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鬼畜眼鏡

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
68★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!

鬼畜→わりと好きです。
眼鏡→死ぬほど好きです。
リーマン→鼻血吹くほど大好物です。

だから、主人公始め登場人物の半数以上がリーマン、おまけに鬼畜+眼鏡となればプレイ前からトキメキ度MAX、とばかりに張り切って挑んだ今作だったが。

あーえーっと、2007年発売作品の中で、多くの姐さん方が年間ベストに挙げているのを承知で申しますが。
まったく萌えない上にちっとも盛り上がりませんでした。あたいのトキメキを返せ! 返せよぅ!!
その理由は色々あるが、一番大きなものとしては、すべての面においてステレオタイプ、お約束に過ぎること。
つまり、安定はしているが特筆すべきところもない。未知の作品に触れたときの驚きや新鮮味がまったくないのだ。
安定ゆえの面白さに繋がる作品も確かにあるが、今作は安定ゆえの単調さを引き起こしてしまっている。
所々プラス面もあるにはあったのだが、それが全体的なマイナスを上回ることはとうとうなかった。

まず絵。原画はわりと好きなタイプの絵だが、塗りが安定していない箇所が散見される。
差分を除いてもかなりの枚数があるのでそれを仕上げるのは大変なのだろうが、その落差があまりにも激しい。
基本的には原画のトーンを生かした淡い色彩がマッチしているのに、一部ではベターっとしたアニメ塗り。
開発が長期に渡ってしまった弊害なのか、絵柄が安定していない箇所もあり、違和感を感じた所も多かった。
立ち絵とCGではキャラが別人に見えるという失態もあり、なまじ絵が好みなだけにそこが非常に残念。
あと、すごーく細かくて申し訳ないが、御堂が休日の自室でもジャケットを羽織っていたりとか、あれっ? と思うようなビジュアルがあるのが惜しい。
受け手にフィクションを楽しませるには、そういう違和感を感じさせてはいけないと思うのですよ。
差分も多いし、キスマーク付きの立ち絵もあったりと、開発期間にふさわしいボリュームはあるので、その点は良いのだが。

システムは可もなく不可もなく。必要なものはだいたい揃っているが、それ以上でも以下でもない。
ただ、セーブの際にコメントが書き入れられないのがマイナス。
全31種類ものエンドを持つ今作、必然的にセーブを活用する回数は多い。
だがその際、コメントを入れられないのでは何が何だか分からなくなってしまう。完全に個人の記憶に頼るしかない。
それに、今どきホイールでの文字送りができないのも大きなマイナス。
一画面に表示される文字数の多いノベルゲーならともかく、細かいセリフごとに文字送りが発生するウィンドウタイプのAVGでは、何度もクリックするのは煩雑で面倒。
(オートモードはどうしてもタイミングが合わないので使用しない)
そういう、必要充分なのだが細かいところにはまったく手が届いていない、奥歯に物が挟まったような気分にさせられるシステム。

ビジュアルアーツ傘下であるので、エンジンはお馴染みのRealLive。実は個人的にはいまいち評価が低い。
今作でも、スキップが遅かったり場面の切り替えがもたついたり、どうももっさりとした印象が否めない。
(推奨スペックは超余裕で凌駕しています。念のため)
ならば表現力が豊かかというとまったくそういうこともなく、正直、一時代前のエンジンという感じ。
エフェクトの派手さがない分、カメラワークやカットイン等で見せ方を工夫するといったフォローもなく、エンジンの力不足に疑問を感じないのだろうな、と寂しくなる。
ゲームのアドバンテージであるべきこういった点を工夫しないのでは、ドラマCDやマンガの方がよっぽど手っ取り早くて安上がりだとしか思えないのですが。

音楽はテーマ曲以外、まったくもって没個性の代物。作品の邪魔をしない代わりに、作品を盛り上げもしない。
当然、耳に残るような名曲もないし、鳴ってるか鳴ってないかすらも気にならないレベル。
代わりにテーマ曲のレベルはハンパなく、さすがVA系、I'veのC.G mix氏を起用。
ダークな世界観の楽曲が、出来の良いOPムービーと共に作品を盛り上げる。
どうせなら、作中のBGMもI'veに発注すれば良かったのに。
声優陣は皆キャスティングも演技もはまっており、特に主人公役の平井達矢氏は大奮闘。
一人二役を、これを本当に同一人物がやっているのかと思えるほどがらりと変えて演じ分けています。すごい。

さて、シナリオですが。
基本的にエロシチュエーションがメインなリーマン系BLコミック、定価600円(税込)という印象です。
正直、今作に税込定価8,190円払うなら、ドラマCD3枚買うかBLコミック10冊くらい買った方がまし。
悪くはない。決して悪くはないけど、別段面白いわけじゃない。おまけにちっとも萌えない。

第一、リーマン物であるはずなのに、仕事エピソードのリアリティがなさすぎる
細かいこと言うなよと言われてもいい。OL歴十数年の私はそこが気になって気になって(×10)しょうがない。
物売る会社にも、開発→製造のラインを持つ工場にも勤めたことがあるが、本作のエピソードに関しては、「そりゃねーだろ」の連続ですがな。
あ、もしや外資だからか? さすがに外資には勤めたことがないから分からないけどne!
ともあれ、このシナリオライター氏は一般的な会社勤めの経験がないと思われますが。
今作のコンセプトに仕事エピソードは不可欠であるはずなのに、ディテールがまるでなってなくてそこでまず失笑。
これでは最初っからハマれるわけがないのですよ。

ユーザーは最初からフィクションだって分かって作品を手に取るのです。
だったらせめて、そこで上手に嘘を付いてほしい。興ざめさせないでほしいのです。
これは他作品のレビューで何度も書いていることだが、フィクションにも最低限のリアリティは必要。特に現代が舞台なら。
それがプレイヤーをうまく世界観に乗せるコツなのでは。

今作ではかなりの数のエンド数が用意されているが、最悪のバッドエンドが全部刺されて終わるケースなのもいただけない。
殺され方・殺し方に一家言持つ殺し愛愛好家としては、痴話ゲンカの末か恨みを買ってブスッ→デッドエンド、では酒のつまみにすらなりゃしません。
他のエンド・エピソードにしてもそうだが、全体的にバリエーションがなさすぎ
31種類もエンドがあるというのに、どれもこれも似たようなシチュエーションで単調。
おまけにエロにも差分があるため、CG回収のためいちいち同じシチュエーションを繰り返さねばならず、飽きて死亡確定。

ただ、鬼畜度合いのバランスは良い。基本的には言葉攻めメインなのもうれしい。
私は肉体的に痛い系・あまりにハードすぎるものは好きではないので、これくらいがちょうどよかった。
鬼畜初心者にも抵抗感なくプレイできるレベルだと思う。

ところで、今作の一番の問題点は。

「鬼畜眼鏡」というタイトルでありながら、鬼畜でも眼鏡でもない主人公受ルートがあるということなのですが。
こんなアホなタイトル(から連想されるシチュエーション)を好んで買うようなユーザーが、そんなルートを喜ぶだろうかということくらい、ちょっと考えれば3分で答えが出ませんか、普通?
攻だろ? このタイトルから連想される内容って主人公攻だろ? リバが最高に苦手&自分が攻じゃないと許せない私が、何のために今作をやったと思ってるんじゃ、spray!!
だいたい、「眼鏡をかける」って選択肢自体が必要ないだろ。「鬼畜眼鏡」なんだから。
それをシナリオの都合で、「かける」「はずす」を選ばなきゃならないって何ですか?
タイトルに騙されたユーザーに対する嫌がらせですか?
おまけに眼鏡かけっぱなしだと、鬼畜ゲージが真っ赤に振り切れるってどういうことですか。
「鬼畜眼鏡」なんだから眼鏡かけるでしょ。かけるべきだ。かけなければならない。
眼鏡を外したらバッドエンドだってならともかく、付けっぱなしはバッドエンド、付けなきゃ受ルートってのはあんまりです。
私にとってはいずれもデッドエンドに等しい所業だったのですが。

そういう、「ユーザーの欲する空気読めてない感」が今作にはあちこちに漂っていて、いちいちやる気が削がれる。
せっかくの直属の上司は無能な上に乙女チックでものの役にも立たない愚鈍な男だし。(それが一番腹が立つ)
同僚は脳みそまで筋肉のアホタレだし。
主人公は主人公で、眼鏡をかけていないと単なるヘタレのグズで蹴飛ばしたくなる性格してるし。
まともかと思われた嫌味なエリートはいきなり肉体関係強要してくる真性ホモだし。

ホモじゃない奴が紆余曲折の末、ホモ道に堕ちるところにこそBLの醍醐味があるんだろうが!(あくまで持論です)
最初っからホモな奴らがお手々繋いでウフフアハハなBLには萌えないんだよボケが!(だからあくまで持論です)

……と、そんな(私にとっては)トンチキキャラが右往左往している様を見ても楽しめるはずがないのです。
システムパートで前述したけれど、特筆するべき演出があるわけでもないし。

正直言って凡百。そもそも、ゲームである必然性が皆無です。
受攻が選べるくらいがせめてもの利点なのか。個人的には受ルートはまったく無用の長物でしかないのだが。
動きもしない、ゲーム性もない、シナリオはテンプレ。音楽は空気。
いいのは声優陣の熱演とテーマ曲、一部CGくらい。
エロゲなら、どこのレビューサイトでも取り上げてすらもらえないレベルでしかない、空気な作品でした。
むしろ、事前のこれだけの話題性に対してこの内容だったら、地雷扱いされても文句は言えないぞ。

BL、特にリーマン物が(たとえ嘘八百でリアリティの欠片がなくとも)好きで好きでたまらない、ついでにちょっぴり鬼畜で眼鏡キャラならなお良し、といった人にならお勧め。
ある意味、キャラ萌えにしか頼っていない、作品としての総合力は二の次でしかない、非常にBLらしいBLと言えるかも。

つくとり

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
56★★

たかだか10時間もあればクリアできそうな今作を、長々と1週間以上かけて半死半生でクリアした。
最初こそ興味深くプレイしていたのだが、あまりにもツッコむところが多すぎ、途中からメモを取るのも面倒に。
かと言って笑いに転化できるほどの突き抜け感もなく、ひたすら襲い来る睡魔と倦怠感とに立ち向かった1週間。
途中で何度、「もう、ゴールしてもいいよね」(C)AIR と諦めかけたことか。
今作を説明するなら、「Win98が全盛の頃に、ラノベの新人賞一次審査で落ちた小説を元に作ったエロゲー」。
無駄と稚拙がよくない相乗効果を生み出し、今どきこれはないだろう、という古くさいパターンのゲームを作り上げている。

今作は選択肢がなく、序章後、前後編に分けられたシナリオをすべて読み終えると最終編が発生する仕組み。
個人的には、どうせ選択肢をなくすのであればノベル形式にしてほしかった。
数行しか表示されないテキストを延々とクリックし続けるのは苦行でしかない。
それに、ゲーム最大の魅力であるインタラクティブ性を犠牲にするのであれば、それにふさわしいだけの盛り上がりを見せてくれなくては。
なまじ高い金を払って、「電脳紙芝居」形式の作品を買うからには、相応の満足感くらいほしいと願ってもバチは当たらないと思うが。
とにかく作品全体が非常に安っぽく、あらかじめワゴンセール用に作られた粗製品のような印象を受けた。

