者だった、他の部隊員が退場させられてからラストまでのシナリオを背負って立つには、あまりにも役者不足。
となると、あとは死亡フラグが立っているのがありありと見てとれて、一気に興ざめ。
サブキャラの方がずっと魅力があったし、そちらのエピソードに良いものが多かった。
(余談だが、孝之がすでに戦死していたのには軽く笑った)

結局、オルタ主世界では一時的な平和を得たにすぎず、ラストバトルの腰砕け具合も相まって、全人類や他世界すら巻き込んだ、やたらと壮大な設定のわりには、カタルシスの薄いシナリオであることは否めない。
さらに、再構築された世界に戻ってからが、途端にテンポが悪く間延びしてしまい、どうして最後の最後でコケるのかと腹立たしくなった。
不幸にも命を落とした人が、皆生きて笑い合ってる心優しい世界。そういうご都合主義的エンドは予想の範疇だったが、主世界の記憶すらも失っているのでは、その世界は、自らが厳しい戦いを勝ち抜いて得たものだという意味がない。
あ、そういえばこれは、「あいとゆうきのおとぎばなし」でしたね。
でも、「めでたしめでたし」にはほど遠いよ、これじゃ。

以上、色々書いたが、これは、良くも悪くもageというメーカーにしか作れない作品。
ユーザーにおもねることをよしとせず、強固に製作側の意思を尊重したその姿勢は、メーカーの基本姿勢なのだろう。
その、ある種傲慢ともとれるスタイルを、体力と品質によって押し通してしまうのがこのメーカーの特異な点であり、正直言って私はあまり好きになれないのだが、業界の中にはそういうところもあっていいと思う。
それだけの品質のものを出していることは確かなのだし。
実力の伴わない他のメーカーが同じことをやったら、失笑と非難にさらされるだけだしな。

メーカーのファン、もしくは前作プレイ者にお勧め。
特に、前作で投げた人は、やってみる価値はある。今作をやることによって、初めて前作の意味が浮き彫りになる仕様なので。
あとは、もっとユーザーを大事にしてください。せっかくの作品も、プレイする人がいてこそ。
作り手が遊び手を選ぶことは許されない。しかしそれこそが、エンターテインメントの供給者のプライドだと思うのだが。

蠅声の王

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
82★★★

かつて隆盛を誇ったゲームブックを、あえてもう一度デジタルメディアを使って再現しようと試みた意欲作。
新ブランドならではの試みや、ゲームブックという媒体への愛が感じられて、私は非常に楽しめた。
ただし、ものすごくプレイヤーを選ぶ作品です。最近の、インストールさえしてしまえば、あとは手放しでクリア可能なような至れり尽くせりのシステムを良とする人には向きません。
複数のページに指を挟みまくり、手元にはメモ、鉛筆、消しゴム、さらには電卓をも用意して、ダイスと紙と文字が織りなす
冒険に敢然と立ち向かった人、もしくはこれから立ち向かおうとする人向け。
能動的にゲームを楽しもうとする姿勢がなければ、このゲームの面白さのキモは分からないと思うので。

新規参入なだけあって、まだまだマンパワーが不足しているらしく、絵と音楽、プログラムは外注。
だが、どれも非常に良いバランスでまとまっており、雰囲気はバッチリ。
特に絵は、どちらかというと硬質の文体のため、色気が不足しがちな今作において、それを補って余りあるエロさがあり、女性原画家にありがちな、ヒョロヒョロの体つきをした男もいないし、とても良い出来。
差分CGもかなりの数が用意されており、質量ともに充分。視覚的な満足度はかなり高かった。

音楽は、実にバラエティに富んだ作り。
喰屍鬼(グール)が跋扈する不気味な城の中では、いつ襲われるか分からないドキドキを煽るような緊迫感たっぷりの曲を。
戦闘時には迷宮の探索による鬱屈を晴らすかのような、ビートの利いたアップテンポの曲を。
全体的に抑えた曲調が多いのだが、どれもシーンにはマッチしており、納得のいく仕上がり。
ただ一つ不満なのは、これだけのボーカリストが参加しておきながら、ボーカル曲らしいボーカル曲が少ないこと。
EDと挿入歌の数曲だけ。しかもその挿入歌は歌詞が造語で、確かに雰囲気は出ているのだが、歌と言うよりはコーラスの
雰囲気が近いため、何だか肩すかしな感じを受けた。
宣伝材料にもボーカリストの名前は上がっているし、皆、すでに固定ファンがついているようなメジャーな歌い手だ。
作品の方向性を考えると、その選択は決して間違っていないのだが、惜しかったなぁと思う。

さて、プレイヤーによっては賛否両論があるであろうシステム。
とりあえず、足回りは標準的。もたつきもないし、落ちたりバグったりすることもない。
環境によっては落ちるらしいが、すでにパッチが配布されているので問題はないだろう。
では、何が賛否の対象になるのかというと、自由度がありすぎる、実に漢気溢れるゲームシステム。

ゲームブックというものをまったく知らない人のために説明すると、通常、プレイヤーはダイスを振ることによって、その値が指し示す次のシーンへと移動する。
これは戦闘も同様で、ダイスの目によって与えられるダメージが決まっており、その管理は基本的にプレイヤー任せ。
だが、アナログメディアであればこそのズルはし放題。
戦闘には問答無用で勝ったことにしちゃったり、先のシーンをちょろっと覗いて、危ないところがないか確認してみたり。
まさかデジタルメディアではそこまで再現するわけなかろう、ハッハッハ。なーんて思わなきよう。

このゲーム、(プレイヤーが)やりたい放題ですから。

確かにダイスは振れる。でも、その値に従わなくとも、何のペナルティもない。
ついでに、他のシーンには飛べないようになっていたり、そういう制限を設けているところもない。
極端な例を出せば、序盤でうろちょろしていたのに、次の瞬間にはEDシーンを拝むことも可能。
戦闘だって、振ったダイスの値が自動的に記録されたりすることもない。だから、たとえクソ目が出たとしても、脳内でなかったことにすることが可能。それどころか、「勝利した場合」の次シーンへ移動も可能。
公式ルールに則って、ダイスを振り続けるもよし。
ズルしてとにかく先に進むもよし。
自分ルールで好きなように遊べる無茶苦茶な自由度。デジタルメディアでありながら、つまり、そういう制約をプレイヤーに課すことが可能でありながら、あえてそれを行わない潔さ
「ゲームブックの面白さ」というものを信じていなければできない、大胆な選択だと思う。

そういう選択をしたことに、古のゲームブックファンである私としては賛辞を送りたいのだが、反面、ダイスの値やパラメータの変化が記録される、「管理モード」のようなものがあってもよかったのでは、と思う。
おそらく、それをやると、戦闘になかなか勝てない、迷宮から全然抜け出せないという、ゲームとしての難易度(&ダルさ)が飛躍的に向上してしまうから付けなかったのだろうが、せめて、パラメータの自動記録ぐらいはしてほしかった。
-7-2-3+5とか羅列してある、他人から見たら何の暗号かと思われるメモを片手に我に返ったとき、ちょっぴり、「ふー……」と己を振り返りたくなりましたので。

シナリオは、今作の特徴上、さほどボリュームがあるわけではないが、かなり魅力的な設定、キャラとなっている。
反面、その設定をフルに生かしきれているとは言い難く、そこが引っかかる。
せっかくの設定が説明されず、そこをもっと掘り下げると、AVGとしても相当楽しめるものになったのではないかと思うだけに残念でならない。
「ゲームブックの再現」という形にチャレンジした今作だからこそ仕方のない点でもあるのだろうが、舞台が限定されてしまっていて、あれ? もう終わり? という感が否めないのだ。
各キャラがそれぞれ所属する組織へ戻ってみるとか、最初は別の事件を解決するところから始まり、外から「蠅声の王」の恐怖や強大さをもっと浮き彫りにするとか、色々風呂敷を広げる手法はあるだろうと、ド素人が考えに至るくらい、色々なやりようのある深さを持つ設定だけに、もっともっとこのキャラたちと付き合いたかったというのが正直な感想。

反面、謎解きの手応えはかなりいいものを感じる。まさに往年のゲームブックレベル。
考えるのが面倒な人、ヌルゲーにどっぷり浸かった人には向かない難易度で、解けたときの爽快感はなかなか。
ヒネリの効いた問題も多く、それにはきちんと相応の報酬もあるのだから、思わずムキになって取り組んでしまう。
序盤~中盤は、廃村から城内の探索がメインであるだけに、ともすれば単調になりがちなのだが、随所に笑いの要素があったり、どこがデストラップに繋がるか分からない緊迫感があるだけに、なかなか飽きさせない。
(油断してると即死亡。「014へ行け」にそれこそ死ぬほど遭遇する羽目になる。この辺、まさにゲームブック)
また、中盤~後半は燃えるバトルや前述の謎解きも歯ごたえを増し、たたみかけるようにラストへとなだれ込む。
この辺のさじ加減は絶妙で、止めどころに困るほどに魅力的な展開であり、一気にプレイしてしまった。

以上、ゲームブック好きは思わず涙するほどしっかりとまとまっていて、この試みは一見の価値あり。
ただ、評価はするが、正直値段は高すぎる。これは、新ブランドで資金力がないだろうから仕方がないとは思うが、他メーカーなら4~5千円ラインに乗せてくる作品だ。
その方が、結果的にはもっと多くのプレイヤーに触れてもらえるような気がしただけに、販売戦略の練り直しが必要では、と思った。
余計なお世話だとは思うが。
フルボイスなわけでもないし、別にメディアがDVDでなくたってかまわなかったのでは。
CDだろうがDVDだろうが、面白い作品には容量やメディアの垣根はないので。
(マイベストエロゲーの月姫はCD、次点のYU-NOに至ってはFDだぞ)
ぶっちゃけ、特典はどれもいらないので、その分安くしてほしかった。鉛筆とかいったいどうすれば。
(私はメーカー直販で購入した)

とにかくシナリオだけを追いたい、エロだけを楽しみたいという人には不向きな作品。
そういう人はプレイしない方が、ユーザー、メーカー、双方にとって幸せであると断言する。
往年のゲームブックファンはぜひともおやんなさい。その忠実な再現ぶりに、思わず感嘆できることでしょう。

サバト鍋

作品シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
ニトロウォーズ82★★★
竜†恋84★★★
戒厳聖都83★★★

※これはアミューズメントディスクです。STGとAVG、RPGの3本の作品が収録されているので、それぞれについて書いてあります。


■ニトロウォーズ(STG)

歴代のニトロキャラがザクザク登場する、横スクロール型STG。ニトロ版パロディウスと言えば分かりやすいか。
特殊弾を使って、キャラを仲間にすることができる。(最大4人)
この、デフォルメされたドットキャラたちのリアクションは、それぞれの設定に合った攻撃パターンで、見ているだけでもかなり楽しいのだが、敵の攻撃もシビアなため、のんきにそんなことをしている余裕があまりないのがつらい。
(STG苦手なのですよ。すいません)

難易度は使用武器によってガラリと変わる。
ぶっちゃけ、レーザーさえあれば、仲間は弾除けorボム要員でしかない。
気軽な「お遊び」を前提に作られているため、コンティニューの無制限や、ステージセレクトも可能となっており、全体的な難易度はそう高くはないのだが、(私がクリアできるくらいだから)それにしたってこれはバランス悪い。
自機は大きいが、当たり判定はそう大きくはない。ただ、敵の弾なのかアイテムなのか判別がつきにくく、突っ込んで玉砕することもザラ。
基本的におふざけシナリオなので、そういうのに耐性がある人だけ。

ちなみに私同様、STGを苦手とする人へのアドバイス。

  • カーソルキーなんてナンセンス。何はなくともパッドは必須。ただ、Z・X・Cを各ボタンに割り振るのを忘れると、弾が出なくて泣きを見る。(そんなアホウは私だけだ)

  • 武器は完全ランダムだが、レーザー以外は必要なし。レーザー3段階になったら勝機は我にあり。

  • 仲間はボス戦の最中でも現れるので、道中、避けきれないと思ったら、素直にボムを使おう。

  • やられても何度でも立ち上がれ。地形と敵出現パターンさえ読みきれば何とかなる。


■「竜†恋」(AVG)

「斬魔大聖デモンベイン」のライター、鋼屋ジン氏の新作AVG。
アミューズメントディスク収録の短編、ということで、総プレイ時間1時間ちょっと、とボリュームはかなり少なめだが、ギャグあり、シリアスあり、典型的なボーイミーツガールでありながら、実は殺愛、と芯の部分はやっぱりニトロな作風で、気軽に楽しめるけれど、抜群の安定感を誇る一本。
「天使の二挺拳銃」出しちゃうような、迷走中の最近のニトロ作品群の中では、純粋な楽しさでは1,2を争う出来。

ボイスもボリュームもない、キャラに名前すらないのに、プロットは断然光っている。
ここまで非常識な設定を使って、それでも王道で正統派なストーリーに仕上げる手腕は、さすがデモベのライターの面目躍如というところか。(でもニトロ臭プンプンなのがイカス)
これは完全に短編向きの設定であって、まさにアイディアの勝利。
学校や街を壊しまくっているのにも関わらず、後のことや余計な心配のいらない短編という前提があるので、飛ばし放題、はっちゃけ放題のテンション高めギャグだが、尺が短いため、飽きたりげんなりしたりする前に楽しいままで終われる。
その突き抜けっぷりのおかげで、小気味よいテンポが生まれているので、これはこれでよし。
さらに圧巻なのは、メーカーが持てるリソースを最大限に生かした、ボーカル曲5曲もの投入。
このサイズの作品にそこまでやるか? というニトロイズムを感じて大変によろしい。
「萌えて進め!」は全オタク必聴の一曲です。♪萌え! 萌え! 萌え萌え萌え!
というわけで、鋼屋氏の作風が好きな人なら、まず間違いなく楽しめる、良質の短編。


