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鬼畜眼鏡

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
68★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!

鬼畜→わりと好きです。
眼鏡→死ぬほど好きです。
リーマン→鼻血吹くほど大好物です。

だから、主人公始め登場人物の半数以上がリーマン、おまけに鬼畜+眼鏡となればプレイ前からトキメキ度MAX、とばかりに張り切って挑んだ今作だったが。

あーえーっと、2007年発売作品の中で、多くの姐さん方が年間ベストに挙げているのを承知で申しますが。
まったく萌えない上にちっとも盛り上がりませんでした。あたいのトキメキを返せ! 返せよぅ!!
その理由は色々あるが、一番大きなものとしては、すべての面においてステレオタイプ、お約束に過ぎること。
つまり、安定はしているが特筆すべきところもない。未知の作品に触れたときの驚きや新鮮味がまったくないのだ。
安定ゆえの面白さに繋がる作品も確かにあるが、今作は安定ゆえの単調さを引き起こしてしまっている。
所々プラス面もあるにはあったのだが、それが全体的なマイナスを上回ることはとうとうなかった。

まず絵。原画はわりと好きなタイプの絵だが、塗りが安定していない箇所が散見される。
差分を除いてもかなりの枚数があるのでそれを仕上げるのは大変なのだろうが、その落差があまりにも激しい。
基本的には原画のトーンを生かした淡い色彩がマッチしているのに、一部ではベターっとしたアニメ塗り。
開発が長期に渡ってしまった弊害なのか、絵柄が安定していない箇所もあり、違和感を感じた所も多かった。
立ち絵とCGではキャラが別人に見えるという失態もあり、なまじ絵が好みなだけにそこが非常に残念。
あと、すごーく細かくて申し訳ないが、御堂が休日の自室でもジャケットを羽織っていたりとか、あれっ? と思うようなビジュアルがあるのが惜しい。
受け手にフィクションを楽しませるには、そういう違和感を感じさせてはいけないと思うのですよ。
差分も多いし、キスマーク付きの立ち絵もあったりと、開発期間にふさわしいボリュームはあるので、その点は良いのだが。

システムは可もなく不可もなく。必要なものはだいたい揃っているが、それ以上でも以下でもない。
ただ、セーブの際にコメントが書き入れられないのがマイナス。
全31種類ものエンドを持つ今作、必然的にセーブを活用する回数は多い。
だがその際、コメントを入れられないのでは何が何だか分からなくなってしまう。完全に個人の記憶に頼るしかない。
それに、今どきホイールでの文字送りができないのも大きなマイナス。
一画面に表示される文字数の多いノベルゲーならともかく、細かいセリフごとに文字送りが発生するウィンドウタイプのAVGでは、何度もクリックするのは煩雑で面倒。
(オートモードはどうしてもタイミングが合わないので使用しない)
そういう、必要充分なのだが細かいところにはまったく手が届いていない、奥歯に物が挟まったような気分にさせられるシステム。

ビジュアルアーツ傘下であるので、エンジンはお馴染みのRealLive。実は個人的にはいまいち評価が低い。
今作でも、スキップが遅かったり場面の切り替えがもたついたり、どうももっさりとした印象が否めない。
(推奨スペックは超余裕で凌駕しています。念のため)
ならば表現力が豊かかというとまったくそういうこともなく、正直、一時代前のエンジンという感じ。
エフェクトの派手さがない分、カメラワークやカットイン等で見せ方を工夫するといったフォローもなく、エンジンの力不足に疑問を感じないのだろうな、と寂しくなる。
ゲームのアドバンテージであるべきこういった点を工夫しないのでは、ドラマCDやマンガの方がよっぽど手っ取り早くて安上がりだとしか思えないのですが。

音楽はテーマ曲以外、まったくもって没個性の代物。作品の邪魔をしない代わりに、作品を盛り上げもしない。
当然、耳に残るような名曲もないし、鳴ってるか鳴ってないかすらも気にならないレベル。
代わりにテーマ曲のレベルはハンパなく、さすがVA系、I'veのC.G mix氏を起用。
ダークな世界観の楽曲が、出来の良いOPムービーと共に作品を盛り上げる。
どうせなら、作中のBGMもI'veに発注すれば良かったのに。
声優陣は皆キャスティングも演技もはまっており、特に主人公役の平井達矢氏は大奮闘。
一人二役を、これを本当に同一人物がやっているのかと思えるほどがらりと変えて演じ分けています。すごい。

