1  |  2  |  3  | All pages

Fate/stay night

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1091★★★★★

「月姫」で私を頭のてっぺんからつま先まで汚染した、TYPE-MOONの商業化作品第1弾。
あれだけ名実共に揃った作品を最初に出してしまうと、後は転落するだけ、というプレッシャーがあったと思うが、よくぞそれを払拭してくれた、と惜しみない賛辞を送りたい。
相変わらず膨大かつ緻密な設定に加え、格段に進化したエフェクトが、かつてない演出効果を生み出した作品。
そして、発売まで抑えに抑えた情報が、驚きと共に次々と顕わになる快感は、時間を忘れてプレイに没頭させるに十分。

とにかく今回はこの演出が凄まじかった。
文章によるアクションシーンは、ともすれば冗長になってしまいがちだが、今回は迫力あるSEに加えて、立ち絵・イベントCGすらもバリバリ動き、剣戟の火花、宝具使用時の効果等、とにかく派手で見応えたっぷり。
「伝奇活劇ビジュアルノベル」と謳っているだけあって、活劇に相当力を入れた作りになっている。
相応にそれなりのスペックを要求されるが、多少マシン性能を上げる羽目になるとしても、ここまでやってくれるのなら投資価値は十分。

また、前作より格段に進歩したCGも、「奈須シナリオには武内絵」としみじみ思わせるベストマッチぶり。
イベントCGの数は、ゲーム全体のボリュームからすればやや少なめの感があるが、そのどれもが非常に印象的。
絵自体も柔らかみがあってクセが少なく、思わずツッコミを入れたくなる変な人体や、ありえない髪型、変な服もないし、構図がとても利いている。
アーチャーと共にビルから飛び降りる凛、夜明けを迎えるセイバー、白い森でのバーサーカーとイリヤ、アーチャーの心象風景、と気に入った絵を挙げるとキリがない。
立ち絵のバリエーションはかなり多く、キャラはとても表情豊か。
これがまたよく動いて、テキストには出てこない微妙な心境の変化までフォローするようになっている。

音楽は雰囲気に合っているが、これぞ! というインパクトに欠けるのもまた確か。
曲数も少なめで、これは「月姫」のときもそうだったのだが、無音の箇所がかなりある。
やはり雰囲気を盛り上げるために音楽は不可欠だと思うので、演出の邪魔にならない程度に付けるべきだ。
ちなみに私は「ノベルに声は不要」派なので、ボイスなしはまったく問題ない。
というより、これだけ尺の長い物語を、わざわざ声付きでやったら絶対に飽きると思うので、これは正しい選択だと思う。

さて、問題のシステム。
残念ながら、フリーズするバグと、プロテクトの誤動作問題が発生しているのでこれは大きな減点。
商業メーカーは、こういうところを細かくフォローしていかなければいけないので、まだ人的に充実とはいえない新規メーカーとしては大変だとは思うが、ゲームができる、できないという問題は何にも勝る大前提なので、早急に対応するべき。
幸い、私のマシンでは問題なく起動したので良かったのですが。(でも2回例外エラーで落ちた)

コンフィグ面ではかなりのカスタマイズができ、高スペックを要求するわりに、システム自体はかなり安定している。
さらに、前作同様、シーン全体をすっ飛ばす、高速な既読スキップのおかげで操作性は非常に良好。
各種鑑賞機能も揃ってるのに、シーン回想機能がないのが謎だが、エロにメインを置いた作品でないからなのか。
それとも単に付け忘れなのか。
個人的には、エロシーンに限らず、CGクリックで各種シーンを回想できれば良かったかな、と思う。
バトルはかなり燃え萌えだったので、後からまた見たいということが多かったし。
タイガースタンプクリックしたら、バッドエンド見れる、とかね。
バッドエンドが40種類もあるんだから、それぐらいしてくれてもバチは当たらないと思うのだが。

シナリオは相変わらず素晴らしい。
テーマの持たせ方、場面の盛り上げ方、ネタ自体はありがちだが、それを完全に消化し、かつオリジナリティ溢れる展開に仕上げていく手腕、独自解釈というレベルの遙か上空を行く表記、表現方法はさすがの一言。
特に今回は、まさにゲームに向いたシナリオで、音楽、絵、エフェクトとの相乗効果が非常に高かった。

よりストーリーを際だたせるためにルート制限があるのが辛いが、そのどれもがほとんど共通ルートなく、独立したまったく違う物語となっている。そのボリュームたるや、1ルート、平均12,3時間はかかるレベルの大作。
それだけ長大な物語を、文字通り、時が過ぎるのを忘れて没頭させる力。
前作で味わった、暴力と言えるほどの圧倒的な瞬発力こそないものの、一つ一つのエピソードが、伏線が、先に進めば進むほどに、ボディーブローのようにじわじわと効いてくる。

