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群青の空を越えて

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
81萌えは無用の方に
★★★★

きっかけは、発売前に公式サイトに掲載されていた制作ウラ話。(今も読めます)

「バカヤロウ、萌えゲーなんかに負けるかよ。ユーザーが萌えるのは正当な楽しみ方だけど、クリエーターが萌えに頼るようになったら単なる無能者の手抜きなんだよ」

いい加減、萌え先導の業界の風潮に倦んでいたところにこの言葉。そんな気炎を上げるクリエイターが、まだいることがすごくうれしくなり、応援も兼ねて勇んで特攻。

ジャンルは「本格未来架空航空戦記ADV」。作者の言葉には「グリペン」を使った話が書きたかった、とあるが、空中でのドッグファイトや戦術的な展開よりも、むしろ戦争という現実に翻弄される人間たちの群像劇がメイン。
作者はかなりの航空機マニアのようだし、ドッグファイトがメインなのかな、と思っていたので、いざプレイしてみたらいささか拍子抜けしたのも確か。
これでも「エリア88」に燃えた世代ですんで。
その代わり、戦略・権謀術数要素はてんこ盛り。目に見えるドンパチよりずっとシリアスで重く、「戦争」、しかも「負け戦」であることを忘れないシビアな展開は、派手さには欠けるが、ずっと心に重くのしかかってくる。
実際、政治・経済問題を多く盛り込み、それをある程度は理解しておかないと面白さが3分の1くらいは減少してしまう困った作りなので、取っつきはかなり悪い
気軽に楽しく浮世の憂さを忘れたいという人には全然向きません。そういうお手軽作品が多く求められ、市場に溢れているこのフィールドにおいて、実に異彩を放つ方向性、はっきり言ってたまりません
第一、負けることがほとんど確定しているんだもの。勝利のカタルシスなんてへったくれもありゃしないのです。
そんなわけで、覚悟を決めた人のみがトライすればよろしいかと思います。

絵は可もなく不可もなく。シリアスな物語にふさわしく、突拍子もないデザインもなく比較的安定しているのだが、テキストとCGで齟齬が生じるケースが多い。
立ち絵では普段着を着ていたはずなのに、同時間上のイベントCGでは制服姿になってたり、文中では長袖のはずがCGでは半袖だったり。
些細な点であるのは承知しているが、一度気になりだすと、とにかく目についてしょうがない。
もう少し、擦り合わせに気を使ってほしかった。
また、物語の尺のわりにはイベントCGが少なめ。私の感覚がズレているのかもしれんが、ここはCGだろう、というところもトランジションでごまかされてしまったり、量的にはあまり満足できなかった。
EDのスタッフロール上で、まだ見ていないルートのネタバレCGが表示されてしまうのも困りもの。
ちゃんと制限かけてください。

売りであるのかは分からんが、場面場面で挿入される飛行シーンのムービーなども、地味だし今ひとつの出来。
ひょっとしたらすごくリアルな動きとか、こだわって作られたものなのかもしれないが、残念ながら当方、航空機に関しては素人で違いがよく分からないし、挿入どころのタイミングも絶妙とは言い難い。
この辺の、細かい演出が平たく言えば「ダサい」のであり、業界では最近、演出にはめざましいものを感じる作品が多いだけに、余計に野暮ったい印象を受けてしまった。

この点は音楽も同様で、このシーンでその曲使うかぁ? というポイントのズレが耳につく。
こういう感想は、本当に個人個人の感性によるものなので、あくまで私見であるが。
ただ、やはりあまり主張しない曲が多く、進行の妨げにこそならないが、盛り上がりには欠ける。
OP・EDは出来が良いのだが、作中でのBGMは曲のバリエーションも少なく、いつも同じ音楽がかかっているような印象を受ける。
せっかくのゲームという媒体、もう少し絵と音が生み出す力、その効果を信じて力を入れてみてもよかったのでは。

