1  |  2  |  3  | All pages

Fate/stay night

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1091★★★★★

「月姫」で私を頭のてっぺんからつま先まで汚染した、TYPE-MOONの商業化作品第1弾。
あれだけ名実共に揃った作品を最初に出してしまうと、後は転落するだけ、というプレッシャーがあったと思うが、よくぞそれを払拭してくれた、と惜しみない賛辞を送りたい。
相変わらず膨大かつ緻密な設定に加え、格段に進化したエフェクトが、かつてない演出効果を生み出した作品。
そして、発売まで抑えに抑えた情報が、驚きと共に次々と顕わになる快感は、時間を忘れてプレイに没頭させるに十分。

とにかく今回はこの演出が凄まじかった。
文章によるアクションシーンは、ともすれば冗長になってしまいがちだが、今回は迫力あるSEに加えて、立ち絵・イベントCGすらもバリバリ動き、剣戟の火花、宝具使用時の効果等、とにかく派手で見応えたっぷり。
「伝奇活劇ビジュアルノベル」と謳っているだけあって、活劇に相当力を入れた作りになっている。
相応にそれなりのスペックを要求されるが、多少マシン性能を上げる羽目になるとしても、ここまでやってくれるのなら投資価値は十分。

また、前作より格段に進歩したCGも、「奈須シナリオには武内絵」としみじみ思わせるベストマッチぶり。
イベントCGの数は、ゲーム全体のボリュームからすればやや少なめの感があるが、そのどれもが非常に印象的。
絵自体も柔らかみがあってクセが少なく、思わずツッコミを入れたくなる変な人体や、ありえない髪型、変な服もないし、構図がとても利いている。
アーチャーと共にビルから飛び降りる凛、夜明けを迎えるセイバー、白い森でのバーサーカーとイリヤ、アーチャーの心象風景、と気に入った絵を挙げるとキリがない。
立ち絵のバリエーションはかなり多く、キャラはとても表情豊か。
これがまたよく動いて、テキストには出てこない微妙な心境の変化までフォローするようになっている。

音楽は雰囲気に合っているが、これぞ! というインパクトに欠けるのもまた確か。
曲数も少なめで、これは「月姫」のときもそうだったのだが、無音の箇所がかなりある。
やはり雰囲気を盛り上げるために音楽は不可欠だと思うので、演出の邪魔にならない程度に付けるべきだ。
ちなみに私は「ノベルに声は不要」派なので、ボイスなしはまったく問題ない。
というより、これだけ尺の長い物語を、わざわざ声付きでやったら絶対に飽きると思うので、これは正しい選択だと思う。

さて、問題のシステム。
残念ながら、フリーズするバグと、プロテクトの誤動作問題が発生しているのでこれは大きな減点。
商業メーカーは、こういうところを細かくフォローしていかなければいけないので、まだ人的に充実とはいえない新規メーカーとしては大変だとは思うが、ゲームができる、できないという問題は何にも勝る大前提なので、早急に対応するべき。
幸い、私のマシンでは問題なく起動したので良かったのですが。(でも2回例外エラーで落ちた)

コンフィグ面ではかなりのカスタマイズができ、高スペックを要求するわりに、システム自体はかなり安定している。
さらに、前作同様、シーン全体をすっ飛ばす、高速な既読スキップのおかげで操作性は非常に良好。
各種鑑賞機能も揃ってるのに、シーン回想機能がないのが謎だが、エロにメインを置いた作品でないからなのか。
それとも単に付け忘れなのか。
個人的には、エロシーンに限らず、CGクリックで各種シーンを回想できれば良かったかな、と思う。
バトルはかなり燃え萌えだったので、後からまた見たいということが多かったし。
タイガースタンプクリックしたら、バッドエンド見れる、とかね。
バッドエンドが40種類もあるんだから、それぐらいしてくれてもバチは当たらないと思うのだが。

シナリオは相変わらず素晴らしい。
テーマの持たせ方、場面の盛り上げ方、ネタ自体はありがちだが、それを完全に消化し、かつオリジナリティ溢れる展開に仕上げていく手腕、独自解釈というレベルの遙か上空を行く表記、表現方法はさすがの一言。
特に今回は、まさにゲームに向いたシナリオで、音楽、絵、エフェクトとの相乗効果が非常に高かった。

