| シナリオ | 絵 | 音楽 | 演出 | システム | 総合評価 | オススメ度 |
| 5 | 9 | 9 | 8 | 8 | 59 | ★★ |
いやあ、素晴らしい。
私はかなり気が短く、ストライクゾーンも狭い方なので、好みに合わない作品はこれまでも数限りなく存在したが、ダメさのあまり爆笑を誘った作品はこれが初めてだと思う。
もうね、笑うしかないのですよ。
プレイ中、レビュー用に気付いたことをメモしているのだが、まさか中盤にもならないうちに、ツッコミだけで丸々一ページ埋まってしまうなると。
侘び・寂びが昇華すると「軽み」となるわけだが、(゚Д゚)ポカーンと怒りが転じれば笑いになるということを発見しました。
そこそこの評価を得、コンシューマーにも移植された処女作、「カルタグラ」。
その、とりあえずは順調な滑り出しを果たしたInnocent Greyの二作目である今作は、前作と同じく昭和初期を舞台にした「スタイリッシュミステリィAVG」。
前作の雰囲気は抜群に良かったし、何より杉菜水姫氏の原画は大好き、音楽もその道で定評のあるLittleWingが担当。
まあ、よっぽどのことがなければ安全牌かな? などとたわけた考えをしていた私はまだまだ甘ちゃんでした。
この業界、どこで何がどうなるか、なかなか読めないよね!(血涙)
まさか、前作で酷評したシナリオに輪をかけて凄まじいものが出てくるとは。
己の修行不足を痛感したよ。
とりあえず、シナリオ以外は安定の一言。
絵は相変わらず素晴らしいクオリティ。女の子はかわいいし、ボリュームも申し分ない。殺害シーンですら美しい。
エロゲにありがちなけばけばしい毒々しさはなく、落ち着いた絵柄と色彩で、それが作品世界ととてもマッチしている。
立ち絵の数はさほどでもないが、表情はくるくると変わって物足りなさはあまりなかった。
当然、背景も大変美しく、細部に手抜きのない、きっちりとした仕事。
今作の売りの一つである音楽も、当然レベルが高い。
私はジャズに関しての造詣がまったくないので詳しいことは分からないのだが、どれも耳触りよく、特に挿入歌の出来は相当のもの。
こんな曲が、まだダメさ加減のさほど発露していないプロローグでかかっちゃうんだから、そりゃあ期待を持っちゃうってもんでしょう、お客さん?(そしてほどなく轟沈する羽目になったのだが)
キャストは主人公以外は問題なし。
主人公だけはどうもいまいち合っていない気がするのだが、これはセリフが陳腐すぎるからかもしれない。
ちなみに、一番合ってたのはたこ焼き屋のオヤジ。なぜこんなところに力を入れる、Innocent Grey。
システムは可もなく不可もなく。前作とまったく変わらない。
ただ、今作は描画や音声再生にもたつきがあったため、どうも鈍重な印象が拭えない。
スキップ自体は高速なのだが、共通パートが多すぎるため、結果的にずーっとスキップ状態という箇所が頻出し、あまり
速さを体感できなかったせいもある。
こういうシナリオにするのであれば、すでにいくつかのメーカーで取り入れられているシーンスキップ機能を実装すべき
ではないだろうか。
また、細かいがどうしても気になるのが、ルビがカタカナなこと。読みづらいことこの上ない。
日本語はひらがなが基本です。訓読みするものにまでカタカナを振るのは疑問。
前作では好印象だった演出も、今回はシナリオのダメさ加減のせいで、完全に空回りしてしまっている。
見せ方はとても好みなのだが、いかんせんウインドウに表示されるメッセージがあまりにも野暮ったく、作品が謳っている
「スタイリッシュ」とは大きく乖離しすぎていて、それだけでげんなりしてしまうのだ。
AVGの主体は何と言ってもテキストにあるのだから、お願いだからライターはもっと気を使ってほしい。
さて、この怒りっぽい私ですら怒りを通り越して、思わず爆笑してしまったトンデモシナリオ。
主人公の空気っぷりは、間抜けで腑抜けでヘタレだった前作をも軽く凌駕しました。