さて、まずは絵。
私は基本的に絵はさほど重視しないタイプなのだが、さすがにこれは破滅的にダメだ。
シナリオとキャラクターデザインがあまりにも合っていなさすぎる。
原画は、「ブギーポップは笑わない」の挿画で有名な緒方剛志氏だが、他作品の絵と今作との間には暗くて深い溝がある。
どのキャラ絵・一枚絵にもやる気がまったく感じられず、ボリューム的にもずいぶんと寂しいのだ。
本当にシナリオ読んだ? と尋ねたくなるほどミスマッチで死んでいるキャラたち。
当然、そんな原画に意気など感じられないだろう塗りも冴えないまま。
だから、大した枚数もないそれが表示されても、まったく心を動かされることなどない。むしろ悲しくなる。

おまけに立ち絵もほとんどない。今どき、ここまで立ち絵を簡略化する作品など見たことがない。
おかげで、シナリオと整合性のない、またはミスマッチなシーンが多発し、これだけでげんなりさせられる。
背景にも乏しく、しかも質もあまり高くないとあっては、原画と立ち絵のまずさをフォローしようもない。
結果として、ビジュアル面の不備のせいでシナリオに水を差すことが多かった。
決してこの点は重視していなかったはずなのに、まさか足を引っ張られることになるとは。
やはり作品とは総合力だ。

音楽は可もなく不可もなく。OPはさすがに多少は良かったが、他は有象無象のレベル。
無音の箇所が多いのが気になるが、そもそも、楽曲のレベル自体は大したことがないのでさほどマイナスにはならない。
むしろCVがまずい。これはかなり大きい減点要素。
ここ最近、こうまで外したキャストを繰り出してくる作品に当たったことがなかったので、全力で椅子からずり落ちた。
ルルが犯罪級にダメだ。棒読み丸出し。素人臭すぎる。
他のザコキャラにならともかく、キーパーソンにこんなキャスティングをしてしまったのは予算の都合ですか?
しかも、一部主要女性キャラのみがボイス有りという仕様になっていて、彼女らに引けを取らない他のキーパーソンにすら声がないのが残念。
いっそのこと、こんな失敗したキャストなら、中途半端にボイスなど付けなければよかったとさえ思える。

演出とシステムには突出したところはない。
淡々と提示されたルートを辿るだけの作品なので、高度なシステムなど必要ないのは確かなのだが。
だが、かゆいところにはまったく手が届かない、愚直なだけの作りであることは否めない。
読むだけのシステムであるのに、まさかホイールによるメッセージ送りができないとは思わなかった。
今どきホイール付いてないマウス使ってる人、ほとんどいないと思うよ?
エンジンは椎名里緒だし、同エンジンを搭載している他作品(cx.あやかしびと)では普通に機能しているのになぜ?
どうもこの作品、各ポイントのあらゆる難が、どれもこれもシナリオへの集中を妨げようとしているように思えてならないのですが。

さて、肝心のシナリオだが。
正直言って、非常に肩すかしでがっかりした。OHPやパッケージから連想される正統派の和風サスペンス、狂気と戦慄で彩られる陰惨な物語を楽しみにしていたのに、いざ蓋を開けてみたら、しくじったライトノベルとしか言えない出来。
しかも、ストーリーの合間合間に、決して少なくはない量のギャグが入ってくる。
それだって笑えるならまだいい。笑えないギャグなど、飲食店のゴキブリほどに始末に負えない。

シナリオがダメである理由は数多くあるのだが、何と言っても設定・展開に無理がありすぎること。
今作のような、常軌を逸した閉鎖空間を演出するには、どんなエピソードを用いても許されると勘違いしている節がある。
プレイヤーがフィクションであることを忘れるくらいゾッとしたり驚いたりするには、ある程度のリアリティが絶対に必要。
それがどんなに荒唐無稽なSFやファンタジーであろうとも。
その、物語を展開するにあたって最低限必要なはずのリアリティがなさすぎて、興ざめすることが多い。

たまたま電車で乗り合わせた氏素性も分からない人間を、警察官が公務に同行させるものか。おい、守秘義務は?
そういう設定の小説やマンガは確かに多いが、それらは少しでも受け手が納得に足る裏付けをしているからであって、いきなり冒頭からそんな立場(しかも理由などない)を押しつけられたプレイヤーは呆気にとられるしかない。
そもそも、そんな無理強いをしてくる上に、口を開けば初対面の相手にくだらないギャグばかり連発する刑事キャラを、主人公がきちんとした警官として認識し、信用する方がどうかしてる。
この時点で、主人公の知能ランクは低能であると認定。それに伴い、この先の苦痛もある程度予測できる羽目に。

また、会うキャラ会うキャラが次から次へと同じボケをかまし、もはやツッコむ気すら失せる。
この村には、ツッコミを要しない人間は住んでいないのですか。全員、何かしらギャグに走らないとダメですか。
思ったよりもずっと明るくて楽しげな村デスね。もっと陰惨な雰囲気を期待していましたよ。そりゃもう、横溝ばりの。

うわー、水の中でしゃべれるなんて人外決定ですね。さすがつくとり様は違うわぁ。
あれ? じゃあ主人公はどうしてしゃべれるの?
物語の終盤、本来なら最高に盛り上がるであろう箇所で、頭から冷水を浴びせるような真似しないでください。

そういった、笑うに笑えない「地に足のついてなさ」が先へ進めば進むほどにボロボロと出現し、脳内は、起きてしまった事象を無理矢理納得するので精一杯。
物語にのめり込むだの集中だのできるレベルじゃない。
それに、エピソード自体が風呂敷をあまりにも広げすぎたせいで、それを扱いきれずにもがいている様がみっともない。
畳みきれない風呂敷を隠すために、その上からさらに大きい風呂敷で包もうとするのだが……の連続。
当然、物語がインフレを起こし、閉鎖空間で濃密に展開するはずだった因習と連続殺人の物語は、国をも揺るがす大ドタバタ劇へと変貌。
山の民や謎の宗教集団など、いかにもサブカル好みの設定を持ってきたまではよかったが、説明力もない上に「取って付けた」感が漂い、その消化不良っぷりが無惨。
結局、ライター自身が的を絞りきれていなかったせいで、数撃った矢が全部外れるという最悪の現象に。
いっそのこと、この手の設定をばっさりカットし、純粋に町内でのみ展開する物語にしてくれれば、もう少し据わりがよくなったはずだ。
多くのクローズドサークル物がきれいに着地できるのは、そうやって、人と場所を絞るからこそ。
全員が全員とも関係者、誰しもに裏の事情があるなんて設定、扱いきれるほどこのライターは敏腕ではない。

もう一つ。物語の展開もまずいが、日本語がまずい。あの伝説のPPのライター並みだ。
誤字脱字が異常に多く、表現もズレている。「焦げ臭い」を「据えた匂い」と表現する人、初めてですよ。
「掘の深い顔」ってどんな顔ですか。「満身創意」ってすごいね。超クリエイティブ。のっぽさん?
「検討ハズレ」って言い得て妙ですね。主人公の推理に対するライター自身のツッコミなんですか?
「弱みに漬け込む」ってどんな味の糠床?
何より、死体に対して「可愛そう」はないだろ。そもそも、「可愛そう」は造語だ。なぜ普通にひらがなで書かぬ?
それくらい、文筆業を生業とする者なら常識として身に付いているはずのものだろうが。

無頓着。文章を書くということに対してとにかく無頓着。無自覚。無責任。
単なる変換ミスはデバッグが足りなかったで済むだろうが(それだって作品としてはダメだ)、ここまでくると、明らかに書いたものを推敲もせず垂れ流しているとしか思えない。
少なくとも、「こんばんは」を「こんばんわ」と書く誤用を平気で繰り出してくるライターを、私は認めない。
「てにをは」も満足に使えませんか。小学校からやり直せ。
金を取って文章を読ませてるんだから、ある程度のレベルを求めるのは当然だ。
それがエロゲであろうがラノベであろうが純文学であろうが。
媒体など関係ない。それが文筆業のプライドというものじゃないのか。

一般的にはそこそこの高評価を得ているようだったので、期待を持って臨んだ結果、あえなく玉砕する羽目に。
そもそも評点の各ポイント全部がイマイチな上、ダメな部分が絶妙に合わさり、実にトホホな合体事故が発生。
一言で表現するなら、「安っぽい」。これに尽きる。
制作者の熱量がまるで伝わってこない。絵もシナリオもその他も。
「この手のジャンルは必ず釣られるファンも多いし、とりあえず狙っとけー」みたいなやっつけ仕事臭がして、稚拙だけれども魂込めて作った! という気合いがまるで感じられなかった。
(よく比較対象にされる「ひぐらしのなく頃に」には、それがひしひしと感じられる)
OHPには、「大変な困難を経て完成した」とあったのだが、それが何なのかは我々一般ユーザーには知るべくもない。
ただ、失礼を承知で言わせてもらえば、「本当なの?」と疑いたくもなるのですよ。
水中で会話が成り立つ超人類が横行する、現代日本を舞台にしたはずの超物語を読まされた身としては。
こういうトンデモ作品が、ユーザーのジャンル離れを起こす一因になっているということに気付いてほしい。

ミステリが好きだから。サスペンスが好きだから。伝奇が好きだから。和風テイストが好きだから。
そう胸を張って言えるユーザーがまだいるのです。そういう人間から、これ以上、足場を削り取らないでください。
そしてそういうネタを扱いたいと思っているクリエイターの方々。
その手に持っているのは、足場を補強する釘か、ぶった切るノコギリかをちゃんと見極めて作品を出してください。
それだけが、私の望みです。

薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
80★★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!

雑記にてお勧めのBL作品を問うたところ、この作品を推す人が非常に多かったので、勇んでプレイすることに。
が、私は甘かった。砂糖菓子を水飴コーティングし、その上から粉砂糖をまんべんなく振りかけたほどに甘かった。
要するに、百戦錬磨の姐さんたちと、ヒヨッ子の自分のスキル差を全然自覚していなかったのDEATH。
まさかこの作品、キャラ総当たりの陵辱・純愛ルートが用意されている上、Hシーンごとに受攻リバ有り、という破滅的な組み合わせの多さだなんて、攻略サイトを見るまで全然気にしてなかったのDEATH。
(とにかく攻略が大変だという話は聞いていたので、今回は最初から攻略サイト併用です。ヘタレご容赦)
が、知ってしまったとしても後の祭り。もうプレイする宣言をしてしまったし、何よりインストールもしてしまった。
半泣きのまま決死の覚悟を決め、とにかく突撃。

すでに数年前の作品であるので、演出は確かに古いのだが、男子校で起こった陵辱事件の犯人を追うというストーリーは、大正~昭和初期という世界観も相まって、退廃的で背徳感溢れる雰囲気を醸している。
これなら、むしろ画面が著しく動いたりしない方が吉。
その代わり、カーソルが薔薇だったり、メニューが蝶だったり、カップリングを選ぶメイン画面では花吹雪が舞っていたりと、バリバリに耽美を主張する凝った作り。
メニューを選択するたびに、「セーブするのか?」とか、「おや? 止めるんですか?」とかキャラが喋り、気恥ずかしいくらいの凝りっぷりだ。

システムはオーソドックスなAVGで、パッチを当てれば進行には問題なし。
ホイールバックログや音声再生にも対応しているし、膨大なルート攻略に必要なセーブ数も万全。
また、CGモードでは、Hシーンだけでなく、イベントシーン再現もできるのがとても親切。
何しろ、かなりのボリュームがある作品なので、もう一度あのシーンが見たいと思っても、再プレイするほどの根性はなかなか出てこないと思うのだ。