よりストーリーを際だたせるためにルート制限があるのが辛いが、そのどれもがほとんど共通ルートなく、独立したまったく違う物語となっている。そのボリュームたるや、1ルート、平均12,3時間はかかるレベルの大作。
それだけ長大な物語を、文字通り、時が過ぎるのを忘れて没頭させる力。
前作で味わった、暴力と言えるほどの圧倒的な瞬発力こそないものの、一つ一つのエピソードが、伏線が、先に進めば進むほどに、ボディーブローのようにじわじわと効いてくる。

その「じわじわ」が、各バトルシーンにおいて、猛威を振るいだす。
必殺の武器という、ただでさえ燃えるシチュエーションに、これまたとんでもないルビだが、確実にかっこいいあて字。
「刺し穿つ死棘の槍」でゲイボルグ、「天地乖離す開闢の星」でエヌマ・エリシュだよ!? ありか、そんなん。
でも、これで燃えなきゃ漢じゃねぇ。

「月姫」もそうだったが、バトルになると異常なまでに高まるテンション。
凛ルートの後半、(以下数ヶ所ネタバレ危険!→)アーチャーが固有結界の呪文を唱えるシーンでは、全身の皮膚が粟立った。
かろうじて事前に出ていた情報に記載されていた詩が、まさか呪文だったなんて思いもつかなかったし、そもそも詩自体がセイバーのものだと信じ切っていた私にとって、これは衝撃の逆転だった。

この、あざといほどに効果的な台詞。
荒唐無稽でけれん味たっぷりだが有無をいわせない迫力のある演出。
これがあるから、TYPE-MOONのファンはやめられない。

セイバーと凛ルートに関して言うべきことは何もない。
どちらもご都合主義を排した、据わりのよいエンディングで、これ以外にはないだろう。
ただ、桜ルートだけは、聖杯戦争の顛末を描いているせいもあるが、やや長すぎた。
展開をもう少し早く、そして、バッド以外で桜を殺すというエンディングがあってもよかったと思う。
その場合、確実に(ネタバレ危険!→)士郎はアーチャー化するだろうが。

そして、この桜ルートを最後に持ってきてしまったのが痛い。
私はこの展開には全然問題ないと思うが、やはりシナリオの尺は少し削るべきだったと思う。
幼少時から他人の家で、手酷い扱いを受けてきた少女が、性格に歪みをきたさなかったらそれこそ嘘だし、その隠された内面の変化を徐々に描くことで、主人公の揺らぎや、直面した問題がよく表現されてるとも思う。

だが、長すぎるわりに、盛り上がりが後半に集中しているため、途中で中だるみしてしまう危険性がある。
やはり、早くにバトルのメインとなるはずのセイバーが退場してしまったのと、黒桜化するのが遅すぎるのが、よくない相乗効果を生んでしまっている。
これによって、メインヒロインであるはずのセイバーの影が薄くなってしまい、プレイヤーに黒セイバーの印象しか残らなくなってしまう。
彼女こそ、表題「Fate」の体現者なのだから、もう少し活躍の場があってもよかったような気が。

逆にその分、凛は相当株を上げた、と言うか、間違いなく本作のメインヒロインの座をゲット。
どのシナリオにも十二分に絡んでくるし、言動も小気味よく、重いテーマを抱えたシナリオの息苦しさを防いでいる。
もちろん私も、凛ルートが一番気に入った。
正確にはあれは、凛ルート、と言うよりは「Unlimited Blade Works」というタイトル以外の何者でもないのだが。

罪の意識から「正義の味方」であることに固執し、自分が幸せになることを顧みない、存在意義の不確かな主人公が、その呪縛から解き放たれる後半。
「ならば我が生涯に意味は不要ず」と詠唱できることがどれだけ深い意味を背負っていることか。
そして、(ネタバレ危険!→)「故に、生涯に意味はなく」と詠唱してきた英霊エミヤが、かつて失ったものを取り戻すラストシーン。
あの、「大丈夫だよ、遠坂」は反則級の破壊力を持って私を打ちのめした。

これだけ巨大かつ膨大な設定を持つ世界観を、少し伏線の取りこぼしがあるにせよ、力業でも一本にまとめ上げた力はやはり並大抵ではない。
加えて、前作では絵関係が弱かったため、シナリオが一人歩きしている印象が拭えなかったが、今回は作品としての総合力も相当ハイレベルなものとなっている。
むしろ、音と絵がなければ、ここまでの感動は生まれなかったはず。

