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あやかしびと

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
87★★★★

SSの書き手として非常に有名な、東出祐一郎氏がシナリオを務めた今作。
元々、氏の作品が大好きな私としては、期待の一本だったわけですが。
昨今の作品には珍しいくらい、きっちりとコードを守った良質の学園伝奇AVG。
物語自体は、決してただのハッピーエンドではなく、それなりに犠牲を伴う展開であるというのに、誰にでも分かる形で伏線を完全に消化しているのと、着地場所がかなり良いため、EDにはとてつもない清涼感があり、プレイして良かったと思える快作。
はっきり言って、シナリオにはほとんど文句はない。限りなく9点に近い8点。
一部でこなれてない部分があったり、同じ段落中でも表現が重複していたり、そういう細かいミスが散見されるので8点としたが、それはほとんど瑣末な問題。

シナリオ以外は全体的にそつのない作りであるものの、システムがやや劣る。
実装機能はAVGをやるにあたって何一つ過不足がないし、とりたてて手酷いバグもないのだが、とにかくレスポンスが微妙にもっさりしていて、操作感は今ひとつ。
戦闘時のエフェクトなどはもたつきもなく、画面演出上は問題がないのだが、一度見たEDを飛ばせなかったり、細かいところで使い勝手が良くないのが残念。

音楽はごく普通。作中のBGMは、最近の傾向より、少しレトロっぽい曲調だが、作品にはマッチしている。
だが、取り立てて良い悪いということがなく、あまり記憶に残らない、平凡な印象なのが残念。
OPEDはボーカル曲だが、これもあまりパッとしない。
OPは、作中で展開されるであろう熱い闘いを予感させる仕上がりなためまだいいのだが、せっかくすっきりとしたEDを迎えても、肝心のED曲が重厚すぎて、最後の最後で大ジャンプに重しをされてしまったような印象を受ける。
というわけで、音楽面ではあまり高評価はできないのだが、音声面はすごすぎる
もう、登場人物の片っ端から、現在第一線で活躍中の主役クラス声優陣がこれでもかとわんさか登場。
このキャスティング、異常に豪華すぎてかえって焦ります。今回、事前情報まったくなしにプレイしたもんだから、虎太郎と九鬼が登場した際は、思わず息が止まりかけました。
エロゲをやらない声優オタクが聞いたら、悔しさと興奮で卒倒すること間違いなしの超豪華キャスト。
当然、ハズレなしです。

原画は燃えアニキと化物を描かせたら右に出るものなし、の中央東口氏。
氏はなぜこうも、私のツボをしたたかに刺激するアニキ共を量産しやがりますか。さては萌え殺す気ですか。
このゲームの最大の萌えポイントは、この絵にあるといっても過言ではない。
(ただし、伝奇バトル萌え者限定)

メ・ガ・ネ! メ・ガ・ネ! 坊・主! 坊・主! 隻・眼! 隻・眼!

すいません、取り乱しました。
とまぁ、作中にかなりのキャラが出てくるが、いずれも被ることなく、それぞれ大変魅力的に描かれていて、安心してゲームを楽しめる。
ああ、アホ毛のない原画は素敵だなぁ。

演出面もなかなか頑張っている。
最近流行りのカットインの多用、バトルの際のエフェクトなども格好よくまとめてあるし、ギャグパートでのへたれ絵も、ぴょこぴょこ動いたり、表情が変わったりして楽しくかわいい。
見せ方はかなり研究しているな、という印象を受けた。

さて、冒頭で高評価をしたシナリオ。
とにかく、日常パートの描き方が非常に巧い。いつまでもダラダラと描写を続けたり、毎日が同じことの繰り返しではなく、小さいけれど様々なエピソードが用意されている。
そして、そこでは登場人物ほとんどすべてにスポットが当てられる。
それも、取って付けたようなものではなく、その人物の個性や能力を生かした見せ場であるため、キャラそれぞれが強烈に印象に残り、物語を大きく盛り上げるのに一役買っている。
何よりも、皆クセの強いキャラなのに、ちっとも嫌らしさがなく、そんな彼らが織り成す空間はとても心地が良い。

肝心の攻略可能キャラは、黒髪ロングで戦う巫女さん(兼先輩)、プラチナブロンドのクールな戦闘美少女、見た目はロリで実は年上、でも無垢な人外、自らを殺して戦いに身を投じた軍服ねーさん。
死角がないよ、この布陣。何てスキがない。
展開も、この手の作風が好きな人ならたまらないシチュエーションばかりを、確実にピンポイント爆撃してきやがります。
マスター、このミサイルはファティマコントロールです、当たりますッ!(C)ファイブスター物語
ああそうだよ、斬り合いも撃ち合いもカーチェイスも復讐も大好きなんだッ!
東出祐一郎、恐ろしい子……!

