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和み匣

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
67★★
※注! 当レビューには「カルタグラ」のネタバレが含まれます。未プレイの人はご注意。

さて、前二作の、実にアレな「スタイリッシュミステリィ」で、私を大いに笑わせたInnocent Greyの初ファンディスク。
(なぜかは各作品のレビュー参照)
こんなもん作ってる余裕があったら、次作に精を出した方がいいのでは、とも思ったが、「カルタグラ」のアフターストーリーが入る、ということだったので、一応購入してみた次第。

内容は、ミニシナリオ3本とミニゲーム2本。
ミニシナリオはカルタグラのアフターストーリーである、「サクラメント」。これが今作の(たぶん)メイン。
人気の高いヒロイン、凛を主人公にしたエロシナリオ「凛 雪に咲く花」。
各ヒロインが女子高生&教員となって展開するパラレルギャグシナリオの「いのぐれっ!」、この3本。
ミニゲームは、要するにドンジャラの「ポンジャン!」と、たこ焼きバトルの「真ロシアンスピリッツ」の2つ。

正直、どれもこれも大した出来ではないので、この価格は高すぎると思った。
ミニゲームをオールクリアし、シナリオを全部通してやっても、3~5時間もあれば終了してしまう。
これで7,140円はちょっといただけない。どんなに高くとも4~5千円が関の山なのでは。

シナリオはほとんど読むだけ、ゲームは惰性と慣れでクリックすれば終了、というのでは楽しみようがない。
特に、せっかく18禁なのに、ミニゲームの各ステージをクリアしても、エロ画像の1枚もないというのはどうか。
ストーリーの面白さで引っ張ろうとするほどの気合いも感じられないし、すべてが中途半端な印象。

また、シナリオでは場面転換の際にいちいちアイキャッチが入り、これが鬱陶しくて仕方がない。
かといって、コンフィグで場面転換の効果をオフにすると、日付や章といった必要情報まですっ飛んでしまう
アイキャッチを入れるなら入れるで我慢するので、せめてワンクリックかエンターで飛ぶように設定できんものか。
次作でもこの手を使うつもりなら、切に改良願いたい。

さて、肝心のメインシナリオだが。
今作からシナリオライターを変更し、どうなるかと思っていたら、至極まとも。
「カルタグラ」のイメージをなるべく損なわないよう、かなり気を遣っているのが分かるし、「PP」のような破滅的日本語もさほど見あたらない。
ただ、エピソードの扱いが少々ウェットに過ぎると思った。
和菜ルートと由良ルートの二つが用意されているのだが、特に由良エンドに納得がいかない。

「カルタグラ」は妄執の話。(ネタバレ危険!→)たった一人の男を手に入れるために幾人も殺害し、さらには血を分けた双子をもその手にかけようとして、結果、最愛の人間に撃たれ、いつ覚めるともしれない眠りについた話だ。
それほどまでに妄念に彩られた由良が、昏睡から目を覚ましただけで、妹のことなどそっちのけで男との逃避行など選ぶものか。
たとえ一人で逃げることになったとて、どこまでも和菜を追いかけ、その目的を果たそうとするに違いない。
それこそ、和菜ルートでそうしたように。
そういった意味では、もっと救いのないエンドを期待していた私としては、肩すかしを食らった気分だった。
由良ファンには待望のハッピーエンド(?)なんだろうが、「カルタグラ」としてはどうなのか、と思わざるをえない。
また、和菜ルートでも、最後の最後に結局逃げ出す主人公のヘタレっぷりに思わず失笑。
このメーカー、どこまでいっても主人公はヘタレじゃないといけないのですね。ここまで徹底してるとある意味すげえ。

これは前作を踏襲しなければいけなかったのだから、ライターの本領ではないとは思うが、この調子だと次作も不安。
特に、「いのぐれっ!」はくだらなすぎてツッコむ気も失せた。ギャグシナリオは書かない方がいいと思う。