対して、フルボイスであるのは大成功と言って差し支えない出来であり、声優陣はかなりの熱演。
あちらこちらで名前を見かける実力派が多く参加しているだけあって、その演技には隙がなく、ミスキャストもないので、いつもはボイスすっ飛ばし派の私も、ついつい聞き入ってしまった。
(おかげでクリア予定時間が大幅に延びた)
普通のゲームやアニメなら登場しないであろう難解な用語が頻出し、おまけに航空用語は英語だし、収録は並大抵の苦労ではなかったに違いない。プロって素晴らしい。
しかし、一部シナリオにもネタとして登場するが、BL系で大人気のあんな人やこんな人を盛り込んで、いったい何をやらす気ですか! モニタ前で吹くかと思ったよ。

システムは普通。ただし、グラボの相性が悪いと悲惨らしいので、パッチを忘れずに。
私も最初、メニューが表示されないという珍現象が起き、このゲームはどうやってスタートするのか? としばらく悩んだ。
実装している機能には過不足なく、各種回想モード、ホイールバックログ・音声再生にも対応しているのだが、どうもいまいちレスポンスが悪く、半テンポ遅れるような気が。(推奨スペックは余裕で凌駕してます)
ボリュームがあり、シナリオに集中したい作品なので、足回りは軽快であってほしい。
また、見せ場と思しき特殊なイベント下では、セリフの表示スピードが支配されてしまうのも難。
ここぞ、と意気込む気持ちは分かるのだが、ユーザーとしては自分のペースを乱されるほうが癪に障る。
むしろ、別の演出によってユーザーの目を釘付けにするべきなのでは。

以上のように、全体的にどうもパッとせず、いまひとつな凡作なのかと思いきや、困ったことに(?)シナリオが全然いまひとつではないんですわ。

さすがに言うだけのことはある。「萌え」をまるで排除し、あくまでも物語の力で勝負しようとした姿勢は潔い。
これだけ各メディアの発達が著しい中で、未だにペンの力を信じたその方法は、愚直なまでに真正面からの挑戦。
大軍の中に一騎突っ込むようなもの。

たった一人の学者の学説とアジテーションが、様々な利権と絡んで、やがて日本分裂と戦争に発展する、という設定は、かなりのトンデモであることは確かなのだが、それを足場とした物語が、疑問を許さぬ勢いで大真面目に展開するもんだから、何だかいつの間にか押し切られてしまうのも確か。
「主人公がグリペンに乗る物語を書きたかった」と製作者自らが語るように、そのためだけにこれだけの大風呂敷を広げたのはいっそ見事でもある。
美辞麗句で愛を語るゲームは数あれど、「女が一番じゃない」と断言してのけるエロゲーは初めてです。
でもちゃんとエロいんだな、これが。

一つの事象を多角的な視点で捉え、それをザッピングというシステムに無理なく置き換えた手法はナイス。
複数の視点が入り乱れることによる混乱を避けるために、メッセージウインドウにキャラチップを表示させたのも気が利いている。
最終ルートではそれまで敵だった側の視点で物語が語られ、単純な二元論に陥るのを防いでいるし、テーマに向き合おうとする姿勢は、とても単なるゲームの一作品とは思えないほど真摯だ。
異世界を舞台にするのではなく、あくまでも日本と諸外国、という身近な場所を設定した勇気も評価。
誰しもが知り尽くした世界の上に、新たな設定を敷くのは並大抵の苦労ではない。
荒唐無稽すぎるからこそ、フィクションとして楽しめるという側面もある。
じゃないと、生々しくてやってられないだろう。

そこでは、人が当然のように死んでいく。すぐ前の場面では重要な役を担っていたキャラですら、次の場面では、ただ「○○が死んだ」とだけ表示され、淡々とした死を余儀なくされるそれは、あまりにもあっけなさすぎて怖い。
だが、そうまでして失いつくし、あがきつくしても、いずれのルートでも待ち受けるのは敗戦(停戦)というのが、このシナリオのすごいところだろうか。

私は、あえてこういう手法にしたことを評価したいと思う。
どんなに誰が泣き叫んでも、残酷な事実は覆しようがない容赦の無さも好きだ。
今まで、多数のパイロットを死地に送り込んできた管制官である若菜が、自分の死に向き合ったとき、決して自分を特別扱いせずに毅然とその事実を受け止める厳しさと強さ。
そういったものが詰め込まれた今作、ゲームとして作りの甘いところは多々あれど、普通のエロゲにはないものを多々持っていることもまた確かであり、それはとても大切なものだと思う。