他の点ではかなり頑張っている印象を受ける作品だが、残念ながら、音楽面はかなり寂しい。
曲数も少ないし、無音の箇所もままある。
プレイ後に覚えているのは、オープニングタイトルの物々しいBGMだけという空気っぷりで、これがもう少し頑張っていればもっと単調さを防げたかもしれない。
声はHシーンと一部重要シーンのみのパートボイスとなっており、今となってはやはり物足りない印象が拭えない。
それに、中の人によってえらく出来に差がありすぎるように感じる。
受攻総当たりなのだから、どちらもできる人を起用すべきだったのだろうが、一部の人が、攻はいいが受が聞くに堪えないレベルだったのが気になって仕方なかった。
レトロ感溢れる台詞を、現代の声優さんたちが喋るのはなかなか面白く、その点はかなり楽しめたのだが。

立ち絵のバリエーションはさほどないのだが、イベント絵はかなりのクオリティで仕上げられており、見ごたえは充分。
ただ、一昔前の少女マンガ的絵柄なため、好き嫌いが分かれるかもしれない。
何しろ、日本人と英国人のハーフが金髪碧眼で出てくるレトロさだ。うわーすげー超劣性遺伝
……などと思ってはいけない。たかだか十数年前の少女マンガには、こういうブッ飛び設定のハーフキャラが跋扈しており、それは乙女な小説の世界でも同様だったからだ。

さて、突撃した私は、まずはトゥルーEDから最も遠そうな陵辱ルートから始めることにしたのだが。
基本的に、作品はコンプリートすることを前提にしているので、CG100%を目指したまではよかったが、当然、その反復回数はシャレにならないことに。
特に、陵辱ルートは相手を落とした後のエピソードが著しく単調なため、すぐに飽きて幽体離脱。
進めども進めども、ただひたすらに容疑者(?)を拿捕→支配下にするの繰り返し。
肝心の犯人は、始まってものの10分で(ネタバレ危険→)下手すりゃパッケ見ただけで分かる仕様になっているので、主人公の間抜けっぷりがまどろっこしく、お願いだからもう解放してくれと、何度囚われの受のごとく泣き叫ぶところだったか。
正直言って、凌辱ルートは、とにかくHシーンが好きという人じゃないと耐えられない。
私は、よほど好みのシチュか、めちゃくちゃエロいとかでない限り、別段そんなにHシーンが好きなわけではないので、これには本気でまいった。
それが、攻略キャラ5人×リバ×H回数=死亡。
私が、ゲームスタートから陵辱ルート終了までに1ヶ月以上かかった気持ちがお分かりになるだろうか。
見かねた常連さんから、動作保証対象外の超速スキップ技を教えてもらわなければ、私は確実にあの世へ旅立っていた。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとう、某姐さん!

そんなわけで、まさか純愛ルートもこんなんだったらどうしよう、勧めてくれた姐さんたちを恨んでやる、と八つ当たりしつつ、取りかかるまでさらに半月を要したのは、萎えた心を奮い立たせるのに必要な時間でした。申し訳ありません。

が、着手してみてビックリ。純愛ルートは各キャラの掘り下げがぐっと深くなっており、エピソードも重複するものが少なく、オーソドックスなシナリオながら、それぞれに楽しめた。
また、時代設定を巧みに生かしたエピソードやEDが多く、非常に据わりが良い。これならお勧めされたのも納得の出来。
このギャップは何なのだ。
普通、これだけのキャラが出てきてしかも総当たりとなると、一つくらいはやっつけ仕事が出てきそうなものだが、どのエピソードもとても丁寧に綴られていて破綻がない。
そのバラエティに富んだエピソードが、単調極まりない陵辱パートにもあれば紛れもなく名作となったのであろうが、物語の構成上、これは仕方がないのだろう。
そもそも支配者は隷属する者の事情など鑑みないものだし、エピソードの発露には、陵辱・純愛との分岐選択にて純愛を選び、両者が心を通わせるようになることが条件となっているからだ。

とにかくクリアまでの道のりが異常に大変なので、途中で放棄した人も多いかと思うのだが、付録に「手記」が出るまでは頑張ってプレイしてほしい。(純愛グッドED後に出現するらしい)
これこそがこの作品の真骨頂、これを読まずして真のクリアとは言えないからだ。
ある程度予想の範疇ではあったけれど、それでもその強烈なカタルシスのあまり、各キャラEDを食ってしまう危険性があったからか、あえて本シナリオから外され、「付録」という形にされたラストエピソード。
その、すべての元凶となった想いをぜひ味わってみてほしい。

この作品、確かに多数のプレイヤーにお勧めされるだけの力作ではあるのだが、惜しむらくは、前述の通り、犯人やその動機が分かりやすすぎること、シナリオやキャラがステレオタイプすぎて、斬新な目新しさがないこと。
ただ、意外性がない分、安定感は抜群で、BLというよりは古風なJUNE小説を読んでいるかのような印象を受けた。
ある意味、伝統的な作品だと思う。こういう作風って、今はむしろ貴重なのでは。
閉鎖空間で濃密に展開される物語が好きな人、レトロな時代観が好きな人向け。
軽めのBLに飽きた人、原点を求めたい人なども。

群青の空を越えて

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
81萌えは無用の方に
★★★★

きっかけは、発売前に公式サイトに掲載されていた制作ウラ話。(今も読めます)

「バカヤロウ、萌えゲーなんかに負けるかよ。ユーザーが萌えるのは正当な楽しみ方だけど、クリエーターが萌えに頼るようになったら単なる無能者の手抜きなんだよ」

いい加減、萌え先導の業界の風潮に倦んでいたところにこの言葉。そんな気炎を上げるクリエイターが、まだいることがすごくうれしくなり、応援も兼ねて勇んで特攻。

ジャンルは「本格未来架空航空戦記ADV」。作者の言葉には「グリペン」を使った話が書きたかった、とあるが、空中でのドッグファイトや戦術的な展開よりも、むしろ戦争という現実に翻弄される人間たちの群像劇がメイン。
作者はかなりの航空機マニアのようだし、ドッグファイトがメインなのかな、と思っていたので、いざプレイしてみたらいささか拍子抜けしたのも確か。
これでも「エリア88」に燃えた世代ですんで。
その代わり、戦略・権謀術数要素はてんこ盛り。目に見えるドンパチよりずっとシリアスで重く、「戦争」、しかも「負け戦」であることを忘れないシビアな展開は、派手さには欠けるが、ずっと心に重くのしかかってくる。
実際、政治・経済問題を多く盛り込み、それをある程度は理解しておかないと面白さが3分の1くらいは減少してしまう困った作りなので、取っつきはかなり悪い
気軽に楽しく浮世の憂さを忘れたいという人には全然向きません。そういうお手軽作品が多く求められ、市場に溢れているこのフィールドにおいて、実に異彩を放つ方向性、はっきり言ってたまりません
第一、負けることがほとんど確定しているんだもの。勝利のカタルシスなんてへったくれもありゃしないのです。
そんなわけで、覚悟を決めた人のみがトライすればよろしいかと思います。

絵は可もなく不可もなく。シリアスな物語にふさわしく、突拍子もないデザインもなく比較的安定しているのだが、テキストとCGで齟齬が生じるケースが多い。
立ち絵では普段着を着ていたはずなのに、同時間上のイベントCGでは制服姿になってたり、文中では長袖のはずがCGでは半袖だったり。
些細な点であるのは承知しているが、一度気になりだすと、とにかく目についてしょうがない。
もう少し、擦り合わせに気を使ってほしかった。
また、物語の尺のわりにはイベントCGが少なめ。私の感覚がズレているのかもしれんが、ここはCGだろう、というところもトランジションでごまかされてしまったり、量的にはあまり満足できなかった。
EDのスタッフロール上で、まだ見ていないルートのネタバレCGが表示されてしまうのも困りもの。
ちゃんと制限かけてください。

売りであるのかは分からんが、場面場面で挿入される飛行シーンのムービーなども、地味だし今ひとつの出来。
ひょっとしたらすごくリアルな動きとか、こだわって作られたものなのかもしれないが、残念ながら当方、航空機に関しては素人で違いがよく分からないし、挿入どころのタイミングも絶妙とは言い難い。
この辺の、細かい演出が平たく言えば「ダサい」のであり、業界では最近、演出にはめざましいものを感じる作品が多いだけに、余計に野暮ったい印象を受けてしまった。

この点は音楽も同様で、このシーンでその曲使うかぁ? というポイントのズレが耳につく。
こういう感想は、本当に個人個人の感性によるものなので、あくまで私見であるが。
ただ、やはりあまり主張しない曲が多く、進行の妨げにこそならないが、盛り上がりには欠ける。
OP・EDは出来が良いのだが、作中でのBGMは曲のバリエーションも少なく、いつも同じ音楽がかかっているような印象を受ける。
せっかくのゲームという媒体、もう少し絵と音が生み出す力、その効果を信じて力を入れてみてもよかったのでは。

対して、フルボイスであるのは大成功と言って差し支えない出来であり、声優陣はかなりの熱演。
あちらこちらで名前を見かける実力派が多く参加しているだけあって、その演技には隙がなく、ミスキャストもないので、いつもはボイスすっ飛ばし派の私も、ついつい聞き入ってしまった。
(おかげでクリア予定時間が大幅に延びた)
普通のゲームやアニメなら登場しないであろう難解な用語が頻出し、おまけに航空用語は英語だし、収録は並大抵の苦労ではなかったに違いない。プロって素晴らしい。
しかし、一部シナリオにもネタとして登場するが、BL系で大人気のあんな人やこんな人を盛り込んで、いったい何をやらす気ですか! モニタ前で吹くかと思ったよ。

システムは普通。ただし、グラボの相性が悪いと悲惨らしいので、パッチを忘れずに。
私も最初、メニューが表示されないという珍現象が起き、このゲームはどうやってスタートするのか? としばらく悩んだ。
実装している機能には過不足なく、各種回想モード、ホイールバックログ・音声再生にも対応しているのだが、どうもいまいちレスポンスが悪く、半テンポ遅れるような気が。(推奨スペックは余裕で凌駕してます)
ボリュームがあり、シナリオに集中したい作品なので、足回りは軽快であってほしい。
また、見せ場と思しき特殊なイベント下では、セリフの表示スピードが支配されてしまうのも難。
ここぞ、と意気込む気持ちは分かるのだが、ユーザーとしては自分のペースを乱されるほうが癪に障る。
むしろ、別の演出によってユーザーの目を釘付けにするべきなのでは。

以上のように、全体的にどうもパッとせず、いまひとつな凡作なのかと思いきや、困ったことに(?)シナリオが全然いまひとつではないんですわ。

さすがに言うだけのことはある。「萌え」をまるで排除し、あくまでも物語の力で勝負しようとした姿勢は潔い。
これだけ各メディアの発達が著しい中で、未だにペンの力を信じたその方法は、愚直なまでに真正面からの挑戦。
大軍の中に一騎突っ込むようなもの。

たった一人の学者の学説とアジテーションが、様々な利権と絡んで、やがて日本分裂と戦争に発展する、という設定は、かなりのトンデモであることは確かなのだが、それを足場とした物語が、疑問を許さぬ勢いで大真面目に展開するもんだから、何だかいつの間にか押し切られてしまうのも確か。
「主人公がグリペンに乗る物語を書きたかった」と製作者自らが語るように、そのためだけにこれだけの大風呂敷を広げたのはいっそ見事でもある。
美辞麗句で愛を語るゲームは数あれど、「女が一番じゃない」と断言してのけるエロゲーは初めてです。
でもちゃんとエロいんだな、これが。