最後に一つ。
「カルタグラ」の主人公はこんなに出張ってきてたのに、「PP」の主人公には、とうとう出番がありませんでした。
「PP」本作以上に空気になってて大爆笑。
「PP」での空気っぷりについては、レビューをご参照あれ)

PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
59★★

いやあ、素晴らしい。
私はかなり気が短く、ストライクゾーンも狭い方なので、好みに合わない作品はこれまでも数限りなく存在したが、ダメさのあまり爆笑を誘った作品はこれが初めてだと思う。
もうね、笑うしかないのですよ。
プレイ中、レビュー用に気付いたことをメモしているのだが、まさか中盤にもならないうちに、ツッコミだけで丸々一ページ埋まってしまうなると。
侘び・寂びが昇華すると「軽み」となるわけだが、(゚Д゚)ポカーンと怒りが転じれば笑いになるということを発見しました。

そこそこの評価を得、コンシューマーにも移植された処女作、「カルタグラ」
その、とりあえずは順調な滑り出しを果たしたInnocent Greyの二作目である今作は、前作と同じく昭和初期を舞台にした「スタイリッシュミステリィAVG」。
前作の雰囲気は抜群に良かったし、何より杉菜水姫氏の原画は大好き、音楽もその道で定評のあるLittleWingが担当。
まあ、よっぽどのことがなければ安全牌かな? などとたわけた考えをしていた私はまだまだ甘ちゃんでした。
この業界、どこで何がどうなるか、なかなか読めないよね!(血涙)
まさか、前作で酷評したシナリオに輪をかけて凄まじいものが出てくるとは。
己の修行不足を痛感したよ。

とりあえず、シナリオ以外は安定の一言。
絵は相変わらず素晴らしいクオリティ。女の子はかわいいし、ボリュームも申し分ない。殺害シーンですら美しい
エロゲにありがちなけばけばしい毒々しさはなく、落ち着いた絵柄と色彩で、それが作品世界ととてもマッチしている。
立ち絵の数はさほどでもないが、表情はくるくると変わって物足りなさはあまりなかった。
当然、背景も大変美しく、細部に手抜きのない、きっちりとした仕事。

今作の売りの一つである音楽も、当然レベルが高い。
私はジャズに関しての造詣がまったくないので詳しいことは分からないのだが、どれも耳触りよく、特に挿入歌の出来は相当のもの。
こんな曲が、まだダメさ加減のさほど発露していないプロローグでかかっちゃうんだから、そりゃあ期待を持っちゃうってもんでしょう、お客さん?(そしてほどなく轟沈する羽目になったのだが)
キャストは主人公以外は問題なし。
主人公だけはどうもいまいち合っていない気がするのだが、これはセリフが陳腐すぎるからかもしれない。
ちなみに、一番合ってたのはたこ焼き屋のオヤジ。なぜこんなところに力を入れる、Innocent Grey。

システムは可もなく不可もなく。前作とまったく変わらない。
ただ、今作は描画や音声再生にもたつきがあったため、どうも鈍重な印象が拭えない。
スキップ自体は高速なのだが、共通パートが多すぎるため、結果的にずーっとスキップ状態という箇所が頻出し、あまり
速さを体感できなかったせいもある。
こういうシナリオにするのであれば、すでにいくつかのメーカーで取り入れられているシーンスキップ機能を実装すべき
ではないだろうか。
また、細かいがどうしても気になるのが、ルビがカタカナなこと。読みづらいことこの上ない。
日本語はひらがなが基本です。訓読みするものにまでカタカナを振るのは疑問。

前作では好印象だった演出も、今回はシナリオのダメさ加減のせいで、完全に空回りしてしまっている。
見せ方はとても好みなのだが、いかんせんウインドウに表示されるメッセージがあまりにも野暮ったく、作品が謳っている
「スタイリッシュ」とは大きく乖離しすぎていて、それだけでげんなりしてしまうのだ。
AVGの主体は何と言ってもテキストにあるのだから、お願いだからライターはもっと気を使ってほしい。