■「戒厳聖都」(RPG)

賛否両論巻き起こした、「刃鳴散らす」収録の外伝、「戒厳の野望」の続編にあたるRPG。
よくもまぁ、このニトロのシステムをそのまま使ってRPG作ったもんだ、と半ば感心しました。
ただし、基本的にAVG用に作られたシステムを流用してるわけで、移動や装備といった、RPGお馴染みのコマンドに対するインターフェースやレスポンスは、当然ながら激悪。
ニトロのシステムと相性の悪いマシンだと、たぶん相当つらいことになるはず。

さらに、ゲームバランスもめちゃくちゃに厳しい。レベルが1つ違うだけで、ザコにすら瞬殺される。
それなのに、回復アイテム入手すらもバトル勝利が前提となっていたり、HPを回復させるために休憩していても、高確率で襲われたり、と、とにかく鬼のような作りに血涙すること必至。
よって、推奨レベル以下でのプレイは自殺行為。むしろほぼ不可能。(ちなみに安全地帯などは当然ない)
そんなわけで、レベルアップがすべての鍵を握る、実に地味かつストイックなRPG。
これが武人というものか……!(違)

序盤は、まるでジャンケンのような面倒くさい戦闘システムに慣れていないのと、シナリオの制約上、何だか自分が不安定な立ち位置で右往左往することになるため、はっきり言ってかなりダルい。
おそらく、ここで投げる人が多数。
だが、早まることなかれ。シナリオ3あたりから俄然燃える展開になってきて、多少のつらさは我慢できるようになる。
大ラスにはある仕掛けも施されており、シナリオはかなり読ませる。やばいなぁ、私、このライター大好きかも。
アミューズメントディスクにしては、プレイヤーを限定しすぎているのが難点だが、「刃鳴散らす」を楽しめた人なら、一読の価値があるものに仕上がっているため、ぜひ、忍耐力を総動員して挑んでほしい。
余談だが、移動できる街中の背景は今までの作品の流用なので、ニトロコンプリーターならニヤリとできることうけあい。
まさか、「咎狗の血」からも持ってきてるとは思いませんでした。
今にもビトロ様が出てくるかと思って、ドキドキビクビクしちゃったよ。

あやかしびと

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
87★★★★

SSの書き手として非常に有名な、東出祐一郎氏がシナリオを務めた今作。
元々、氏の作品が大好きな私としては、期待の一本だったわけですが。
昨今の作品には珍しいくらい、きっちりとコードを守った良質の学園伝奇AVG。
物語自体は、決してただのハッピーエンドではなく、それなりに犠牲を伴う展開であるというのに、誰にでも分かる形で伏線を完全に消化しているのと、着地場所がかなり良いため、EDにはとてつもない清涼感があり、プレイして良かったと思える快作。
はっきり言って、シナリオにはほとんど文句はない。限りなく9点に近い8点。
一部でこなれてない部分があったり、同じ段落中でも表現が重複していたり、そういう細かいミスが散見されるので8点としたが、それはほとんど瑣末な問題。

シナリオ以外は全体的にそつのない作りであるものの、システムがやや劣る。
実装機能はAVGをやるにあたって何一つ過不足がないし、とりたてて手酷いバグもないのだが、とにかくレスポンスが微妙にもっさりしていて、操作感は今ひとつ。
戦闘時のエフェクトなどはもたつきもなく、画面演出上は問題がないのだが、一度見たEDを飛ばせなかったり、細かいところで使い勝手が良くないのが残念。

音楽はごく普通。作中のBGMは、最近の傾向より、少しレトロっぽい曲調だが、作品にはマッチしている。
だが、取り立てて良い悪いということがなく、あまり記憶に残らない、平凡な印象なのが残念。
OPEDはボーカル曲だが、これもあまりパッとしない。
OPは、作中で展開されるであろう熱い闘いを予感させる仕上がりなためまだいいのだが、せっかくすっきりとしたEDを迎えても、肝心のED曲が重厚すぎて、最後の最後で大ジャンプに重しをされてしまったような印象を受ける。
というわけで、音楽面ではあまり高評価はできないのだが、音声面はすごすぎる
もう、登場人物の片っ端から、現在第一線で活躍中の主役クラス声優陣がこれでもかとわんさか登場。
このキャスティング、異常に豪華すぎてかえって焦ります。今回、事前情報まったくなしにプレイしたもんだから、虎太郎と九鬼が登場した際は、思わず息が止まりかけました。
エロゲをやらない声優オタクが聞いたら、悔しさと興奮で卒倒すること間違いなしの超豪華キャスト。
当然、ハズレなしです。

原画は燃えアニキと化物を描かせたら右に出るものなし、の中央東口氏。
氏はなぜこうも、私のツボをしたたかに刺激するアニキ共を量産しやがりますか。さては萌え殺す気ですか。
このゲームの最大の萌えポイントは、この絵にあるといっても過言ではない。
(ただし、伝奇バトル萌え者限定)

メ・ガ・ネ! メ・ガ・ネ! 坊・主! 坊・主! 隻・眼! 隻・眼!

すいません、取り乱しました。
とまぁ、作中にかなりのキャラが出てくるが、いずれも被ることなく、それぞれ大変魅力的に描かれていて、安心してゲームを楽しめる。
ああ、アホ毛のない原画は素敵だなぁ。

演出面もなかなか頑張っている。
最近流行りのカットインの多用、バトルの際のエフェクトなども格好よくまとめてあるし、ギャグパートでのへたれ絵も、ぴょこぴょこ動いたり、表情が変わったりして楽しくかわいい。
見せ方はかなり研究しているな、という印象を受けた。

さて、冒頭で高評価をしたシナリオ。
とにかく、日常パートの描き方が非常に巧い。いつまでもダラダラと描写を続けたり、毎日が同じことの繰り返しではなく、小さいけれど様々なエピソードが用意されている。
そして、そこでは登場人物ほとんどすべてにスポットが当てられる。
それも、取って付けたようなものではなく、その人物の個性や能力を生かした見せ場であるため、キャラそれぞれが強烈に印象に残り、物語を大きく盛り上げるのに一役買っている。
何よりも、皆クセの強いキャラなのに、ちっとも嫌らしさがなく、そんな彼らが織り成す空間はとても心地が良い。

肝心の攻略可能キャラは、黒髪ロングで戦う巫女さん(兼先輩)、プラチナブロンドのクールな戦闘美少女、見た目はロリで実は年上、でも無垢な人外、自らを殺して戦いに身を投じた軍服ねーさん。
死角がないよ、この布陣。何てスキがない。
展開も、この手の作風が好きな人ならたまらないシチュエーションばかりを、確実にピンポイント爆撃してきやがります。
マスター、このミサイルはファティマコントロールです、当たりますッ!(C)ファイブスター物語
ああそうだよ、斬り合いも撃ち合いもカーチェイスも復讐も大好きなんだッ!
東出祐一郎、恐ろしい子……!

プレイ時間だってそれなりに長いし、普通ならたるみがちな日常生活の描写も多いのに、途中、ダレをほとんど感じさせない、絶妙のさじ加減。
ギャグとシリアスの配分が、綿密な計算の元にきっちりと機能している。この構成力・調整力こそがプロの技、と素直に感心した次第です。
どちらかというとこの業界、ハイテンション突き抜けギャグ系が多く、実際そっちの方がウケやすいのに、決してそっちに流れることなく、あくまでも物語の雰囲気を壊さない、それでいてきっちりと笑いのツボを押さえたテキストは、かなりテンポ良く、ストレスをほとんど感じずにサクサク進むことができる。

シナリオの数少ない難点を挙げるならば、入れなくていいところにエロを入れてしまったことがまず一つ。
エロゲーだから、その姿勢はある意味正しいとは思うし、サービス精神も見上げたもんだとは思うが、いくら何でも、敵地に突入してまで3Pとかしないでください。あまりにも緊張感がなさすぎるよ。
しかも、当人たちは主人公除いて戦闘のプロ。そんな油断がどんな事態を招くかは分かりきったことなのでは。

そしてもう一つは、もういちゃもんの類なので軽く聞き流してほしいのだが、あまりにもきれいにオチすぎていて、逆に驚天動地の衝撃というのがないこと。
ネタとキャラを余すところなくきっちり使い、実に手堅くまとめている。それが確かに全体的なバランスが保たれた、高レベルの作品という評価につながったのだから、その選択は間違いではなかったのだが、どうしても落ち着きすぎちゃってる感が否めない。
良い意味での、「そんなアホな!」というツッコミどころがなく、伝奇物の魅力である、ド派手な荒唐無稽さを楽しむ余地が少ないのが残念。

また、ラストバトルをムービーにしてしまったのが痛い。文章の表示スピードが遅すぎて、スピード感や緊迫感がガタ落ち。
決戦という最大の山場では、決してプレイヤーの熱を冷ましてはいけないのに、コントロールを奪われてしまうことで、我に返らざるをえない。
それによって、有無を言わせぬ勢い、というものが削がれてしまったため、最後だというのにイマイチ乗り切れなかった。
しかも、(ネタバレ危険!)主人公も敵も、すでに人としての面影をほとんど残していない形状と化しているため、それまでの感情移入がどうしても途絶えてしまう。
RPGのラスボスなどではお馴染みの手法だが、私個人の好みが、「人の姿でありながら、人としての力を超えた者」なので、見た目が変わってしまうのは違うだろー、
と思ってしまうのだ。
絶望的な状況を打破するため、禁断の領域に踏み込むというのは大好きなシチュエーションであるだけに、余計にそれが
悔やまれる。

以上、色々と小うるさいことを言ったが、かなり多くの様々な要素をここまで盛り込んだのに、それらを破綻することなく、一つのカラーにまとめ上げたパワーは素晴らしい。
ただ、ほんの少々惜しむらくは、すべてにおいて冷静すぎた。シナリオは暴走しすぎれば興ざめだが、燃え系においては、多少突っ走るくらいがいいのだろうということ。
中には、冷静な筆致だが、それでも熱くてシビれる物語を生み出せる虚渕玄という稀有なライターもいるわけだが、これは確実にその系譜をリスペクトし、そこに連なる作品だと思う。

最初から最後まで非常に気持ちよく楽しめる、良質のエンタテインメント。快作、というのに相応しいと思います。
学園伝奇AVGという単語に身悶えできる人はぜひ。決して損のない一本です。

刃鳴散らす

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
81★★★

「天使の二挺拳銃」「塵骸魔京」と立て続けにスカり、ちょっぴりやさぐれていた上、世評がやけに芳しくなかったので、半ば地雷覚悟で特攻した本作ですが。
何だよ、普通に面白いじゃん。
まぁ、評価がはかばかしくない訳もよおぉぉっく分かりましたが。

私的にはこれはOK。全然問題なし。ある意味、究極にニトロらしいです。
そもそも、BLでもないのに、こんなに女に存在価値のない作品、初めてです。これ、一応エロゲだよね?
ぶっちゃけ、登場人物を全部男に変えても、何一つ違和感ありません。つーか問題なし。モウマンタイ。
そしたら今度は硬派なボブゲとして売り出せそうです。

というわけで、どんな鈍感なプレイヤーでも分かる。
この作品がやりたいのは、斬り合いであって剣戟であってチャンバラなのだと。
それ以外の付加価値など、台風の前の紙くずみたいなもの。ちょっと重要そうに見えるキャラでも、出てきたそばからバッタバッタと退場させられていく。
もうこの作品は、

唯一無二の相手と、ただ一度の、生死を賭けた仕合――死合

を描くためだけのものであり、ニトロ一流のスタッフによって、商業作品としてきちんと昇華されてはいるものの、この、他のすべてをなげうって「やりたいことだけをやりたいようにやっちゃった」感は、むしろ同人誌のマインドに近い。
放った球で打ち取ろうと打たれようと後は知ったことか、俺は何が何でもこの球を投げるんだ、という、微塵もぶれない超剛速球ストレート。他の決め球はなし。ある意味清清しいまでに徹底してます。
低価格ラインの小品だからこそできた冒険であり、私はその気概や良しと評価する。
もちろん、このサービス精神のなさっぷりが気に食わない人も多数いるわけですが。

書きたいことがはっきりしているだけあって、とにかく剣戟に関する描写は異常に多い。
その薀蓄に興味が持てなければ、たぶん5分と保たない。むしろ、最後まで到達不可能。
エロはクリック数回で終わっても、この描写は延々と続きます。
ただ、それを受け入れられる人ならば、ライターは実際にある流派の師範代らしいので、実学に基づいた、一風変わったチャンバラを楽しめる。
この、虚と実の混ざり具合がなかなか楽しい。運足の重要性に触れておきながら、空中で宙返りして相手の後ろに立つ、とかおバカなネタもあって、決して教則本を読んでいるような退屈さはない。

ただ、復讐する者とされる者の間に何が起こったか、とか、同胞であった時代の絆の強さについては、さらっとしか触れられておらず、ここをもっと盛り込めばよかったのに、と思う。
そうでないと、殺す殺されるのせめぎ合いと、お互いの妄執が生きてこない。そこが鬼哭街との違いか。

この殺し合いの果てには、当然ながら何一つ報われるものなどない。だが、それでいい。
(↓ネタバレ危険!)
憎き相手の肉親、と、自らが首を刎ねた人間は実は――。
そして、相手のただ一度だけの魔剣は完成し、復讐はその前に敗れ去る。
復讐者との魂を賭けた果し合いを終えた主人公は、自ら花散らす――。

このライター、よく分かってる。これこそが浪漫です。これこそがカタルシスです。
剣に生きる者は、剣に倒れるが定め。剣を持たずして生きる価値などないのですよ。
この展開に、純真なプレイヤーはマジかよーとげんなりするだろうが、私はニヤリとした。
この、最後まで貫かれた意地が何とも心地よい。

だからこそ、1周目以降のサブシナリオが余計なのですが。
中身は、同メーカーのある作品のセルフパロディ(同じテーマソングまで流れる凝りよう)だが、最初のエンドで、どシリアスな物語を大いに堪能しただけに、思わず(゚Д゚)ポカーンとしてしまった。
私はおふざけや内輪ネタも特に嫌いじゃないけれど、今作に限っては、できれば本編でなく、メニューからサブシナリオを選ぶ形式とか、もうちょっと作品の雰囲気を大事にしてほしかったなぁと思う。
これで怒った人も多いみたいよ。気持ちは分かりますが。
絵・音楽・システム・演出に関しては割愛。いつも通りのニトロです。安定しすぎていて書くことなどありませぬ。

いったい誰に勧めていいのか非常に迷う作風だが、破滅が嫌じゃない、そして守備範囲の広い人、とにかくチャンバラが好きという人、あたりは大丈夫かな?
私は結構楽しめた。「サバト鍋」に収録される「戒厳聖都」も、楽しみに待つとします。

Fate/hollow ataraxia

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
101087★★★★

※注! 当然ながら、「Fate/stay night」のネタバレが含まれますので、まさかいないとは思うが本編未プレイの人は要注意!