ラスト、作中に何度も問いかけられた命題を再度提示されて物語は閉じられる。
「自分たちはなぜ戦ってきたのか」、と。
そこに明確な結末を与えなかったのは、プレイヤーそれぞれに想像の余地を残すための手法であるが、あえて言うならば、指揮官すらも傷つき倒れ、防衛線がズタズタになっているであろう激しい戦いの最中、という状況が、決してこの先に待っているのが楽天的で明るい未来、もしくは劇的な状況の好転ではないだろうことは想像に難くない。
どこまでもシビアで容赦のない演出。奇跡などは起こらない。すべては現実に起因し、質量で劣れば負けるし、個々人がどんなに努力してあがいても、より大きな国情や経済の絡んだ思惑からは逃れられない。
その、決して日和見をしない、作品に対する揺るぎない姿勢は賞賛に値する。
もちろん、読み手によっては、すべてが丸く収まったわーいハッピーと夢想することも可能だ。
(作品の本質を理解していないような気はするが)

パイロットとして死ぬことにしか意味を見出せなかった主人公が、その拠りどころである飛行機乗りという手段を奪われる最終ルート。
飛べなくなって、空という逃げ場を失って、そこで初めて真実に辿り着く。
優しい皮肉に満ちた展開は、その代償に得たものを丹念に綴ることで、それは必要だったのだ、と気付かせてくれる。
この作品が、「萌え」(=ある程度の予定できるセールス数)を捨てて得たものがあったように。

やりたいことを好きなようにやる姿勢というのは、簡単なようでいて、それを貫くことはひどく難しい。
なんせ、商業作品である以上、ペイしなきゃ会社が潰れる。同人のように自分一人が泥をかぶればいいわけではなく、社員の家族にまで責任があるわけだから、あまり軽々しい真似はできない。
そして、たいていの場合、製作者が希望する形と、ユーザーの望む形というのは乖離しがちなものだ。
だから、安易な「萌え」に走らず、重厚なドラマを展開しようとした製作サイドの姿勢と、ユーザーの反応が好意的評価として一致した本作は、とても幸運なのだと思う。
もちろん、本作をプレイした人間なら、それがただの偶然やラッキーで生まれたのでないことは重々承知の上だ。
二年もの歳月を費やしたというシナリオは、完成に至るまでどれほどの推敲を重ねただろうか。
その膨大な作業量を思いやるだけで頭が下がるし、一見して受け入れられにくそうな、難解な用語やクセのある舞台、それでも恐れずに新境地を切り開いたその姿勢。
個人の作家性が色濃く残る、小説的なアプローチの異色作だと思う。

好き嫌いが非常に別れる作風なので、軍事、政経、負け戦に耐性のある方のみどうぞ。
善と悪、敵味方、そういうのがはっきりしてないと嫌、という人は避けたほうがよろしいかと思います。
私はお勧め。ゲームとしての総合点は低いけれど、こういう作風って今までになかったし、このシナリオにはそれだけの価値がある。
活字好きならさほど違和感はないと思う。

ちなみに、未プレイの方は、若菜→加奈子→美樹でやった方がよろしいですぞ。
いいですかな。忠告はしましたぞ。これが一番、鬱気分を軽減できる順番だと思うので。
なんせ順番に(ネタバレ危険!→)全滅)→(壊滅)→(敗戦)だからな。
(とんでもねー作品だなオイ)

SchoolDays

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
77★★★

途中からの展開のあまりの凄まじさに、「すごい鬱ゲー」として新聞沙汰(東スポですが)にまでなった問題作がとうとう当レビューにも登場。
はっきり言って、ぱっと見は全編フルアニメであるだけが売りの普通の学園物に見えたので、まったくのノーチェックだったのですが。
プレイした方たちの地獄絵図な叫びと、ネットでの大評判を聞きつけ、慌ててレビュー対象作品にした次第です。