その「じわじわ」が、各バトルシーンにおいて、猛威を振るいだす。
必殺の武器という、ただでさえ燃えるシチュエーションに、これまたとんでもないルビだが、確実にかっこいいあて字。
「刺し穿つ死棘の槍」でゲイボルグ、「天地乖離す開闢の星」でエヌマ・エリシュだよ!? ありか、そんなん。
でも、これで燃えなきゃ漢じゃねぇ。

「月姫」もそうだったが、バトルになると異常なまでに高まるテンション。
凛ルートの後半、(以下数ヶ所ネタバレ危険!→)アーチャーが固有結界の呪文を唱えるシーンでは、全身の皮膚が粟立った。
かろうじて事前に出ていた情報に記載されていた詩が、まさか呪文だったなんて思いもつかなかったし、そもそも詩自体がセイバーのものだと信じ切っていた私にとって、これは衝撃の逆転だった。

この、あざといほどに効果的な台詞。
荒唐無稽でけれん味たっぷりだが有無をいわせない迫力のある演出。
これがあるから、TYPE-MOONのファンはやめられない。

セイバーと凛ルートに関して言うべきことは何もない。
どちらもご都合主義を排した、据わりのよいエンディングで、これ以外にはないだろう。
ただ、桜ルートだけは、聖杯戦争の顛末を描いているせいもあるが、やや長すぎた。
展開をもう少し早く、そして、バッド以外で桜を殺すというエンディングがあってもよかったと思う。
その場合、確実に(ネタバレ危険!→)士郎はアーチャー化するだろうが。

そして、この桜ルートを最後に持ってきてしまったのが痛い。
私はこの展開には全然問題ないと思うが、やはりシナリオの尺は少し削るべきだったと思う。
幼少時から他人の家で、手酷い扱いを受けてきた少女が、性格に歪みをきたさなかったらそれこそ嘘だし、その隠された内面の変化を徐々に描くことで、主人公の揺らぎや、直面した問題がよく表現されてるとも思う。

だが、長すぎるわりに、盛り上がりが後半に集中しているため、途中で中だるみしてしまう危険性がある。
やはり、早くにバトルのメインとなるはずのセイバーが退場してしまったのと、黒桜化するのが遅すぎるのが、よくない相乗効果を生んでしまっている。
これによって、メインヒロインであるはずのセイバーの影が薄くなってしまい、プレイヤーに黒セイバーの印象しか残らなくなってしまう。
彼女こそ、表題「Fate」の体現者なのだから、もう少し活躍の場があってもよかったような気が。

逆にその分、凛は相当株を上げた、と言うか、間違いなく本作のメインヒロインの座をゲット。
どのシナリオにも十二分に絡んでくるし、言動も小気味よく、重いテーマを抱えたシナリオの息苦しさを防いでいる。
もちろん私も、凛ルートが一番気に入った。
正確にはあれは、凛ルート、と言うよりは「Unlimited Blade Works」というタイトル以外の何者でもないのだが。

罪の意識から「正義の味方」であることに固執し、自分が幸せになることを顧みない、存在意義の不確かな主人公が、その呪縛から解き放たれる後半。
「ならば我が生涯に意味は不要ず」と詠唱できることがどれだけ深い意味を背負っていることか。
そして、(ネタバレ危険!→)「故に、生涯に意味はなく」と詠唱してきた英霊エミヤが、かつて失ったものを取り戻すラストシーン。
あの、「大丈夫だよ、遠坂」は反則級の破壊力を持って私を打ちのめした。

これだけ巨大かつ膨大な設定を持つ世界観を、少し伏線の取りこぼしがあるにせよ、力業でも一本にまとめ上げた力はやはり並大抵ではない。
加えて、前作では絵関係が弱かったため、シナリオが一人歩きしている印象が拭えなかったが、今回は作品としての総合力も相当ハイレベルなものとなっている。
むしろ、音と絵がなければ、ここまでの感動は生まれなかったはず。

ただ、この商業化第1作目で問題点が浮き彫りにされたのもまた事実。
製品として致命的なバグ、それに付随する人的、物的システムの層の薄さ。
これはプロとして絶対に乗り越えなければいけない壁であり、今回は経験値、ということで大目に見るが、次回こそ解決しなければいけない点だ。

伝奇・アクション・ホラーに抵抗がないならば、「これをやらずしてどれをやる」級の文句なしの一品。
商業としての値段と作品の質がガッチリと噛み合った、金の惜しくない良作です。

腐り姫-euthanasia-

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
90★★★★

インモラル・ホラーAVGの名を冠し、その名に恥じない秀作。
エロゲーであることを忘れないエロの高さ、年齢制限を逆手に取ったシナリオ、素晴らしくレベルの高い音楽。
おそらく、この限界MAXな背徳性ゆえにものすごく人を選ぶであろう作品だが、私は最高にツボを突かれた。

鬼畜じゃない、インモラル。
幾度も、幾年月も時を渡る者の孤独。悲哀。葛藤。人を愛するが故の狂気。懊悩。情欲。
ゆるゆると訪れる破滅を予感しながらも、それを食い止めることのできない歯がゆさ。
そして、死すら――あるいは奈落へ墜ちることすら快感に思えてくる毒性の強い物語。

これマジでソフ倫通ったんですか!?