さて、シナリオですが。
基本的にエロシチュエーションがメインなリーマン系BLコミック、定価600円(税込)という印象です。
正直、今作に税込定価8,190円払うなら、ドラマCD3枚買うかBLコミック10冊くらい買った方がまし。
悪くはない。決して悪くはないけど、別段面白いわけじゃない。おまけにちっとも萌えない。

第一、リーマン物であるはずなのに、仕事エピソードのリアリティがなさすぎる
細かいこと言うなよと言われてもいい。OL歴十数年の私はそこが気になって気になって(×10)しょうがない。
物売る会社にも、開発→製造のラインを持つ工場にも勤めたことがあるが、本作のエピソードに関しては、「そりゃねーだろ」の連続ですがな。
あ、もしや外資だからか? さすがに外資には勤めたことがないから分からないけどne!
ともあれ、このシナリオライター氏は一般的な会社勤めの経験がないと思われますが。
今作のコンセプトに仕事エピソードは不可欠であるはずなのに、ディテールがまるでなってなくてそこでまず失笑。
これでは最初っからハマれるわけがないのですよ。

ユーザーは最初からフィクションだって分かって作品を手に取るのです。
だったらせめて、そこで上手に嘘を付いてほしい。興ざめさせないでほしいのです。
これは他作品のレビューで何度も書いていることだが、フィクションにも最低限のリアリティは必要。特に現代が舞台なら。
それがプレイヤーをうまく世界観に乗せるコツなのでは。

今作ではかなりの数のエンド数が用意されているが、最悪のバッドエンドが全部刺されて終わるケースなのもいただけない。
殺され方・殺し方に一家言持つ殺し愛愛好家としては、痴話ゲンカの末か恨みを買ってブスッ→デッドエンド、では酒のつまみにすらなりゃしません。
他のエンド・エピソードにしてもそうだが、全体的にバリエーションがなさすぎ
31種類もエンドがあるというのに、どれもこれも似たようなシチュエーションで単調。
おまけにエロにも差分があるため、CG回収のためいちいち同じシチュエーションを繰り返さねばならず、飽きて死亡確定。

ただ、鬼畜度合いのバランスは良い。基本的には言葉攻めメインなのもうれしい。
私は肉体的に痛い系・あまりにハードすぎるものは好きではないので、これくらいがちょうどよかった。
鬼畜初心者にも抵抗感なくプレイできるレベルだと思う。

ところで、今作の一番の問題点は。

「鬼畜眼鏡」というタイトルでありながら、鬼畜でも眼鏡でもない主人公受ルートがあるということなのですが。
こんなアホなタイトル(から連想されるシチュエーション)を好んで買うようなユーザーが、そんなルートを喜ぶだろうかということくらい、ちょっと考えれば3分で答えが出ませんか、普通?
攻だろ? このタイトルから連想される内容って主人公攻だろ? リバが最高に苦手&自分が攻じゃないと許せない私が、何のために今作をやったと思ってるんじゃ、spray!!
だいたい、「眼鏡をかける」って選択肢自体が必要ないだろ。「鬼畜眼鏡」なんだから。
それをシナリオの都合で、「かける」「はずす」を選ばなきゃならないって何ですか?
タイトルに騙されたユーザーに対する嫌がらせですか?
おまけに眼鏡かけっぱなしだと、鬼畜ゲージが真っ赤に振り切れるってどういうことですか。
「鬼畜眼鏡」なんだから眼鏡かけるでしょ。かけるべきだ。かけなければならない。
眼鏡を外したらバッドエンドだってならともかく、付けっぱなしはバッドエンド、付けなきゃ受ルートってのはあんまりです。
私にとってはいずれもデッドエンドに等しい所業だったのですが。

