マブラヴ オルタネイティブ
| シナリオ | 絵 | 音楽 | 演出 | システム | 総合評価 | オススメ度 |
| 8 | 8 | 9 | 10 | 9 | 86 | ★★★★ |
※注! この作品は、「マブラヴ」の続編です。単品でも遊べますが、内容理解のために、事前プレイを強く推奨。
なお、作品の性質上、「マブラヴ」のネタバレが含まれます。文中での「前作」は、すべて「マブラヴ」を指します。
発売日当日の分割商法発表、「続編ではない」と開き直った公式コメント、挙句の果てに3年、複数回に渡る発売延期。
「人類を無礼るな(なめるな)」というキャッチコピーに対し、「ユーザーをなめるな」とツッコまれるのも無理はない、ネガティブなイメージが先行してしまった本作ですが。
なるほど、と思った。これを作っていたのなら、前作から3年の制作期間を要したのも頷ける。
はっきり言って、その辺の有象無象を作っているメーカーなど、裸足で逃げ出すクオリティだ。
実は私も、プレイ前までは前作が「未完」という、作品として評価以前のレベルだったこと、そもそも全然面白くなかったことも相まって、今作は間違いなく地雷だと思っていた。
素直に撤回しよう。多少の好悪の差といくつかの問題点はあれど、これはある意味、業界で最高レベルの作品だ。
一度プレイしてみても損はない。
今作をプレイすると、前作は本当にプロローグでしかなかったことが分かる。
だからこそ、前作から3年もの歳月が流れてしまったことが悔やまれるのだが。そんなに前にばらまかれた伏線、よっぽどやり込んだユーザー以外、いちいち覚えてるわけがない。
2本同時発売、もしくは、シナリオをもっとシェイプして1本にまとめあげてくれてさえいれば、途方もない破壊力を振るったであろうことが、返す返すも惜しまれてならない。
絵は総じて合格点。この奇異なキャラクターデザインが受け入れられるかどうかによって、だいぶ印象は変わってくるが、CGの出来自体は悪くない。髪の毛痛そうだけどね。尖りすぎだ。
枚数も作品の尺に対してちょうどよい割合だし、とにかくよく動く演出によって、大幅な底上げが図られているため、「見せる」という点に関しての満足度はかなり高い。
ただ、一部ユーザーを恐慌に陥れたグロ画像は確かに存在するので、気になる人は対策パッチを使用する手も。
だが、理由はシナリオのパートで後述するが、これを正面きって受け入れられない人は、この作品自体が受け入れられない可能性がある。
音楽は、マッチングに関しては文句のつけようがない。
私はJAM Projectの大ファンなので、多少のひいき目はあるかもしれないが、作品世界をこれほど体現したテーマソングは、なかなかないと言っていいと思う。
また、挿入歌も名曲で、使いどころがおいしすぎるもんだから、作中、数回しか流れないのに、印象の強さは格別。
だが逆に、BGMは前作からの流用がほとんどで、曲のレベルは悪くないが、ボリューム的には物足りなかった。
プレイ時間が長時間に及ぶため、そう感じるだけかもしれないが。
さて、ageご自慢の演出システム、「AGES-ACS」と、ゲームシステムのrUGP。
この作品の必要性の8割は、このシステムによってもたらされる表現力にある、と断言する。
確実に他のメーカーより頭抜けている。これより上を行くことは、現時点では難しいだろう。
その驚異的な力は、これで静止画の限界かと思われた「Fate/hollow ataraxia」をも上回る。
(ただし、カメラワークやセンスは向こうの方が上)
夕暮れから夜へと刻々と移りゆく背景を、まったく違和感を感じさせずにシームレスで行うシステムなど、今までお目にかかったことがない。
さらに、正面が基本であるAVGにおいて、自分と並んで歩いているキャラが、主人公(プレイヤー)から見て、ちゃんと隣に見える視点移動が可能だとは思わなかった。
二次元の制約上、戦術機の動きなどはどうしても平面っぽく見えてしまうのだが、それでも段違いの迫力。
また、視点がコクピット内に移動すれば戦術機のモニタ画面が現れるのだが、これが実に細かい。データのやりとり、各キャラとの通信をするたびにウインドウが目まぐるしく入れ替わり、挙句、シナリオ内で使用したと記述のある弾薬が、きちんと表示から減っていく。
普通なら、まず間違いなく一枚絵で済ませるところだ。
そういう、ある種、偏執的なまでのこだわりが感じられ、おかげで臨場感はたっぷり。
このように表現力では現行最強レベルのシステムを有しているのだが、環境面では細かい点がいくつか気になった。
とにかく、テキスト周りがかなりひどい。
映画を意識した作りなので、AVGにはお馴染みのメッセージボックスがなく、セリフや説明は字幕のように表示される。
だが、2~3行しか現れず、それなのに細かい設定が多いため、異常に多い説明量。
さらに、全文にセンタリングがかかってしまい、変な箇所で折り返しが入ると、大変に読みにくい。
また、見せ場らしき箇所になると、途端に文章送りを受け付けなくなり、いともたやすくコントロールを奪われてしまう。
最初から、「読ませる」ということは念頭にないようだ。
ゆえに、特殊な読みにルビを振ってあることも一切なし。突撃前衛隊長(ストーム・バンガード・ワン)とか、普通読めないよ。