1年9ヵ月ぶりに満を持して発売された、TYPE-MOONの新作は、「Fate/stay night」のファンディスク。(以下FD)
「月姫」の際の名作「歌月十夜」の例もあるし、FD作りには定評のあるTYPE-MOON、当然今作も鳴り物入りで登場したわけだが。

作り込みの度合いが完全にFDを逸脱してます。これは紛れもなく新作です。

その、あまりにも長期に渡る開発や、FDにしては高すぎる価格設定等、正直不安を拭えなかったのだが、実際にプレイしてみたらば、なるほど、と納得できる作り。
おそらく、現時点での総力を結集したのであろう豪華な作りは、随所において前作よりも格段にパワーアップを実感でき、貴重な土日を惜しげもなく費やしてクリアしてしまった。

大幅に増強が図られたグラフィックチームは質量共に素晴らしい仕事ぶり。
武内氏の表情豊かな原画が、膨大な立ち絵と繊細な色遣いによって情感たっぷりに仕上げられており、イベントの大小に関わらず、それらを惜しげもなく次々と投入する物量作戦は圧巻。
FDなのだから当然前作からの使い回しもあるけれど、こちらの予想を遙かに上回る新規追加グラフィックの数々にはかなり満足できた。
また、全身図や没ラフなども拝める別のモードもあり、これもサービスたっぷり。

そして、これらの静止画を使った演出。
もはや、現時点でこれを上回る静止画の表現方法はないだろう、というくらいの多彩っぷり。
メーカー特典のアレ本2にも記載されていたが、これ以上だとアニメになってしまう、というのも頷ける。
それほどまでに、限界まで追求された絵と動きとエフェクトの相乗効果は、他の追随をまったく寄せつけないレベル。
それが別にビッグイベントではなく、単なる日常の一コマにも至るのだから、そのこだわり具合はハンパでない。
またそのエフェクトのかけ方やカメラワークも、非常に洗練されていて飽きさせない。
演出のつくりものじ氏のセンスに脱帽。

今までは音楽が弱かったTYPE-MOON作品だが、今回はこちらもかなり頑張った。
無音の箇所はほとんどなくなり、曲自体のレベルも進化。効果音は実に多彩で場を盛り上げる。
残念ながら、ボーカル曲のパンチが弱いのは相変わらずで、ここが未だ泣き所の一つではあるのだが、あえて外注にせず自社スタッフで健闘を見せているので、今後のレベルアップに期待したい。
(と言いつつも、テーマソングの「hollow」は結構好きだ)

システムに関してはもう何も言うことはない。ここまで揃っていれば文句なし。
デバッグを専門の外注に出しただけあって(スタッフロール参照)バグはないし、名物(?)であった誤字も、以前よりはかなり減っている。
高スペックを要求されるが、非常に安定しているし、TYPE-MOON作品ではお馴染みのシーンスキップが、繰り返しプレイを
要求される今作ではありがたいことこの上ない。
さらに、すべてのイベントを回想モードで見られるし、CG・サウンド・ムービーに関してもこれは同様。
ゲーム内で新規に登場したイベントには「NEW」や「!」といった目印も付くし、誰でも無理なくフルコンプできる仕様になっている。
まさにファンのために至れり尽くせりなのだが、その分、「ゲームをクリアした」という達成感は薄くなっている。
この点、「歌月十夜」はかなりの難易度で、終わった後の喜びもひとしおであったため、その点が惜しい。

シナリオは、とうとう奈須氏一人の手に負えなくなり、半分をサブライターが担当。
もちろん、メインシナリオは奈須氏が担当しているのだが、このゲーム、ユーザーの遊び方によっては、評価が大きく分かれてしまう危険性を秘めている。

メインだけを追っていけばボリューム不足。どうも食い足りない気持ちが強くなってしまうし、その後で日常パートを補完しようとすると、それがダレに繋がってしまう。
できれば、メイン→日常→日常→日常→メイン、くらいののんびりペースをお勧めする。
日常の些細な箇所にメインの伏線も張られていたりするので、いろいろと反芻しながら、じっくり取り組んだ方がよい。

また今作は、キャラを補完するエピソードがかなり盛り込まれており、その点で誤解しがちになるが、本編のどのエンド後にも当たらない状況下で繰り広げられるため、それを踏まえてIFの話と割り切った方がよい。
それが、TYPE-MOONのFDに対する姿勢なのだと思う。
思えば、「歌月十夜」も「お祭りディスク」だった。
随所で表現されてはいるが、「本来ありえない世界」の上に成り立っている、誰も失われていない、サーヴァントも現界したままという、多くのユーザーが願ってやまない世界観を、一作限りの夢として、祭りの非日常的な空気を纏わせて送り出してきたことの意味。
FDを購入するようなユーザーなら誰もが知っている本編EDの数々。
数々のキャラが消えていき、多くの別れを強いられたそちらがあくまでも本流であるのだから、それを考えると、どんなにはっちゃけた明るく楽しいエピソードも、切なくてたまらなくなる。

幻での約束は叶えられない。だから約束はしない。その日も訪れない。
一連の文化祭エピソードなどはまさにこれを体現しており、今遊んでいるこの世界が幻想なのだ、と分かってはいても、この幸せを終えたくない気持ちでいっぱいになり、同時にその幸せや楽しさが儚く得がたいものであることを実感し、ただただ愛おしい。
決して本編の感動をねじ曲げたりはしないその割り切り方が、潔いと思う。夢は夢であるからこそ価値がある
全員助かってわーいハッピーなFateに、あそこまでの感動は生まれないはず。

さて、日常エピソードはかなり多めなのだが、残念ながらその出来には少々ばらつきがあり、同じネタを引っ張ったり力の入れどころを間違ってるような箇所も散見される。(蒔寺とか、そんなにいいキャラか?)
総じて悪くはないし、楽しくはあるのだが、できれば奈須氏一人で手がけてほしかった、というのが本音。
逆に、メインを張るバゼットのエピソードはやはり読み応えがあり、物語に吸引力がある。
ともすればメインエピソードだけを追ってどんどん進みたくなるのを、何とか堪えるので必死だったほどだ。
しかし、あれだけ宣伝材料で大きく取り上げられていたカレンの出番が今ひとつであり、キャラ立ちは良かっただけに、もう少し掘り下げがほしかった。つくづくメインシナリオのボリューム不足が悔やまれてならない。

お遊びとしてのミニゲームも充実しており、長くたっぷり楽しめる良質のFD。
値段分の価値は充分あると思います。本編をプレイされた方、ランサーファンの方はぜひ。
私はアーチャーが一番好きなのだが、今作で危うくランサーが下克上しかけたよ。
それくらい、彼にとって見せ場の多いシナリオです。
ひょっとして、本編でイマイチ報われなかった救済措置なのか? と邪推するくらいに。
ヒロインでなく、サブを補完するあたりがTYPE-MOONだと思います。いいわ、その姿勢。

ところで、花札のバランスが厳しすぎます。調整パッチ希望。_| ̄|○(ヘタレですんません)

群青の空を越えて

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
81萌えは無用の方に
★★★★

きっかけは、発売前に公式サイトに掲載されていた制作ウラ話。(今も読めます)

「バカヤロウ、萌えゲーなんかに負けるかよ。ユーザーが萌えるのは正当な楽しみ方だけど、クリエーターが萌えに頼るようになったら単なる無能者の手抜きなんだよ」

いい加減、萌え先導の業界の風潮に倦んでいたところにこの言葉。そんな気炎を上げるクリエイターが、まだいることがすごくうれしくなり、応援も兼ねて勇んで特攻。

ジャンルは「本格未来架空航空戦記ADV」。作者の言葉には「グリペン」を使った話が書きたかった、とあるが、空中でのドッグファイトや戦術的な展開よりも、むしろ戦争という現実に翻弄される人間たちの群像劇がメイン。
作者はかなりの航空機マニアのようだし、ドッグファイトがメインなのかな、と思っていたので、いざプレイしてみたらいささか拍子抜けしたのも確か。
これでも「エリア88」に燃えた世代ですんで。
その代わり、戦略・権謀術数要素はてんこ盛り。目に見えるドンパチよりずっとシリアスで重く、「戦争」、しかも「負け戦」であることを忘れないシビアな展開は、派手さには欠けるが、ずっと心に重くのしかかってくる。
実際、政治・経済問題を多く盛り込み、それをある程度は理解しておかないと面白さが3分の1くらいは減少してしまう困った作りなので、取っつきはかなり悪い
気軽に楽しく浮世の憂さを忘れたいという人には全然向きません。そういうお手軽作品が多く求められ、市場に溢れているこのフィールドにおいて、実に異彩を放つ方向性、はっきり言ってたまりません
第一、負けることがほとんど確定しているんだもの。勝利のカタルシスなんてへったくれもありゃしないのです。
そんなわけで、覚悟を決めた人のみがトライすればよろしいかと思います。

絵は可もなく不可もなく。シリアスな物語にふさわしく、突拍子もないデザインもなく比較的安定しているのだが、テキストとCGで齟齬が生じるケースが多い。
立ち絵では普段着を着ていたはずなのに、同時間上のイベントCGでは制服姿になってたり、文中では長袖のはずがCGでは半袖だったり。
些細な点であるのは承知しているが、一度気になりだすと、とにかく目についてしょうがない。
もう少し、擦り合わせに気を使ってほしかった。
また、物語の尺のわりにはイベントCGが少なめ。私の感覚がズレているのかもしれんが、ここはCGだろう、というところもトランジションでごまかされてしまったり、量的にはあまり満足できなかった。
EDのスタッフロール上で、まだ見ていないルートのネタバレCGが表示されてしまうのも困りもの。
ちゃんと制限かけてください。

売りであるのかは分からんが、場面場面で挿入される飛行シーンのムービーなども、地味だし今ひとつの出来。
ひょっとしたらすごくリアルな動きとか、こだわって作られたものなのかもしれないが、残念ながら当方、航空機に関しては素人で違いがよく分からないし、挿入どころのタイミングも絶妙とは言い難い。
この辺の、細かい演出が平たく言えば「ダサい」のであり、業界では最近、演出にはめざましいものを感じる作品が多いだけに、余計に野暮ったい印象を受けてしまった。

この点は音楽も同様で、このシーンでその曲使うかぁ? というポイントのズレが耳につく。
こういう感想は、本当に個人個人の感性によるものなので、あくまで私見であるが。
ただ、やはりあまり主張しない曲が多く、進行の妨げにこそならないが、盛り上がりには欠ける。
OP・EDは出来が良いのだが、作中でのBGMは曲のバリエーションも少なく、いつも同じ音楽がかかっているような印象を受ける。
せっかくのゲームという媒体、もう少し絵と音が生み出す力、その効果を信じて力を入れてみてもよかったのでは。

対して、フルボイスであるのは大成功と言って差し支えない出来であり、声優陣はかなりの熱演。
あちらこちらで名前を見かける実力派が多く参加しているだけあって、その演技には隙がなく、ミスキャストもないので、いつもはボイスすっ飛ばし派の私も、ついつい聞き入ってしまった。
(おかげでクリア予定時間が大幅に延びた)
普通のゲームやアニメなら登場しないであろう難解な用語が頻出し、おまけに航空用語は英語だし、収録は並大抵の苦労ではなかったに違いない。プロって素晴らしい。
しかし、一部シナリオにもネタとして登場するが、BL系で大人気のあんな人やこんな人を盛り込んで、いったい何をやらす気ですか! モニタ前で吹くかと思ったよ。

システムは普通。ただし、グラボの相性が悪いと悲惨らしいので、パッチを忘れずに。
私も最初、メニューが表示されないという珍現象が起き、このゲームはどうやってスタートするのか? としばらく悩んだ。
実装している機能には過不足なく、各種回想モード、ホイールバックログ・音声再生にも対応しているのだが、どうもいまいちレスポンスが悪く、半テンポ遅れるような気が。(推奨スペックは余裕で凌駕してます)
ボリュームがあり、シナリオに集中したい作品なので、足回りは軽快であってほしい。
また、見せ場と思しき特殊なイベント下では、セリフの表示スピードが支配されてしまうのも難。
ここぞ、と意気込む気持ちは分かるのだが、ユーザーとしては自分のペースを乱されるほうが癪に障る。
むしろ、別の演出によってユーザーの目を釘付けにするべきなのでは。

以上のように、全体的にどうもパッとせず、いまひとつな凡作なのかと思いきや、困ったことに(?)シナリオが全然いまひとつではないんですわ。

さすがに言うだけのことはある。「萌え」をまるで排除し、あくまでも物語の力で勝負しようとした姿勢は潔い。
これだけ各メディアの発達が著しい中で、未だにペンの力を信じたその方法は、愚直なまでに真正面からの挑戦。
大軍の中に一騎突っ込むようなもの。