このゲーム、一言で言うならまさにアレ。「寝取られる 殺る やるドラ」。
豊富な選択肢とED、極めて限定された舞台と関係を軸に、じっくりと濃密な展開が繰り広げられる。
30分アニメ70話分という驚異的なボリュームは、総インストール約8Gという他に類を見ないふざけた数字にも表れているが、せめてパッケージには書いといてくれや。
私は公式サイトで初めて知って、目が飛び出ましたよ。

そして、度重なるパッチの嵐。
確かに、これだけの分岐を管理し、かつあらゆる種類のPCに標準化させるのは骨の折れる作業だろうが、それにしたってもう少しテストを重ねるべきなんじゃないのか。
とにかくシステム周りが雑。高スペックを要求してくるわりに安定とはほど遠く、よく落ちる。
パッチを当てないことには攻略すら不可能だし、フラグ管理もかなり甘い。
そのルートでは起きてないイベントが、翌日には起こったものとして話が進められていたり、作中で齟齬が生じるケースが多すぎ。
フルアニメという性質上、やむをえない点もあるが、それでもこれだけボリュームある作品で、既読スキップがないのもいただけない。(4倍速再生はできる)
分岐条件がいまいちファジーで攻略が難しく、それなのに十数種類の多彩なEDを備え、再プレイ必至である今作では、シーンスキップ機能を実装するべきであるのに、プレイを重ねるたびに繰り返し同じシーンを見せられ、いい加減うんざりしてくる。
次にはいったいどんな鬱展開が待ち受けているのかだけが楽しみで、ひたすら我慢の一手でプレイしたが、それでもこれは大きなマイナス要因でした。

音楽やボイスはかなり豪華。この業界なら誰もが名前を知っている歌い手や声優が、もうインフレ気味なくらいにわんさか登場し、売りのわりにいまいちな出来のアニメに華を添えている。
各話ごとに挿入されるOP・ED、最終話でのEDテーマは内容に沿って少しずつ違っており、かなり手の込んだ作り。
だが、本当の売りであるはずのアニメ自体の出来は、実は大したものではなく、よくあるエロゲのOVA化作品レベル。
止め絵になることもままあるし、口パクのない箇所もザラ。
わざとロングカットにして動きの少なさをカバーしようとしている箇所もかなり多い。
正直、他作品で見られるような、要所要所で挿入される高品質なアニメのレベルには到底至らない。
おそらく確信犯として質より量を取ったのであろう、1ルートにつき1話30分×6話の構成は。
それをすべて動かすというのは並大抵の作業量ではないだろうし、そのボリュームから考えると全体的にはまずまずの出来。
アップ以外は最初から大した作画レベルじゃないので、崩れても大差ないという皮肉に満ちた結果ではありますが。
むしろ、肌つやが良すぎたり、髪の影が顔に落ちすぎなことの方が気になったよ。
いったいどんな分厚い髪の毛ですか。全員ナチュラルマープ?

声優陣はミスキャストはないのだが、妙に演技が間延びして聞こえるのは気のせいか。
これは、アニメに合わせて再生速度を落としただけか?
基本的に物語のペースが鈍重なので、私はほぼ2倍速でプレイしましたが、それでも普通にセリフ聞き取れました。
間を読めない奴ですいません。だってのろすぎるんだもん。

そんな感じで、基本的には普通の作品なのだが、この作品を異質たらしめているのは、何と言ってもそのシナリオ。
甘酸っぱい学園物でちょっと三角関係、最後は切ないけれどハッピーな純愛物語をくれぐれも期待してはいけません。
後々、きっと心の傷となって、夜毎うなされる羽目になるでしょう。
それぐらいインパクトのある各EDをご用意してございます。

主な登場人物は3名。プレイヤーである主人公と、クラスメートで密かに主人公に想いを寄せる世界(人名だよ)、主人公が電車の中でこっそり憧れているだけだった、隣のクラスの美少女、言葉(これも人名。「ことのは」です)。
なんだ、普通じゃん、と思ってはいけない。この3人のうち、2人がエロゲ史上類のないキャラ造詣なのだ。

