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うたわれるもの

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
85★★★★

「こみっくパーティー」で放心、「まじかるアンティーク」で呆然、「誰彼」で私に絶望を見せつけ、「もうだめだ」と思っていた瀕死のゲームメーカーLeafが、起死回生の一発を放ってくれました。
良作です。エロが薄いこと、難易度が低すぎること、分岐がないこと以外はほぼ文句なし。
よくぞここまで立ち直ってくれた。
かつて気に入っていたメーカーなので、その復活の兆しが見えるこの作品には好意的な評価ができるというもの。

絵、音楽に関しては特に言うことは何もない。さすがの出来映え。
実は私、人外キャラ嫌いなんですが、この作品に関してはそれ自体がストーリーのキモであるし、何より作画がとてつもない綺麗さだったので、マイナスの印象は受けなかった。
チップキャラのなめらかな動きや立ち絵のバリエーションも多く、ことCGに関しては他メーカーを圧倒する仕事ぶりは健在
ただ、イベントCGが少なすぎる。
「このシーンおいしいよなぁ」と思う場面でも、ただ暗転して終わるケースが多かった気が。
せっかくのイベントなんだから、ここ一番、というところで気張ってほしかった。
(まあ、スタッフは死んだかもしれんが……)
音楽は少々曲数が少ないが、シーンの雰囲気を壊さない作風で、ちゃんと仕事を果たしている。

シナリオに関しては、終盤~ラストまでが少々急ぎすぎた。
肝心の謎の部分を「すったかたー」と通り過ぎてしまった感がある。一応きちんと説明はされているので疑問点は残らないのだが、もうちょっと引っ張ってもいいかも……と思わずにはいられなかった。
それだけ、この世界観にひたることができた、ということであるけれども。

散りばめた伏線をすべて回収しようとする努力や、何気ない伏線の張り方には感心した。
まさか、序盤の木登り→落下エピソードがラストに絡んでこようとは……。
単なる作画上の飾りだと思っていた髪飾りに、そんな意味があろうとは……。

派手に意外性があるわけでもなく、奇天烈なキャラ造形をしてるわけでもないが、とにかく丁寧な作り
かなりな数のキャラが出てくるが、一部を重用しすぎてバランスを崩したり、他をないがしろにしたりすることなく、それぞれに印象深いエピソードを用意し、それを主軸に絡めてくる手腕はかなりのもの。
また、緩急のテンポが絶妙で、戦闘を終えた後には必ずちょっと笑えるイベントを数多く用意してあったり、異世界伝奇物という特殊なフィールドでプレイヤーがとまどいや疎外感を覚える前に、流れにうまく乗せてしまうテクニックは賞賛に価する。

また、一歩間違えば殺伐で陰惨な雰囲気を醸し出しそうな「戦国時代」を舞台にしておきながら、このAVGパートでの「笑い」がそうなるのを防いでおり、ゲームとしての雰囲気がとてもいい
プレイしていても、ちっとも嫌な気分にならないのだ。
テーマには種の存続や人としての尊厳、国同士の攻防による理不尽さなど重っ苦しいものがてんこ盛りだというのに。
どこかしら暖かく懐かしい雰囲気と、自分を信頼してくれる心強い仲間たちが繰り広げる、時には笑い、時には涙するエピソードの数々が、一気にラストまでへと導いてくれる牽引力となっている。

その「笑い」の部分も、無理矢理ギャグを言ったり、理不尽な展開に持ち込む奇形的な笑わせ方でなく、あくまでも話の流れ上やキャラの性格を活かした、モニターの前で「プッ」と吹き出す程度の自然さで誘導していて、乗せられていても気分がいい。
(とか言ってたら、このシナリオライターって「BE-YOND」の人だったのね……納得)

ラストの扱いについては賛否両論あるらしいですが、私はあれで満足。
ユズハもちゃんと亡くなってるし(設定上そうなんだから仕方がない。生きてたら興ざめだ)、ひょっとしてハクオロが帰ってきたのかな? と暗示させる程度に抑えてるところが、この話の空気を壊さないでいるような気がしたので。