と疑いたくなるような、倫理観ギリギリの設定(←ネタバレ危険! 別窓で開きます)の上で繰り広げられる、
妖しく、美しく、はかなく、恐ろしい物語。

簡潔で読みやすく、4日間を幾度も繰り返すループ構造のゲームでありながらリズムを損なわないテキスト。
ほとんどの文章が一回のウインドウ表示時、きちんと読点で区切られており、句点による次ウインドウへの持ち越しがない。
ボリュームが肥大化しているのにも関わらず、文章に関しては垂れ流しの冗長なゲームが多い昨今で、こういった細やかな気配りはとても好感が持てる。
このため、プレイヤーはほぼストレスを感じることなく世界観にのめり込み、次々と提示され、または明かされてゆく謎に翻弄されつつ、何度でもループを重ねてしまう。
再プレイ時も、選択肢が一つ二つ変わる程度ではなく、がらりとシナリオが変わってしまったり、とにかく飽きさせない。

本作のもう一人の主人公、蔵女――腐り姫の、

「誘おう……何処までも」

のセリフと共に、プレイヤーに提示される、トリップ感抜群の境界線があいまいな世界。
導入部から一回のループまでがまさに目くるめく展開で、何が現実で、何が虚構なのか、気を付けてはいても知らないうちにこの世界観にいともたやすく精神汚染されてしまう。

存在の希薄な自我と、時折蘇る忌まわしい過去に怯える、記憶喪失の主人公。
報われぬ思いを抱える人の心に忍び寄り、それを満たしてやる代わりに肉体と精神を「腐らせて」しまう腐り姫。
主人公にそれぞれ複雑な思惑を抱きつつ、その間隙を突かれて腐っていく周囲の人々。
彼らは次々に「満たされ」、「赤い雪」となって散っていく。
そして、世界には赤い雪――「破滅」が降り積もり、一つのループの幕は下りる。

時にあどけなく、時に妖艶に忍び寄る腐り姫の手練手管に怯え、深まる謎に翻弄されながら墜ちていく恐怖を味わい、赤い雪に包まれて滅びを目の当たりにするループの一つ一つに凄惨な色気がつきまとう。

これぞ18禁のゲーム。これぞ年齢制限。

淫靡で退廃的な、これ以上ないくらい「インモラル」な世界観。
これをさらに盛り上げる、あまりにもレベルの高いBGM。
これは本当に素晴らしい。音楽モードだけで金を取ってもいいくらいの出来映え。
「とがの楔」や「たそがれ月」、「湿原」などのピアノを基調とした、もの悲しく格調高い旋律が、ストーリーだけではどうしようもなくタブー臭の強くなるこの作品に、ある種の「品」を与えている。
音楽が鳴っただけでゾクゾクさせられるゲームは久しぶりだ。
秀逸、と言う他ないだろう。

一部ボイスを起用しており、声優陣のレベルも高い。
特に、蔵女役の方に関してはハンパじゃない巧さを感じた。
この不気味かつ妖艶な、強烈なインパクトを持つキャラを、ここまで演じきることができるとは。
「盲点」やおまけシナリオへもすべて絡んでいるので、まさに八面六臂の活躍ぶりだが、そこでのはっちゃけぶりと、本編とのギャップに唖然となるはず。

キャラ絵に関しては、多分に好き嫌いが分かれると思うタッチだが、これまた世界観にぴったりと合っている。
伝奇ホラーの暗さを保ちつつも、表情豊かに、また塗りは丁寧に仕上げられており、非常に高レベル。
背景も、少しレトロで枯れた画風が「とうかんもり」という寂れた町の設定にマッチしており、最近多い、「暖かく、素朴でのどかな田舎町」という以外の、標準的な廃れゆく田舎町の風情をよく表現できていると思う。

ところで、このゲームの演出で一風変わっているのが、この背景とバストアップCGの組み合わせ。
背景上にキャラのチップが配置され、それを眺めたまま、会話時のバストアップCGが表示される。
これにより、プレイヤーは、キャラたちがどのような位置関係で会話しているのか、容易に知ることができる。
また、このチップは、その会話中でも立ち位置を変えることもあり、会話の臨場感という演出に一役買っている。
今までのAVGと言えば、会話中のキャラは表示されっぱなし、ほとんどすべてが立ち絵というものばかりだったので、この演出はかなり新鮮だった。