そういう、「ユーザーの欲する空気読めてない感」が今作にはあちこちに漂っていて、いちいちやる気が削がれる。
せっかくの直属の上司は無能な上に乙女チックでものの役にも立たない愚鈍な男だし。(それが一番腹が立つ)
同僚は脳みそまで筋肉のアホタレだし。
主人公は主人公で、眼鏡をかけていないと単なるヘタレのグズで蹴飛ばしたくなる性格してるし。
まともかと思われた嫌味なエリートはいきなり肉体関係強要してくる真性ホモだし。

ホモじゃない奴が紆余曲折の末、ホモ道に堕ちるところにこそBLの醍醐味があるんだろうが!(あくまで持論です)
最初っからホモな奴らがお手々繋いでウフフアハハなBLには萌えないんだよボケが!(だからあくまで持論です)

……と、そんな(私にとっては)トンチキキャラが右往左往している様を見ても楽しめるはずがないのです。
システムパートで前述したけれど、特筆するべき演出があるわけでもないし。

正直言って凡百。そもそも、ゲームである必然性が皆無です。
受攻が選べるくらいがせめてもの利点なのか。個人的には受ルートはまったく無用の長物でしかないのだが。
動きもしない、ゲーム性もない、シナリオはテンプレ。音楽は空気。
いいのは声優陣の熱演とテーマ曲、一部CGくらい。
エロゲなら、どこのレビューサイトでも取り上げてすらもらえないレベルでしかない、空気な作品でした。
むしろ、事前のこれだけの話題性に対してこの内容だったら、地雷扱いされても文句は言えないぞ。

BL、特にリーマン物が(たとえ嘘八百でリアリティの欠片がなくとも)好きで好きでたまらない、ついでにちょっぴり鬼畜で眼鏡キャラならなお良し、といった人にならお勧め。
ある意味、キャラ萌えにしか頼っていない、作品としての総合力は二の次でしかない、非常にBLらしいBLと言えるかも。

つくとり

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
56★★

たかだか10時間もあればクリアできそうな今作を、長々と1週間以上かけて半死半生でクリアした。
最初こそ興味深くプレイしていたのだが、あまりにもツッコむところが多すぎ、途中からメモを取るのも面倒に。
かと言って笑いに転化できるほどの突き抜け感もなく、ひたすら襲い来る睡魔と倦怠感とに立ち向かった1週間。
途中で何度、「もう、ゴールしてもいいよね」(C)AIR と諦めかけたことか。
今作を説明するなら、「Win98が全盛の頃に、ラノベの新人賞一次審査で落ちた小説を元に作ったエロゲー」。
無駄と稚拙がよくない相乗効果を生み出し、今どきこれはないだろう、という古くさいパターンのゲームを作り上げている。

今作は選択肢がなく、序章後、前後編に分けられたシナリオをすべて読み終えると最終編が発生する仕組み。
個人的には、どうせ選択肢をなくすのであればノベル形式にしてほしかった。
数行しか表示されないテキストを延々とクリックし続けるのは苦行でしかない。
それに、ゲーム最大の魅力であるインタラクティブ性を犠牲にするのであれば、それにふさわしいだけの盛り上がりを見せてくれなくては。
なまじ高い金を払って、「電脳紙芝居」形式の作品を買うからには、相応の満足感くらいほしいと願ってもバチは当たらないと思うが。
とにかく作品全体が非常に安っぽく、あらかじめワゴンセール用に作られた粗製品のような印象を受けた。

さて、まずは絵。
私は基本的に絵はさほど重視しないタイプなのだが、さすがにこれは破滅的にダメだ。
シナリオとキャラクターデザインがあまりにも合っていなさすぎる。
原画は、「ブギーポップは笑わない」の挿画で有名な緒方剛志氏だが、他作品の絵と今作との間には暗くて深い溝がある。
どのキャラ絵・一枚絵にもやる気がまったく感じられず、ボリューム的にもずいぶんと寂しいのだ。
本当にシナリオ読んだ? と尋ねたくなるほどミスマッチで死んでいるキャラたち。
当然、そんな原画に意気など感じられないだろう塗りも冴えないまま。
だから、大した枚数もないそれが表示されても、まったく心を動かされることなどない。むしろ悲しくなる。