まず主人公。こいつは、かのヘタレで名高い「君望」の主人公をも凌駕する、まさにエロゲ史上最低のヘタレ男。
最後の最後まで態度が煮えきらず、二人のヒロインの間で揺れ動き悩むふりをしながら、寄ってくる女は片っ端から食いまくり。(エロゲだから仕方ないが)
プレイヤーの意志とは裏腹に、下半身の状況に従って勝手に行動を決められるもんだから、おいおい、私が今までせっせと上げた好感度メーターって何だったの? と(゚Д゚)ポカーン状態になることもしばしば。
これじゃこのメーターシステムいらないじゃん。むしろ、チ○コメーターでも付けた方がよかったのでは。

そんな脳と下半身が直結している男が、なぜか校内ではモテ系。誰も彼もが奴に好意を持ってます。
この学校、よっぽど男のレベル低いですか? むしろ、世界の男性の半分は死滅してるような有様とか?
私が知らないだけで、ひょっとしてこれってSF作品だったりしますか?
主人公の友人も、主人公に輪を掛けた最低野郎なので、私にそう思われても仕方がありません。

そして言葉。こいつは、私が今までプレイしたエロゲの中で最凶のブチギレヒロイン認定。
ホラーでもサスペンスでも伝奇でもないのに、ここまで血しぶきを撒き散らし、刃物を持ち出すヒロインっていなかったよ。

よく考えてみりゃ、恋愛で刃傷沙汰になるケースってのは現実では溢れてるのに、エロゲでは少なかったな、と。
あてつけがましく自傷行為に走る奴もたくさんいるのに、そんな真似してみせるヒロインもいなかったな、と。
それが、結局は「従順でかわいい女の子」を心の底で欲しているメルヘン心理の現れなわけだが、このヒロイン、そんな兄さんたちの願いを、いとも簡単に蹴り飛ばしてくれちゃいます。

血と脳漿撒き散らして死んでみせるヒロインが初めてなら、
EDでヒロインの墓参りをさせられる恋愛物も初めてです。

しかも、パッケージにも宣伝材料にも、一言も「これは鬱ゲーです」なんて書いてないもんだから、何の情報もなく、無邪気にこの作品に足を踏み入れた人たちがパニックに陥るのも容易に想像できて気の毒になったり。
そりゃ、話題にもなるわな。

もう一人のヒロインも決して負けてはおらず、別の女とガキまで作ったヤリチンの主人公をブッ刺してみたり、こっそりと友達使ってライバルをいじめたり。

あのね。
これじゃ、あまりにリアルすぎて、現実に耐性のない真性のオタクはドン引きするから。

自分を傷つけない優しい世界で、無条件に慕ってくれる頭の弱いヒロインとひとときの夢を楽しみたいオタクが、こんな女のドロドロした部分がど真ん中直球にくる恋愛話、受け入れられるはずがなかろう。
「鬱だ」と言われる要因は、その辺にもあるのでは。

言っておくが、女はこれくらいのこと普通にやります。
そりゃ、刃物持ち出したり、飛び降りたりするのは最終手段だけど、そこまでの思考には簡単に行き着けちゃう生き物なのですよ。
友達使って裏工作? OKOK、そんなの今どき中学生でもやるわ。
カップル喧嘩中に付け込む? OKOK、付け込まれる隙を作る方が悪いんだよ。
「女の情念」と言うように、古来より、男が絡むと女は豹変する生き物なのだ。

それが分かってるから、私は「エロゲもとうとうここまで描くようになったか」とは思ったけれど、別段ひどいとは思わなかった。
ただ、何てことをするんだとは思ったが。メーカーが自ら「エロゲファンタジー」の掟を破っていいのか。
そういう点で、私はライターのしたたかな悪意を感じた。
「ほーら、これに耐えられるか、お前たち?」みたいな。
「どうせお約束の学園物だと思ってたんだろ? だが見事に騙してやったぜ、どうだ?」みたいな。
この叫びを聞きたかったのだろうなぁ、と思うと、その思惑は完全に成功したとしか言いようがないのですよ。