たった一人の学者の学説とアジテーションが、様々な利権と絡んで、やがて日本分裂と戦争に発展する、という設定は、かなりのトンデモであることは確かなのだが、それを足場とした物語が、疑問を許さぬ勢いで大真面目に展開するもんだから、何だかいつの間にか押し切られてしまうのも確か。
「主人公がグリペンに乗る物語を書きたかった」と製作者自らが語るように、そのためだけにこれだけの大風呂敷を広げたのはいっそ見事でもある。
美辞麗句で愛を語るゲームは数あれど、「女が一番じゃない」と断言してのけるエロゲーは初めてです。
でもちゃんとエロいんだな、これが。

一つの事象を多角的な視点で捉え、それをザッピングというシステムに無理なく置き換えた手法はナイス。
複数の視点が入り乱れることによる混乱を避けるために、メッセージウインドウにキャラチップを表示させたのも気が利いている。
最終ルートではそれまで敵だった側の視点で物語が語られ、単純な二元論に陥るのを防いでいるし、テーマに向き合おうとする姿勢は、とても単なるゲームの一作品とは思えないほど真摯だ。
異世界を舞台にするのではなく、あくまでも日本と諸外国、という身近な場所を設定した勇気も評価。
誰しもが知り尽くした世界の上に、新たな設定を敷くのは並大抵の苦労ではない。
荒唐無稽すぎるからこそ、フィクションとして楽しめるという側面もある。
じゃないと、生々しくてやってられないだろう。

そこでは、人が当然のように死んでいく。すぐ前の場面では重要な役を担っていたキャラですら、次の場面では、ただ「○○が死んだ」とだけ表示され、淡々とした死を余儀なくされるそれは、あまりにもあっけなさすぎて怖い。
だが、そうまでして失いつくし、あがきつくしても、いずれのルートでも待ち受けるのは敗戦(停戦)というのが、このシナリオのすごいところだろうか。

私は、あえてこういう手法にしたことを評価したいと思う。
どんなに誰が泣き叫んでも、残酷な事実は覆しようがない容赦の無さも好きだ。
今まで、多数のパイロットを死地に送り込んできた管制官である若菜が、自分の死に向き合ったとき、決して自分を特別扱いせずに毅然とその事実を受け止める厳しさと強さ。
そういったものが詰め込まれた今作、ゲームとして作りの甘いところは多々あれど、普通のエロゲにはないものを多々持っていることもまた確かであり、それはとても大切なものだと思う。

ラスト、作中に何度も問いかけられた命題を再度提示されて物語は閉じられる。
「自分たちはなぜ戦ってきたのか」、と。
そこに明確な結末を与えなかったのは、プレイヤーそれぞれに想像の余地を残すための手法であるが、あえて言うならば、指揮官すらも傷つき倒れ、防衛線がズタズタになっているであろう激しい戦いの最中、という状況が、決してこの先に待っているのが楽天的で明るい未来、もしくは劇的な状況の好転ではないだろうことは想像に難くない。
どこまでもシビアで容赦のない演出。奇跡などは起こらない。すべては現実に起因し、質量で劣れば負けるし、個々人がどんなに努力してあがいても、より大きな国情や経済の絡んだ思惑からは逃れられない。
その、決して日和見をしない、作品に対する揺るぎない姿勢は賞賛に値する。
もちろん、読み手によっては、すべてが丸く収まったわーいハッピーと夢想することも可能だ。
(作品の本質を理解していないような気はするが)

パイロットとして死ぬことにしか意味を見出せなかった主人公が、その拠りどころである飛行機乗りという手段を奪われる最終ルート。
飛べなくなって、空という逃げ場を失って、そこで初めて真実に辿り着く。
優しい皮肉に満ちた展開は、その代償に得たものを丹念に綴ることで、それは必要だったのだ、と気付かせてくれる。
この作品が、「萌え」(=ある程度の予定できるセールス数)を捨てて得たものがあったように。

やりたいことを好きなようにやる姿勢というのは、簡単なようでいて、それを貫くことはひどく難しい。
なんせ、商業作品である以上、ペイしなきゃ会社が潰れる。同人のように自分一人が泥をかぶればいいわけではなく、社員の家族にまで責任があるわけだから、あまり軽々しい真似はできない。
そして、たいていの場合、製作者が希望する形と、ユーザーの望む形というのは乖離しがちなものだ。
だから、安易な「萌え」に走らず、重厚なドラマを展開しようとした製作サイドの姿勢と、ユーザーの反応が好意的評価として一致した本作は、とても幸運なのだと思う。
もちろん、本作をプレイした人間なら、それがただの偶然やラッキーで生まれたのでないことは重々承知の上だ。
二年もの歳月を費やしたというシナリオは、完成に至るまでどれほどの推敲を重ねただろうか。
その膨大な作業量を思いやるだけで頭が下がるし、一見して受け入れられにくそうな、難解な用語やクセのある舞台、それでも恐れずに新境地を切り開いたその姿勢。
個人の作家性が色濃く残る、小説的なアプローチの異色作だと思う。

好き嫌いが非常に別れる作風なので、軍事、政経、負け戦に耐性のある方のみどうぞ。
善と悪、敵味方、そういうのがはっきりしてないと嫌、という人は避けたほうがよろしいかと思います。
私はお勧め。ゲームとしての総合点は低いけれど、こういう作風って今までになかったし、このシナリオにはそれだけの価値がある。
活字好きならさほど違和感はないと思う。

ちなみに、未プレイの方は、若菜→加奈子→美樹でやった方がよろしいですぞ。
いいですかな。忠告はしましたぞ。これが一番、鬱気分を軽減できる順番だと思うので。
なんせ順番に(ネタバレ危険!→)全滅)→(壊滅)→(敗戦)だからな。
(とんでもねー作品だなオイ)

CROSS†CHANNEL

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
85★★★★

※注! このゲームはネタバレが致命的な作品です。
そのため、今レビューで設定に言及している箇所は、全部反転させていただきます。どうかご協力を。

もう公然の秘密なので、これについては書いてしまうが、「家族計画」のライター氏の作品。
はっきり言って、私の彼との相性は、この2月にクリアしたばかりの「家族計画」にて激悪なものと化していたので、(レビューを見ていただけると一目瞭然)プレイ前はものすごく気が重かった。
その傷も癒えていなかったのに、同ライターの作品をもう一つ積んでいるなんて地獄の所業としか思えない。(積むなよ)
しかし、これまた世評が相当に高かったのと、公表されている設定がちょっと面白そうだったのも相まって、今回だけはあえて地雷を踏む覚悟で臨んだ。

システム周りは、搭載機能は普通。だが、微妙に使いづらい。
何をするにも画面上部にカーソルを持っていってメニューバーを出す必要があるし、既読スキップをかけるとBGMが聞こえなくなる。
おまけに、オートセーブをONにするとシナリオループが発生して先に進めなくなるという致命的なバグ。
修正ファイル必須です。
余談だが、各章ごとにセーブすることをお勧め。
じゃないと、章タイトルが分かりません。でもこのタイトルが秀逸なので、ぜひ確認するべき。

音楽はなかなか良い。どちらかというと静かな、おとなしめの旋律が多いのだが、シナリオに没頭するタイプの作品なので、
これくらいがその邪魔にならずに雰囲気を盛り上げる役割を果たせると思う。
ちなみに、ある箇所で音楽での大仕掛けがあるのだが、これに関してはシナリオの部分で後述。
主人公以外はフルボイスなのだが、男友達がやけに豪華すぎ。このキャスト、私はビビりました。
たった3人だけど、その誰もが(ボーボボ、犬夜叉、ベジータ)とかなりのビッグネームってどうなのよ!?
これのせいで、逆に女性声優陣が霞んでしまったのがちと悲しい。どうしてもこのビッグ3に比べると演技や印象の点で見劣りしてしまうのが難点と言えば難点か。キャスティング自体は悪くないと思います。

絵に関しては、薄めの色彩で特異なデザインもなく、青を基調とした、あっさりと爽やかな雰囲気。
全体的に綺麗な感じでまとめられており、ベターっとした、変な髪型や服が横行するアニメ絵が苦手なので、むしろこういった画風の方が私には馴染みやすかった。
CG枚数はちと少なめ。これはシナリオの仕掛けのために仕方がない部分もあるのだが、ここぞ、という場面ではきちんとイベント絵が用意されているし、立ち絵のときにたまに入る、イラスト状のカットインも面白い。
どうしてもシナリオのために作られた作品であるので、萌えやその他の要素を追求するのは酷というものだろう。

では、以下よりネタバレゾーンに突入させていただきます。

きた。これはきた。
はっきり言ってプロローグの終盤までは、相変わらずの笑えない上に品のないギャグと、無駄が多くテンポの悪いテキストに、「やはり『家族計画』再びか」とがっかりし、プレイし始めた自分を呪いつつ、数分単位で眠気と闘う苦行を強いられる。
もう何度途中で投げ出したい気分に駆られたことか。
こりゃあもうレビューで、メッタメタのギッタギタに「あらん限りの酷評をしちまうぞコラ」と、どす黒い情熱を燃やしかけたそのとき表示された、プロローグラストのセリフ。

「生きている人、いますか?」

一瞬でざわっとし、背筋が凍った。現時点で理由は分からないけれど、人類は死滅している。ここにいる8人を除いて。
だから。だからだからだから。人の匂いが全然しない。町にも学校にも人がいない。
夏休みだろうと、部活はあるだろうに。日中の町中は喧噪で溢れているだろうに。
BGMはあっても、ざわめきや、夏を演出するのにうってつけのセミの鳴き声のようなSEはない。
そういった、一見背景やサウンド、描写上の手抜きなんじゃないかと思われたすべてが、このたった一言の演出によって
ぴしりと一本に結ばれた鮮やかさに、眠気など吹っ飛んでいってしまった。

背筋を正して、タイトルに戻ることもなくすぐに始まった続きを始める。
最初から、プロローグとほぼ同じ展開。ってことはこれは、ループ物!?
ふふん、私はループ物にはちとうるさいぜ? 何せ、至高の作品が「YU-NO」で「DESIRE」で「腐り姫」だからな。

ごめんなさい。本当に田中ロミオ氏を見くびってました。
まさか、こんな手法を取ってくるなんて思いもよらなかったので。

このゲーム、「青春学園アドベンチャー」と銘打っておきながら、ヒロイン別の攻略ENDがない。
というよりも、EDまでプレイしても、主人公は誰とも結ばれない。
最初から最後のエンドロールが表示されるまで、タイトルに戻ることがなく、あたかも一冊の本を読むような、文字通り初回プレイにすべてをかけた綱渡り作品。
なぜならこのゲームにおいて、再プレイは諸処に張られた伏線の妙に感嘆することはできるが、初回の戦慄だけは絶対に味わえないので。
なんて危険な、そして一回限りの大バクチな仕掛けに出たんだろうと、その潔さに脱帽。
これは、一人のシナリオライターがそのライター人生上で一回しか使えない手法。もう一度やったらただのアホウ。
もちろん、他のライターがやったらただのパクリ。

とにかく設定が巧妙すぎる。ここまでずっぽり罠にはまってしまったのは久しぶりだ。
世界は交差している。まさに†マークのように。
一つは閉じた、もう一つは普通に進む二つの世界を、あたかも一つであるように見せかけていた序盤。
その世界のトリックが段々と明かされる中盤。
見る人によって、まったく解釈の異なる提示をされてしまった終盤。
どうやっても、この物語(というか舞台装置)に関して、考えずにはいられないようになっている。

はっきり言って、最後まで変わることのなかったこのテキストの質は、日本語が壊れすぎていて、決して私の好みとは相容れないものだったのだが、この仕掛けによって目が離せなくなってしまったのが痛し痒しという状況。
どうでもいい電波ギャグや死ぬほどバカな掛け合い漫才の合間に、実にさりげなく設定のヒントが紛れ込んでいるのでまったく気を抜けないし、かといって全部まともに取り合ってたら、忍耐が破滅する。
プレイ中、まるでオシロスコープのように波形が上下動する私の気分。これが、このテキストに乗れる人だったらどんなにシナリオにのめり込めるだろうかと、羨ましく妬ましく思ったことが幾度も。

精神的・肉体的に傷を負った人間ばかりが集まる群青学院。最初のうちは皆、特筆することもない普通の学生。
だが、人がいなくなった世界で、困惑はしても淡々と生きることができる彼らはやはり「普通」じゃないのだろう。
そして、きっちり1週間でループがかかり、それまでの記憶を失って再構成される世界。
そこで徐々に崩壊が始まる人間関係。彼らが学院に集ったのは故なきことではないのだと嫌でも分からされる、
「普通の人」との歪みやズレが表面化していく。
自分たちを爪弾いた優しくない世界と、自分の「群青色」との軋轢に傷つき、他者との関わりあいができない登場人物たち。
それが露呈していく様は、実に醜悪でやがて殺戮にまで発展するドロドロっぷり。

中でも、「普通の人間」としての言動を知覚してはいるが理解できていない主人公の凶悪ぶりは、こんなにプレイヤーの
共感を得られない人間を主人公に据えていいのだろうかと心配になってくるほど。
だが、「多重世界の観測者」としての立場を理解した中盤以降はまさに息をのむ展開で、彼らを補完し、在るべき場所へ
戻してやる主人公。
それによって、もう二度と彼らには会えなくなることを知っていながら。
交差とは、ただ一点。そこを抜け出した友人たちと主人公が交わることは今後一切ない。
ただ、主人公が発信し続けるラジオ放送「CROSS†CHANNEL」を除いて。
それが主人公の今まで失われていた人としてのコミュニケーション手段であり、世界との関わり方であった――。

何だこの、卑怯なまでに鮮やかすぎる幕切れは!