ただ、この商業化第1作目で問題点が浮き彫りにされたのもまた事実。
製品として致命的なバグ、それに付随する人的、物的システムの層の薄さ。
これはプロとして絶対に乗り越えなければいけない壁であり、今回は経験値、ということで大目に見るが、次回こそ解決しなければいけない点だ。

伝奇・アクション・ホラーに抵抗がないならば、「これをやらずしてどれをやる」級の文句なしの一品。
商業としての値段と作品の質がガッチリと噛み合った、金の惜しくない良作です。

腐り姫-euthanasia-

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
90★★★★

インモラル・ホラーAVGの名を冠し、その名に恥じない秀作。
エロゲーであることを忘れないエロの高さ、年齢制限を逆手に取ったシナリオ、素晴らしくレベルの高い音楽。
おそらく、この限界MAXな背徳性ゆえにものすごく人を選ぶであろう作品だが、私は最高にツボを突かれた。

鬼畜じゃない、インモラル。
幾度も、幾年月も時を渡る者の孤独。悲哀。葛藤。人を愛するが故の狂気。懊悩。情欲。
ゆるゆると訪れる破滅を予感しながらも、それを食い止めることのできない歯がゆさ。
そして、死すら――あるいは奈落へ墜ちることすら快感に思えてくる毒性の強い物語。

これマジでソフ倫通ったんですか!?

と疑いたくなるような、倫理観ギリギリの設定(←ネタバレ危険! 別窓で開きます)の上で繰り広げられる、
妖しく、美しく、はかなく、恐ろしい物語。

簡潔で読みやすく、4日間を幾度も繰り返すループ構造のゲームでありながらリズムを損なわないテキスト。
ほとんどの文章が一回のウインドウ表示時、きちんと読点で区切られており、句点による次ウインドウへの持ち越しがない。
ボリュームが肥大化しているのにも関わらず、文章に関しては垂れ流しの冗長なゲームが多い昨今で、こういった細やかな気配りはとても好感が持てる。
このため、プレイヤーはほぼストレスを感じることなく世界観にのめり込み、次々と提示され、または明かされてゆく謎に翻弄されつつ、何度でもループを重ねてしまう。
再プレイ時も、選択肢が一つ二つ変わる程度ではなく、がらりとシナリオが変わってしまったり、とにかく飽きさせない。

本作のもう一人の主人公、蔵女――腐り姫の、

「誘おう……何処までも」

のセリフと共に、プレイヤーに提示される、トリップ感抜群の境界線があいまいな世界。
導入部から一回のループまでがまさに目くるめく展開で、何が現実で、何が虚構なのか、気を付けてはいても知らないうちにこの世界観にいともたやすく精神汚染されてしまう。

存在の希薄な自我と、時折蘇る忌まわしい過去に怯える、記憶喪失の主人公。
報われぬ思いを抱える人の心に忍び寄り、それを満たしてやる代わりに肉体と精神を「腐らせて」しまう腐り姫。
主人公にそれぞれ複雑な思惑を抱きつつ、その間隙を突かれて腐っていく周囲の人々。
彼らは次々に「満たされ」、「赤い雪」となって散っていく。
そして、世界には赤い雪――「破滅」が降り積もり、一つのループの幕は下りる。

時にあどけなく、時に妖艶に忍び寄る腐り姫の手練手管に怯え、深まる謎に翻弄されながら墜ちていく恐怖を味わい、赤い雪に包まれて滅びを目の当たりにするループの一つ一つに凄惨な色気がつきまとう。

これぞ18禁のゲーム。これぞ年齢制限。

淫靡で退廃的な、これ以上ないくらい「インモラル」な世界観。
これをさらに盛り上げる、あまりにもレベルの高いBGM。
これは本当に素晴らしい。音楽モードだけで金を取ってもいいくらいの出来映え。
「とがの楔」や「たそがれ月」、「湿原」などのピアノを基調とした、もの悲しく格調高い旋律が、ストーリーだけではどうしようもなくタブー臭の強くなるこの作品に、ある種の「品」を与えている。
音楽が鳴っただけでゾクゾクさせられるゲームは久しぶりだ。
秀逸、と言う他ないだろう。

一部ボイスを起用しており、声優陣のレベルも高い。
特に、蔵女役の方に関してはハンパじゃない巧さを感じた。
この不気味かつ妖艶な、強烈なインパクトを持つキャラを、ここまで演じきることができるとは。
「盲点」やおまけシナリオへもすべて絡んでいるので、まさに八面六臂の活躍ぶりだが、そこでのはっちゃけぶりと、本編とのギャップに唖然となるはず。