さて、この怒りっぽい私ですら怒りを通り越して、思わず爆笑してしまったトンデモシナリオ。
主人公の空気っぷりは、間抜けで腑抜けでヘタレだった前作をも軽く凌駕しました。
(詳しくは「カルタグラ」レビュー参照)

もうすっごいです。この主人公、何もしません。
事件に巻き込まれてからというもの、引きこもり→酒浸り→女と寝る→どん底→引きこもりの周回コース。
口を開けば、「チッ――」「フッ――」「五月蝿えよ」のどれか。
ちなみに、これほど顔をひっぱたかれる主人公も見たことありません。
幼なじみに殴られ、怪しい組織の女幹部に殴られ、数十分に一回は殴られる効果音を聞いた気がする。
いや、こんなヘタレ、ボコボコに殴られて当然なんだが。
挙げ句の果てに、シナリオ終盤で敵のボスに立ち向かおうとしたところ、脇キャラに「お前の敵う相手じゃない」と、あっさり役立たず宣言されてお役御免に。
肝心のおいしい役どころを脇キャラにとられた挙げ句、その立ち回りをヒロインとポカーンと眺める主人公。
前代未聞の空気っぷりです。むしろ存在意義ゼロ。ていうか、いないところで勝手に話が進むんですが、このシナリオ。
これ、主人公の一人称視点はない方が物語としてまとまりがいいんじゃないのか。

おまけに今回のヒロインときたら、「明るく前向きでちょっとドジっ娘、一生懸命で健気」……ってあれ?
お前、前作で私にメッタ切りにされたヒロインとまったく同造形やないけ!
しかも、こんな頭の悪いヒロインにいともたやすくコロリとまいってしまう主人公。頭の中身まで空気か。

ミステリとして? そもそも破綻しているものを論じることなどできませんよ。
誰が頭を悩ますでもなく、フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットのすべてが、序盤から唐突に登場してきたキャラによって全部ぺらぺらと語られてしまうのだから。
これなら、重度の反則を犯していたとはいえ、前作の方がいくらかまともなミステリだった。少なくとも体裁上は。

凶器が常人の理解の範疇を超える代物であるのはいい。それがきちんと説明されるなら。
動機が余人の与り知らぬところによるものでもいい。それによって犯人の怪物性がより鮮やかになるであろうから。
だが、この二つをミックスして、危険な化学反応を起こすのだけはやめてください。ウフフアハハ、ミステリファンなめんなよ。
まるで、物語ど真ん中に差し掛かったところで、いきなり解答編が登場する乱丁本みたいだ。

とにかくシナリオ全体に行き当たりばったり感が漂い、素材の扱いも非常にお粗末。
昭和十一年、二・二六事件が起こった年の夏というのだから、翌年には日中戦争が始まろうかという時代設定だ。
そんな頃、酒(特に洋酒)はかなり高級品であるはずなのに、それをバカスカと惜しげもなくあおりまくる人物たち。
いくら馴染み客だろうと、考えられないだろうよ。
また、ライターの脳内でのみ既知情報となっている設定が、何の前触れもなく唐突に出てきて大した説明はなされない。
おまけに、あるルートクリア後に発生する真犯人の独白ルートでは、死んでいないはずの人間が死んでることになっている。
自分で書いたシナリオぐらい、自分で管理できんものか。ましてや、別に複雑に入り組んでいるわけではなく、ほとんど
一本道の、そこから派生するエピソードがちょこちょことあるだけの構造なのに。
どう考えても都合のいい部分だけをつなぎ合わせ、思いつきで書いているとしか思えない。
だから、いきなりあさっての方向から、「実は私は――」とか「実は凶器は――」という突飛で唐突な展開がやってきて、
プレイヤーはただただ呆然。
何とかこのトンデモを理解しようと頑張っても、そんなこちらの努力を嘲笑うかのようにどんどん物語は進む。
せめてもっとキャラの掘り下げをしておくとか、伏線を張っておくとかならともかく、そういったものは一切なし。
肝心のラストをかっさらっていくキャラにしたって説明が薄く(そしてまずく)、突然現れて大立ち回りを演じ、とっとと退場
するという怒涛の意味不明展開となるため、置いてけぼりの主人公=ユーザーはポカーン。
そして、本編と真犯人の独白ルートを経て、さらに現れた最終ルート。