おまけに立ち絵もほとんどない。今どき、ここまで立ち絵を簡略化する作品など見たことがない。
おかげで、シナリオと整合性のない、またはミスマッチなシーンが多発し、これだけでげんなりさせられる。
背景にも乏しく、しかも質もあまり高くないとあっては、原画と立ち絵のまずさをフォローしようもない。
結果として、ビジュアル面の不備のせいでシナリオに水を差すことが多かった。
決してこの点は重視していなかったはずなのに、まさか足を引っ張られることになるとは。
やはり作品とは総合力だ。

音楽は可もなく不可もなく。OPはさすがに多少は良かったが、他は有象無象のレベル。
無音の箇所が多いのが気になるが、そもそも、楽曲のレベル自体は大したことがないのでさほどマイナスにはならない。
むしろCVがまずい。これはかなり大きい減点要素。
ここ最近、こうまで外したキャストを繰り出してくる作品に当たったことがなかったので、全力で椅子からずり落ちた。
ルルが犯罪級にダメだ。棒読み丸出し。素人臭すぎる。
他のザコキャラにならともかく、キーパーソンにこんなキャスティングをしてしまったのは予算の都合ですか?
しかも、一部主要女性キャラのみがボイス有りという仕様になっていて、彼女らに引けを取らない他のキーパーソンにすら声がないのが残念。
いっそのこと、こんな失敗したキャストなら、中途半端にボイスなど付けなければよかったとさえ思える。

演出とシステムには突出したところはない。
淡々と提示されたルートを辿るだけの作品なので、高度なシステムなど必要ないのは確かなのだが。
だが、かゆいところにはまったく手が届かない、愚直なだけの作りであることは否めない。
読むだけのシステムであるのに、まさかホイールによるメッセージ送りができないとは思わなかった。
今どきホイール付いてないマウス使ってる人、ほとんどいないと思うよ?
エンジンは椎名里緒だし、同エンジンを搭載している他作品(cx.あやかしびと)では普通に機能しているのになぜ?
どうもこの作品、各ポイントのあらゆる難が、どれもこれもシナリオへの集中を妨げようとしているように思えてならないのですが。

さて、肝心のシナリオだが。
正直言って、非常に肩すかしでがっかりした。OHPやパッケージから連想される正統派の和風サスペンス、狂気と戦慄で彩られる陰惨な物語を楽しみにしていたのに、いざ蓋を開けてみたら、しくじったライトノベルとしか言えない出来。
しかも、ストーリーの合間合間に、決して少なくはない量のギャグが入ってくる。
それだって笑えるならまだいい。笑えないギャグなど、飲食店のゴキブリほどに始末に負えない。

シナリオがダメである理由は数多くあるのだが、何と言っても設定・展開に無理がありすぎること。
今作のような、常軌を逸した閉鎖空間を演出するには、どんなエピソードを用いても許されると勘違いしている節がある。
プレイヤーがフィクションであることを忘れるくらいゾッとしたり驚いたりするには、ある程度のリアリティが絶対に必要。
それがどんなに荒唐無稽なSFやファンタジーであろうとも。
その、物語を展開するにあたって最低限必要なはずのリアリティがなさすぎて、興ざめすることが多い。

たまたま電車で乗り合わせた氏素性も分からない人間を、警察官が公務に同行させるものか。おい、守秘義務は?
そういう設定の小説やマンガは確かに多いが、それらは少しでも受け手が納得に足る裏付けをしているからであって、いきなり冒頭からそんな立場(しかも理由などない)を押しつけられたプレイヤーは呆気にとられるしかない。
そもそも、そんな無理強いをしてくる上に、口を開けば初対面の相手にくだらないギャグばかり連発する刑事キャラを、主人公がきちんとした警官として認識し、信用する方がどうかしてる。
この時点で、主人公の知能ランクは低能であると認定。それに伴い、この先の苦痛もある程度予測できる羽目に。