鬱展開を誇張するあまり、それを通り越して笑うしかない話になっちゃってたり、登場人物全員が学生のくせに、いとも簡単にガキを生む決心をしてたり、突っ込むべき点は正直ありすぎる。
一応のハッピーエンドはあるものの、むしろこのEDの2,3日後には、誰かが血を見る羽目になるだろそりゃ、というレベルのおざなりな解決しか見せない。確実にバッドEDの方が強烈だし、きちんとオチてる。
そういう点では全体的にまとまりがなく、結局何がしたかったの? と問われるような今作ですが。

ただ、この話をアニメでやったのは正解だとは思う。
ゲーム世界を俯瞰で見ることによって、臨場感がものすごく伝わってくる場面がいくつもある。
これは、リアルタイムで映像と音があるからこその演出。言葉が勝手に主人公の家に上がりこんでいるのに、それを知らない主人公と世界がHしちゃってる状況とかね。
表現方法を最大限に活用した点は大いに評価。世の中には「アニメ(やムービー)にする意味あんの?」と問いたくなる作品で溢れてますので。
業界に確実に一石を投じたことは確か。作品の全体的な質よりも、その作品性によって。
そういう意味では、怪作という表現がぴったりだと思います。

壊れるヒロインに耐性のある人、ドロドロなんてへっちゃらさ、という人、アニメが嫌じゃない人はどうぞ。
内気で繊細、現実の女性に夢を持っている、典型的なオタク像そのものな人はやっちゃだめよ。

……泣きたいなら、止めはしませんがね。

CROSS†CHANNEL

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
85★★★★

※注! このゲームはネタバレが致命的な作品です。
そのため、今レビューで設定に言及している箇所は、全部反転させていただきます。どうかご協力を。

もう公然の秘密なので、これについては書いてしまうが、「家族計画」のライター氏の作品。
はっきり言って、私の彼との相性は、この2月にクリアしたばかりの「家族計画」にて激悪なものと化していたので、(レビューを見ていただけると一目瞭然)プレイ前はものすごく気が重かった。
その傷も癒えていなかったのに、同ライターの作品をもう一つ積んでいるなんて地獄の所業としか思えない。(積むなよ)
しかし、これまた世評が相当に高かったのと、公表されている設定がちょっと面白そうだったのも相まって、今回だけはあえて地雷を踏む覚悟で臨んだ。

システム周りは、搭載機能は普通。だが、微妙に使いづらい。
何をするにも画面上部にカーソルを持っていってメニューバーを出す必要があるし、既読スキップをかけるとBGMが聞こえなくなる。
おまけに、オートセーブをONにするとシナリオループが発生して先に進めなくなるという致命的なバグ。
修正ファイル必須です。
余談だが、各章ごとにセーブすることをお勧め。
じゃないと、章タイトルが分かりません。でもこのタイトルが秀逸なので、ぜひ確認するべき。

音楽はなかなか良い。どちらかというと静かな、おとなしめの旋律が多いのだが、シナリオに没頭するタイプの作品なので、
これくらいがその邪魔にならずに雰囲気を盛り上げる役割を果たせると思う。
ちなみに、ある箇所で音楽での大仕掛けがあるのだが、これに関してはシナリオの部分で後述。
主人公以外はフルボイスなのだが、男友達がやけに豪華すぎ。このキャスト、私はビビりました。
たった3人だけど、その誰もが(ボーボボ、犬夜叉、ベジータ)とかなりのビッグネームってどうなのよ!?
これのせいで、逆に女性声優陣が霞んでしまったのがちと悲しい。どうしてもこのビッグ3に比べると演技や印象の点で見劣りしてしまうのが難点と言えば難点か。キャスティング自体は悪くないと思います。

絵に関しては、薄めの色彩で特異なデザインもなく、青を基調とした、あっさりと爽やかな雰囲気。
全体的に綺麗な感じでまとめられており、ベターっとした、変な髪型や服が横行するアニメ絵が苦手なので、むしろこういった画風の方が私には馴染みやすかった。
CG枚数はちと少なめ。これはシナリオの仕掛けのために仕方がない部分もあるのだが、ここぞ、という場面ではきちんとイベント絵が用意されているし、立ち絵のときにたまに入る、イラスト状のカットインも面白い。
どうしてもシナリオのために作られた作品であるので、萌えやその他の要素を追求するのは酷というものだろう。