キャラ絵に関しては、多分に好き嫌いが分かれると思うタッチだが、これまた世界観にぴったりと合っている。
伝奇ホラーの暗さを保ちつつも、表情豊かに、また塗りは丁寧に仕上げられており、非常に高レベル。
背景も、少しレトロで枯れた画風が「とうかんもり」という寂れた町の設定にマッチしており、最近多い、「暖かく、素朴でのどかな田舎町」という以外の、標準的な廃れゆく田舎町の風情をよく表現できていると思う。

ところで、このゲームの演出で一風変わっているのが、この背景とバストアップCGの組み合わせ。
背景上にキャラのチップが配置され、それを眺めたまま、会話時のバストアップCGが表示される。
これにより、プレイヤーは、キャラたちがどのような位置関係で会話しているのか、容易に知ることができる。
また、このチップは、その会話中でも立ち位置を変えることもあり、会話の臨場感という演出に一役買っている。
今までのAVGと言えば、会話中のキャラは表示されっぱなし、ほとんどすべてが立ち絵というものばかりだったので、この演出はかなり新鮮だった。

さて、このゲームでの数少ない難点。
ゲームシステムが複雑すぎる。
4日間一括りでワンセット、それを幾度も繰り返す、という構造は別に構わない。
だが、一度エンディングを迎えたら、「記憶を消す」を選択しないと別エンドに到達できない、というのはいかがなものか。
シナリオ上の演出もあるとはいえ、この条件が分かりにくいため、攻略に非常に手間がかかる。
さらに、ルート制限(?)が厳しく、一行でも次ルートの文章が表示がされてしまうと、前データをロードしても、その時点に戻ることができず、強制的にそのルートのエンディングを迎えざるをえなくなっている。
このため、今作の「セーブ」という概念は、単なる休憩用か、中途終了のためのしおりでしかない。
通常のAVGと同じ感覚で進めていくと、泣きを見る羽目になるので要注意。

そして、最大の問題点が、設定を語りすぎてしまったこと。
腐り姫の能力や存在意義の説明をするために、明らかに伝奇ホラーとはミスマッチなSF要素を盛り込んでしまい、強引に着地はしているものの、ほんの少しだけ、据わりの悪い物語になってしまっている。
終盤までの閉じた世界観にどっぷりひたっていたのに、突如現れたグローバルな設定にとまどいを覚えたプレイヤーは少なくないと思う。
それほどまでに、この要素は突飛すぎた。

じわじわと確実に追いつめられて、目前にカタストロフが迫っている、という一触即発の緊張感を持った状態においては、あまりに論理的な説明がなされすぎているこの設定で、かえって興ざめしてしまう。
もっと得体の知れない、よく分からないけれど怖い、といったままの存在であってもよかった。
それこそが、「ホラー」の醍醐味であると思うので。

ただ、それを経てもたらされるエンディング3種は、どれも非常に美しい。
特に、トゥルーエンドの余韻の深さは抜きんでており、「リフレェン」というタイトルとも相まって、ものすごい破壊力を持っていると思う。

すべてを忘れ、そしてたどり着いた巡る運命の先に待っていたのは――。

これを、(ネタバレ危険!→)>「リセット」と取るか「循環」と取るかによって、その人の評価は違ってくると思うが。
それは、プレイヤー次第で違っていいと思う。(以下ネタバレ危険!)
「リセット」と取るならほんの少しの希望を、「循環」と取るならやりきれない無限の悲しみと切なさを、それぞれ味わえると思うので。
ちなみに私は「循環」の方が好き。アンハッピーエンド大好きなんで。

このラストにおける、「逃げ」ではない解釈の多様性も、今作品を味わい深くしている点の一つだと思うので、プレイヤーそれぞれの感想を大事にすればいいと思います。

ボリューム的には小品とも言える作品だが、その質においては逸品の一言。
すべてが高アベレージの、完成度の高い良質なAVG。
倫理観にしばし目をつぶれる人、ぜひプレイを。

あとな、ヒントが出る「盲点」モードは、初回プレイ時は絶対にオフにしとけよ、みんな。
オンにすれば、大変なことが起こるから。

……ぱっぱぱぱぱぱぱ、ぱっぱっ、パフ。←体験者だけのお楽しみ

歌月十夜

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1096

私の「心のゲーム殿堂」への階段を一気に駆け上った「月姫」のお祭りディスク。
自分でも何だか呆れるくらいにこの作品気に入ったんだけど、止まらないです。阿呆です。人間失格です。