また、会うキャラ会うキャラが次から次へと同じボケをかまし、もはやツッコむ気すら失せる。
この村には、ツッコミを要しない人間は住んでいないのですか。全員、何かしらギャグに走らないとダメですか。
思ったよりもずっと明るくて楽しげな村デスね。もっと陰惨な雰囲気を期待していましたよ。そりゃもう、横溝ばりの。

うわー、水の中でしゃべれるなんて人外決定ですね。さすがつくとり様は違うわぁ。
あれ? じゃあ主人公はどうしてしゃべれるの?
物語の終盤、本来なら最高に盛り上がるであろう箇所で、頭から冷水を浴びせるような真似しないでください。

そういった、笑うに笑えない「地に足のついてなさ」が先へ進めば進むほどにボロボロと出現し、脳内は、起きてしまった事象を無理矢理納得するので精一杯。
物語にのめり込むだの集中だのできるレベルじゃない。
それに、エピソード自体が風呂敷をあまりにも広げすぎたせいで、それを扱いきれずにもがいている様がみっともない。
畳みきれない風呂敷を隠すために、その上からさらに大きい風呂敷で包もうとするのだが……の連続。
当然、物語がインフレを起こし、閉鎖空間で濃密に展開するはずだった因習と連続殺人の物語は、国をも揺るがす大ドタバタ劇へと変貌。
山の民や謎の宗教集団など、いかにもサブカル好みの設定を持ってきたまではよかったが、説明力もない上に「取って付けた」感が漂い、その消化不良っぷりが無惨。
結局、ライター自身が的を絞りきれていなかったせいで、数撃った矢が全部外れるという最悪の現象に。
いっそのこと、この手の設定をばっさりカットし、純粋に町内でのみ展開する物語にしてくれれば、もう少し据わりがよくなったはずだ。
多くのクローズドサークル物がきれいに着地できるのは、そうやって、人と場所を絞るからこそ。
全員が全員とも関係者、誰しもに裏の事情があるなんて設定、扱いきれるほどこのライターは敏腕ではない。

もう一つ。物語の展開もまずいが、日本語がまずい。あの伝説のPPのライター並みだ。
誤字脱字が異常に多く、表現もズレている。「焦げ臭い」を「据えた匂い」と表現する人、初めてですよ。
「掘の深い顔」ってどんな顔ですか。「満身創意」ってすごいね。超クリエイティブ。のっぽさん?
「検討ハズレ」って言い得て妙ですね。主人公の推理に対するライター自身のツッコミなんですか?
「弱みに漬け込む」ってどんな味の糠床?
何より、死体に対して「可愛そう」はないだろ。そもそも、「可愛そう」は造語だ。なぜ普通にひらがなで書かぬ?
それくらい、文筆業を生業とする者なら常識として身に付いているはずのものだろうが。

無頓着。文章を書くということに対してとにかく無頓着。無自覚。無責任。
単なる変換ミスはデバッグが足りなかったで済むだろうが(それだって作品としてはダメだ)、ここまでくると、明らかに書いたものを推敲もせず垂れ流しているとしか思えない。
少なくとも、「こんばんは」を「こんばんわ」と書く誤用を平気で繰り出してくるライターを、私は認めない。
「てにをは」も満足に使えませんか。小学校からやり直せ。
金を取って文章を読ませてるんだから、ある程度のレベルを求めるのは当然だ。
それがエロゲであろうがラノベであろうが純文学であろうが。
媒体など関係ない。それが文筆業のプライドというものじゃないのか。

一般的にはそこそこの高評価を得ているようだったので、期待を持って臨んだ結果、あえなく玉砕する羽目に。
そもそも評点の各ポイント全部がイマイチな上、ダメな部分が絶妙に合わさり、実にトホホな合体事故が発生。
一言で表現するなら、「安っぽい」。これに尽きる。
制作者の熱量がまるで伝わってこない。絵もシナリオもその他も。
「この手のジャンルは必ず釣られるファンも多いし、とりあえず狙っとけー」みたいなやっつけ仕事臭がして、稚拙だけれども魂込めて作った! という気合いがまるで感じられなかった。
(よく比較対象にされる「ひぐらしのなく頃に」には、それがひしひしと感じられる)
OHPには、「大変な困難を経て完成した」とあったのだが、それが何なのかは我々一般ユーザーには知るべくもない。
ただ、失礼を承知で言わせてもらえば、「本当なの?」と疑いたくもなるのですよ。
水中で会話が成り立つ超人類が横行する、現代日本を舞台にしたはずの超物語を読まされた身としては。
こういうトンデモ作品が、ユーザーのジャンル離れを起こす一因になっているということに気付いてほしい。