このゲームの最大の問題点は、何と言ってもその難易度。

めっちゃ簡単すぎ

あのですね、18歳以上のゲーマーならば目をつぶっていてもできますぜ、このSLGパートは。
攻略もへったくれもなし。早い話、全員を攻撃力重視で育て、やられる前に大将をタコ殴りにすればおしまい。
おまけに連撃システムなんてあるもんだから、ますますバランスの崩れること崩れること。
自軍強すぎのため、「ユニットが潰されるかも……」といった、通常のSLGに感じられる緊張感は皆無。
地形効果や騎兵と弓兵、歩兵との相性なんてのがあるからこそSLGは面白いわけで。
まあ、これ自体がイベントの一環、と言えなくもないので、あえて目をつぶりますが。
せっかく、勝利条件は色々とバリエーションを取り入れ、途中のイベントによって変わったり、と工夫を凝らしているのだから、もっともっと戦略性を強めてもよかったと思う。

あとは、魅力的な女性キャラが多数いるので、分岐エンディングも見てみたかった。
ストーリーを魅せるためにはこの手法がベストだ、というのは分かってるんですが、これはちと残念。
その分、エンディングでその後の展開を見せてくれたのはありがたかった。皆、納得できる行く末だったので。

どうもコンシューマーを狙っているような気もするが、戦略パートを改良すれば、十二分に通用する出来映えだと思います。
私はこれ、「エロゲー未体験者」にお勧めの「ファースト18禁ゲーム」に向いていると思う。
ストーリーも魅力あるし、エロも薄いしどノーマルだし(笑)
極めて拒絶反応の薄い、良質のゲームだと思います。
正直、手元に置いてからも半年以上放置してたことを後悔。やっぱ積みゲーはダメね。

EVE~burst error~

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
82★★★★

個人的に大好きなゲームデザイナー、剣乃ゆきひろ(現:菅野ひろゆき)氏の作品。

一言で言うなら、上質のエンターテインメント巨編。(コーヒーのCMみたいだ……)
恋愛、謎、スリル、陰謀、アクション、感動、とB級映画的な楽しさが満載。

これは、AVGファンなら絶対に外せない一本だと思う。ゲーム性とシナリオとの融合の仕方が絶妙。
どちらかの要素に片寄るでもなく、微妙なバランスを維持している。

その顕著な例が、ゲーム中盤に出てくるハッキングのシーンだろう。
シナリオ上で自由に主人公を切り替えられる「マルチサイトシステム」を巧みに使い、主人公二人が協力、という立場を設定し、両者の視点からハッキングを進めていく。
これが緊迫感があってすごく良い。
プレイヤーである自分が主人公二人の操作をしているため、切り替えるごとにそれぞれのキャラクターになったような気分で盛り上がれる。

これはゲームならではの手法だ。こういうのを「ゲーム」と呼んで、高く評価すべきなのだ。
シナリオ垂れ流しのゲームなんて、「ゲーム」ですらないんだぞ!! ……閑話休題。

このシステムを支えるべきシナリオは言うまでもなくよくできている。
主人公二人は、立場も境遇もまったく違い、それぞれに抱えた事件もまるで接点がない。
が、ここからの話の絡み合い方が卓抜している。
周到な伏線、多少バレバレ(笑)だが謎の多い人物たち、一つ解決してはまた深まる謎。
そして、これらの点が線としてすべてつながったとき(松本清張ではない)、プレイヤーをあっと驚かせる仕掛けが施されている。
剣乃氏はこういう大風呂敷を広げた話のたたみ方がとても巧い
そして、何よりスピード感がある。
わざわざ貴重な時間を割いてまで、タルいゲームをやりたい奴なんていないだろうから、これはすごく大事なことだ。

登場人物について。
主人公は二人。内調の凄腕調査官まりなと、貧乏だが腕のいい探偵である小次郎。
二人とも若くして腕の立つ人物だが、アクの強い性格であるため、初めは好き嫌いが別れるかもしれない。
が、こういう人物の書き方が、実はこの物語に深みを与えている。

愛した男はスパイだったため、自分の誇りであった職務と心に消えることのない傷を負ったまりな。
自分の恋人の父で、尊敬する上司でもあった男の犯罪を暴かざるをえず、恋人と職を失った小次郎。

どちらもかなりの苦い過去を背負っているが、こういう事情が見えてくると、彼らの言動は決して故なきものではない、ということに得心がいくはず。
そして、こういう痛みを引きずりつつも、自分の道を進むことを止めない主人公たちに、嫌味のないポジティブさを感じる。

私は暗黒波動の持ち主なので、ストーリーに「明るい」だの「前向き」だの「ポジティブ」だの出てくると、「ケッうるせえよバーカ勝手にやってろ」と思う人間なのだが、この作品には、そういうのにありがちな、押しつけがましいまでのメッセージ性がない。
こういう作品は、得てして過去のことはすべて吹っ切ったかのように描かれているが、人間なんて、