一つの事象を多角的な視点で捉え、それをザッピングというシステムに無理なく置き換えた手法はナイス。
複数の視点が入り乱れることによる混乱を避けるために、メッセージウインドウにキャラチップを表示させたのも気が利いている。
最終ルートではそれまで敵だった側の視点で物語が語られ、単純な二元論に陥るのを防いでいるし、テーマに向き合おうとする姿勢は、とても単なるゲームの一作品とは思えないほど真摯だ。
異世界を舞台にするのではなく、あくまでも日本と諸外国、という身近な場所を設定した勇気も評価。
誰しもが知り尽くした世界の上に、新たな設定を敷くのは並大抵の苦労ではない。
荒唐無稽すぎるからこそ、フィクションとして楽しめるという側面もある。
じゃないと、生々しくてやってられないだろう。

そこでは、人が当然のように死んでいく。すぐ前の場面では重要な役を担っていたキャラですら、次の場面では、ただ「○○が死んだ」とだけ表示され、淡々とした死を余儀なくされるそれは、あまりにもあっけなさすぎて怖い。
だが、そうまでして失いつくし、あがきつくしても、いずれのルートでも待ち受けるのは敗戦(停戦)というのが、このシナリオのすごいところだろうか。

私は、あえてこういう手法にしたことを評価したいと思う。
どんなに誰が泣き叫んでも、残酷な事実は覆しようがない容赦の無さも好きだ。
今まで、多数のパイロットを死地に送り込んできた管制官である若菜が、自分の死に向き合ったとき、決して自分を特別扱いせずに毅然とその事実を受け止める厳しさと強さ。
そういったものが詰め込まれた今作、ゲームとして作りの甘いところは多々あれど、普通のエロゲにはないものを多々持っていることもまた確かであり、それはとても大切なものだと思う。

ラスト、作中に何度も問いかけられた命題を再度提示されて物語は閉じられる。
「自分たちはなぜ戦ってきたのか」、と。
そこに明確な結末を与えなかったのは、プレイヤーそれぞれに想像の余地を残すための手法であるが、あえて言うならば、指揮官すらも傷つき倒れ、防衛線がズタズタになっているであろう激しい戦いの最中、という状況が、決してこの先に待っているのが楽天的で明るい未来、もしくは劇的な状況の好転ではないだろうことは想像に難くない。
どこまでもシビアで容赦のない演出。奇跡などは起こらない。すべては現実に起因し、質量で劣れば負けるし、個々人がどんなに努力してあがいても、より大きな国情や経済の絡んだ思惑からは逃れられない。
その、決して日和見をしない、作品に対する揺るぎない姿勢は賞賛に値する。
もちろん、読み手によっては、すべてが丸く収まったわーいハッピーと夢想することも可能だ。
(作品の本質を理解していないような気はするが)

パイロットとして死ぬことにしか意味を見出せなかった主人公が、その拠りどころである飛行機乗りという手段を奪われる最終ルート。
飛べなくなって、空という逃げ場を失って、そこで初めて真実に辿り着く。
優しい皮肉に満ちた展開は、その代償に得たものを丹念に綴ることで、それは必要だったのだ、と気付かせてくれる。
この作品が、「萌え」(=ある程度の予定できるセールス数)を捨てて得たものがあったように。

やりたいことを好きなようにやる姿勢というのは、簡単なようでいて、それを貫くことはひどく難しい。
なんせ、商業作品である以上、ペイしなきゃ会社が潰れる。同人のように自分一人が泥をかぶればいいわけではなく、社員の家族にまで責任があるわけだから、あまり軽々しい真似はできない。
そして、たいていの場合、製作者が希望する形と、ユーザーの望む形というのは乖離しがちなものだ。
だから、安易な「萌え」に走らず、重厚なドラマを展開しようとした製作サイドの姿勢と、ユーザーの反応が好意的評価として一致した本作は、とても幸運なのだと思う。
もちろん、本作をプレイした人間なら、それがただの偶然やラッキーで生まれたのでないことは重々承知の上だ。
二年もの歳月を費やしたというシナリオは、完成に至るまでどれほどの推敲を重ねただろうか。
その膨大な作業量を思いやるだけで頭が下がるし、一見して受け入れられにくそうな、難解な用語やクセのある舞台、それでも恐れずに新境地を切り開いたその姿勢。
個人の作家性が色濃く残る、小説的なアプローチの異色作だと思う。

好き嫌いが非常に別れる作風なので、軍事、政経、負け戦に耐性のある方のみどうぞ。
善と悪、敵味方、そういうのがはっきりしてないと嫌、という人は避けたほうがよろしいかと思います。
私はお勧め。ゲームとしての総合点は低いけれど、こういう作風って今までになかったし、このシナリオにはそれだけの価値がある。
活字好きならさほど違和感はないと思う。

ちなみに、未プレイの方は、若菜→加奈子→美樹でやった方がよろしいですぞ。
いいですかな。忠告はしましたぞ。これが一番、鬱気分を軽減できる順番だと思うので。
なんせ順番に(ネタバレ危険!→)全滅)→(壊滅)→(敗戦)だからな。
(とんでもねー作品だなオイ)

SchoolDays

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
77★★★

途中からの展開のあまりの凄まじさに、「すごい鬱ゲー」として新聞沙汰(東スポですが)にまでなった問題作がとうとう当レビューにも登場。
はっきり言って、ぱっと見は全編フルアニメであるだけが売りの普通の学園物に見えたので、まったくのノーチェックだったのですが。
プレイした方たちの地獄絵図な叫びと、ネットでの大評判を聞きつけ、慌ててレビュー対象作品にした次第です。

このゲーム、一言で言うならまさにアレ。「寝取られる 殺る やるドラ」。
豊富な選択肢とED、極めて限定された舞台と関係を軸に、じっくりと濃密な展開が繰り広げられる。
30分アニメ70話分という驚異的なボリュームは、総インストール約8Gという他に類を見ないふざけた数字にも表れているが、せめてパッケージには書いといてくれや。
私は公式サイトで初めて知って、目が飛び出ましたよ。

そして、度重なるパッチの嵐。
確かに、これだけの分岐を管理し、かつあらゆる種類のPCに標準化させるのは骨の折れる作業だろうが、それにしたってもう少しテストを重ねるべきなんじゃないのか。
とにかくシステム周りが雑。高スペックを要求してくるわりに安定とはほど遠く、よく落ちる。
パッチを当てないことには攻略すら不可能だし、フラグ管理もかなり甘い。
そのルートでは起きてないイベントが、翌日には起こったものとして話が進められていたり、作中で齟齬が生じるケースが多すぎ。
フルアニメという性質上、やむをえない点もあるが、それでもこれだけボリュームある作品で、既読スキップがないのもいただけない。(4倍速再生はできる)
分岐条件がいまいちファジーで攻略が難しく、それなのに十数種類の多彩なEDを備え、再プレイ必至である今作では、シーンスキップ機能を実装するべきであるのに、プレイを重ねるたびに繰り返し同じシーンを見せられ、いい加減うんざりしてくる。
次にはいったいどんな鬱展開が待ち受けているのかだけが楽しみで、ひたすら我慢の一手でプレイしたが、それでもこれは大きなマイナス要因でした。

音楽やボイスはかなり豪華。この業界なら誰もが名前を知っている歌い手や声優が、もうインフレ気味なくらいにわんさか登場し、売りのわりにいまいちな出来のアニメに華を添えている。
各話ごとに挿入されるOP・ED、最終話でのEDテーマは内容に沿って少しずつ違っており、かなり手の込んだ作り。
だが、本当の売りであるはずのアニメ自体の出来は、実は大したものではなく、よくあるエロゲのOVA化作品レベル。
止め絵になることもままあるし、口パクのない箇所もザラ。
わざとロングカットにして動きの少なさをカバーしようとしている箇所もかなり多い。
正直、他作品で見られるような、要所要所で挿入される高品質なアニメのレベルには到底至らない。
おそらく確信犯として質より量を取ったのであろう、1ルートにつき1話30分×6話の構成は。
それをすべて動かすというのは並大抵の作業量ではないだろうし、そのボリュームから考えると全体的にはまずまずの出来。
アップ以外は最初から大した作画レベルじゃないので、崩れても大差ないという皮肉に満ちた結果ではありますが。
むしろ、肌つやが良すぎたり、髪の影が顔に落ちすぎなことの方が気になったよ。
いったいどんな分厚い髪の毛ですか。全員ナチュラルマープ?

声優陣はミスキャストはないのだが、妙に演技が間延びして聞こえるのは気のせいか。
これは、アニメに合わせて再生速度を落としただけか?
基本的に物語のペースが鈍重なので、私はほぼ2倍速でプレイしましたが、それでも普通にセリフ聞き取れました。
間を読めない奴ですいません。だってのろすぎるんだもん。

そんな感じで、基本的には普通の作品なのだが、この作品を異質たらしめているのは、何と言ってもそのシナリオ。
甘酸っぱい学園物でちょっと三角関係、最後は切ないけれどハッピーな純愛物語をくれぐれも期待してはいけません。
後々、きっと心の傷となって、夜毎うなされる羽目になるでしょう。
それぐらいインパクトのある各EDをご用意してございます。

主な登場人物は3名。プレイヤーである主人公と、クラスメートで密かに主人公に想いを寄せる世界(人名だよ)、主人公が電車の中でこっそり憧れているだけだった、隣のクラスの美少女、言葉(これも人名。「ことのは」です)。
なんだ、普通じゃん、と思ってはいけない。この3人のうち、2人がエロゲ史上類のないキャラ造詣なのだ。

まず主人公。こいつは、かのヘタレで名高い「君望」の主人公をも凌駕する、まさにエロゲ史上最低のヘタレ男。
最後の最後まで態度が煮えきらず、二人のヒロインの間で揺れ動き悩むふりをしながら、寄ってくる女は片っ端から食いまくり。(エロゲだから仕方ないが)
プレイヤーの意志とは裏腹に、下半身の状況に従って勝手に行動を決められるもんだから、おいおい、私が今までせっせと上げた好感度メーターって何だったの? と(゚Д゚)ポカーン状態になることもしばしば。
これじゃこのメーターシステムいらないじゃん。むしろ、チ○コメーターでも付けた方がよかったのでは。

そんな脳と下半身が直結している男が、なぜか校内ではモテ系。誰も彼もが奴に好意を持ってます。
この学校、よっぽど男のレベル低いですか? むしろ、世界の男性の半分は死滅してるような有様とか?
私が知らないだけで、ひょっとしてこれってSF作品だったりしますか?
主人公の友人も、主人公に輪を掛けた最低野郎なので、私にそう思われても仕方がありません。

そして言葉。こいつは、私が今までプレイしたエロゲの中で最凶のブチギレヒロイン認定。
ホラーでもサスペンスでも伝奇でもないのに、ここまで血しぶきを撒き散らし、刃物を持ち出すヒロインっていなかったよ。

よく考えてみりゃ、恋愛で刃傷沙汰になるケースってのは現実では溢れてるのに、エロゲでは少なかったな、と。
あてつけがましく自傷行為に走る奴もたくさんいるのに、そんな真似してみせるヒロインもいなかったな、と。
それが、結局は「従順でかわいい女の子」を心の底で欲しているメルヘン心理の現れなわけだが、このヒロイン、そんな兄さんたちの願いを、いとも簡単に蹴り飛ばしてくれちゃいます。

血と脳漿撒き散らして死んでみせるヒロインが初めてなら、
EDでヒロインの墓参りをさせられる恋愛物も初めてです。

しかも、パッケージにも宣伝材料にも、一言も「これは鬱ゲーです」なんて書いてないもんだから、何の情報もなく、無邪気にこの作品に足を踏み入れた人たちがパニックに陥るのも容易に想像できて気の毒になったり。
そりゃ、話題にもなるわな。