ミステリが好きだから。サスペンスが好きだから。伝奇が好きだから。和風テイストが好きだから。
そう胸を張って言えるユーザーがまだいるのです。そういう人間から、これ以上、足場を削り取らないでください。
そしてそういうネタを扱いたいと思っているクリエイターの方々。
その手に持っているのは、足場を補強する釘か、ぶった切るノコギリかをちゃんと見極めて作品を出してください。
それだけが、私の望みです。

薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
80★★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!

雑記にてお勧めのBL作品を問うたところ、この作品を推す人が非常に多かったので、勇んでプレイすることに。
が、私は甘かった。砂糖菓子を水飴コーティングし、その上から粉砂糖をまんべんなく振りかけたほどに甘かった。
要するに、百戦錬磨の姐さんたちと、ヒヨッ子の自分のスキル差を全然自覚していなかったのDEATH。
まさかこの作品、キャラ総当たりの陵辱・純愛ルートが用意されている上、Hシーンごとに受攻リバ有り、という破滅的な組み合わせの多さだなんて、攻略サイトを見るまで全然気にしてなかったのDEATH。
(とにかく攻略が大変だという話は聞いていたので、今回は最初から攻略サイト併用です。ヘタレご容赦)
が、知ってしまったとしても後の祭り。もうプレイする宣言をしてしまったし、何よりインストールもしてしまった。
半泣きのまま決死の覚悟を決め、とにかく突撃。

すでに数年前の作品であるので、演出は確かに古いのだが、男子校で起こった陵辱事件の犯人を追うというストーリーは、大正~昭和初期という世界観も相まって、退廃的で背徳感溢れる雰囲気を醸している。
これなら、むしろ画面が著しく動いたりしない方が吉。
その代わり、カーソルが薔薇だったり、メニューが蝶だったり、カップリングを選ぶメイン画面では花吹雪が舞っていたりと、バリバリに耽美を主張する凝った作り。
メニューを選択するたびに、「セーブするのか?」とか、「おや? 止めるんですか?」とかキャラが喋り、気恥ずかしいくらいの凝りっぷりだ。

システムはオーソドックスなAVGで、パッチを当てれば進行には問題なし。
ホイールバックログや音声再生にも対応しているし、膨大なルート攻略に必要なセーブ数も万全。
また、CGモードでは、Hシーンだけでなく、イベントシーン再現もできるのがとても親切。
何しろ、かなりのボリュームがある作品なので、もう一度あのシーンが見たいと思っても、再プレイするほどの根性はなかなか出てこないと思うのだ。

他の点ではかなり頑張っている印象を受ける作品だが、残念ながら、音楽面はかなり寂しい。
曲数も少ないし、無音の箇所もままある。
プレイ後に覚えているのは、オープニングタイトルの物々しいBGMだけという空気っぷりで、これがもう少し頑張っていればもっと単調さを防げたかもしれない。
声はHシーンと一部重要シーンのみのパートボイスとなっており、今となってはやはり物足りない印象が拭えない。
それに、中の人によってえらく出来に差がありすぎるように感じる。
受攻総当たりなのだから、どちらもできる人を起用すべきだったのだろうが、一部の人が、攻はいいが受が聞くに堪えないレベルだったのが気になって仕方なかった。
レトロ感溢れる台詞を、現代の声優さんたちが喋るのはなかなか面白く、その点はかなり楽しめたのだが。

立ち絵のバリエーションはさほどないのだが、イベント絵はかなりのクオリティで仕上げられており、見ごたえは充分。
ただ、一昔前の少女マンガ的絵柄なため、好き嫌いが分かれるかもしれない。
何しろ、日本人と英国人のハーフが金髪碧眼で出てくるレトロさだ。うわーすげー超劣性遺伝
……などと思ってはいけない。たかだか十数年前の少女マンガには、こういうブッ飛び設定のハーフキャラが跋扈しており、それは乙女な小説の世界でも同様だったからだ。