そんなに簡単に過去を振り切ることなんてできないし、
常に前向きな気持ちでいられるはずもないし、

むしろヘコむ機会の方が多いだろう、とツッコミを入れたくなるわけです。
そういう、「人としての弱さと強さ」を描くってのは並大抵のことじゃないのに、それを、主軸のストーリーだけで引っ張っていけるはずのこのシナリオに、さらに盛り込んでしまう贅沢さに脱帽。

作品としての完成度はとてつもなく高い。
メッセージを発するためではなく、エンターテインメントの追求として。
一度徹すると決めたら、断固としてそれを貫く。
事実、この娯楽性の追求はかなり確信犯的なものだ。

その精神性の高さが、私が「剣乃ゲーム」を高く評価する所以であり、支持する理由のすべてと言える。
ストーリーテラー、剣乃ゆきひろの名を大きく名さしめたのは、故無きことではない、と納得の一本。

アトラク=ナクア

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
86★★★★

実は私、数ある昆虫の中で、蜘蛛が一番嫌いです。
まあそれはさておき、ストーリーやモチーフとしての蜘蛛というのは嫌いじゃない。
というより、むしろ好きだ。

蜘蛛というのはその妖しい背斑模様や、予測のつかない動きで人を翻弄するイメージがあると思うのだが、このゲームは、そういった蜘蛛から連想される淫靡な美しさを持ったストーリーで、実際かなり楽しめた。

正体は女郎蜘蛛であり、その禍々しい美しさを体現したかのような初音。
彼女は宿敵、銀を倒すために、いとも簡単に人を殺し食らう。
あるいは気に入った人物を贄として、彼女の永遠のごく一部を共有させる。
それは、ほんのひとときの戯れや慰みにすぎないものだけれども。

閉じた世界で、閉じた人間関係の中、醜いエゴや欲望といった、心の間隙を突かれる人間たち。
そこには今やたらとブームになっている癒しや救い、といった要素は欠片もない。

大好きだぁぁぁぁぁ!!!(取り乱してすいません)

他人から与えられた救済なんてクソ食らえ、という私、もちろん救いのない話は大好きです。

一番救いのないのは、「カナコの章」。
自分を想ってくれる和久が初音に殺されそうになったとき、奏子は初音に懇願する。「殺さないで」と。
しかし、初音が和久を殺さない、というのは、和久を初音の贄にする、ということ。
それは、自由もなく、初音が飽きるまで終わりもない、和久のような人間には最も縁遠い世界。
でも、奏子は心が通じかけた和久を、どうしても死なせたくなかった。
……そして、和久は贄となった。好きな女の、究極の選択は「それでも死なれたくない」だったから。

このエゴ、この痛み、この苦悩。そして、まったく陽の差さない、澱んだ闇の世界
イケてます。ダークです。心行くまで陰惨な物語を堪能できます。

そして、終章での銀との対決。ここで立場はがらりと逆転する。随所で伏線は張ってあったのだが、これが巧妙で、まさに蜘蛛の巣にかかった感じ。
が、今まで「悪」的な立場だった初音が、伏線が明かされ、元凶が銀だと分かってからは、一転人間的な思考になってしまったのが残念。
人を逸脱した考えをすることに何の躊躇もなかった初音が(そしてそこが魅力だった)、幾人かの人間たちと触れあい、徐々に変わっていく、という設定は別にいい。
(本当は変わらない方が好みなんだけど←心底鬼畜)

が、ここでの心情の切り替えが少し早急すぎた。もう少し引っ張ってもいいかな、と思わずにはいられなかった。
これが、このゲームの数少ないマイナス要素。
あとは、ゲーム性が薄いこと(ほとんど一本道)なことくらいか。
音楽のレベルはかなり高い。メインテーマはしばらく頭から離れない。
章ごとの構成で、各人物にもスポットが当てられており、長さもちょうどよい。

ラストも美しく、はかなく、ひっそりと終わる。

永遠を終わらせた銀と初音の静寂を護るかのように。
現実と訣別し、だが心安らかに一人静かに新たな永遠を生み出そうとする奏子と共に。

閉じた世界にふさわしい、閉じた終わりだ。
構成が非常に練られていて、演出も優れている、良質のゲームだと思う。
ダークなシナリオに抵抗のない人はぜひ。

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