では、以下よりネタバレゾーンに突入させていただきます。

きた。これはきた。
はっきり言ってプロローグの終盤までは、相変わらずの笑えない上に品のないギャグと、無駄が多くテンポの悪いテキストに、「やはり『家族計画』再びか」とがっかりし、プレイし始めた自分を呪いつつ、数分単位で眠気と闘う苦行を強いられる。
もう何度途中で投げ出したい気分に駆られたことか。
こりゃあもうレビューで、メッタメタのギッタギタに「あらん限りの酷評をしちまうぞコラ」と、どす黒い情熱を燃やしかけたそのとき表示された、プロローグラストのセリフ。

「生きている人、いますか?」

一瞬でざわっとし、背筋が凍った。現時点で理由は分からないけれど、人類は死滅している。ここにいる8人を除いて。
だから。だからだからだから。人の匂いが全然しない。町にも学校にも人がいない。
夏休みだろうと、部活はあるだろうに。日中の町中は喧噪で溢れているだろうに。
BGMはあっても、ざわめきや、夏を演出するのにうってつけのセミの鳴き声のようなSEはない。
そういった、一見背景やサウンド、描写上の手抜きなんじゃないかと思われたすべてが、このたった一言の演出によって
ぴしりと一本に結ばれた鮮やかさに、眠気など吹っ飛んでいってしまった。

背筋を正して、タイトルに戻ることもなくすぐに始まった続きを始める。
最初から、プロローグとほぼ同じ展開。ってことはこれは、ループ物!?
ふふん、私はループ物にはちとうるさいぜ? 何せ、至高の作品が「YU-NO」で「DESIRE」で「腐り姫」だからな。

ごめんなさい。本当に田中ロミオ氏を見くびってました。
まさか、こんな手法を取ってくるなんて思いもよらなかったので。

このゲーム、「青春学園アドベンチャー」と銘打っておきながら、ヒロイン別の攻略ENDがない。
というよりも、EDまでプレイしても、主人公は誰とも結ばれない。
最初から最後のエンドロールが表示されるまで、タイトルに戻ることがなく、あたかも一冊の本を読むような、文字通り初回プレイにすべてをかけた綱渡り作品。
なぜならこのゲームにおいて、再プレイは諸処に張られた伏線の妙に感嘆することはできるが、初回の戦慄だけは絶対に味わえないので。
なんて危険な、そして一回限りの大バクチな仕掛けに出たんだろうと、その潔さに脱帽。
これは、一人のシナリオライターがそのライター人生上で一回しか使えない手法。もう一度やったらただのアホウ。
もちろん、他のライターがやったらただのパクリ。

とにかく設定が巧妙すぎる。ここまでずっぽり罠にはまってしまったのは久しぶりだ。
世界は交差している。まさに†マークのように。
一つは閉じた、もう一つは普通に進む二つの世界を、あたかも一つであるように見せかけていた序盤。
その世界のトリックが段々と明かされる中盤。
見る人によって、まったく解釈の異なる提示をされてしまった終盤。
どうやっても、この物語(というか舞台装置)に関して、考えずにはいられないようになっている。

はっきり言って、最後まで変わることのなかったこのテキストの質は、日本語が壊れすぎていて、決して私の好みとは相容れないものだったのだが、この仕掛けによって目が離せなくなってしまったのが痛し痒しという状況。
どうでもいい電波ギャグや死ぬほどバカな掛け合い漫才の合間に、実にさりげなく設定のヒントが紛れ込んでいるのでまったく気を抜けないし、かといって全部まともに取り合ってたら、忍耐が破滅する。
プレイ中、まるでオシロスコープのように波形が上下動する私の気分。これが、このテキストに乗れる人だったらどんなにシナリオにのめり込めるだろうかと、羨ましく妬ましく思ったことが幾度も。