もう一人のヒロインも決して負けてはおらず、別の女とガキまで作ったヤリチンの主人公をブッ刺してみたり、こっそりと友達使ってライバルをいじめたり。

あのね。
これじゃ、あまりにリアルすぎて、現実に耐性のない真性のオタクはドン引きするから。

自分を傷つけない優しい世界で、無条件に慕ってくれる頭の弱いヒロインとひとときの夢を楽しみたいオタクが、こんな女のドロドロした部分がど真ん中直球にくる恋愛話、受け入れられるはずがなかろう。
「鬱だ」と言われる要因は、その辺にもあるのでは。

言っておくが、女はこれくらいのこと普通にやります。
そりゃ、刃物持ち出したり、飛び降りたりするのは最終手段だけど、そこまでの思考には簡単に行き着けちゃう生き物なのですよ。
友達使って裏工作? OKOK、そんなの今どき中学生でもやるわ。
カップル喧嘩中に付け込む? OKOK、付け込まれる隙を作る方が悪いんだよ。
「女の情念」と言うように、古来より、男が絡むと女は豹変する生き物なのだ。

それが分かってるから、私は「エロゲもとうとうここまで描くようになったか」とは思ったけれど、別段ひどいとは思わなかった。
ただ、何てことをするんだとは思ったが。メーカーが自ら「エロゲファンタジー」の掟を破っていいのか。
そういう点で、私はライターのしたたかな悪意を感じた。
「ほーら、これに耐えられるか、お前たち?」みたいな。
「どうせお約束の学園物だと思ってたんだろ? だが見事に騙してやったぜ、どうだ?」みたいな。
この叫びを聞きたかったのだろうなぁ、と思うと、その思惑は完全に成功したとしか言いようがないのですよ。

鬱展開を誇張するあまり、それを通り越して笑うしかない話になっちゃってたり、登場人物全員が学生のくせに、いとも簡単にガキを生む決心をしてたり、突っ込むべき点は正直ありすぎる。
一応のハッピーエンドはあるものの、むしろこのEDの2,3日後には、誰かが血を見る羽目になるだろそりゃ、というレベルのおざなりな解決しか見せない。確実にバッドEDの方が強烈だし、きちんとオチてる。
そういう点では全体的にまとまりがなく、結局何がしたかったの? と問われるような今作ですが。

ただ、この話をアニメでやったのは正解だとは思う。
ゲーム世界を俯瞰で見ることによって、臨場感がものすごく伝わってくる場面がいくつもある。
これは、リアルタイムで映像と音があるからこその演出。言葉が勝手に主人公の家に上がりこんでいるのに、それを知らない主人公と世界がHしちゃってる状況とかね。
表現方法を最大限に活用した点は大いに評価。世の中には「アニメ(やムービー)にする意味あんの?」と問いたくなる作品で溢れてますので。
業界に確実に一石を投じたことは確か。作品の全体的な質よりも、その作品性によって。
そういう意味では、怪作という表現がぴったりだと思います。

壊れるヒロインに耐性のある人、ドロドロなんてへっちゃらさ、という人、アニメが嫌じゃない人はどうぞ。
内気で繊細、現実の女性に夢を持っている、典型的なオタク像そのものな人はやっちゃだめよ。

……泣きたいなら、止めはしませんがね。

CROSS†CHANNEL

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
85★★★★

※注! このゲームはネタバレが致命的な作品です。
そのため、今レビューで設定に言及している箇所は、全部反転させていただきます。どうかご協力を。

もう公然の秘密なので、これについては書いてしまうが、「家族計画」のライター氏の作品。
はっきり言って、私の彼との相性は、この2月にクリアしたばかりの「家族計画」にて激悪なものと化していたので、(レビューを見ていただけると一目瞭然)プレイ前はものすごく気が重かった。
その傷も癒えていなかったのに、同ライターの作品をもう一つ積んでいるなんて地獄の所業としか思えない。(積むなよ)
しかし、これまた世評が相当に高かったのと、公表されている設定がちょっと面白そうだったのも相まって、今回だけはあえて地雷を踏む覚悟で臨んだ。

システム周りは、搭載機能は普通。だが、微妙に使いづらい。
何をするにも画面上部にカーソルを持っていってメニューバーを出す必要があるし、既読スキップをかけるとBGMが聞こえなくなる。
おまけに、オートセーブをONにするとシナリオループが発生して先に進めなくなるという致命的なバグ。
修正ファイル必須です。
余談だが、各章ごとにセーブすることをお勧め。
じゃないと、章タイトルが分かりません。でもこのタイトルが秀逸なので、ぜひ確認するべき。

音楽はなかなか良い。どちらかというと静かな、おとなしめの旋律が多いのだが、シナリオに没頭するタイプの作品なので、
これくらいがその邪魔にならずに雰囲気を盛り上げる役割を果たせると思う。
ちなみに、ある箇所で音楽での大仕掛けがあるのだが、これに関してはシナリオの部分で後述。
主人公以外はフルボイスなのだが、男友達がやけに豪華すぎ。このキャスト、私はビビりました。
たった3人だけど、その誰もが(ボーボボ、犬夜叉、ベジータ)とかなりのビッグネームってどうなのよ!?
これのせいで、逆に女性声優陣が霞んでしまったのがちと悲しい。どうしてもこのビッグ3に比べると演技や印象の点で見劣りしてしまうのが難点と言えば難点か。キャスティング自体は悪くないと思います。

絵に関しては、薄めの色彩で特異なデザインもなく、青を基調とした、あっさりと爽やかな雰囲気。
全体的に綺麗な感じでまとめられており、ベターっとした、変な髪型や服が横行するアニメ絵が苦手なので、むしろこういった画風の方が私には馴染みやすかった。
CG枚数はちと少なめ。これはシナリオの仕掛けのために仕方がない部分もあるのだが、ここぞ、という場面ではきちんとイベント絵が用意されているし、立ち絵のときにたまに入る、イラスト状のカットインも面白い。
どうしてもシナリオのために作られた作品であるので、萌えやその他の要素を追求するのは酷というものだろう。

では、以下よりネタバレゾーンに突入させていただきます。

きた。これはきた。
はっきり言ってプロローグの終盤までは、相変わらずの笑えない上に品のないギャグと、無駄が多くテンポの悪いテキストに、「やはり『家族計画』再びか」とがっかりし、プレイし始めた自分を呪いつつ、数分単位で眠気と闘う苦行を強いられる。
もう何度途中で投げ出したい気分に駆られたことか。
こりゃあもうレビューで、メッタメタのギッタギタに「あらん限りの酷評をしちまうぞコラ」と、どす黒い情熱を燃やしかけたそのとき表示された、プロローグラストのセリフ。

「生きている人、いますか?」

一瞬でざわっとし、背筋が凍った。現時点で理由は分からないけれど、人類は死滅している。ここにいる8人を除いて。
だから。だからだからだから。人の匂いが全然しない。町にも学校にも人がいない。
夏休みだろうと、部活はあるだろうに。日中の町中は喧噪で溢れているだろうに。
BGMはあっても、ざわめきや、夏を演出するのにうってつけのセミの鳴き声のようなSEはない。
そういった、一見背景やサウンド、描写上の手抜きなんじゃないかと思われたすべてが、このたった一言の演出によって
ぴしりと一本に結ばれた鮮やかさに、眠気など吹っ飛んでいってしまった。

背筋を正して、タイトルに戻ることもなくすぐに始まった続きを始める。
最初から、プロローグとほぼ同じ展開。ってことはこれは、ループ物!?
ふふん、私はループ物にはちとうるさいぜ? 何せ、至高の作品が「YU-NO」で「DESIRE」で「腐り姫」だからな。

ごめんなさい。本当に田中ロミオ氏を見くびってました。
まさか、こんな手法を取ってくるなんて思いもよらなかったので。

このゲーム、「青春学園アドベンチャー」と銘打っておきながら、ヒロイン別の攻略ENDがない。
というよりも、EDまでプレイしても、主人公は誰とも結ばれない。
最初から最後のエンドロールが表示されるまで、タイトルに戻ることがなく、あたかも一冊の本を読むような、文字通り初回プレイにすべてをかけた綱渡り作品。
なぜならこのゲームにおいて、再プレイは諸処に張られた伏線の妙に感嘆することはできるが、初回の戦慄だけは絶対に味わえないので。
なんて危険な、そして一回限りの大バクチな仕掛けに出たんだろうと、その潔さに脱帽。
これは、一人のシナリオライターがそのライター人生上で一回しか使えない手法。もう一度やったらただのアホウ。
もちろん、他のライターがやったらただのパクリ。

とにかく設定が巧妙すぎる。ここまでずっぽり罠にはまってしまったのは久しぶりだ。
世界は交差している。まさに†マークのように。
一つは閉じた、もう一つは普通に進む二つの世界を、あたかも一つであるように見せかけていた序盤。
その世界のトリックが段々と明かされる中盤。
見る人によって、まったく解釈の異なる提示をされてしまった終盤。
どうやっても、この物語(というか舞台装置)に関して、考えずにはいられないようになっている。

はっきり言って、最後まで変わることのなかったこのテキストの質は、日本語が壊れすぎていて、決して私の好みとは相容れないものだったのだが、この仕掛けによって目が離せなくなってしまったのが痛し痒しという状況。
どうでもいい電波ギャグや死ぬほどバカな掛け合い漫才の合間に、実にさりげなく設定のヒントが紛れ込んでいるのでまったく気を抜けないし、かといって全部まともに取り合ってたら、忍耐が破滅する。
プレイ中、まるでオシロスコープのように波形が上下動する私の気分。これが、このテキストに乗れる人だったらどんなにシナリオにのめり込めるだろうかと、羨ましく妬ましく思ったことが幾度も。

精神的・肉体的に傷を負った人間ばかりが集まる群青学院。最初のうちは皆、特筆することもない普通の学生。
だが、人がいなくなった世界で、困惑はしても淡々と生きることができる彼らはやはり「普通」じゃないのだろう。
そして、きっちり1週間でループがかかり、それまでの記憶を失って再構成される世界。
そこで徐々に崩壊が始まる人間関係。彼らが学院に集ったのは故なきことではないのだと嫌でも分からされる、
「普通の人」との歪みやズレが表面化していく。
自分たちを爪弾いた優しくない世界と、自分の「群青色」との軋轢に傷つき、他者との関わりあいができない登場人物たち。
それが露呈していく様は、実に醜悪でやがて殺戮にまで発展するドロドロっぷり。

中でも、「普通の人間」としての言動を知覚してはいるが理解できていない主人公の凶悪ぶりは、こんなにプレイヤーの
共感を得られない人間を主人公に据えていいのだろうかと心配になってくるほど。
だが、「多重世界の観測者」としての立場を理解した中盤以降はまさに息をのむ展開で、彼らを補完し、在るべき場所へ
戻してやる主人公。
それによって、もう二度と彼らには会えなくなることを知っていながら。
交差とは、ただ一点。そこを抜け出した友人たちと主人公が交わることは今後一切ない。
ただ、主人公が発信し続けるラジオ放送「CROSS†CHANNEL」を除いて。
それが主人公の今まで失われていた人としてのコミュニケーション手段であり、世界との関わり方であった――。

何だこの、卑怯なまでに鮮やかすぎる幕切れは!

そして、そこでようやく流れるED。歌曲付きであり、ライター自身が作詞したそれは強烈にネタバレを含んでいる。
単品で聞くならわりといいかな、と言うレベルなのだが、このタイミング、この場面で流されるのはもう反則に等しい。
「テーマ曲」でありながらOPですら流れず、今までのどの場面にも流されることのなかったことへの疑問が氷解し、さらに「やられた!」気分が上昇。

それが済むと、今度は実に論議を呼んだ問題のエピローグ。
や、いいんじゃないですか。私は結構好きだな。
これって要するに、「この空がなくなるその日までは……」のその日、ってことじゃないの?