そして、またもやられた。脱帽。
正直、「お祭りディスク」にここまでのレベルのものなんて求めてなかったし。
何で難易度がアップしてるのか、とかそういうことはともかく、素晴らしい出来の作品でした。
新キャラのレンもかわいいし、基本はシリアスでありながら、お祭りならではのはっちゃけぶりが垣間見えるシナリオやショートショートも大いに笑わせてもらったし。
妹切草や暗黒翡翠拳ってアンタ……。
月姫本編をやった人なら、ぜひ購入を健闘すべきディスクです。
「お祭り」の名にふさわしく、随所にファンサービスがてんこ盛りで飽きさせず、文句なしに楽しい。
終わってしまうことに一抹の寂しさを覚えるのも「お祭り」ならでは。

ただ、攻略にちと手間がかかるので、私がお世話になった攻略サイトをご紹介。

hossy online(管理人:ほっしーさん)

この複雑なゲーム構造が、非常に見やすく分かりやすい形でまとめられてます。オススメ。

ファントム Phantom of Inferno(DVD版)

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
90★★★★★

レビューの前に一言。

「決してPS2(もしくは等速オンリーのDVDプレイヤー)でプレイしてはいかん!!!」

はっきり言って、本筋に対して関係ないところで印象悪くします。
再生速度を替えられないと、地獄のようなプレイ環境になること間違いなし。
それほどまでに、なぜかこのソフト、スローペースです。

物語自体は緊迫した、スピード感と哀切溢れる秀作。
記憶を失くし、過去を忘れ、生きる意味を問いながら手を血に染め続ける登場人物たち。
マフィアの頂点に立たんとする組織、「インフェルノ」。
そして、組織の暗殺者で最高位の者に与えられる称号「ファントム」。
主人公は、その「ファントム」としての生き方を余儀なくされたアイン、ツヴァイ、ドライ。
それをとりまく組織の幹部や対立する人間、渦巻く陰謀、これでもかと登場する重火器等、品揃えは一級品。

何と言っても、冗長な部分や無駄が少ない
緩急ある展開や周到な伏線、印象的な場面設定や音楽等、せっかく築き上げた世界観を壊さないよう、細部にも気を使っている。
特に感心したのが後半に宗教の持つ「救い」の作用を絡めたこと。
比類なき暗殺者としてその名を轟かせた「初代ファントム」であるアインが、宗教に関心を持ち、教会に出入りし、祈りを捧げ、賛美歌を歌う。
この一見相反する行為が物語の悲壮感を一層高め、結果、このゲーム一番の見せ場と言っても過言ではない、

アイン(初代ファントム)とドライ(3代目ファントム)の教会での一騎打ち

に発展する。

「暗殺者」としての呪縛から逃れられない苦しみ。
「人」として救われたい気持ち。
「愛する人」を救いたい気持ち。

人は、己一人の力で立つしかなく、自身は決して贖えない罪を背負っていることを嫌というほど知っているアインが、それでも神への祈りを捧げずにはいられない気持ちを忖度し、プレイヤーはそれに心を引きずられる。
「暗殺者」「組織」「血と硝煙」「陰謀と抗争」「純愛」と、並べただけではありがちな各パーツが、「宗教」の持つファクターを一枚噛ませてやるだけで、これだけの演出効果を導き出す。
ここだけ取り上げても、絶対的にやるべき要素満載。

私は3章のヒロイン美緒は正ヒロインと思っていないので除外するが(ひでえ)、

アインと迎える、彼女が自分のアイデンティティの拠り所を取り戻す感動的なラストも、
ドライと迎える、ある種突き抜けた感のあるラストも、
賛否両論別れる、クロウディアのエンディング2種も、

どれも納得できる出来だった。
敢えて言うなら、アインのラストは別格だろう。
なんせ1章から「草原」の伏線を張って用意してあるんだから。

ちなみに、クロウディアはああいう展開になるだろうってことはよく分かってた。
だって私も(一応)女だもん(笑)
エゴイスティックこそ女の本性ですよ、世の男性諸君。
組織の幹部になるほどの実力を持つ女ならなおさら。
ただ、頂点に登りつめたときに、失ったものに思いを馳せるかそうでないかが、「悪女」と「計算高い女」の違いなんじゃないのかな。
クロウディアは悪女にはなりきれない、そういう部分が魅力的な女なんだと私は思いますが。
そりゃ、こういう女は18禁ゲーのキャラ造形としては受けないわな。私は好きです。