超・蛇足。


実は私がこの作品のシナリオで唯一評価したのが、(ネタバレ危険→)心を通わせたばかりのヒロインが、翌朝自分の隣りで死体となっているという、いかにも残酷でけれん味に満ちたエピソードだったのだが。
最終ルートではそれさえなかったことにされました。ご臨終。チーン。
しかも、ヒロインのセリフの端々に、(ネタバレ危険→)(自身は登場人物であるのに)他ルートの存在を認識しており、そこでは自分が殺されていることまで気付いてる記述が。
トンデモも ここまでくると 超越者(一句できた)
アホかー! おこがましくも「ミステリ」を名乗るのなら、せめて最後までそのプライドぐらい貫いたれや。
ここまで無節操にどうしようもない作品、本気でありえません。ウフフアハハ、ミステリファン、本気でなめんなよ。
もう、私が笑うしかないと評した理由がお分かりいただけるだろうか。

が、これまでこうして挙げてきたすべての点に目をつぶっても、これさえ直してくれるならもうそれでいいと思えるほどの
最強最大の欠点がこの作品には存在するのです。


日本語の用法がめちゃくちゃです。小学校からやり直せ。


いやしくもシナリオライターという文筆業に類する人間が、こんな基礎すら無視した日本語表記を読ませるということは、プレイヤーに対する冒涜としか思えない。
それで特別な効果を上げているならともかく、上がっていくのは血圧と怒りゲージのみ。
すでに私のリミットゲージはとっくにブレイクして爆笑までいってしまったわけだが。

まず、何のヒネリも工夫もない、同じ表現の使い回し。酒場においては、「氷が爆ぜた」「氷が爆ぜた」「氷が爆ぜた」。
別に炭酸入りの酒を飲んでるわけでもないのに、氷爆ぜすぎだよ。ドンパッチか?
主人公のセリフは、「チッ――」「フッ――」「五月蝿えよ」。うるさいのはそれをわざわざ漢字表記で連発するお前だ。

やたらと多用されるダッシュと三点リーダ。しかもそのほとんどが、一つの文中で二つを併用している有様。
「――五月蝿えよ……」「……五月蝿えよ――」
この二つの違いを、誰か私に教えてください。国語は得意科目でしたが、作者の心情をまったく忖度できません。

そして、形式名詞、補助動詞をことごとく漢字表記としている誤用
「旨く行く」「という物は」「~して見た」「ぼった来る」等々、挙げればきりがない。
一、二箇所ならIMEの変換ミスや単なるチェック漏れで済むだろうが、すべてにおいてこの表記となると、ライターは単に無頓着というよりも、それが正しいと思って使用しているとしか考えられないのですが。

そんな表記ありえません。何で普通にひらがな使えんのだ。今どき、二次創作の書き手だってもっと気を遣ってるぞ。
今まで数々の作品をプレイしてきたが、ここまで壊滅的な日本語の使い手はいなかった。かの有名な「感感俺俺」だって、全体的にはこれよりもうちょっとマシだったよ。
もうこのライター、私の中では「キング・オブ・日本語の破壊者」決定。
ゲームも後半に入ると、次はどんな珍表記が現れるかと心待ちにしてしまうほどひどい狂いっぷりに、私が笑うしかないと
評した理由が以下略。