空がなくなる=ループ世界が終わる=世界そのものが滅亡=主人公もなくなる

で、ループ世界で7人を殺してしまった主人公と、その7人の魂(?)のような存在が「お別れだ」と言ってるのにも説明がつくし、「世界が終わる」(分解が始まる)ことによって、元の世界と近くなったからセミの鳴き声が聞こえた、ってことじゃダメですか?
「世界がなくなった」からの、「チャンネルが閉じた」からの突然のブラックアウトじゃないの?
いずれにしても、「みんな助かって救われた、わーいハッピー」なバカエンディングではない……はずだ。

これだけ大がかりな世界で展開されるドラマ自体は意外と安っぽく、キャラにも別段魅力があるわけではない。
テーマの提示の仕方は抜群に上手いのに、そこからの論理展開が安直すぎてやはり好みじゃないし、どうしても説得力に欠ける。
ただ、元はと言えば非常に不安定な精神を持った登場人物たちでもあるので、その点を考慮すれば、普通なら気付いて当たり前の事実を終盤近くまで引っ張ってしまうのも仕方のないところか。
(この点、「家族計画」は普通の人間が気付いて当然の事実に気付いてくれないことが多すぎて私の酷評の対象になった)

どうあってもこれは構成で魅せる物語であり、そのためのストーリー展開でキャラ設定。いわば単なる小道具。
余計なことを考えず、そういう割り切り方をして捉えた方が絶対に楽しめると思う。
面白い、とかつまらない、とかそういう感想には不向き。ただ、できるなら味わってみた方がいい、としか言えない。
完全にプロットの勝利であり、

事前情報まったくなしでこのトリックを見抜くことは、まず不可能

だと断言する。
これでテキストが好みだったら、確実に神の領域に突入していただけに惜しすぎる感はあるが、これ以上ライター買いの作品が増えたら破産間違いなしなので、助かったという気も。
田中ロミオが実に予断のならないシナリオライターであることをひしひしと感じました。
秀作でも力作でもない、ただし意欲作、近来稀にみるほどの
プレイヤーをものすごく選びますので、あとは各自、勘を研ぎ澄ませてご検討を。

好きなものは好きだからしょうがない!!

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
74★★★

※注! この作品はボーイズラブ、しかも4部作です。従ってレビュー内容が4作全部にわたっており、未プレイ作品がある方はネタバレにくれぐれもご注意。

ボブゲ界のパイオニア的ソフト。BLを扱った作品では初の18禁であることもさることながら、その世界観やキャラに熱狂的なファンが多数おり、ボブゲ初心者としてはやはりプレイしておくべきだろう、と勇んで特攻したのはよかったが。

愛さえあれば、白いものすら黒と言い切れる腐女子のパワーを見くびっておりました。

何じゃあ、このまるでPC98時代のエロゲのように行き届いていないシステムは!!
製作にあたって、コンシューマーのAVGや最も近いフィールドであるエロゲのシステムを全然参考にしなかったのか!?
そもそも、ゲームを起ち上げると同時にいきなりフルスクリーンモードに切り替わる。
昨今のゲームはどうもフルスクリーンでやらせたいらしく、最初からそれがデフォルトになっている場合が多い。
ちなみに私は古参エロゲプレイヤーなので、どうもそれに馴染めず、未だにウインドウ派。
仕方がないので、さっそくコンフィグを開く。

……ない。
ウインドウモードへの変更がない。
(1作目のみ。2作目からはできます。が、表示位置の記憶ができません。タイトルコールのたびに画面中央に戻ります)

おまけに調整できるのはメッセージスピード(しかも3段階)とサウンドの有無のみ。
SFCのゲームだって、これよりカスタマイズできたと思うのだが如何。
「いじる必要がない」とチュンソフトのように究極のインターフェイスを追求しているならともかく、到底快適とは言いがたい手触り。
メッセージスキップはさすがに実装しているのだが、それもいちいち画面上部のコンパネを開かないと実行できないし、選択肢以降で解除になってしまうのも問題。
その選択肢がかなり多めで、多様なルートに分岐するのは評価に値するのだが、そのたびにこんな手間をかけていてはフルコンプへの気力がどんどん削がれていく。
おまけにセーブ数が10。とにかく選択肢が多く、CG回収にも手間取る作りなのに、何が何でも私に最初からやり直せと。
あんた鬼ですか!(血涙)

これはレトロゲーレトロゲーレトロゲーレトロゲーレトロゲー(以下10回繰り返し)

と無理矢理自己暗示をかけてゲームを進める羽目に。

とにかく全体的に質が甘すぎる
シナリオの伏線や展開、文章、背景、立ち絵、イベントCGに至るまで、ありとあらゆるところに粗が見受けられ、一度でもエロゲーのトップメーカーの作品をやったことがある人ならぶっ倒れること確実。
特に塗りに関しては叫びたくなるほどひどく、「外注の手を借りない」といえば聞こえはいいが、「おっと大変、明日提出の水彩画の宿題をやってなかったぜ」といわんばかりの突貫工事的な背景は目に余る。
私のような素人目にすら、ほとんど一発書きの下絵(もちろん鉛筆画)をスキャンして慌てて色をつけた、としか見えないのは、「作風です」と言い切れないレベルのものだと思うのだが、どうか。

キャラ絵にしても、いわゆる「アタリ」をとるためにいくつもの線が引かれている状態をそのまま取りこんでいるのだから、間違いなく下絵だと思うが、イベントCGですらこのありさま。
せめてこちらには力が入っているならば話はまだ分かるのだが、一枚丸々キャラのアップ、というものですら顔の輪郭線が複数ある状態。
最高に緊迫感のある場面でこれがドーンと出てきたときには、脱力を通り越して泣きたくなってしまった。

では、いったい何に力を注いでいるのかと問われると、これは萌え音痴の私でも容易に分かりました。
製作者自らが、並々ならぬ愛情と自キャラ萌えを持っていることに。
とにかくもう、腐女子のための萌え要素がてんこ盛り

  • 「女と見まごうかわいらしさ」(腐女子の好物その1)の幼なじみ(しかも生き別れ)

  • 全幅の信頼をおける「金髪碧眼の美形ハーフ」(腐女子の好物その2。しかし遺伝の法則を知らんのか)の親友

  • 面倒見が良くて頼りになる、でも「実は二重人格で鬼畜」(腐女子の好物その3)な兄貴分

  • 兄貴分の相棒で女房役の、家事の達人で甘やかし上手・実は暗い過去持ち(腐女子の好物その4)な癒し系存在

  • 誘い受の小悪魔系で好きな人に対しては一途(腐女子の好物その5)

  • エロテクは一流で自信家。皮肉屋だが実は優しい(腐女子の好物その6)←ちなみに私もこれにハマりやすい
  • その他にも、ちょっと変態入った医者(腐女子の好物その7)だの、キザが様になる弁護士(腐女子の好物その8)だの、冷酷眼鏡に白衣に元気系・ぷに系、と実に多彩なキャラが膨大なエピソードを携えてプレイヤーに襲いかかる。
    CD4枚に分けただけあって、その分量は途方もないもの。
    初作こそルートも少なくすぐに終わってしまうのだが、2作目以降は分岐の嵐。
    同じキャラのルートでもバッド・ハッピーと別れる他に、ノーマルやトゥルーにあたるエンドもあったり、
    直接本筋には関わらないまったく別のエピソードに分岐したり、とにかくボリューム(だけ)はたっぷり。

    あと、エロもかなり多め。
    激甘ラヴラヴなストロベリっぷりで砂を吐きそうなシチュエーションから、ほのぼの、鬼畜まで百貨店並みの品揃え。
    正直、パッケージから受ける印象で、「鬼畜ったって、そんなにすごいのはないだろうなぁ」と思ってたので、意外にも頑張っていたのには驚いた。
    最近の、エロが薄めのエロゲ業界よりはずっと頑張ってエロってます。ネクタイ拘束は基本です。

    イベント絵も非常に多く、絵や塗りが雑で安定していないのが気にはなるが、腐女子のやる気を促成するには充分。
    が、差分CGを回収するのに(エプロンの有無とか)かなり前からやり直さなければいけないというのはつらい。
    セーブスロットは10個しかなく、分岐は多いのにこれではあんまり。
    おまけに、ルート確定の選択肢も比較的早めに出てしまうので、必然的に共通部分が多くなり、再プレイが非常に面倒。

    そして、このキャラ造形。
    ……一つお尋ねしてもよろしいでしょうか。

    この世界にはオカマホモと変態、子供しかおらぬのDEATHか?

    ロン毛禁止! 長髪が似合う男(特に日本人)なんて現実では砂粒の中のダイヤモンドほどしかいないんだよ。
    触覚も禁止! その不自然な髪の毛には絶対神経が通ってるに違いない。いくら何でも重力に逆らいすぎだ貴様ら。

    それなのに、受キャラは基本的にロン毛だし、骨格も女にしか見えない華奢さ。
    おまけにエロCGでは心なしか胸まであるし、ケツも丸くて肉付きよすぎ。
    実は私、こういう「やってることは少女マンガなんだけど、相手とりあえず男にしてみました」的なBLが一番苦手。
    そんなの、ホモの意味ないのでは。
    案の定、主人公と幼なじみがくっついちゃったことを知った親友は、ちょっとはびっくりするものの、あっさり「おめでとう」とか言ってるし。
    そこ! 「男同士だろ」とかツッコミはなしですか。自分の親友を非生産的な不毛な道に歩ませていいんですか。
    あまつさえ祝ってる場合ですか!
    同性同士だからこその苦悩とか迫害とか逡巡とかないんですか。
    そんなことを考えていてはむしろボブゲやる資格はないのですか。

    さらに、学校は男子校、教師も男、友人も男、周囲の関係者もみな男、とものの見事なメンズワールドが展開され、ストーリーにこれっぽっちもまったくカケラも女性が出てこない。
    そのため、もンのすンごく香ばしいファンタジー臭が漂う疑似世界が展開されてしまい、現代を舞台にした作品では、たとえ荒唐無稽であってもある程度のリアリティを重要視する私としては、「あは、あはははは……」と乾いた笑いしか浮かばなくなってきていたり。
    女がいなけりゃ、ホモのお前たちだって誰も生まれてこれないのに、そんなことお構いなしですか。
    敵の幹部、もしくは自分たちの協力者など、たった一人か二人でもいいから、ちょっと印象的な役にでも女性キャラを設定しておけば、この嘘くささだって相当緩和されたはずなのに。
    まぁ、腐女子ってのは、自分たちだって女性なのにストーリーに絡まれるのは嫌らしいですが。何で?