冒頭の緊張感から、学校でのラストバトルに至るまで、全編中だるみや破綻がなく、怒濤の展開を繰り広げます。
ドラマティックでスケールが大きく、まさに珠玉のエンターテインメント
映画的なノリが好きで、ストーリー重視派の方、ぜひプレイを。

月姫

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1096

これは、すごいゲームだ。
何がすごいって、これが商業ベースで作られたんじゃないってことが。
同人ベースでここまでやられちゃ、はっきり言ってゲームメーカー形なし。
何せ、私が今までプレイしたゲームの中でも、かなり図抜けている。
惜しむらくはシステム周辺が弱いこと、音楽、CGのボリュームが少ないこと。誤字が多すぎること。
が、それを補って余りあるテキスト量。キャラ造形。作品作りに対する意気込みが全然違う。

ネタは今や「使い古し」の代名詞である吸血鬼。
そして、格式はあるが謎に満ちた旧家。いわゆる伝奇物と呼ばれるジャンルであり、非の打ち所のない「ありがち」設定だ。
しかし、それを盛り上げる緻密な設定と圧倒的なボリューム、怜悧な視点と冴えた構成。
とにかく、シナリオとテキストの力がハンパじゃない。
月姫の魅力と破壊力は、ほぼこの二つによると言っても過言でない。

知能遅れか疑いたくなるヒロインも、くだらないことにウジウジと悩みまくるヘタレな主人公も、この物語には存在しない。
エロゲーの主人公に「燃えた」のは初めてだよ。(←「萌え」じゃないよ)
全員がきちんと知性を備えており、それぞれの価値観を持って生きている。
5人のヒロイン&主人公には、それぞれに過酷な運命が待っているのだが、そこから逃げだす者はいない。
みっともなく暴れ抗う者もいない。

文体の力もあるだろうが、常軌を逸した物語設定であるにもかかわらず、そこに住む人物たちは非常に理性的だ。
皆、自分のやるべきこと、なすべきことを見極め、あるべき場所に静かに佇む。
自律のもと動く、というのは、こういうゲームでは珍しい人間像だと思う。
そしてそこが、依存心が強く、頭の弱いヒロインが多い昨今のゲーム業界の中で、ひときわ異質に見える。
こういうキャラ造形を、
「18禁」という、最も上記のヒロインタイプが好まれるフィールドでやってしまう
こと自体がすごい。
ある意味、こういうところが「同人」なのかもしれない。
だって商業ベースじゃこんな実験怖くてできないだろう。普通。

ストーリー展開は、序盤がホラー色、後半はミステリ色が強い。
伏線の張り方が巧い。注意深くテキストを読み進めると簡単にネタが割れることでも、さりげなく、そして効果的に張られた伏線によって、最後にちゃんと得心がいく作りになっている。
ネタ自体を看破するのは、ある程度の読み巧者なら簡単なことだと思うのだが、その後味を、
「ちっ、やっぱりそうだったのか。つまらん」
と思わせるのと、
「ああ、やっぱりそうだったのか。しかしこれで納得がいった」
と思わせるのでは全然違う。月姫は当然後者のタイプだ。

例えば私は、(超ネタバレ危険!→)「志貴とシキの意識の交錯」「翡翠←→琥珀の入れ替わり」なんてのはかなりの序盤から分かったが、それでも問題なく最後まで物語を楽しめた。

ちなみに、月姫の世界を存分に味わい尽くすためには、推奨ルート(アルクェイド→シエル→秋葉→翡翠→琥珀)は絶対に守るべき。
後半の盛り上がりが断然違ってくる。特に秋葉以降の遠野家ルートにおいて。

私もかなり色々なノベルタイプAVGをプレイしたが、上手下手はともかくとしても、ここまで十二分にゲームの世界観を引き立てる文章を読んだのは、月姫が初めてだ。
やや説明的すぎるきらいはあるが、簡潔に抑えた筆致で滑ったところのない硬質の文体は、この静かで冷たく澄んだ物語に深みを与えている。