精神的・肉体的に傷を負った人間ばかりが集まる群青学院。最初のうちは皆、特筆することもない普通の学生。
だが、人がいなくなった世界で、困惑はしても淡々と生きることができる彼らはやはり「普通」じゃないのだろう。
そして、きっちり1週間でループがかかり、それまでの記憶を失って再構成される世界。
そこで徐々に崩壊が始まる人間関係。彼らが学院に集ったのは故なきことではないのだと嫌でも分からされる、
「普通の人」との歪みやズレが表面化していく。
自分たちを爪弾いた優しくない世界と、自分の「群青色」との軋轢に傷つき、他者との関わりあいができない登場人物たち。
それが露呈していく様は、実に醜悪でやがて殺戮にまで発展するドロドロっぷり。

中でも、「普通の人間」としての言動を知覚してはいるが理解できていない主人公の凶悪ぶりは、こんなにプレイヤーの
共感を得られない人間を主人公に据えていいのだろうかと心配になってくるほど。
だが、「多重世界の観測者」としての立場を理解した中盤以降はまさに息をのむ展開で、彼らを補完し、在るべき場所へ
戻してやる主人公。
それによって、もう二度と彼らには会えなくなることを知っていながら。
交差とは、ただ一点。そこを抜け出した友人たちと主人公が交わることは今後一切ない。
ただ、主人公が発信し続けるラジオ放送「CROSS†CHANNEL」を除いて。
それが主人公の今まで失われていた人としてのコミュニケーション手段であり、世界との関わり方であった――。

何だこの、卑怯なまでに鮮やかすぎる幕切れは!

そして、そこでようやく流れるED。歌曲付きであり、ライター自身が作詞したそれは強烈にネタバレを含んでいる。
単品で聞くならわりといいかな、と言うレベルなのだが、このタイミング、この場面で流されるのはもう反則に等しい。
「テーマ曲」でありながらOPですら流れず、今までのどの場面にも流されることのなかったことへの疑問が氷解し、さらに「やられた!」気分が上昇。

それが済むと、今度は実に論議を呼んだ問題のエピローグ。
や、いいんじゃないですか。私は結構好きだな。
これって要するに、「この空がなくなるその日までは……」のその日、ってことじゃないの?

空がなくなる=ループ世界が終わる=世界そのものが滅亡=主人公もなくなる

で、ループ世界で7人を殺してしまった主人公と、その7人の魂(?)のような存在が「お別れだ」と言ってるのにも説明がつくし、「世界が終わる」(分解が始まる)ことによって、元の世界と近くなったからセミの鳴き声が聞こえた、ってことじゃダメですか?
「世界がなくなった」からの、「チャンネルが閉じた」からの突然のブラックアウトじゃないの?
いずれにしても、「みんな助かって救われた、わーいハッピー」なバカエンディングではない……はずだ。

これだけ大がかりな世界で展開されるドラマ自体は意外と安っぽく、キャラにも別段魅力があるわけではない。
テーマの提示の仕方は抜群に上手いのに、そこからの論理展開が安直すぎてやはり好みじゃないし、どうしても説得力に欠ける。
ただ、元はと言えば非常に不安定な精神を持った登場人物たちでもあるので、その点を考慮すれば、普通なら気付いて当たり前の事実を終盤近くまで引っ張ってしまうのも仕方のないところか。
(この点、「家族計画」は普通の人間が気付いて当然の事実に気付いてくれないことが多すぎて私の酷評の対象になった)

どうあってもこれは構成で魅せる物語であり、そのためのストーリー展開でキャラ設定。いわば単なる小道具。
余計なことを考えず、そういう割り切り方をして捉えた方が絶対に楽しめると思う。
面白い、とかつまらない、とかそういう感想には不向き。ただ、できるなら味わってみた方がいい、としか言えない。
完全にプロットの勝利であり、

事前情報まったくなしでこのトリックを見抜くことは、まず不可能

だと断言する。
これでテキストが好みだったら、確実に神の領域に突入していただけに惜しすぎる感はあるが、これ以上ライター買いの作品が増えたら破産間違いなしなので、助かったという気も。
田中ロミオが実に予断のならないシナリオライターであることをひしひしと感じました。
秀作でも力作でもない、ただし意欲作、近来稀にみるほどの
プレイヤーをものすごく選びますので、あとは各自、勘を研ぎ澄ませてご検討を。

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