    そういったいびつな世界観を持っているため、最初はそれに馴染めずへこたれ気味でプレイすることになるのに、
    シナリオの日本語が壊滅的。顔文字((><)←こんなの)が普通に出てきたとき、私の心境はΣ( ̄△ ̄|||)でした。
    そんなAVGなんて、私のむやみに長いゲーマー人生の中でも初めてです。
    これだけでもまず萎えなのに、とにかく勢いで書きなぐった、といわんばかりのセンスの感じられない文章の数々。
    一人称なのはまぁしょうがない。本当は相当に巧い人がやらないとアイタタタな結果になってしまう手法だが、とりあえず、元気がよくてちょっとおバカ、かわいカッコイイ系な主人公の雰囲気はよく出ている。
    ……でも、バカすぎてときどき泣きたくなったんDEATHけどね。

    シナリオ自体はライトで明るい学園コメディを装っておきつつも、要所はきっちりシリアス。
    なのでこの文章が余計に痛いのだが、ありがち設定を駆使しつつも、感動的・または心に痛いエピソードを惜しげもなく投入し、飽きさせる、ということはない。
    展開自体はかなり先が読めるのだが、キャラに慣れてさえしまえば、「しょーがねーなー」と諦めもつき、苦笑して物語を楽しむか、という気になってくる。

    でも、悪の親玉の行動原理とか組織の資金源とか、バックグラウンドがとにかくいい加減で、設定自体に説得力が皆無。
    よって物語としては三流
    パッケージや宣伝資料に「学園なんでも屋」という単語が頻出するので、ひょっとして学園アクションコメディか? なんて期待してプレイすると、肩すかしを食らったうえに勢い余って一回転(ひねり入り)してしまうくらい、そんなのどうでもいい設定となってますので、皆様騙されませんよう。(私はちょっと騙された)

    逆に、人間関係のプロセスをすごく大事にしているので、恋愛物としては一流半。
    このボリュームを最大限に生かし、4枚分のエピソードを積み重ねていくにしたがって徐々に変化していく関係をじっくり丁寧に描写しているのには好感が持てた。伊達にボブゲのパイオニアではないということか。
    エロゲの純愛物にありがちな、「出会って恋に落ちた→大したエピソードもなくすぐエッチ」というアホウな恋愛模様よりはずっとやきもきできるし、葛藤や逡巡もきちんと描かれてます。
    なぜか、男同士ということに関しての葛藤はほとんどないのDEATHがね。

    1・2作目では物語がまったく動かず、半死半生でプレイする羽目になるのだが、3作目で急転直下、4作目で大団円とボリュームに相応しい展開を見せたのも評価。じゃないと、これを全作買ったユーザーが浮かばれない。
    逆に、1・2作目だけで止めてしまった人がいるのなら、ぜひ3・4作目はやってみてほしい。
    私も最初の2枚までは危うくクソゲーの評価を下しそうになりましたが、最後までやってみたら意外にも持ち直し。
    案外まともな作品だったんだ、と今なら思えます。

    女性皆無のBL的世界観に違和感のない人、ご都合展開や伏線なんて気にしないぜ、という漢気のある人、腐女子レベルが高く、キャラ萌えだけでご飯3杯はいける、という人にかなりオススメです。
    キャラ立ちだけはめちゃくちゃしっかりしてますので。萌え狂う腐女子の気持ちがちょっぴり分かりました。
    甘甘エンドは正直どうでもよかったのだが、鬼畜、もしくは壊れ系エンドにはなかなか良いものが多かったので、甘いだけのラヴでは満足できない大人な貴女にもオススメ。
    やはり、名の通った作品にはそれ相応の力があるもんなのだなぁと感心しました。

    ……でもやっぱり、自分は真性のエロゲーマーなのだと痛感。
    帰りたい、あのフィールドへ帰りたいよママン!!
    脱ぐのはやっぱ女じゃなきゃ嫌だい! 乳とケツが拝みたいんだい!
    というわけで、しばらくはボブゲはお腹一杯です。ゲフゥ。(4作もやったから当たり前だが)

    リアライズ

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    78★★★

    様々な疑問に彩られた、ある意味すごい問題作。
    第一の疑問は、「これって純粋に完結してる作品?」
    率直に申し上げて、かつての名ライター高橋氏も「とうとうやっちまった」感が強い。
    「俺たちの戦いは始まったばかりだ!」
    とまるでジャ○プで10週打ち切りを喰らった連載作品のように唐突に訪れるエンド。残りまくる謎と伏線。
    当然首をかしげるプレイヤー。

    聞くところによると、実はあれは、

    主人公を通して八重の視点から見た物語であり、彼女が破滅した時点で物語は終わる

    から、ああいう展開になったのだとか。
    (電撃姫インタビューより)

    確かに、業界で一、二を争う文章巧者である高橋氏なのに、作中よく一人称と三人称が乱れてはいたが、これを意図的なものとして捉えると納得いく点もある。
    が、そういう手法を取っている、ということは本来作中で気付かせるべきであり、しかもその後に未解決の伏線を残してしまうのはどう考えても下策。
    途中の物語の盛り上がりぶりを考えると、尻すぼみをする以前にぶっつりと途切れてしまうこの展開は、とてもプレイヤーの納得に足るものではない。
    個々に考えさせる余地のあるラスト、というよりは時間切れにつき丸投げした、という消化不良の感が否めない。
    事情を知る春秋に後日談を語らせるなどして、物語に一応の決着を見せてほしかった。

    また、言ってることが「世の中すべてを幸せで満たしたい」とかなりグローバルなわりに、実際に出る行動は、自分の力が直接及ぶ範囲の1Km以内の花火客に対してのみ。
    そういった、矛盾を通り越した誇大妄想が気になる。
    他者を自由にできる力を持っているのなら、世論を左右する力を持っている人間を操り、その輪をじわじわと広げていって、長期的には「世の中すべて」を変えうることすら可能なはず。
    東日本「最強の」力を持ち、思慮的で大人びた人間として描かれている八重が、そんなことにすら思い至らないほど浅はかで短慮な人間だったことに幻滅。
    物語後半までずっと正体が見えず、なおかつ底知れぬ影響力を持つ人間として圧倒的な存在感を持っていたのに、実際はその姿を現したとたんに物語のテンションがガクッと下がってしまう。

    どんなに綺麗事を述べても、結局は他者のエゴを自分のエゴで打ち倒すという醜悪な関係になるのだが、それに気付いていながらもその道を曲げようとはしない者、懊悩する者、利用する者と多種多様な人物像が織りなす関係は、とても興味深かった。
    だからこそ、その先に待つのは破滅なのか祝福なのか、衰退なのか繁栄なのか、何の暗示も提示されずにぶっつりと途切れてしまったこの作品に対する無念の思いはかなり深い。
    八重の破滅は自明の理。だが、他の能力者たちはどうなのだろう。彼女とは立場も思考もまるで違う。
    そういった各々のキャラクター達に、納得に足る結末を与えてほしかった。
    最悪、「世界は滅びましたさよならビッグバーン!!」でも私は気にしませんが。(それじゃ駄作だろう)

    作品全体の雰囲気は決して悪くない。
    バトルものでありながら不気味なほど静かに淡々と進む独特のテンポも印象的だし、深い謎に彩られ、次へ次へと前に進ませる力を持つテキストは相変わらず抜群の読みやすさ。
    丁寧なCGや職人集団「草薙」の手による美しい背景も見事。
    大物がゲスト参加したBGMも耳障りの良い、シーンにマッチしたものばかりだし、本当に惜しむらくはこのシナリオ。
    そして、微妙に使いづらいシステム。

    バックログや既読スキップ等、必要なものは普通に揃ってるのだが、そこへ至るまでは一度右クリックでシステム画面を介さないといけないというのはゲームの体感速度を大幅に削る行為だと思うので、こういうAVGではマイナス要因にしかならないと思う。
    VA系のいつものシステムと言えばそれまでだが、足回りは常に快適にしておきたいもの。
    特に、エロゲーマーは常に色んな作品に触れて、要求がどんどん進化する。
    もう少し、研究を重ねた方がいいのではないだろうか。

    そして第二の疑問だが。
    これは、はっきり言って、今作中で最大の問題点でもある。

    ……あの。いつからこれってホモゲーになったんでしょうか。
    パッケージには一切そんなこと書かれてませんが。

    ってくらい、主人公と親友である修二の仲が怪しすぎ

    女性陣だって皆かわいいし、好感の持てるキャラ造形であるのに、修二の影に隠れてまったく精彩を欠いている有様。
    全シナリオ中、この二人の会話シーンが大部分じゃないかと思われるくらい二人セットの印象が強く、あるエンディングでは、(ネタバレ危険→)精神を侵され眠り続ける修二の側にずっと付き添う主人公、という、いわば究極の「修二エンド」があり、

    お前らそれは「親友」の範疇を超えてるんじゃー!!

    と激しくツッコミ入れたい気分です。

    その修二関連のエピソードにしても、なぜ彼が他のプレイヤーを狩る側に回ったのか、本来なら反目するような人物と手を組むようになったのか、肝心の謎の部分が放置されており、あらゆる面で中途半端な印象が強い。

    とにかく、今作は意表を突こうと試みた趣向が、すべて裏目に出てしまっているという悲しい結果に。
    新規ブランド第1作目だったのだから、もっと冒険を避けて、手堅くまとめた方がよかったのではないだろうか。
    というわけで、これは心からのお願いです。

    コンシューマーに移植する前に完全版発売して下さい。
    このままだと、寝覚めが悪くて仕方ありません。(ぐーすか寝てますが)

    SNOW

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    72(kanon&AIR体験済)★★
    (kanon&AIR未体験)
    ★★★★

    (今回はゲーム内容の都合上、「Kanon」「AIR」ネタバレを多大に含んでいるのでご注意!!)

    ハァ~。ある意味最もレビューしにくい作品だと思う、コレ。
    作品成立に至るまでのの付加情報をまったくオフにして考えれば、かなりの力作ではある。
    が、付加情報に耳を貸さないということは、今作の場合圧倒的に問題がありすぎるのだ。

    今作を一言で表現するならば、よく言えば、奇跡の起きないkanon。破壊力のないAIR。
    ぶっちゃけて言ってしまえば、kanon&AIRところどころONEのコラージュカラーコピー。パソコンプリンタレベル。

    そう言われても仕方がないほどまでに、演出もストーリーも似通りすぎている。
    開発陣自らが「似せた」とゲーム情報誌で公言している通り、「オマージュ」の域を通り越してしまっている、ある意味見事なパクリっぷり。
    「パクリ」という言葉を軽々しく使うのは気が引けるのだが、そう言われても仕方がないだけの罪業をすでに背負ってしまっているのが如何ともしがたい。
    せめてもの救いは、決して「デッドコピー」ではないということか。

    この際、美点から挙げよう。

    木々を覆い隠す雪や、冬の光の柔らかさ、暖かさを十二分に表現しきっている素晴らしい背景。
    ちょっと微妙な表現かもしれないが、(みつみ美里+甘露樹)÷樋上いたる(各氏敬称略)な雰囲気を持つCG。
    塗りはものすごく丁寧だし、何より、人物に降り積もった雪の質感がリアルで素晴らしい。

    昨今の風潮に逆らうかのようにボイス無しではあるものの、それを補って余りあるレベルの高いSE。
    (ちなみに私はボイス嫌いなので↑これはうれしい)
    水のせせらぎ、吹き荒れる風の音、降り積もる雪、それを踏みしめる音、そういった自然の発する何でもない音を、まったく不自然のないレベルで再現している。
    そして、相変わらず類いまれな表現力を持つI'veサウンド。
    今回もその実力を遺憾なく発揮し、作品世界を大いに盛り上げている。

    ……だけど。だけどね。

    肝心の演出とシナリオがこうも上記二作品に似ているのでは、判断のしようがないのですよ。
    テンポの悪い会話、冗長な日常生活、構成すらほぼ同じ。

    メインヒロインクリア → 過去編出現 → 全ルート補完 → 最終ルート出現 → 終幕

    の展開は……それってAIR。
    さらにヒロインは、

  • 澄乃――メインヒロイン。Keyキャラ伝統の白痴。口癖「えう~、だよ~」。ラストが観鈴(C)AIR。

  • 旭―――人外で萎え。シナリオ重要度薄し。まんま真琴(C)kanon。

  • しぐれ―せっかく積み上げたシナリオ&設定、自らぶっ壊すストーリー展開に脱帽。ある意味舞(C)ONE。

  • 桜花――ガキはもうお腹一杯。泣きゲーのキーパーソンに子供使うの禁止。(C)AIR美凪編のクソガキ。
  • すごいよメビウス! 4人も取り揃えておきながら、真っ当にオリジナリティのあるキャラが一人もいないなんて!