各章のタイトルも秀逸。
琥珀ルートでの「カイン」なんてのは、プレイ前は意味不明以外の何者でもないのだが、章を進み、その内容を理解してタイトルを思い起こしたときに初めて衝撃が訪れる。
これ以上ないほど内容に即した、それでいて卓越したセンスを誇るネーミングには、本当に皮膚が粟立つほど戦慄した。

文字自体が持つ視覚性とイメージ喚起力、言葉の呪力(「言霊」だからね)、そういうものを知り尽くした演出。
あて字がやたらと多いのは気になるが、決してこの世界観を損なうものではない。

映像が重要視され、中でも「とりあえず見栄えのいい絵出しとけばOK」なこの業界で、最も原始的な力で、最もストレートなパンチを食らわされた衝撃。

変わったことは何一つやっていない、あまりにもオーソドックスな、だが、珠玉のゲーム。
圧倒的なコストパフォーマンスと、本当に丁寧なゲーム作りの姿勢に敬意を表し、お勧め∞。
人死にが多いストーリーに抵抗のない方、不自然なハッピーエンドなど望まない方、何を押してもどうぞ。

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
92★★★★

一番長時間プレイした18禁ソフトであり、PC-98でプレイした最後のソフト
攻略まったくなしで、メモも取らず、達成率100%になるまでに費やした時間は70時間オーバー。
かつて一体、どこにそんな余裕があったんだろうかと、我が身を疑いたくなってしまう。(若くて学生だったから)

しかも、予備知識もなかったので、(ネタバレ危険!→)超ドクソ長い異世界編があるなんて知らず、マップを完成させた時点で「今日のうちに終わらせよう」と甘い考えを起こした結果。

深夜1時頃から始め、全てが終わった時点ですでに早朝

となっていた、という非常に苦い思い出のあるソフトだったりする。(自分が悪い)
もちろん次の日は平日で、半分意識を失いながら登校した。

まあ、そんないわく付きのソフトなのだが、裏を返せば途中で止められなかった、ということだ。

圧倒的な世界観、執念すら感じさせるほどの緻密な設定。
多少の矛盾や理屈なんて吹っ飛ばしてしまうパワーがこれにはある。
知っている人は知っているとおり、作者の剣乃ゆきひろ氏(現:菅野ひろゆき氏)のゲームには、根底にあるテーマが流れている。
今更語るべくもないが、それは「極限の愛の形」だ(と私は思っている)。

ゲームによって状況は様々に違うが、YU-NOのそれは、とても静かだ。
その静謐に満ちたエンディングを終え、タイトルの「この世の果て」の意味を理解したとき、完全に私は圧倒され、そして戦慄した。

私は激しいもの、強いものが好きだ。
音楽だって、耳に優しいスローテンポよりは攻撃的なリズムの方が好きだし、どちらかというと弱肉強食的な価値観を持っている。
だから、他人をうち倒すほどの激しい感情や価値観に触れるのも、実は嫌いじゃない。
むしろ、弱いヤツには虫酸が走るというある種ジャイアン的(いわゆるジャイアニズム)なところがある。
だからこそ、静寂が時に何よりも激しく、深く語りかけてくることに強烈なまでの衝撃を受けたのだ。

YU-NOは実はタブーの物語でもある。
ユーノ・神奈とは親子だし、神奈の母親、義母である亜由美、巫女であるセーレスとも関係する。
が、ゲーム中で、「そりゃヤバイだろ」と思ったことは全然なかった。
私に倫理観が欠如しているからだけではなく(だと思う)、そういうことは「些末な問題」にしか思わせないシナリオの力が確かにある。

作者剣乃氏のもう一つのテーマ、「タブーへの挑戦」。

私は個人的に、

「表現者がそれから生ずる責任をとるのなら、表現方法にタブーがあってはならない」

という考えなので、彼のような姿勢は特に評価したい。
実際、タブーになると途端に逃げ腰になるクリエイターが多い中で、敢然とそれに取り組み、かつ結実しているこのゲームは本当に素晴らしいと思う。
(しかし、サターン版ではどうなっていたのか全然分からん)

手放しで誉めてきたが、このゲーム、実は問題点がないわけではない。
ゲームシステムが一見複雑なのと、シナリオがあまりに長大なため、中盤一時期中だるみすること、フラグの立つ条件が一昔前のAVGにありがちなコマンド総当たりであること。
これらが、シナリオのテンポを若干落としてしまっている。