音声を聞くことが当然と言わんばかりの仕様になっていて、AVGとしてのスタイルはもはや意味を成さない。
「こう遊んでほしい」という、製作側が抱く望ましいスタイルがあるのは分かるし、それは当然だと思う。
だが、その意識があまりに強すぎて、結果的に押し付けがましさを感じてしまい、わずかな不快感を伴う結果となっている。
「ゲーム」として売り出すのなら、ユーザーを長時間モニタ前に縛り付けることに配慮したシステムを構築するべき。
個人的には解像度のワイド化も苦手だ。どうしても、800×600に慣れてしまっているので。
さて、それでは、前作は途中でぶん投げられてしまったシナリオ。
基本的に、シナリオ自体に目新しさはない。
ネタ自体はそもそも、「宇宙からの侵略者に対抗する地球人」という、ありがちすぎてもう誰も使わなくなった素材だし、「並行・ループする世界」に至っては、この業界内に限定したって、太刀打ち不可能な名作がいくつかある。
作中で謎扱いされている脳髄だって、その正体や使われ方を看破するのは難しくもなんともない。
だが、ストーリーを重視する作品には、大きく分けて2タイプある。
一つは、斬新なアイディアで、誰も知らないワクワク感を提供するもの。
もう一つは、結末は誰もが知っている(または予測できる)けれど、それを見届けたいと思わせる勢いを持つもの。
そしてその後者こそが「王道」と呼ばれるものであり、この作品が目指したものだ。
基本的な流れは、どん底とそこからの脱却、希望が見えてまたどん底、の繰り返しなので、精神的な揺さぶりが苦手な人にはきついかもしれない。
特に、持ち上げた後の叩き落し方は、本当に容赦がない。その演出力には空恐ろしいものがある。
もっとも、それが行き過ぎて、グロ画像云々で騒がれる羽目になったのだが。
実際は、画像自体のグロ度は、さほどひどくはないと思う。普通に妖怪とか異生物とかと大して違わないレベルよ?
ただ、その使われ方があまりにも衝撃的なため、度肝を抜かれた人が多かったわけなのだが。
でもそれって演出の勝利なのだから、ユーザーは受け入れるべきだ。
むしろ最大の難所は、どうしてこのメーカーは、ヘタレばかりを主人公に据えるのか、ということなんですが。
とにかくもう、最初から最後まで腰抜け丸出し。
悲劇のヒーロー気取りでぐちぐち悩む → 仲間・上官に助けられる。または説教される → ちょっと浮上。俺頑張るよ、今度こそ成長しなきゃ! → どん底に叩き落される → スタートに戻る
と、総プレイが30時間近くかかる作中、延々とこれの繰り返し。およそ、学習するということがない。
これじゃ、ループしてるのは世界じゃなくて主人公の思考だ。
しかもこの状態がラストバトルまで続き、もういい加減にしてくれ、とげんなりしてしまう。
せっかくラストバトルに赴く前に、若本声による超かっこいい演説&かなり高品質の渾身のアニメが入り、ボルテージは最高潮になっていたというのに、そのテンションが主人公のせいで長続きしないという皮肉な結果に。
そもそも、今まで苦楽を共にしてきた肝心の207分隊出身者が、どれもこれも大して魅力がなく、感情移入もできない。
この面々では、中盤以降の立役者だった、他の部隊員が退場させられてからラストまでのシナリオを背負って立つには、あまりにも役者不足。
となると、あとは死亡フラグが立っているのがありありと見てとれて、一気に興ざめ。
サブキャラの方がずっと魅力があったし、そちらのエピソードに良いものが多かった。
(余談だが、孝之がすでに戦死していたのには軽く笑った)
結局、オルタ主世界では一時的な平和を得たにすぎず、ラストバトルの腰砕け具合も相まって、全人類や他世界すら巻き込んだ、やたらと壮大な設定のわりには、カタルシスの薄いシナリオであることは否めない。
さらに、再構築された世界に戻ってからが、途端にテンポが悪く間延びしてしまい、どうして最後の最後でコケるのかと腹立たしくなった。
不幸にも命を落とした人が、皆生きて笑い合ってる心優しい世界。そういうご都合主義的エンドは予想の範疇だったが、主世界の記憶すらも失っているのでは、その世界は、自らが厳しい戦いを勝ち抜いて得たものだという意味がない。
あ、そういえばこれは、「あいとゆうきのおとぎばなし」でしたね。
でも、「めでたしめでたし」にはほど遠いよ、これじゃ。
以上、色々書いたが、これは、良くも悪くもageというメーカーにしか作れない作品。
ユーザーにおもねることをよしとせず、強固に製作側の意思を尊重したその姿勢は、メーカーの基本姿勢なのだろう。
その、ある種傲慢ともとれるスタイルを、体力と品質によって押し通してしまうのがこのメーカーの特異な点であり、正直言って私はあまり好きになれないのだが、業界の中にはそういうところもあっていいと思う。
それだけの品質のものを出していることは確かなのだし。
実力の伴わない他のメーカーが同じことをやったら、失笑と非難にさらされるだけだしな。
メーカーのファン、もしくは前作プレイ者にお勧め。
特に、前作で投げた人は、やってみる価値はある。今作をやることによって、初めて前作の意味が浮き彫りになる仕様なので。
あとは、もっとユーザーを大事にしてください。せっかくの作品も、プレイする人がいてこそ。
作り手が遊び手を選ぶことは許されない。しかしそれこそが、エンターテインメントの供給者のプライドだと思うのだが。