そして、そこでようやく流れるED。歌曲付きであり、ライター自身が作詞したそれは強烈にネタバレを含んでいる。
単品で聞くならわりといいかな、と言うレベルなのだが、このタイミング、この場面で流されるのはもう反則に等しい。
「テーマ曲」でありながらOPですら流れず、今までのどの場面にも流されることのなかったことへの疑問が氷解し、さらに「やられた!」気分が上昇。

それが済むと、今度は実に論議を呼んだ問題のエピローグ。
や、いいんじゃないですか。私は結構好きだな。
これって要するに、「この空がなくなるその日までは……」のその日、ってことじゃないの?

空がなくなる=ループ世界が終わる=世界そのものが滅亡=主人公もなくなる

で、ループ世界で7人を殺してしまった主人公と、その7人の魂(?)のような存在が「お別れだ」と言ってるのにも説明がつくし、「世界が終わる」(分解が始まる)ことによって、元の世界と近くなったからセミの鳴き声が聞こえた、ってことじゃダメですか?
「世界がなくなった」からの、「チャンネルが閉じた」からの突然のブラックアウトじゃないの?
いずれにしても、「みんな助かって救われた、わーいハッピー」なバカエンディングではない……はずだ。

これだけ大がかりな世界で展開されるドラマ自体は意外と安っぽく、キャラにも別段魅力があるわけではない。
テーマの提示の仕方は抜群に上手いのに、そこからの論理展開が安直すぎてやはり好みじゃないし、どうしても説得力に欠ける。
ただ、元はと言えば非常に不安定な精神を持った登場人物たちでもあるので、その点を考慮すれば、普通なら気付いて当たり前の事実を終盤近くまで引っ張ってしまうのも仕方のないところか。
(この点、「家族計画」は普通の人間が気付いて当然の事実に気付いてくれないことが多すぎて私の酷評の対象になった)

どうあってもこれは構成で魅せる物語であり、そのためのストーリー展開でキャラ設定。いわば単なる小道具。
余計なことを考えず、そういう割り切り方をして捉えた方が絶対に楽しめると思う。
面白い、とかつまらない、とかそういう感想には不向き。ただ、できるなら味わってみた方がいい、としか言えない。
完全にプロットの勝利であり、

事前情報まったくなしでこのトリックを見抜くことは、まず不可能

だと断言する。
これでテキストが好みだったら、確実に神の領域に突入していただけに惜しすぎる感はあるが、これ以上ライター買いの作品が増えたら破産間違いなしなので、助かったという気も。
田中ロミオが実に予断のならないシナリオライターであることをひしひしと感じました。
秀作でも力作でもない、ただし意欲作、近来稀にみるほどの
プレイヤーをものすごく選びますので、あとは各自、勘を研ぎ澄ませてご検討を。

咎狗の血

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
83★★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!
注2! 声優・エンディングに関してウルトラレベルのネタバレが含まれます。くれぐれもご注意!

とうとうやらかしてしまいました。初・ボーイズラブ(以下BL)作品。
はっきり言って、読むだけは結構読んでるのでBLという形態に特に抵抗はないのだが、それでも自分で買うというのはかなり二の足を踏んだ。
信じられないかもしれないが、今までそういった作品を1冊も所持していなかったからだ。(本当です!)

なのに何でホモゲーなんて、いきなりレベルAクラスのブツを購入するに至ったかというと、それが私の愛するメーカー、ニトロプラスの姉妹ブランドから出される作品、おまけに監修・ディレクションがあの虚淵玄氏だということで、理性のタガが一瞬にして飛んでしまったからだ。
漢祭りの第一人者がディレクションするBLゲー、これだけで脳内を爛れた妄想が駆け巡ったのは言うまでもない。

正直言って、BLゲーというジャンルはまだまだ若い業界で成熟には至らないし、良作よりも粗悪品の方が多いという評をあちこちで目にしていたので、いったいどんな代物に仕上がってくるかでかなーり不安を抱いてはいたのだが。

すんません。ニトロの底力をナメてました。さすがです。

すでにエロゲーでノウハウを確立しているだけあってシステム周りは完璧。
セーブコメント有、ホイールログ送り・バックログ対応、サウンド・シーン回想・CG鑑賞モードをもちろん兼ね備え、既読スキップや選択肢に戻るコマンドにショートカットも割り当てられていて、AVGを快適にプレイする環境は充分。
もちろんバグもないし、誤字も少ない。
CDレス起動はできないが、イメージ化は可能なのでディスクレスしたい人にも特に問題はない。

CGも、キメどころはきちんとスチルを用意しており、分量も申し分なし。
元々原画の方のセンスが好みなこともあるが、BL作品にありがちなヒョロヒョロした人体もなく、きちんと筋肉の付いた男らしい体つきの各キャラは、死のバトルゲームに参戦する、という設定に違和感のない作風。
背景や武器も、そこは親ブランドがニトロ。隙のないきっちりとした仕事。

お馴染みのZIZZ SUTDIOによる音楽もバッチリハマっていて、ハードなギターサウンドが荒廃した世界観をドラマティックに盛り上げる。
また、場面場面での音楽・SEの使い方や切り替えがかなり巧みで、今作は音楽による演出のレベルが高い。
ぶっちゃけ、今までのニトロ作品の中で、この作品の音楽が一番好きかも。(罠にはまってるぞ、私!)

「音」と言えば、今作で絶対に外されないのが、異常なまでに高レベルな各声優陣の演技。
バラして恐縮ですが、列挙すると、

  アキラ:先割れスプーン(鳥海浩輔)……主人公。パーフェクト受。
 ケイスケ:何武者(杉田智和)……主人公の幼なじみ。穏やかな人格でアキラを慕っている。
   シキ:緑川光……「イグラ」最強と噂される謎の男。超俺様人格。
   リン:鬼龍院隼人(福山潤)……明るいが時折冷たい表情を見せる二面性を持つ。
   源泉:一条和矢……街の情報屋。余裕があり面倒見のよいオヤジ。
アルビトロ:菱勝(岡野浩介)……犯罪組織ヴィスキオの幹部で「イグラ」の審判役。かなり変態。
  キリヲ:富士爆発(小西克幸)……処刑人。いかにもヤヴァイあんちゃん。
  グンジ:杉崎和哉(谷山紀章)……処刑人。気まぐれな殺人狂。
    n:Prof.紫龍(山崎たくみ)……謎の男。物語のキーパーソン。

という、「お前それは反則だろ!!」と言いたくなるような巧すぎる方々を惜しげもなく投入。
この辺がさすがニトロ。「斬魔大聖デモンベイン」で見せつけてくれたキャストの妙を垣間見た気分です。
特にケイスケ役の何武者氏。彼のエロボイスのおかげで、この作品の私的気恥ずかしさ度は300%を超えました。
彼の「アキラァ……」を聞くたびに、とにかく悶絶。
ゲーム前半の善良な人格を完璧に演じていただけあって、反転してからのサディスティックさやエロさが余計に際立ち、マジで鳥肌ものの巧さ。
はっきり言って、大好きです。ファンになりました。(だから罠にはまってるぞ、私!)
他のメンツも、変態は変態らしく、鬼畜は鬼畜らしく、鬼気迫る演技力でゲームの臨場感に一役も二役も買ってます。
(でも、n役のProf.紫龍氏が、同メーカー作品の某マッドサイエンティスト『西博士』と同じ人でビックリ。
役柄は全然違うのに、今にもギターをかき鳴らして超テンションを見せつけられる気がしてシリアスな場面で爆笑しちまいました……すんません)

さて、メインのシナリオ。
正直、設定に斬新さはさほどないものの、腐女子の萌えだけに突っ走ることなく、かといってそれを軽視もせずに手を変え品を変え、ここまでまとめ上げたのは並大抵の苦労ではなかったと思う。
それに、男性プレイヤーを非常に意識した作りだと感じた。
同性同士という異様なシチュエーションを、ハードな世界観と極限状態という非常事態に紛れ込ませ、あえて幸せピンク色のイメージを表に出さなかったのは正解。
おかげで私のようなBLゲー初心者でも非常にプレイしやすかった。

テキストが硬質のしっかりした文体であるのも取っつきやすい理由の一つ。
BL小説などでは、はっきり言って読むに耐えないレベルのものが多数あるが、今作はそれもなく、感情に走ることなく意識的に抑えた筆致が世界観を損なうことなくリアルさを出すのに一役買っている。
通常のAVG群と比較しても遜色ない出来で、安心して読み進められる。

だが、正直言って、ネタの扱い方には甘さが多く見られた。
どうしても女性向け、ということが足枷になるのは仕方がないのだが、世界観が重いわりに展開が淡々としすぎ、そして早すぎる。
描写は丁寧なのだが、何となく重みに欠け、私のように、「死のゲーム」から連想される、魂を打ち倒される鬱展開を期待するプレイヤーはかなり物足りなさを覚えるだろうということ。
むしろゲーム後半、「愛」や「信頼」といった生ぬるい感情論に傾きがちになり、そこが少し興ざめ。
せっかくの、ただ一人の頂点を決める死のバトルゲームという設定なんだから、もっとハードな殺し合い、目を覆いたくなる残酷な事実、燃えバトルなどを期待するのは当然ではないだろうか。
(あれで充分残酷だ、という腐女子の皆様ごめんなさい。殺し合い大好きっ子なもんで)

結局、メインの設定であったはずのバトルゲーム「イグラ」は、詳細なルールの取り決めがあったにもかかわらず、ほとんどその描写がなされない。
これは、シナリオの根幹として(ネタバレ危険!→)「イグラ」は壮大な茶番劇である、という設定があるので仕方がないのだが、それでも表面上は闘うために街に入ったはずなのに、バトル風味がこうも薄くては何だかなぁという気分がぬぐい去れないのだ。
デスマッチ大好きっ子としては、もっと執拗なくらいに(「鬼哭街」なくらいに)バトルシーンを持ってきてもよかったように思う。
そこで段々シナリオの裏が見えてきて……という展開なら、もっと熱くなれたと思うのだが。

また、キャラ別ルートに入ってしまうと、他のキャラの扱いがおざなりになり、基本的なシナリオの謎すら明らかにはされない、といった破綻が発生する。
結局、裏で糸を引いていた人物が唐突に出てきて真相を語り、あとは攻略キャラと脱出・エンディング、といった共通の展開はいかにも駆け足すぎ、おかげでせっかくエンディングを迎えても、何だかすっきりしない消化不良感が残る。
どのルートでも、もう少しエピソードの補完をするべきだったと思う。

これは、世界観の説明も同様だ。
日本を二分するほどの勢力を持つCFCと日興連という組織について、シナリオ中でほとんど触れられていないのはいかがなものかと思う。
公式サイト・雑誌情報などでは説明されているが、こういったものはやはりきちんと作中で解説されるべき
ほとんどのプレイヤーは予備知識など持たないのだから、既知情報として扱われても混乱を招くだけだ。
こうした情報を作中で扱うことによって、世界や人々の精神的な荒廃具合に裏付けと説得力が与えられ、物語世界を一層深いものにできたであろうに惜しいことこの上ない。

思うに、このライター氏、まだ固さが取れていない。だが、経験を積めば大化けする可能性大
潜在的な力量はかなりある。熱意もすごく汲み取れる。何より、殺愛支配愛など、「アナタ私の脳内覗いた?」と聞きたくなるほど、私的萌えシチュエーションを生み出す才能は希有のもの。
私の好み以外にも、大多数の腐女子をほぼフォローできるくらいに多彩なシチュエーションが用意されており、かなり研究したな、とその苦労を労わずにはいられない。
人によっては萌え死ぬ可能性すらある妄想の余地のあるキャラ造形は素晴らしいの一言。
おかげさまでうかつにも今作最大のバッドエンドで萌えてしまった大バカ者がここに。

ちなみにどんなエンドかというと、(ネタバレ危険!↓)

自分に密かな想いを寄せていた、普段穏やかな性格の幼なじみだったケイスケが麻薬によって黒人格へと豹変し、
大雨の中殺し合った挙げ句に恍惚と内臓引きずり出され、それを見ながら意識が遠のく(つーか死ぬ)

というもの。本当にコレ、腐女子ゲームか?(ちなみに私は変態ではない。念のため)

その他にも、とにかく一筋縄ではいかないエンディングばかりあり、BL作品特有の極甘ラブラブエンドを期待している方々には受け入れられない可能性大。(ちなみにそういうエンドもあります)
というわけで、シキエンドは激しく賛否両論らしい。
ちなみに私はシキエンド3(↓ネタバレ危険!)で萌えましたが何か?