さて、突撃した私は、まずはトゥルーEDから最も遠そうな陵辱ルートから始めることにしたのだが。
基本的に、作品はコンプリートすることを前提にしているので、CG100%を目指したまではよかったが、当然、その反復回数はシャレにならないことに。
特に、陵辱ルートは相手を落とした後のエピソードが著しく単調なため、すぐに飽きて幽体離脱。
進めども進めども、ただひたすらに容疑者(?)を拿捕→支配下にするの繰り返し。
肝心の犯人は、始まってものの10分で(ネタバレ危険→)下手すりゃパッケ見ただけで分かる仕様になっているので、主人公の間抜けっぷりがまどろっこしく、お願いだからもう解放してくれと、何度囚われの受のごとく泣き叫ぶところだったか。
正直言って、凌辱ルートは、とにかくHシーンが好きという人じゃないと耐えられない。
私は、よほど好みのシチュか、めちゃくちゃエロいとかでない限り、別段そんなにHシーンが好きなわけではないので、これには本気でまいった。
それが、攻略キャラ5人×リバ×H回数=死亡。
私が、ゲームスタートから陵辱ルート終了までに1ヶ月以上かかった気持ちがお分かりになるだろうか。
見かねた常連さんから、動作保証対象外の超速スキップ技を教えてもらわなければ、私は確実にあの世へ旅立っていた。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとう、某姐さん!

そんなわけで、まさか純愛ルートもこんなんだったらどうしよう、勧めてくれた姐さんたちを恨んでやる、と八つ当たりしつつ、取りかかるまでさらに半月を要したのは、萎えた心を奮い立たせるのに必要な時間でした。申し訳ありません。

が、着手してみてビックリ。純愛ルートは各キャラの掘り下げがぐっと深くなっており、エピソードも重複するものが少なく、オーソドックスなシナリオながら、それぞれに楽しめた。
また、時代設定を巧みに生かしたエピソードやEDが多く、非常に据わりが良い。これならお勧めされたのも納得の出来。
このギャップは何なのだ。
普通、これだけのキャラが出てきてしかも総当たりとなると、一つくらいはやっつけ仕事が出てきそうなものだが、どのエピソードもとても丁寧に綴られていて破綻がない。
そのバラエティに富んだエピソードが、単調極まりない陵辱パートにもあれば紛れもなく名作となったのであろうが、物語の構成上、これは仕方がないのだろう。
そもそも支配者は隷属する者の事情など鑑みないものだし、エピソードの発露には、陵辱・純愛との分岐選択にて純愛を選び、両者が心を通わせるようになることが条件となっているからだ。

とにかくクリアまでの道のりが異常に大変なので、途中で放棄した人も多いかと思うのだが、付録に「手記」が出るまでは頑張ってプレイしてほしい。(純愛グッドED後に出現するらしい)
これこそがこの作品の真骨頂、これを読まずして真のクリアとは言えないからだ。
ある程度予想の範疇ではあったけれど、それでもその強烈なカタルシスのあまり、各キャラEDを食ってしまう危険性があったからか、あえて本シナリオから外され、「付録」という形にされたラストエピソード。
その、すべての元凶となった想いをぜひ味わってみてほしい。

この作品、確かに多数のプレイヤーにお勧めされるだけの力作ではあるのだが、惜しむらくは、前述の通り、犯人やその動機が分かりやすすぎること、シナリオやキャラがステレオタイプすぎて、斬新な目新しさがないこと。
ただ、意外性がない分、安定感は抜群で、BLというよりは古風なJUNE小説を読んでいるかのような印象を受けた。
ある意味、伝統的な作品だと思う。こういう作風って、今はむしろ貴重なのでは。
閉鎖空間で濃密に展開される物語が好きな人、レトロな時代観が好きな人向け。
軽めのBLに飽きた人、原点を求めたい人なども。

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