以上、二作目にして素晴らしいコケっぷりを披露してくれたわけだが、シナリオ以外の作品雰囲気は本当に良いので、あまり深いことを気にしない人なら特攻してもいいかもしれない。
要するに、このブランドに言いたいのは、「まともなシナリオライターを可及的速やかに登用すべし」ということだ。
せっかくの絵も音楽もこれでは台無し。この二つは業界でもトップクラスであると思うだけに、余計に惜しい。
この点を解決しないままでは、次作から確実に行き詰ることになると思うので、消えた有象無象ブランドとならぬよう、総力を
結して取り組んでください。
私はここの作品の雰囲気はかなり好みなので、できれば消えてほしくない。だからこれは真剣なお願い。
あと、あまりにも笑いすぎて心底悲しくなったので、もう笑える作品はいいです。……決して二度目があると思うなよ

カルタグラ~ツキ狂イノ病~

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
78★★★

新ブランド、Innocent Grayの第一弾。
評点を見てもらえば分かるとおり、全部の水準がなかなかの高アベレージであり、安定感は抜群
猟奇サスペンスが平気な人になら、まず勧めてもいいと言えるレベルで仕上がっており、非常に手堅い作り。
だが、その分図抜けてここが素晴らしい、と言える特色もない。
そこそこ面白いのだが、想定範囲内に収まってしまっており、新ブランドが持つがむしゃらなパワーのようなものが感じられないのがやや残念。
とはいえ、シナリオが多少弱い以外は、押し並べて高クオリティを維持しており、早くも次作以降に期待できる。

システムは上々。必要な機能は充分に備えているし、CG・サウンドモードもシーン回想もある。
ホイールバックログでの音声再生も対応、エフェクトのオンオフも3段階で切り替えられて便利。
既選択肢の色が変わるのも分かりやすくて助かる。おかげで補完はかなり楽。

絵はものすごく丁寧。雰囲気も出ているし、何より、物語の尺のわりに差分なしで200枚というかなりの数のCGが用意されていることで視覚的な満足度も高い
背景も手を抜かず、彩度を抑え気味にして、陰鬱な猟奇殺人を扱う物語に相応しい舞台を作り上げている。

音楽も、殺害から立ち回り、哀切溢れるシーンやちょっと笑いの入った箇所まで、様々な場面を盛り上げる、しっかりとした作り。
ただ、一番印象深くあるはずのOP曲のインパクトが薄く、ボーカルの歌唱力にも難があるのが残念。
とか言ってたら、このボーカリスト結構人気ある人だったのね。すいません、無知で。
でもこの曲だけ聞いたら、歌あんまり上手くないと……思うよ?(←弱気)
ちなみに全編フルボイス。キャスティングはまぁまぁ。
が!!! 主人公の元上司で警視庁の辣腕刑事役の方、「嶋和成」氏となってますが、中田譲治氏(マイラヴ)に聞こえるのは私の幻聴ですか?
誰か真相教えて下さい。

良い絵・良い音楽が揃い、演出が問題となってくるが、今作はそれがかなり奮っている。
カットインが多用され、停滞しがちな物語に緩急をつけるのにも一役買っているし、幕間劇で殺人者や他者の視点になった際は、縦書きになるのもいい。
物語後半、犯人側にザッピングする箇所があり、倒叙物の雰囲気を味わえるのも良。
しかも、これらの挿入タイミングが絶妙で、シナリオのテンポの悪さをカバーしている。
また、少ないながらも戦闘シーンもあり、そこでの画面エフェクトもスピードと緊迫感のあるものに仕上がっており、演出に関してはかなり洗練されたものを感じた。
ただし、シーン切替時にかなりの頻度でアイキャッチが入り、これが少々うっとうしい。
エフェクトを切ればすっ飛ばせるが、この点はもう少し見せ方を工夫するべき。