さて、このゲームでの数少ない難点。
ゲームシステムが複雑すぎる。
4日間一括りでワンセット、それを幾度も繰り返す、という構造は別に構わない。
だが、一度エンディングを迎えたら、「記憶を消す」を選択しないと別エンドに到達できない、というのはいかがなものか。
シナリオ上の演出もあるとはいえ、この条件が分かりにくいため、攻略に非常に手間がかかる。
さらに、ルート制限(?)が厳しく、一行でも次ルートの文章が表示がされてしまうと、前データをロードしても、その時点に戻ることができず、強制的にそのルートのエンディングを迎えざるをえなくなっている。
このため、今作の「セーブ」という概念は、単なる休憩用か、中途終了のためのしおりでしかない。
通常のAVGと同じ感覚で進めていくと、泣きを見る羽目になるので要注意。

そして、最大の問題点が、設定を語りすぎてしまったこと。
腐り姫の能力や存在意義の説明をするために、明らかに伝奇ホラーとはミスマッチなSF要素を盛り込んでしまい、強引に着地はしているものの、ほんの少しだけ、据わりの悪い物語になってしまっている。
終盤までの閉じた世界観にどっぷりひたっていたのに、突如現れたグローバルな設定にとまどいを覚えたプレイヤーは少なくないと思う。
それほどまでに、この要素は突飛すぎた。

じわじわと確実に追いつめられて、目前にカタストロフが迫っている、という一触即発の緊張感を持った状態においては、あまりに論理的な説明がなされすぎているこの設定で、かえって興ざめしてしまう。
もっと得体の知れない、よく分からないけれど怖い、といったままの存在であってもよかった。
それこそが、「ホラー」の醍醐味であると思うので。

ただ、それを経てもたらされるエンディング3種は、どれも非常に美しい。
特に、トゥルーエンドの余韻の深さは抜きんでており、「リフレェン」というタイトルとも相まって、ものすごい破壊力を持っていると思う。

すべてを忘れ、そしてたどり着いた巡る運命の先に待っていたのは――。

これを、(ネタバレ危険!→)>「リセット」と取るか「循環」と取るかによって、その人の評価は違ってくると思うが。
それは、プレイヤー次第で違っていいと思う。(以下ネタバレ危険!)
「リセット」と取るならほんの少しの希望を、「循環」と取るならやりきれない無限の悲しみと切なさを、それぞれ味わえると思うので。
ちなみに私は「循環」の方が好き。アンハッピーエンド大好きなんで。

このラストにおける、「逃げ」ではない解釈の多様性も、今作品を味わい深くしている点の一つだと思うので、プレイヤーそれぞれの感想を大事にすればいいと思います。

ボリューム的には小品とも言える作品だが、その質においては逸品の一言。
すべてが高アベレージの、完成度の高い良質なAVG。
倫理観にしばし目をつぶれる人、ぜひプレイを。

あとな、ヒントが出る「盲点」モードは、初回プレイ時は絶対にオフにしとけよ、みんな。
オンにすれば、大変なことが起こるから。

……ぱっぱぱぱぱぱぱ、ぱっぱっ、パフ。←体験者だけのお楽しみ

歌月十夜

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1096

私の「心のゲーム殿堂」への階段を一気に駆け上った「月姫」のお祭りディスク。
自分でも何だか呆れるくらいにこの作品気に入ったんだけど、止まらないです。阿呆です。人間失格です。

そして、またもやられた。脱帽。
正直、「お祭りディスク」にここまでのレベルのものなんて求めてなかったし。
何で難易度がアップしてるのか、とかそういうことはともかく、素晴らしい出来の作品でした。
新キャラのレンもかわいいし、基本はシリアスでありながら、お祭りならではのはっちゃけぶりが垣間見えるシナリオやショートショートも大いに笑わせてもらったし。
妹切草や暗黒翡翠拳ってアンタ……。
月姫本編をやった人なら、ぜひ購入を健闘すべきディスクです。
「お祭り」の名にふさわしく、随所にファンサービスがてんこ盛りで飽きさせず、文句なしに楽しい。
終わってしまうことに一抹の寂しさを覚えるのも「お祭り」ならでは。

ただ、攻略にちと手間がかかるので、私がお世話になった攻略サイトをご紹介。

hossy online(管理人:ほっしーさん)

この複雑なゲーム構造が、非常に見やすく分かりやすい形でまとめられてます。オススメ。

 1  |  2  |  3  | All pages