(詳しくは「カルタグラ」レビュー参照)
もうすっごいです。この主人公、何もしません。
事件に巻き込まれてからというもの、引きこもり→酒浸り→女と寝る→どん底→引きこもりの周回コース。
口を開けば、「チッ――」「フッ――」「五月蝿えよ」のどれか。
ちなみに、これほど顔をひっぱたかれる主人公も見たことありません。
幼なじみに殴られ、怪しい組織の女幹部に殴られ、数十分に一回は殴られる効果音を聞いた気がする。
いや、こんなヘタレ、ボコボコに殴られて当然なんだが。
挙げ句の果てに、シナリオ終盤で敵のボスに立ち向かおうとしたところ、脇キャラに「お前の敵う相手じゃない」と、あっさり役立たず宣言されてお役御免に。
肝心のおいしい役どころを脇キャラにとられた挙げ句、その立ち回りをヒロインとポカーンと眺める主人公。
前代未聞の空気っぷりです。むしろ存在意義ゼロ。ていうか、いないところで勝手に話が進むんですが、このシナリオ。
これ、主人公の一人称視点はない方が物語としてまとまりがいいんじゃないのか。
おまけに今回のヒロインときたら、「明るく前向きでちょっとドジっ娘、一生懸命で健気」……ってあれ?
お前、前作で私にメッタ切りにされたヒロインとまったく同造形やないけ!
しかも、こんな頭の悪いヒロインにいともたやすくコロリとまいってしまう主人公。頭の中身まで空気か。
ミステリとして? そもそも破綻しているものを論じることなどできませんよ。
誰が頭を悩ますでもなく、フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットのすべてが、序盤から唐突に登場してきたキャラによって全部ぺらぺらと語られてしまうのだから。
これなら、重度の反則を犯していたとはいえ、前作の方がいくらかまともなミステリだった。少なくとも体裁上は。
凶器が常人の理解の範疇を超える代物であるのはいい。それがきちんと説明されるなら。
動機が余人の与り知らぬところによるものでもいい。それによって犯人の怪物性がより鮮やかになるであろうから。
だが、この二つをミックスして、危険な化学反応を起こすのだけはやめてください。ウフフアハハ、ミステリファンなめんなよ。
まるで、物語ど真ん中に差し掛かったところで、いきなり解答編が登場する乱丁本みたいだ。
とにかくシナリオ全体に行き当たりばったり感が漂い、素材の扱いも非常にお粗末。
昭和十一年、二・二六事件が起こった年の夏というのだから、翌年には日中戦争が始まろうかという時代設定だ。
そんな頃、酒(特に洋酒)はかなり高級品であるはずなのに、それをバカスカと惜しげもなくあおりまくる人物たち。
いくら馴染み客だろうと、考えられないだろうよ。
また、ライターの脳内でのみ既知情報となっている設定が、何の前触れもなく唐突に出てきて大した説明はなされない。
おまけに、あるルートクリア後に発生する真犯人の独白ルートでは、死んでいないはずの人間が死んでることになっている。
自分で書いたシナリオぐらい、自分で管理できんものか。ましてや、別に複雑に入り組んでいるわけではなく、ほとんど
一本道の、そこから派生するエピソードがちょこちょことあるだけの構造なのに。
どう考えても都合のいい部分だけをつなぎ合わせ、思いつきで書いているとしか思えない。
だから、いきなりあさっての方向から、「実は私は――」とか「実は凶器は――」という突飛で唐突な展開がやってきて、
プレイヤーはただただ呆然。
何とかこのトンデモを理解しようと頑張っても、そんなこちらの努力を嘲笑うかのようにどんどん物語は進む。
せめてもっとキャラの掘り下げをしておくとか、伏線を張っておくとかならともかく、そういったものは一切なし。
肝心のラストをかっさらっていくキャラにしたって説明が薄く(そしてまずく)、突然現れて大立ち回りを演じ、とっとと退場
するという怒涛の意味不明展開となるため、置いてけぼりの主人公=ユーザーはポカーン。
そして、本編と真犯人の独白ルートを経て、さらに現れた最終ルート。