麻薬王となったシキと、半ば精神崩壊し、シキの愛玩物と化したアキラ。
その類い希なる受パワーをもってしてシキの留守中に部下を籠絡し、帰ってきたシキの嫉妬心を引き出して二人して愛欲に狂うというバカップルエンド。

以上、新規ブランドだけに詰めの甘いところも多かったが、それでも今現在市場に溢れているBL作品とはいきなりレベルの違うところに突如現れてしまった今作、以降の業界標準となるべき作品なんじゃなかろうか。
ブランド処女作として非常に手堅い作りで、「ニトロの姉妹ブランド」というレッテルを良く生かしたという印象。
その分、冒険はあえて避けたという感じで、ぎらつく野心こそないものの、それでも心に訴えるものがあった。
とにかくこの業界に一石を投じよう、という心意気を感じる。
志、とでも言おうか。腐女子の中の漢たちが作った、とでも言おうか。私は好きです、こういう攻め姿勢。
これならニトロキラル二作目も買おうかなと思える出来だった。
BL未体験だけどやってみたい、という男性プレイヤーにもお勧め。
さほど気持ち悪さは感じない……はずです。たぶん。(ケツ穴痛そうなのは我慢してくれ)

斬魔大聖デモンベイン

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
83★★★

これは好き嫌いが別れるであろう、ある意味問題作。
「"Hello,world."」ほどの明らかな失敗作でもないし、総じて手堅くまとまっている。
が、往年の虚淵玄節に慣れてしまったニトロファンには、受け入れられるテキストかどうか、というのが非常に重くのしかかってくるのだ。
あちらがコクもキレも鋭い、重厚な円熟味を感じる安定した古酒の味わいなら、こちらは若さとパンチ力に満ちた新酒といった趣。

とにかく勢いはある。だが、対象を違う言葉で何度も繰り返して表現する手法が多用されており、ともすればしつこすぎるきらいがあるため、マシンガントークが上滑りしている印象を受ける。
虚淵氏が極力無駄を書かないことで物語のテーマや輪郭をくっきりと浮かび上がらせているのとは対照的に、訴えたいことをあらゆる方面から何度も畳みかける、この絨毯爆撃的な手法はある種諸刃の剣。
好きな人なら気にならないだろうが、一度鼻についてしまうとうっとうしさがまとわりつく。
特に、ゲーム・漫画・アニメのパロディ的なネタも多く、多少ならお遊びとして許容できるのだが、これまた相当多用されている上に、かなりシリアスな場面にも登場するのは少々やりすぎの感が否めない。
良くも悪くもライトノベル臭が強く、この手のテキストに慣れていない人はつらいかもしれない。
今回のシナリオライターは鋼屋ジン氏だが、私が以前読んだSSとはだいぶスタイルが変わっているような。
ゲームのシナリオと小説とは形態が違うので、あえてこの手の形式にしたのかもしれない。

だが、そういったテキストの方向性に目をつぶれば、ストーリー的にはかなり読ませる力作。
ニトロプラスのゲームであることを十二分に念頭に置いた、熱く、スピード感に溢れ、時には切ない各エピソードが、これだけのボリュームを持ちながら、伏線を破綻させずにきちんと収束していく様は圧巻。
ルートごとにヒロインが変わるのはもちろんのこと、それに合わせて最後の敵すらも変わってしまう。
もちろんエンディングも世界の秘密をしっかり提示し、据わりが良く、納得に足る出来であるため、死ぬほど長い苦痛を延々と与えられた挙げ句、ヒロイン全員のエンドが同じという同メーカーの超ボリュームを誇る某ゲーム(相当心の傷)とは満足度が雲泥の差。
さらに、エンディングの扱い方が相当に巧い。長大なボリューム、クトゥルー神話というネタの設定を最大限に生かし、かつ後味に爽快感を伴うという、ニトロ作品には珍しい一本となっている。

音楽は臨場感たっぷりで、ボリュームあるゲームにふさわしく曲数も多め。
曲のタイトルも奮ってるし相変わらず良い仕事をする音屋さんたちです。
テーマソングは生沢佑一氏。静かなイントロから壮大なサビへと情感たっぷりでOPにふさわしい、熱い盛り上がりを予感させる良い仕上がり。
一方音声は、せっかくの超豪華声優陣なのに、しゃべる場所が全体量から見てかなり少なめ。
尺の長い物語なので仕方がないと言えばそれまでなのだが、残念な感は否めない。
PS版はフルボイスらしいので(しかも我が愛する矢尾一樹氏や若本規夫氏、中田譲治氏という豪華っぷり!!)、ぜひこのキャストをPC版で……と嘆き悲しんでいる次第。

システムは微妙に使いづらい。私は大丈夫だったが、プロテクトの誤爆が多発しているらしいし、バックログがホイールで見られないのが致命的。
システム周りは直感的なインターフェースで操作できることが大前提で、細かい設定などは二の次だと思うのだが、今作はそれが逆になってしまっているのが残念。
大作とも呼べるボリュームのゲームなだけに、やはり気持ち良い操作感は必須だと痛感した。

シナリオは真っ向勝負の力技。
小手先のテクニックに頼らない、逃げも裏技もない愚直なまでの正面突破
虚渕氏に比べれば確かに青臭く、つたない点もあるけれど、それは個人の好みの問題だと思う。
とにかく複雑きわまるクトゥルー神話体系を題材に取りながら、これだけ綺麗かつ納得に足る帰着を見せたという点。
これだけでも、他の些末な問題点には目をつぶってもいいくらい高く評価できる。

大方の予想通り、私はクトゥルー関連もわりと好きで色々読んではいたが、例のダーレスによって付け加えられた設定を包含しつつ、それを効果的に生かしたストーリーには大いに感心させられた。
物語ではアルノーマルエンドにあたるエピソードだが、これは鳥肌めいたものを感じるほど印象に残った。

たった二人の善なる神。
それは邪神を封じるために永遠なる時を戦い続けるアルと九郎の姿であり、本来なら選ばねばならない道を選べず、彼と共にあることを願ってしまったアルによって顕現した世界。

誰からも責められる事のない罪。
故に。
誰からも赦される事の無い罪。
(ゲーム本文より、アルの独白)

たった一つの、ラストの選択肢によってハッピーエンドへと至れることを知っているプレイヤーなら、その切なさに胸をかきむしられるであろう心震えるラストだが、そこで彼らを善なる神として扱うことで、「邪神群を封じる旧神」を存在させたダーレスの設定を見事に説明できている。
それは、なぜ「旧支配者同士の対立」が存在するのか、という疑問への答えにもなっているという周到さ。
希望などない、邪神に支配された世界に生まれたたった一筋の光。
それがアルと九郎であり、「選ぶべき選択肢」を選ばなかったが故にハッピーエンドへ至れなかったプレイヤーに残された次への希望でもある。

ゲーム自体のボリュームと寄り道表記の多さのため、実はプレイ途中で結構中だるみしてしまったのだが、罪の意識に苛まれながらも己の幸せを貫き、痛みを伴う幸福を得るこのラストは大変に私好みのため、評価はかなり高い。
哀しくも美しいこの手の味わいのラストは、覇道瑠璃のルートでも味わうことができる。

いつ終わるともしれない、その「いつか」のために戦い続ける物語。
決して己の想いを口にすることはできず、たった一人の少女を護るために何度敗れようとも立ち上がり、回り続ける物語。
それが切なく、毅然とした印象であるがゆえに、そのループが破れたときに訪れる優しいエンディングの感動は大きい。

と、ここまで書いておいてなんだが、どうでもいいことが気になったので一つ。
瑠璃は財閥のお嬢様のくせに下着ダサすぎ
オーバドゥやラ・ペルラくらい着てろや、と思わずツッコミを入れたくなりました。
エメラルドクリーンと白のストライプはないだろう、今どき。(しかもあれは絶対綿パンツだ)
あれで超萎えたのは私だけではないはずだ……と思っていたら、ネットでは萌えてる人多数ですげぇビックリ。
やはり、オタク層には受ける記号だったのですか、エメラルドクリーンと白のストライプ綿パンは!
私が男なら、脱がした時点でその場で回れ右して帰りたくなるくらい萎えたのですが。

あと、九郎がデカすぎ。(何が? ナニが)
絶対入らねぇ。むしろ裂ける。間違いなく。しかも相手はロリだし。痛いっつーの!!
男は大きさよりテクです。これ絶対。
大きいのは痛いだけ。良くも何ともありません。これ真実。
こちとら、正真正銘の女が言うんだから間違いない。
(いや中には「大きくなきゃイヤ~ン」という方がいるかもしれないが。つーか下品ですいません)

というわけで、熱い物語、ロボット物、絶望的な状況からの逆転劇、人外ロリ、クトゥルーなどのキーワードに敏感に反応してしまう方にお勧め。

あ、ライカルートについて書き忘れた。が、ボスが違うだけで普通。特筆すべきとこはないです。私にとっては。
リューガとの殺し愛は結構ツボだったのですが。
仮面ラ●ダー的な懊悩する主人公が好きな人ならいいかもね。

沙耶の唄

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
82★★★

ニトロの屋台骨、虚淵玄+中央東口コンビの最新作。
業界の各情報誌に、
「過去の作風である『漢祭り・火薬弾薬祭り・日本刀カンフー祭り』を深く反省し、野郎キャラよりも大勢のおなごキャラを出す」
と、18禁ゲームメーカーとしては至極当たり前なのだが、ニトロファンには驚愕の野心溢るる声明文を発表し、いったいどんな作品に仕上がってくるのかと戦々恐々としていたら。
ゲーム起動開始と同時に爆笑。

何せオプションに、「グロ(画像)をそのまま表示」「フォーカスをぼかす」「明度を落とす」なんて選択があるし。
そうか、そうきたのか、ニトロ。単なるおなご祭りなんてするわけないとは思ってたよ。
さすが私の愛するメーカーだぜ!( ^ー゚)b

というわけでこのゲーム、イントロ部からいきなりグロ画像です。
それも、思いっきりスプラッタでこれでもかというくらいに緻密に描き込まれた臓物様が。
しかも、描写も微に入り細をうがち、それを引きずる音まで再現しちゃってくれてるので、この手の作風がダメな人はおとなしく回れ右した方が無難。
最初っからグロ全開でいくためにすぐ見慣れてしまい、慣れるとさほどでもないのだが。

CGはお馴染み中央東口氏。
元々異形の生物を描くのが格段に上手かった氏だが、やはり作品を重ねるに従って普通の人間を描くのも相当レベルアップしたのが伺える。
タイトルにもなっている、キーパーソンである沙耶の無邪気なかわいらしさは文句の付けようのない出来だし、抑えた色調のシックな画風は、作品の雰囲気に抜群にマッチしている。
また、高レベルな音楽でも知られるニトロだが、今回は突出した楽曲こそないものの、どれもホラー作品に相応しい不安感を煽るような曲調で、画面との相乗効果もきちんと計算されている。
もちろん、一部に有名キャストを起用したキャラボイスもハマっており、全体的にそつのない作り。

低価格作品でありながら、常時相当のレベルのものを見せつけるニトロらしく、システムにもまったく手を抜いていない。
特に、ホイールで文章を送れるのがとても便利。
私のようにものすごい勢いで文章を送る人間にとっては、クリックよりこっちの方が断然楽で早いので、これはかなりありがたい機能だった。
もちろんバックログもホイールで見れるが、残念ながら音声再生までには対応していない。

さて、肝心のシナリオ。
実は、初プレイ時には「面白いけど、虚淵氏だし当たり前。まっこんなもんだよね」と思ってました。
それがとても失礼な感想であることに気付かずに。
気付いたのは、ゲームをアンインストールして、レビューに何書こうかなぁと内容を反芻しつつぼんやり考え始めてから。

確かにプレイ時間が短すぎて食い足りない気持ちが強かったし、伏線が生かしきれなかった部分もある。
短編よりは中編くらいにすればよかったかなぁとも思う。
でも、その内容はただのスプラッタホラーじゃなかった。

あの救いのないラスト、その意図はプレイヤーによって受け取り方が千差万別だとは思うけど。
あれは、認識障害を抱えている主人公視点だからこそああいう悲しげで綺麗な美しい景色が見えるのであって、それがもし普通の一般人だったら、どんなにおぞましい狂気の世界が見えてくるのか。

そして、沙耶が異形の生物であることを知ってしまったのにもかかわらず、変わらず沙耶を愛し続ける主人公。
それは、自らが異常であることを知りつつも彼岸を越えてしまったということだ。
この一種のパラダイムシフトにプレイ時気付けなかったことが大変悔しく、その破壊力に気付いたときは後の祭り。
ああもう、これだから私はバカだ。

そこには、必ず救いが起きてしまう、ご都合主義の感動物に対する強烈なアンチテーゼが感じられる。

この、誰が見てもハッピーじゃないのに、究極に幸福であるエンド。
何て絶望的な美しさだろう。
何て邪悪なメルヘンなんだろう。
何て醜悪な純愛なんだろう。

もう、さすが虚淵玄と言うしかない。現時点で間違いなく業界最高レベルのライターの一人。
下手をすると陳腐そのものになってしまうネタをここまで散りばめておきながら、ホラーの恐怖と萌え、燃え、決して相容れない種との恋愛に起因する悲哀や寂寥を、ここまで絶妙の配置でバランス良く出してくるのは並大抵の手腕ではない。

ある意味人をかなり選ぶ作品だが、対価効果以上の余韻が残るので、スプラッタに抵抗ない人はぜひ。
旧作虚淵ファンで未プレイの人も、氏の新境地を味わえるのでぜひ。

ところで虚淵氏へ。
次はぜひともまた「漢祭り」の長編を出していただきたいと思ってるのですが。

Routes

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
80★★★

高橋&水無月コンビ(To heartの立役者)の抜けたLeafなど枯葉」と揶揄され、「誰彼」で本当にたそがれてしまったもう後のないメーカー、Leaf大阪開発室の新作。
とうとう伝家の宝刀「リーフビジュアルノベルシリーズ」を持ち出し、どうなることかと、私を含めた9割以上のユーザーに危惧されていたわけですが。

背水の陣、成功しましたね( ̄ー ̄)ニヤリ

さすがに往時の勢いはないものの、これを地雷呼ばわりするのであれば、ほとんどすべての作品が地雷扱いになるかと。
実にそつなく、手堅くまとめてあります。ツッコミどころもかなり多いけどな。

何はともあれ、一番ツッコミたいのは文章が下手なこと。

助詞がかなり抜けてます。主人公、日本人だよね? と作中、首を傾げることしきり。
「てにをは」をきちんとした、崩れのない日本語を!
過剰な装飾や滑りすぎのギャグ、おまけに変に表現に凝らなくていい。
「二人は無駄口を畳んだ」とか「俺に怖気をふるった」とか書かなくていい。
「飛ぶ鳥落とす篁エネルギー」じゃなく、ちゃんと「飛ぶ鳥を落とす勢いの~」って書いて。お願い。
改行もおかしく、改ページも多すぎ。これじゃ、ノベルじゃなくて普通のAVGです。