プレイ時間だってそれなりに長いし、普通ならたるみがちな日常生活の描写も多いのに、途中、ダレをほとんど感じさせない、絶妙のさじ加減。
ギャグとシリアスの配分が、綿密な計算の元にきっちりと機能している。この構成力・調整力こそがプロの技、と素直に感心した次第です。
どちらかというとこの業界、ハイテンション突き抜けギャグ系が多く、実際そっちの方がウケやすいのに、決してそっちに流れることなく、あくまでも物語の雰囲気を壊さない、それでいてきっちりと笑いのツボを押さえたテキストは、かなりテンポ良く、ストレスをほとんど感じずにサクサク進むことができる。

シナリオの数少ない難点を挙げるならば、入れなくていいところにエロを入れてしまったことがまず一つ。
エロゲーだから、その姿勢はある意味正しいとは思うし、サービス精神も見上げたもんだとは思うが、いくら何でも、敵地に突入してまで3Pとかしないでください。あまりにも緊張感がなさすぎるよ。
しかも、当人たちは主人公除いて戦闘のプロ。そんな油断がどんな事態を招くかは分かりきったことなのでは。

そしてもう一つは、もういちゃもんの類なので軽く聞き流してほしいのだが、あまりにもきれいにオチすぎていて、逆に驚天動地の衝撃というのがないこと。
ネタとキャラを余すところなくきっちり使い、実に手堅くまとめている。それが確かに全体的なバランスが保たれた、高レベルの作品という評価につながったのだから、その選択は間違いではなかったのだが、どうしても落ち着きすぎちゃってる感が否めない。
良い意味での、「そんなアホな!」というツッコミどころがなく、伝奇物の魅力である、ド派手な荒唐無稽さを楽しむ余地が少ないのが残念。

また、ラストバトルをムービーにしてしまったのが痛い。文章の表示スピードが遅すぎて、スピード感や緊迫感がガタ落ち。
決戦という最大の山場では、決してプレイヤーの熱を冷ましてはいけないのに、コントロールを奪われてしまうことで、我に返らざるをえない。
それによって、有無を言わせぬ勢い、というものが削がれてしまったため、最後だというのにイマイチ乗り切れなかった。
しかも、(ネタバレ危険!)主人公も敵も、すでに人としての面影をほとんど残していない形状と化しているため、それまでの感情移入がどうしても途絶えてしまう。
RPGのラスボスなどではお馴染みの手法だが、私個人の好みが、「人の姿でありながら、人としての力を超えた者」なので、見た目が変わってしまうのは違うだろー、
と思ってしまうのだ。
絶望的な状況を打破するため、禁断の領域に踏み込むというのは大好きなシチュエーションであるだけに、余計にそれが
悔やまれる。

以上、色々と小うるさいことを言ったが、かなり多くの様々な要素をここまで盛り込んだのに、それらを破綻することなく、一つのカラーにまとめ上げたパワーは素晴らしい。
ただ、ほんの少々惜しむらくは、すべてにおいて冷静すぎた。シナリオは暴走しすぎれば興ざめだが、燃え系においては、多少突っ走るくらいがいいのだろうということ。
中には、冷静な筆致だが、それでも熱くてシビれる物語を生み出せる虚渕玄という稀有なライターもいるわけだが、これは確実にその系譜をリスペクトし、そこに連なる作品だと思う。

最初から最後まで非常に気持ちよく楽しめる、良質のエンタテインメント。快作、というのに相応しいと思います。
学園伝奇AVGという単語に身悶えできる人はぜひ。決して損のない一本です。

エンドレスセレナーデ

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
73★★★

大して期待してなかったのだが、意外に出来が良くてお得感のあったソフト。
(失礼千万ですな……)
急激に二転三転するメインシナリオは結構読ませるし、サブヒロインの扱い方もなかなか。
ただし、既読スキップが判定をスルーすることが多々あり、再プレイが面倒。

結構力作を出して頑張ってるじゃん、と思ったら、いつの間にかメーカーが無くなってました。南無。

遺作

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
80★★★★

がっちりした謎解きが楽しめる、本格AVG。
が、とにかくフラグ立てが厳しいので、ボケッとプレイしていると、すぐさま遺作氏によって女の子連れ去られます。
ゲームとしてのキモの部分が嫌らしいくらいにしっかりしていて、侮ってると確実に痛い目に遭うこと間違いなし。
鬼畜や猟奇、とまではいかないが、そういう風味のダークなAVGをやってみたいならオススメ。

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