超・蛇足。
実は私がこの作品のシナリオで唯一評価したのが、(ネタバレ危険→)心を通わせたばかりのヒロインが、翌朝自分の隣りで死体となっているという、いかにも残酷でけれん味に満ちたエピソードだったのだが。
最終ルートではそれさえなかったことにされました。ご臨終。チーン。
しかも、ヒロインのセリフの端々に、(ネタバレ危険→)(自身は登場人物であるのに)他ルートの存在を認識しており、そこでは自分が殺されていることまで気付いてる記述が。
トンデモも ここまでくると 超越者(一句できた)
アホかー! おこがましくも「ミステリ」を名乗るのなら、せめて最後までそのプライドぐらい貫いたれや。
ここまで無節操にどうしようもない作品、本気でありえません。ウフフアハハ、ミステリファン、本気でなめんなよ。
もう、私が笑うしかないと評した理由がお分かりいただけるだろうか。
が、これまでこうして挙げてきたすべての点に目をつぶっても、これさえ直してくれるならもうそれでいいと思えるほどの
最強最大の欠点がこの作品には存在するのです。
日本語の用法がめちゃくちゃです。小学校からやり直せ。
いやしくもシナリオライターという文筆業に類する人間が、こんな基礎すら無視した日本語表記を読ませるということは、プレイヤーに対する冒涜としか思えない。
それで特別な効果を上げているならともかく、上がっていくのは血圧と怒りゲージのみ。
すでに私のリミットゲージはとっくにブレイクして爆笑までいってしまったわけだが。
まず、何のヒネリも工夫もない、同じ表現の使い回し。酒場においては、「氷が爆ぜた」「氷が爆ぜた」「氷が爆ぜた」。
別に炭酸入りの酒を飲んでるわけでもないのに、氷爆ぜすぎだよ。ドンパッチか?
主人公のセリフは、「チッ――」「フッ――」「五月蝿えよ」。うるさいのはそれをわざわざ漢字表記で連発するお前だ。
やたらと多用されるダッシュと三点リーダ。しかもそのほとんどが、一つの文中で二つを併用している有様。
「――五月蝿えよ……」「……五月蝿えよ――」
この二つの違いを、誰か私に教えてください。国語は得意科目でしたが、作者の心情をまったく忖度できません。
そして、形式名詞、補助動詞をことごとく漢字表記としている誤用。
「旨く行く」「という物は」「~して見た」「ぼった来る」等々、挙げればきりがない。
一、二箇所ならIMEの変換ミスや単なるチェック漏れで済むだろうが、すべてにおいてこの表記となると、ライターは単に無頓着というよりも、それが正しいと思って使用しているとしか考えられないのですが。
そんな表記ありえません。何で普通にひらがな使えんのだ。今どき、二次創作の書き手だってもっと気を遣ってるぞ。
今まで数々の作品をプレイしてきたが、ここまで壊滅的な日本語の使い手はいなかった。かの有名な「感感俺俺」だって、全体的にはこれよりもうちょっとマシだったよ。
もうこのライター、私の中では「キング・オブ・日本語の破壊者」決定。
ゲームも後半に入ると、次はどんな珍表記が現れるかと心待ちにしてしまうほどひどい狂いっぷりに、私が笑うしかないと
評した理由が以下略。
以上、二作目にして素晴らしいコケっぷりを披露してくれたわけだが、シナリオ以外の作品雰囲気は本当に良いので、あまり深いことを気にしない人なら特攻してもいいかもしれない。
要するに、このブランドに言いたいのは、「まともなシナリオライターを可及的速やかに登用すべし」ということだ。
せっかくの絵も音楽もこれでは台無し。この二つは業界でもトップクラスであると思うだけに、余計に惜しい。
この点を解決しないままでは、次作から確実に行き詰ることになると思うので、消えた有象無象ブランドとならぬよう、総力を
結して取り組んでください。
私はここの作品の雰囲気はかなり好みなので、できれば消えてほしくない。だからこれは真剣なお願い。
あと、あまりにも笑いすぎて心底悲しくなったので、もう笑える作品はいいです。……決して二度目があると思うなよ。