文がメインなんだから、読みやすく、クセのない素直な文章が一番。
モノは「ビジュアルノベル」なんですぜ、ダンナ方(←今回、シナリオライターが二人なので複数形)。
これで文章下手くそだったら、ほとんどすべてが台無しでしょう。

シナリオ展開自体は悪くなかったので、これがとても残念。
ノリやテンポを重視しているのだろうが、たぶん「筆が滑ってる」状態なんじゃないかと。
とてもじゃないが、じっくり腰を据えて書かれた文章とは思えない。
ちなみにこの「バカップル」や「掛け合い漫才」度数は私の忍耐限度ギリギリ。
これ以上だったらレッドアラート点滅でした。

ただ、これぐらい筆が滑ってないと今作のテーマである、

真っ正面からの人間賛歌

は書き上げられなかっただろうなぁ、というのもまた然り。
よくもまぁ、エロゲーでここまでこっ恥ずかしいテーマを据えたもんだと感心しながら(注:誉めてます)プレイしてましたが、今のLeafには、やってる方が苦笑してしまうこの青臭さがふさわしいと思う。

序盤は「スプリガン+エイリアンシリーズ(C)菊地秀行」なノリで、これを基軸に一本大きい事件を解決して終わるのかな……と思いきや。
いきなりYU-NOモード発動。その突拍子のなさに唖然。
でも、最後の最後までプレイして分かりました。貴方たちが何を言いたかったのか、了解しました。
「これが、俺たちのルーツさ」
という、とてつもなくこっ恥ずかしさ度MAX限度オーバーなセリフと共に。

80年代のゲーム作りの姿勢に戻る、と見なしてよろしいでしょうか。
イベントのたびに必死こいてフロッピーディスクを入れ替え、それを苦とも思わなかったあの時代に。
FM音源の中に、珠玉の音楽性を感じ取っていたあの頃に。
16色ですら、神業とも言えるCGを見せつけてくれたあの頃に。
表現の限界なんて、全然感じることのなかった、あの頃に。

PC98からの筋金入りのエロゲーマー(恥ずかしいな、おい)としては、心に響くノスタルジックな作品でした。
往年のLeafファンとして、その心意気、しかと受け取りました。

それはそうとして。

あのー、作品中、バレバレの伏線多すぎじゃない?

  • 主人公の名前が那須宗一

  • 序盤で日本史や「源氏と平氏」の話が出る

  • 草薙の剣!?

  • 悪役がご丁寧にも「那須宗一」とか含みたっぷりに発言(もちろん、有名な「那須与一」を彷彿とさせてる)
  • とすれば、椎葉物語キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

    と、数学の証明問題のごとく、明快きわまりない展開を読めてしまうのがちと気になりましてな。
    それでも、後半まではずっと現代物の様相を呈してるので、「気のせいかなぁ」と思ってたら案の定。
    いきなり「平景清」かい。

    今度は「源平討魔伝」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

    ああもう、何で私のツボを突きやがりますか。
    「ありがたやー」ですか。「おまえのちからはそんなものか」ですか。「ころしてしんぜよう」ですか。
    レトロゲーマーはどうしてこんなところばかりにツッコミ入れてますか。
    (この辺は、分かる人だけ分かってね)

    ま、それはおいといて。

    とにかくこのシナリオ、「今できるものを全部突っ込んじまえ!!」ってヤケクソとも思える開き直りっぷりがいっそのこと小気味いいです。
    いいんじゃないかなぁ。無茶苦茶でもトンデモ設定でも。勢いあるし。伏線は全部回収してるし。これがコケたらマジで後がないわけだし。
    私はわりと楽しめました。どうオチつけるのかな? と興味津々だったし。

    そして腐ってもLeaf、音楽と絵は相変わらず最高レベル
    特に今回は音屋さんたちがいい仕事してます。
    私はボーカル曲があんまり好きではないが、今回の「あなたを想いたい」はかなり気に入ったし、過去の名作群を彷彿とさせるBGMもすべて高レベルで、特にRoots編は素晴らしい。
    このBGMに合わせて、桜の花びらが舞う中、ゆっくりと背景がスクロールしていく演出は、ゲームプレイ中久しぶりに鳥肌立ちました。

    全体的に非常に良くまとまっていて、安心して遊べる&勧められるレベルの力作だとおもいます。

    だがね。このゲームの真価は、おまけシナリオにあるのだよ。
    この、Leafの暗部を自爆ギャグとして無理矢理昇華させようとしてる内輪ウケスレスレのシナリオ。

    もう大好き。

    というより、対象者狭っ!!
    これ、Leafのスタッフや、背景に起こった事件を知ってる人じゃないと、ほとんど面白くないと思う。
    つまり、「重度のLeafファンに向けてのメッセージ」だったわけで。
    「色々ゴタゴタあったけど、今度はちゃんとやるから許して」
    って解釈してよろしいでしょうか。
    私としては、今回の「Routes」と「うたわれるもの」でだいぶ持ち直した感があるので、次回作まで様子見かな、って気もしますが。
    少なくとも、今作では大阪開発室の面目躍如、ってところではあると思います。

    ただ、伝家の宝刀を抜いたにしては、若干攻撃力が弱かった感は否めないけどね。
    「電波届いた?」や「あなたを殺します」クラスの一撃必殺技をかつて味わったことのある身としては、今回の「数撃ちゃ当たる」的シナリオは、今回限りの裏技、ってことで及第点とします。

    WHITE ALBUM

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    82★★★

    浮気ゲー。
    二大ヒロインの壮絶な女の戦いを、「やれやれGOGO!」と思ってプレイしていたのは私だけではないはず。
    (でも私のイチオシはマネージャー)
    修羅場ゲーにも関わらず、どのエンディングもさらっと、切なくはあるものの後味良くまとめている点は感心。
    BGMや挿入歌のレベルが高く、しかもシナリオに巧く絡ませていることもあって、演出力を高めている。
    理奈の歌ったら、しばらく頭から離れませんよ……。
    冬の季節感が出ていて、素直にいいゲームだなぁと思えます。

    がしかし。
    システム最悪。バグ多すぎ。パッチは確実に当てましょう。

    正直、AVGにするより、今まで通りビジュアルノベル形式を取ったほうが良かったと思う。
    その方が、きっとこのシナリオが生きたはずだ。
    ただ、複数のヒロインの間で揺れているわりには「毒気」が薄いストーリーなので、パンチ力は弱い。
    この点、「君望」はね……ふ、ふふふ。

    BE-YOND

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    81★★★★

    肩の力を抜いて楽しめる、SFコメディタッチのAVG。
    シナリオがやたらに笑えます。主人公は記憶喪失の上に、目覚めてみたら、宇宙では誰もが恐れる魔王になってるし。
    ほんのちょっと小指の先を動かしただけで、数万の人間を跡形もなく消し飛ばせる力を持っているのに、根は至って善良な人間である(と信じている)主人公があたふたドタバタする様がなんとも軽妙で愉快。
    さらに、魔王を討伐しようとする宇宙艦隊のエリートであったエバが、討伐失敗により降格させられ、そこからは何をやっても裏目裏目に出てコケてしまう姿も気の毒ながら笑えます。

    ギャグばかりでなく、ラストに至る展開にはシリアスで胸に迫るものがあるし、システム的に「話す→○○」とコマンドを指定しなければならないのは面倒だが、物語のテンポ自体はスピーディーに進む。

    ちょっとゲームやりたいな、というときに気負いなく楽しめる、良質な一本。
    たまにはこういうのもありでしょう。

    To Heart

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    81★★★

    うぁー。評価しにくくて、今まで避けていたゲームがきた。
    いや、誤解のないよう言っとくと、プレイ時はとても楽しく遊べました。
    キャラによってシナリオにばらつきはあるものの、サクサク進むし、絵もかわいいし。
    しかし、いまいちのめり込めないのはなぜなのか、自分でもよく分からないのですよ。
    たぶん、この満面に押し出されている「幸せピンク色」な雰囲気がダメなんだろうとは思うんだけど。

    どうせ私は、血と硝煙と伝奇と猟奇じゃないとダメだよ。分かってるよ。ああ分かってるとも!

    吸血殲鬼ヴェドゴニア

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    84★★★★

    吸血鬼ハンターキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
    各話ごとにオープニング・エンディングが入るTVドラマ構成。なかなか面白いです。

    ダークなだけでなく、永遠を生きる者の悲哀、非日常へと足を踏み入れてく恐ろしさ、なんてのがきちんと描かれてて◎。
    ただ、戦闘シーンはテンポを落としてる感が否めない。
    武器を選んで出撃するのはいいのだが、どれを選んでも戦い方が画一的で、あまり意味をなしてない。
    むしろ、デスモドゥス(バイクの名前)燃え(ぉ

    どのエンディングにも余韻があり、ハッピーエンドに頼らない叙情的なシナリオは総じてレベルが高い。
    脇役も、ただ出てくるだけでは終わらない見せ場があって、一つの物語としての完成度の高さに花を添えている。
    良作です。アクション&バイオレンスと聞いただけで血が奮い立つ人はぜひ。

    君が望む永遠

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    84★★★

    現時点(03/03/18)で、唯一コンプリートしてない心の傷的タイトル。
    (私は基本的に一度取りかかった作品はコンプリートするようにしている)
    世間では名作の誉れも高いというのになぜか。

    主人公のヘタレぶりについていけません
    サブヒロインのウザさに耐えられません

    あゆとまゆ! お前らさえいなければ、この不名誉(?)からは逃れられたものを。
    というわけで、コンプリートしていないゲームをあげつらうのはどうかと思っていたので、今までレビュー書いてなかったのですが。

    率直に言わせてくれ。

    遙と水月と茜のシナリオだけだったら、間違いなく90点クラスだった

    それが、看護婦2人と電波娘1人、さらにクソ同僚が2人も入ってきてるため、ゲームとしての完成度は平均値に。
    上記三人ですでにお腹一杯のヘタレぶりと鬱シナリオを味わったので、もう勘弁してつかあさい、と泣き叫びたくなります。

    必要ないギャグやテンポを落としているだけのバイトシーンを全面カットし、ただひたすらにこの陰々滅々とした人間関係にスポットをあてていてくれたのなら、とんでもない破壊度を持ったゲームとして評価できただろうことが残念でなりません。

    この主人公、こんなにモテるわけないと思うのですが。
    慎二の方が全然いいじゃん。

    ただ、遙、水月、茜のシナリオだけは並々ならぬ高い完成度を持っていて、これのためだけにやる価値はあるので、オススメは★4つ。
    フジ月9連ドラに向きそうな話ではあるが。
    アニメ化より実写化の方がいいと思います。

    鬼哭街

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    83★★★

    いっそのこと、と開き直ってしまった姿勢が潔い、ニトロプラスのストーリーノベル。

    選択肢ないです

    とにかく話を読め、とばかりに突きつけられた形態、ストーリーノベル。
    さすがだニトロ。エロゲーなのにエロとゲームはそっちのけ!
    そこに痺れる、憧れるゥゥ!!

    とまあ茶化してますが、作品自体は大変高品質です。
    レベルの高い音と絵が入ることによって、ドラマチックに展開するシナリオにさらなる波状効果が生まれているし、実はトンデモ設定な話なのに、意外に隙がない仕上がりになっている。
    ボリュームも飽きない程度の長さで申し分ないし、このスタイルは大成功だと思う。

    実際、つまらん映画を見るより数千倍は面白いかと。
    こういうの実写でやられたりすると、変なSFXやCGを見せつけられてげんなりするので。

    遺作

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    80★★★★

    がっちりした謎解きが楽しめる、本格AVG。
    が、とにかくフラグ立てが厳しいので、ボケッとプレイしていると、すぐさま遺作氏によって女の子連れ去られます。
    ゲームとしてのキモの部分が嫌らしいくらいにしっかりしていて、侮ってると確実に痛い目に遭うこと間違いなし。
    鬼畜や猟奇、とまではいかないが、そういう風味のダークなAVGをやってみたいならオススメ。

    うたわれるもの

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    85★★★★

    「こみっくパーティー」で放心、「まじかるアンティーク」で呆然、「誰彼」で私に絶望を見せつけ、「もうだめだ」と思っていた瀕死のゲームメーカーLeafが、起死回生の一発を放ってくれました。
    良作です。エロが薄いこと、難易度が低すぎること、分岐がないこと以外はほぼ文句なし。
    よくぞここまで立ち直ってくれた。
    かつて気に入っていたメーカーなので、その復活の兆しが見えるこの作品には好意的な評価ができるというもの。

    絵、音楽に関しては特に言うことは何もない。さすがの出来映え。
    実は私、人外キャラ嫌いなんですが、この作品に関してはそれ自体がストーリーのキモであるし、何より作画がとてつもない綺麗さだったので、マイナスの印象は受けなかった。
    チップキャラのなめらかな動きや立ち絵のバリエーションも多く、ことCGに関しては他メーカーを圧倒する仕事ぶりは健在
    ただ、イベントCGが少なすぎる。
    「このシーンおいしいよなぁ」と思う場面でも、ただ暗転して終わるケースが多かった気が。
    せっかくのイベントなんだから、ここ一番、というところで気張ってほしかった。
    (まあ、スタッフは死んだかもしれんが……)
    音楽は少々曲数が少ないが、シーンの雰囲気を壊さない作風で、ちゃんと仕事を果たしている。

    シナリオに関しては、終盤~ラストまでが少々急ぎすぎた。
    肝心の謎の部分を「すったかたー」と通り過ぎてしまった感がある。一応きちんと説明はされているので疑問点は残らないのだが、もうちょっと引っ張ってもいいかも……と思わずにはいられなかった。
    それだけ、この世界観にひたることができた、ということであるけれども。