まあ、リフレクターの使い方に関しては、1,2回やってみればすぐ慣れるし、中だるみに関しては、イラつくながらも先に進みたいがために自分のスピードがアップするくらいで、特に問題はない。
時間を掛ける手間さえ惜しまなければ、決してやってみて損はないゲームだと思う。

スケールの大きい壮大な物語だけが持つ、重厚で圧倒的なカタルシス。
終えた後に、思わずため息をついてしまう感覚を味わいたい人はぜひ。

私は、ゲームでこんなに衝撃を受けたのはDQ3以来でした。
実は、あの衝撃のラストが理解できる人とそうでない人に別れるらしいが、絶対に一見の価値あり。
貴方も(貴女も)「この世の果て」を確かめてみてください。

追記……余談だが、おまけディスクの「それいけセーレス」がメモリ不足のためできなかった私。ううっ。
当時のうちのマシンは、YU-NOを入れただけでお腹いっぱいになるという超ヘボマシンだったのだ。
あのマシンも今ではすっかり現役を終え(当然だ)、2001年末の大掃除の際、とうとう部屋から撤去された。
さらにFDドライブも逝かれていたので、YU-NO(と遺作と同級生2)のコンプリートデータをよせることもできなかった。
私の70時間(プラス数十時間)を返せ。
が、そのマシンのあった場所が今ではPCゲーム置き場になっていることは内緒だ。

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1094

私的18禁ゲームランキング第1位。現時点で考え得る最高傑作。
(長年守った王座だったが、2002年末にとうとう「月姫」に明け渡した)

シナリオ、キャラ造形、音楽、演出、すべてにおいて、100パーセントに最も近いゲーム。
何で100をつけないかというと、一部のシナリオが弱いのと、ここで100を付けちゃったら、この先ゲームをやる意義を見失いそうだったから。
それくらい、見事にツボにはまったゲームでした。

特にシナリオが絶妙。神懸かり的に冴えわたってると言っても、過言でない。

千鶴の、「あなたを殺します」で死んだ人は数知れず
(私も死んだよ……)

バッドエンドがかくも美しく印象的なのも特徴か。絶対ハッピーエンドよりレベルが高い。
さらに、何と言っても、日本の美を感じさせる描写とシナリオ、そして、音楽
和物に弱い私としては、それだけでもうオッケーな気もするのですが。

柏木四姉妹のエピソードは、それぞれどれも印象的ではあるんだけど、残念ながら、梓がやや弱い。
これが100点にならない第一の原因。
が、しょうがない、これは。他の3人のシナリオが立ちすぎなんだから。


  • 記のセリフ&ラストシーンで陥落率No.1の千鶴

  • 転生入ってて無口だけどひたむき、ツボ抑え率No.1の楓

  • 純粋でけなげで守ってあげたくなる率No.1の初音


この隙のまったくない布陣のどこに梓の食い込む余地が?(梓ファンの方、すいません)

だが、導入部の事件にきちんとした解決を与えなくてはシナリオとして成立しないし、あの4人の中で誰がその役を果たすか、となると、やはり梓としか考えられない。
キャラ造形的に見て、彼女が一番現実的で、非日常をあまり感じさせないキャラだからだろう。
そういう計算も兼ねて、現実をより際だたせる「料理上手」とか、「行動的」な性格を与えた、と考えるのは穿ちすぎかな?

このゲーム、べらぼうにキャラが立ちまくってはいるけれど、実はそんなにセリフが多いわけではない。
なのに、このキャラの存在感。これはひとえに演出の妙だろう。完成度高すぎ
無駄がないゲームってのは本当に優れている。

さらに、ゲームとしてのスタンスも進化している。
前作の「雫」は、そのシナリオの毒電波ぶりに、とても万人向けとは言い難かった。
それが一部の熱狂的ファンを生み出す要因にもなったわけだが。
普通ならここで、もっとどぎつく、扇情的なものが生み出されてくるか、一般受けを狙って、妙にソフトになるかのどちらかなのだろうが、「痕」は違った。

「雫」の長所で短所でもある(私は長所だと思っているが)、先鋭的な部分を丸くして、結果的にシナリオの妙を損なうような愚行はせず、さらに魅力的なシナリオを用意した上で、突出した部分を上手くカムフラージュさせ、その実切れ味は増している、という希有なゲームなのだ。

シリーズが進化する、というのは、実はなかなか大変なことなのだ、
という持論を持つ私としては、この点は大きく評価したい。

 1  |  2  |  3  | All pages