    それはそうとして、この作品の一番弱いところは、すべてにおいてあざといまでにきれいすぎること。
    kanonのいびつさも、AIRの難解さも持ち合わせず、ただ両者を教本として極めて手堅くまとめてあることが失敗なんだと思う。
    丸すぎる。突出した部分がない。

    人を涙させる悲劇的な展開も、深い感慨に導く印象性も薄く、すべてが片付きすぎ、しかも整合性なさすぎ
    あの、AIRの「鳥の詩」が流れてきただけで脳内にゲーム画面がフラッシュバックするほどのインパクトがない。
    代表的なエピソードが、AIRのSUMMER編にあたるLegend編において白桜を殺してしまったこと。

    SUMMERでは、神奈は運命の輪に囚われてしまったが、柳也はそこであえて死を選ばずに生を全うした。
    当然、この場では生き抜くことの方が辛く、厳しい道であることがプレイヤーには分かっているから、だからこそ最後の、輪から解き放たれた神奈と柳也の姿を見て滂沱することができるわけで、そこがAIRの演出力の高さでもある。

    が、Legendではそれがない。さらに、ヒロインである菊花が極めて脳天気で身勝手な性格であるため、いかに天罰を受けようとも、プレイヤーとしては「ふーん、あっそ。でも当然だよね」としか思えないのだ。
    おまけに、白桜が生きてりゃ全然問題なかったものを、まったく意味もなく自殺させている。

    ここでだいたいのプレイヤーは「へ? 何で死ぬの?」と(゚Д゚)ポカーン状態になることが予測される。
    だって、肝心の両者が死んでしまったらそこで天罰完遂じゃないのか。輪廻に囚われる必然性がないし。
    関係者の処罰だって、鳳仙もしぐれもいずれ死ぬんだから、放っておけばすべて丸く収まる。
    自ら望んでこの過ぎてしまった事態をやり直す必要などどこにもないのに、ご丁寧にもやってしまってるのだ、この作品は。

    おまけにLegendを終えて、最終ルートに入ると設定がおかしいことに誰でも気づいてしまう罠。
    同軸上にあるはずのすべてのヒロインのルートが、実は同軸上にはあらず、何でこんなに唐突にパラレルワールド突入?
    と思わざるをえない。
    そして、それに関しては一切の説明がなされない
    いつからここは並列世界(C)YU-NOになったんだ??? と首をかしげることしきり。
    伏線を回収しよう、という意気込みが強すぎて、極めて基本的な足下が見えてないというのがよく分かる。

    そして、最後のルートも終わって戻ったタイトル画面。画像変わってる。

    ここまでAIRかよ!

    ……ある意味徹底してます。

    運命から解き放たれようとして、でも結局天の罰を最後まで享受した最終ルートのエンディングといい、この作品自体が、結局kanonとAIRの呪縛から解き放たれずに終わっている。
    すべてにおいて亜流でしかない、でも一流の亜流ではあるという、残念至極な作品。

    はっきり言って、あの「悪夢」のスタジオメビウスがここまで真っ当な作品を作れるなんて全然思っていなかっただけに、私には惜しすぎる作品だった。
    クリエイターとしての矜持を持った、誰にはばかることのない、完全オリジナルの作品を次作に望みます。
    本来なら、いくら同系列会社であろうとも、いや、だからこそ恥ずかしいと思って然るべき行為のはずなので。

    kanon、AIRの下敷きがあったから、とうしろ指を指されることのない。
    本気でやればできるんじゃん、と素直に褒め称えられる作品を見てみたい。それだけです。

    ところで、そんな評を書いてるわりに本家より点数が高いじゃねーか。とお思いの諸氏へ。
    これは、今作がAIRよりはテンポがマシで、白痴度が低いからです。
    観鈴はマジで耐えられないくらい低脳だったので。

    あとさ……私のマシンスペックが低すぎるのが悪いのは分かってるんだけどさ。
    総インストール1.8Gはやりすぎなんじゃ?
    そのわりにメディアレスにはならないし、右クリックメニューや自動文章送りなんかもないし。
    細かいところの気配りが抜けてるような気がするので、これも次作への宿題。

    参考までに強引にCD使わない方法を。(ただし、私は責任取らないので各自自己責任で願います)

    (1)ゲームディスク内のBGMフォルダを、HDDのルートフォルダにコピー
    (2)同じく、BGM以外の全ファイル(フォルダ含む)を、ルート以下の適当な任意フォルダにコピー
    (3)コピー後、install.exeから起動すればウハウハ
    (4)デスクトップに↑これのショートカットでも置いとけば、なおウハウハ

    ……だって、この方法使わないとCDアクセスが頻繁すぎて、私のマシンじゃ一向に進まなかったんだよ(⊃дT)

    そして魂の叫びを。

    芽依子を攻略できんのは、絵里(C)臭作を攻略できないよりも納得できん!!

    Campus~桜の舞う中で~

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    60★★

    微妙……なゲーム。
    妹萌えゲー、なんだろうか。そのわりにこの妹、ウザいだけでかわいくないんだけど。
    私の心の妹、唯には遠く及ばず。(←(C)同級生2です。念のため)
    ヒロインによってシナリオに落差がありすぎるのが気になる。というより、見るべきシナリオは巫女さんの一つしかない。
    オチがどれもありがち。智里なんて登場と共に正体バレバレです。

    エンドレスセレナーデ

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    73★★★

    大して期待してなかったのだが、意外に出来が良くてお得感のあったソフト。
    (失礼千万ですな……)
    急激に二転三転するメインシナリオは結構読ませるし、サブヒロインの扱い方もなかなか。
    ただし、既読スキップが判定をスルーすることが多々あり、再プレイが面倒。

    結構力作を出して頑張ってるじゃん、と思ったら、いつの間にかメーカーが無くなってました。南無。

    グリーングリーン

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    54

    断言してもいい。これはバカゲーだ。
    これ以上ないくらい脱力感を感じさせる文章、平々凡々な演出、げんなりするキャラ、本当にどうでもいい展開のシナリオ。
    はっきり言って、限りなく赤点に近い

    私、学園物は嫌いじゃない。だからわりと期待感を込めてプレイしたのがそもそもの間違いでした。
    何でエロゲーなのに、ギャルより周囲の野郎の方がキャラ立ってるゲームをやらなきゃならんのですか。
    言い換えれば、ヒロインが5人もいるのに、ただの一人も魅力的じゃない。

    シナリオは陳腐そのもの。なんのひねりも驚愕の展開も待ち受けてはおらず、ぼへーっと話が進み、唐突に終わる。
    そのせいで、ノリノリで学園物の設定を考えたはいいが、そこまででもう飽きちゃった、といった印象が拭えない。
    製作サイドの、「学園ドタバタラブコメがやりたい!!」って強烈な意志は感じるのですが。

    肝心のラブがないんだよ。ラブが。

    恋愛要素皆無。徐々に心が通い合うドキドキ感も、胸が締め付けられる切なさも、ずうぇーんずぅぇーんなし。
    まったくなし。これっぽっちもなし。
    (ちなみにコメディって書いてますが、シナリオによってはシリアスです。笑えるまでに陳腐だけど)

    どいつもこいつも本当に高校生のレベルに達してない知能や恋愛観の持ち主で、セリフ回しは寒い上に不快。
    勢いだけでハイテンションを維持しようとしているので、プレイしてる側は逆にどんどん醒めざるをえない。
    このゲームを一言で表すなら、「ノリ」。
    ノリが合わなければ私のような評価になるだろうし、学園ギャグバカラブコメとして割り切れればそれなりに楽しめる……かもしれない。
    ただし、エロゲーや恋愛的要素を期待しているなら、それははまったく用をなさないのでそのおつもりで。

    雑記にも書いたが、PC98で人気のあった「晴れのち胸騒ぎ」シリーズのノリが好きなら大丈夫。
    あのドタバタぶりが楽しめた人なら、何とかなると思います。
    ちなみに私はアレが98エロゲーでプレイした中で最もつまらなかった作品です。はい。

    水夏

    シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
    78★★★

    「バッドエンドがすごい」という話を聞き、勇んでやったソフト。(ぉ
    確かにバッドエンドは面白かった。いきなり終わるわ救いはないわダークな展開だわ。
    だが、いまいち点数が振るわないのは、最初はよかったのに、最後の方が尻すぼみになってしまったから。

    1~3章までの「黒い」ノリを持続してくれたらもっと評価は高かったのだが、4章では突然感動物に日和見してしまい、かなり失望。
    私は3章が一番好きだ。何てったってドロドロぐちゃぐちゃの人間関係で最後がコワーイ愛憎劇だから。

    しかし、どの章にも言えることだが、シナリオが安直で文章下手すぎ。
    一つの段落に何度も同じ表現、統一されていない漢字に派手な誤字脱字。

    ノベルタイプのAVGは文章が主役。

    なのにその扱いがこうもお粗末では手に負えない。これでかなり興ざめしてしまう。
    それに、どのシナリオも、途中でほとんどオチが見えてしまう展開。
    むしろ、ハッピーエンドに持っていかず、完全にホラー仕立てにした方がインパクトがあって良かったような気がする。
    ぶっちゃけて言えばこのストーリー、ハッピーエンドが似合わない物語だから。

    私としては、1章の死人返りや2章の冬虫夏草のエピソード、3章の「真の黒幕」なんかは、ホラーとしてかなりいい味出してると思ったんだが。
    1章なんて、展開によっては腰抜けるほど恐い話にできたと思うし。
    最終の4章は、悪くはないけどありがちな味付け。愛憎劇が人情劇に急降下。だるい。

    18禁という限られた場でしかできない表現方法を求めてエロゲーやってんのに、そういうフィールドですら、

    「失われゆく命との絆」とか、
    「離れていたor忘れていた時を取り戻す」とか、

    ゴールデンタイムに視聴者からお涙頂戴するような、陳腐なドラマを見せられてたまるか。
    そんなのはやらせがお得意のテレビにでも任せておけばよし。

    私はこのフィールドに、18歳以上でなければアイデンティティが崩壊するような衝撃を求めている。
    だからこその年齢制限だ。

    「エロいから18禁」なのじゃなくて、「18歳以上じゃなければ危険」だから。
    「エロ」も「グロ」も「暴力」もあるけれど、それすら上回る圧倒的な力感と熱量。
    そういった力を併せ持つ作品にはなかなかお目にかかれない現実。
    「水夏」はやりようによってはいい爆弾になると思ったので残念。

    「水夏」の一番の弱点は、各ヒロインに個性が全然感じられないこと。
    引き合いに出して悪いが、Keyやleaf系の「痛すぎる個性」にも行き着けないし、確信犯的な狙いにも至らない。
    結果、「このあり余る感情をどうしたらいいんだーっ!!」ってことにならない。
    (それを「萌え」と言うのでは?)
    これって、エロゲーでは致命的なことだ。私が萌えないだけで、他のプレイヤーは萌えてるのかもしれんが。
    その辺、どーなんですかね? キャラ萌え事情には明るくないもんで。

    色々書いたけど、多少主題がボケている点を除けば、及第点のゲームだと思います。
    DC版はどんなオチになっているのか気になる。
    いや、ED改変してるって聞いたんで。

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