    散りばめた伏線をすべて回収しようとする努力や、何気ない伏線の張り方には感心した。
    まさか、序盤の木登り→落下エピソードがラストに絡んでこようとは……。
    単なる作画上の飾りだと思っていた髪飾りに、そんな意味があろうとは……。

    派手に意外性があるわけでもなく、奇天烈なキャラ造形をしてるわけでもないが、とにかく丁寧な作り
    かなりな数のキャラが出てくるが、一部を重用しすぎてバランスを崩したり、他をないがしろにしたりすることなく、それぞれに印象深いエピソードを用意し、それを主軸に絡めてくる手腕はかなりのもの。
    また、緩急のテンポが絶妙で、戦闘を終えた後には必ずちょっと笑えるイベントを数多く用意してあったり、異世界伝奇物という特殊なフィールドでプレイヤーがとまどいや疎外感を覚える前に、流れにうまく乗せてしまうテクニックは賞賛に価する。

    また、一歩間違えば殺伐で陰惨な雰囲気を醸し出しそうな「戦国時代」を舞台にしておきながら、このAVGパートでの「笑い」がそうなるのを防いでおり、ゲームとしての雰囲気がとてもいい
    プレイしていても、ちっとも嫌な気分にならないのだ。
    テーマには種の存続や人としての尊厳、国同士の攻防による理不尽さなど重っ苦しいものがてんこ盛りだというのに。
    どこかしら暖かく懐かしい雰囲気と、自分を信頼してくれる心強い仲間たちが繰り広げる、時には笑い、時には涙するエピソードの数々が、一気にラストまでへと導いてくれる牽引力となっている。

    その「笑い」の部分も、無理矢理ギャグを言ったり、理不尽な展開に持ち込む奇形的な笑わせ方でなく、あくまでも話の流れ上やキャラの性格を活かした、モニターの前で「プッ」と吹き出す程度の自然さで誘導していて、乗せられていても気分がいい。
    (とか言ってたら、このシナリオライターって「BE-YOND」の人だったのね……納得)

    ラストの扱いについては賛否両論あるらしいですが、私はあれで満足。
    ユズハもちゃんと亡くなってるし(設定上そうなんだから仕方がない。生きてたら興ざめだ)、ひょっとしてハクオロが帰ってきたのかな? と暗示させる程度に抑えてるところが、この話の空気を壊さないでいるような気がしたので。

    このゲームの最大の問題点は、何と言ってもその難易度。

    めっちゃ簡単すぎ

    あのですね、18歳以上のゲーマーならば目をつぶっていてもできますぜ、このSLGパートは。
    攻略もへったくれもなし。早い話、全員を攻撃力重視で育て、やられる前に大将をタコ殴りにすればおしまい。
    おまけに連撃システムなんてあるもんだから、ますますバランスの崩れること崩れること。
    自軍強すぎのため、「ユニットが潰されるかも……」といった、通常のSLGに感じられる緊張感は皆無。
    地形効果や騎兵と弓兵、歩兵との相性なんてのがあるからこそSLGは面白いわけで。
    まあ、これ自体がイベントの一環、と言えなくもないので、あえて目をつぶりますが。
    せっかく、勝利条件は色々とバリエーションを取り入れ、途中のイベントによって変わったり、と工夫を凝らしているのだから、もっともっと戦略性を強めてもよかったと思う。

    あとは、魅力的な女性キャラが多数いるので、分岐エンディングも見てみたかった。
    ストーリーを魅せるためにはこの手法がベストだ、というのは分かってるんですが、これはちと残念。
    その分、エンディングでその後の展開を見せてくれたのはありがたかった。皆、納得できる行く末だったので。

    どうもコンシューマーを狙っているような気もするが、戦略パートを改良すれば、十二分に通用する出来映えだと思います。
    私はこれ、「エロゲー未体験者」にお勧めの「ファースト18禁ゲーム」に向いていると思う。
    ストーリーも魅力あるし、エロも薄いしどノーマルだし(笑)
    極めて拒絶反応の薄い、良質のゲームだと思います。
    正直、手元に置いてからも半年以上放置してたことを後悔。やっぱ積みゲーはダメね。

    EVE~burst error~

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    82★★★★

    個人的に大好きなゲームデザイナー、剣乃ゆきひろ(現:菅野ひろゆき)氏の作品。

    一言で言うなら、上質のエンターテインメント巨編。(コーヒーのCMみたいだ……)
    恋愛、謎、スリル、陰謀、アクション、感動、とB級映画的な楽しさが満載。

    これは、AVGファンなら絶対に外せない一本だと思う。ゲーム性とシナリオとの融合の仕方が絶妙。
    どちらかの要素に片寄るでもなく、微妙なバランスを維持している。

    その顕著な例が、ゲーム中盤に出てくるハッキングのシーンだろう。
    シナリオ上で自由に主人公を切り替えられる「マルチサイトシステム」を巧みに使い、主人公二人が協力、という立場を設定し、両者の視点からハッキングを進めていく。
    これが緊迫感があってすごく良い。
    プレイヤーである自分が主人公二人の操作をしているため、切り替えるごとにそれぞれのキャラクターになったような気分で盛り上がれる。

    これはゲームならではの手法だ。こういうのを「ゲーム」と呼んで、高く評価すべきなのだ。
    シナリオ垂れ流しのゲームなんて、「ゲーム」ですらないんだぞ!! ……閑話休題。

    このシステムを支えるべきシナリオは言うまでもなくよくできている。
    主人公二人は、立場も境遇もまったく違い、それぞれに抱えた事件もまるで接点がない。
    が、ここからの話の絡み合い方が卓抜している。
    周到な伏線、多少バレバレ(笑)だが謎の多い人物たち、一つ解決してはまた深まる謎。
    そして、これらの点が線としてすべてつながったとき(松本清張ではない)、プレイヤーをあっと驚かせる仕掛けが施されている。
    剣乃氏はこういう大風呂敷を広げた話のたたみ方がとても巧い
    そして、何よりスピード感がある。
    わざわざ貴重な時間を割いてまで、タルいゲームをやりたい奴なんていないだろうから、これはすごく大事なことだ。

    登場人物について。
    主人公は二人。内調の凄腕調査官まりなと、貧乏だが腕のいい探偵である小次郎。
    二人とも若くして腕の立つ人物だが、アクの強い性格であるため、初めは好き嫌いが別れるかもしれない。
    が、こういう人物の書き方が、実はこの物語に深みを与えている。

    愛した男はスパイだったため、自分の誇りであった職務と心に消えることのない傷を負ったまりな。
    自分の恋人の父で、尊敬する上司でもあった男の犯罪を暴かざるをえず、恋人と職を失った小次郎。

    どちらもかなりの苦い過去を背負っているが、こういう事情が見えてくると、彼らの言動は決して故なきものではない、ということに得心がいくはず。
    そして、こういう痛みを引きずりつつも、自分の道を進むことを止めない主人公たちに、嫌味のないポジティブさを感じる。

    私は暗黒波動の持ち主なので、ストーリーに「明るい」だの「前向き」だの「ポジティブ」だの出てくると、「ケッうるせえよバーカ勝手にやってろ」と思う人間なのだが、この作品には、そういうのにありがちな、押しつけがましいまでのメッセージ性がない。
    こういう作品は、得てして過去のことはすべて吹っ切ったかのように描かれているが、人間なんて、

    そんなに簡単に過去を振り切ることなんてできないし、
    常に前向きな気持ちでいられるはずもないし、

    むしろヘコむ機会の方が多いだろう、とツッコミを入れたくなるわけです。
    そういう、「人としての弱さと強さ」を描くってのは並大抵のことじゃないのに、それを、主軸のストーリーだけで引っ張っていけるはずのこのシナリオに、さらに盛り込んでしまう贅沢さに脱帽。

    作品としての完成度はとてつもなく高い。
    メッセージを発するためではなく、エンターテインメントの追求として。
    一度徹すると決めたら、断固としてそれを貫く。
    事実、この娯楽性の追求はかなり確信犯的なものだ。

    その精神性の高さが、私が「剣乃ゲーム」を高く評価する所以であり、支持する理由のすべてと言える。
    ストーリーテラー、剣乃ゆきひろの名を大きく名さしめたのは、故無きことではない、と納得の一本。

    アトラク=ナクア

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    86★★★★

    実は私、数ある昆虫の中で、蜘蛛が一番嫌いです。
    まあそれはさておき、ストーリーやモチーフとしての蜘蛛というのは嫌いじゃない。
    というより、むしろ好きだ。

    蜘蛛というのはその妖しい背斑模様や、予測のつかない動きで人を翻弄するイメージがあると思うのだが、このゲームは、そういった蜘蛛から連想される淫靡な美しさを持ったストーリーで、実際かなり楽しめた。

    正体は女郎蜘蛛であり、その禍々しい美しさを体現したかのような初音。
    彼女は宿敵、銀を倒すために、いとも簡単に人を殺し食らう。
    あるいは気に入った人物を贄として、彼女の永遠のごく一部を共有させる。
    それは、ほんのひとときの戯れや慰みにすぎないものだけれども。

    閉じた世界で、閉じた人間関係の中、醜いエゴや欲望といった、心の間隙を突かれる人間たち。
    そこには今やたらとブームになっている癒しや救い、といった要素は欠片もない。

    大好きだぁぁぁぁぁ!!!(取り乱してすいません)

    他人から与えられた救済なんてクソ食らえ、という私、もちろん救いのない話は大好きです。

    一番救いのないのは、「カナコの章」。
    自分を想ってくれる和久が初音に殺されそうになったとき、奏子は初音に懇願する。「殺さないで」と。
    しかし、初音が和久を殺さない、というのは、和久を初音の贄にする、ということ。
    それは、自由もなく、初音が飽きるまで終わりもない、和久のような人間には最も縁遠い世界。
    でも、奏子は心が通じかけた和久を、どうしても死なせたくなかった。
    ……そして、和久は贄となった。好きな女の、究極の選択は「それでも死なれたくない」だったから。

    このエゴ、この痛み、この苦悩。そして、まったく陽の差さない、澱んだ闇の世界
    イケてます。ダークです。心行くまで陰惨な物語を堪能できます。

    そして、終章での銀との対決。ここで立場はがらりと逆転する。随所で伏線は張ってあったのだが、これが巧妙で、まさに蜘蛛の巣にかかった感じ。
    が、今まで「悪」的な立場だった初音が、伏線が明かされ、元凶が銀だと分かってからは、一転人間的な思考になってしまったのが残念。
    人を逸脱した考えをすることに何の躊躇もなかった初音が(そしてそこが魅力だった)、幾人かの人間たちと触れあい、徐々に変わっていく、という設定は別にいい。
    (本当は変わらない方が好みなんだけど←心底鬼畜)

    が、ここでの心情の切り替えが少し早急すぎた。もう少し引っ張ってもいいかな、と思わずにはいられなかった。
    これが、このゲームの数少ないマイナス要素。
    あとは、ゲーム性が薄いこと(ほとんど一本道)なことくらいか。
    音楽のレベルはかなり高い。メインテーマはしばらく頭から離れない。
    章ごとの構成で、各人物にもスポットが当てられており、長さもちょうどよい。

    ラストも美しく、はかなく、ひっそりと終わる。

    永遠を終わらせた銀と初音の静寂を護るかのように。
    現実と訣別し、だが心安らかに一人静かに新たな永遠を生み出そうとする奏子と共に。

    閉じた世界にふさわしい、閉じた終わりだ。
    構成が非常に練られていて、演出も優れている、良質のゲームだと思う。
    ダークなシナリオに抵抗のない人はぜひ。

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    88★★★★

    あのダークな雰囲気が気になって以前からずっとやってみたかったのだが、タイミングよくお勧めもあってプレイすることに。

    初っぱなからキてます。電波ガンガン届いてます。
    キャラ? そんなものは二の次でいいっす。
    コンシューマーになんて移植は絶対不可能。むしろ、したら殺ス。
    18禁であることの強みを最大限に引き出しているシナリオに脱帽。

    ボリューム的には長くない、むしろ昨今のゲームに比べて非常に短いくらいだけれども、それの持つ重みは全然違う。
    そして、一般的に見れば決してハッピーエンドじゃないけれど、一つの物語として、限りなく美しい収束。

    完成されたものが与えるインパクトというのは、こうも大きいのか

    そう思いました。

    あと、音楽が素晴らしいです。特に好きなのが「バッドエンド」と「瑠璃子」。
    ええ、私はそういうキャラです。

    同級生2

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    82★★★★

    記念すべき(?)初プレイした18禁ゲーム。
    このゲームを語る際に、必ず問われるのが「唯」派か、「桜子」派かということじゃないだろうか。
    ちなみに私は「唯」派。
    やっぱり、初めから自分を好きでいてくれるキャラってのは特別だろう。
    さらに、唯は性格もよい。一途でけなげだし、主人公の行動に一喜一憂する姿が、たまらなくいじらしい。
    昨今珍しい素直な女子高生だけに、陥落する男共がいるのは当然の摂理かと。
    唯狙いじゃなかったときに、冷たい態度を取らねばならないのが、非常に苦痛だった。(←ハマりすぎ)

    ちなみに、私の妹もプレイしたのだが、彼女は唯でも桜子でもなく、可憐派だそうだ。
    すごいマニアックな気がするんですが……。

    全員一通りクリアはしてみたのだが、こずえは辛かった。
    それは彼女がガキだから。
    私は精神が子供なヤツは反吐が出るほど嫌いなので、途中で何度も挫折した。
    今もう一度やれと言われても、絶対にできないだろう。あの頃の自分に拍手。

    あと、洋子は怖すぎ。
    何も男だけじゃなくて、女にだって下心アリの既成事実を作るってパターンはあります。
    分かるけど、分かるけどッッ!!
    つーか、現実には絶対に女の方に多いよな。そういうの。
    男性諸君は気を付けましょう。
    女は魔物です。

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