そして、シナリオ。
残念ながら、当方重度のミステリ好きを自認しているため、おおよその事件のからくりが容易に見えてしまい、お手軽感が否めなかった。
それというのも、どれもこれもどこかで見たことのあるようなエピソードばかりで、ほとんどひねりがなく、特別新たなアイディアも盛りこまれていなかったから。

最後の大仕掛けであるはずの(ネタバレ→!!)生者と死者、さらに双子間の二重の入れ替わりは、大昔からそれこそ何度も取り沙汰されてきた手口だし、死体の背中に羽根を生やす・串刺しになって死ぬなんてのも、最近では「多重人格探偵サイコ」が記憶に新しい。
憑き物筋の家系に姉妹、財閥令嬢に全寮制のミッションスクールとくれば、あれあれ、それは京極夏彦では? と、そういったモチーフが透けて見えてしまって乗り切れない上に、事件自体がなかなか進展しないために途中で飽きてしまう。

おまけに、時代背景を昭和初期としているのに、それをまるで無視した台詞回しや行動が多すぎて、かなり鼻に付く。
昭和初期の人間は、普通エッチするとか言わないと思うぞ。女性が「~ッス」なんて言葉遣いもしないと思うぞ。
なのに、地の文にはふりがなを振らないと読めないような難解な言い回しが平気で使われており、そういった文章に対する無頓着さや、大雑把すぎる時代考証が気になって仕方がない。(そんなの私だけか?)
これだけでも、せっかくの舞台の雰囲気が台無しに。

また、主人公が警察を辞めることになった経緯や、過去に携わった事件の顛末等、ストーリーに密接に絡んでくるわりには
語られないことが多すぎて、どうにも消化不良気味。
事件の根幹に関わる由良との関係だって、描写が薄いせいで、「それでそんなに執着されてもなぁ」という気分を払拭できないし、事件を複雑にしすぎようとして失敗したという、中途半端な印象が否めない。

キャラ造形もちと痛い。
勘が鋭く、明敏な探偵であると言われている主人公は狂言回しでしかなく、しかも決定的に鈍臭くて頭も悪い。
肝心の探偵役すら妹(性格に相当難あり。かなり好き嫌いが分かれる。ちなみに実兄妹EDあり)に奪われてしまい、やってることはといえば、あっちの女にフラフラ、今度はこっちの女にフラフラと手を出してばかり。
(エロゲだから仕方ないが)
そのせいで、片っ端から被害者を増やしているという体たらく。はっきり言って、諸悪の根元はこいつだ。
こんなダメ主人公、久しぶりに見ました。「君望」のアホ之以来じゃないか?

このアホウぶりのせいでいっこうに事件が進まず、とにかくスピーディーに先に進みたい諸兄には不向き。
ミステリのスピード感ってものすごく重要なのですよ。
加速して、加速して、最高にスピードに乗り切ったところで崖から突き落とされるくらいの勢いがなければ、衝撃の謎解き、という感覚は得られないので。

ところがこのシナリオ、その最後の謎解きの部分ですら、自分はノータッチで次々と真実が語られていき、つくづく俺の役目っていったい何? と悲しくなる。
一方的に情報開示されるのをボケーっと聞くしかない様は、決定的にミステリの爽快感に欠ける。
その謎が、誰にも解けないような驚きに満ち溢れたものならよいのだが、最初に書いた通り、実にありがちな展開をたどるため、それもない。
せめて論理的に破綻がないようなものを。
事件の第一犯人として、それまで名前すら出てこなかったような人間を突如として挙げるのは反則です。

さらに、メインヒロインが私の「嫌いツボ」をしたたかに刺激する、
「明るく前向きでちょっとドジっ娘、一生懸命で健気」
という最悪の造形。(普通はたぶん好かれるんだと思う……独自偏見路線突っ走ってすんません)
当然、このキャラがトゥルーエンドの鍵を握るため、その脳天気で抜けた言動に辟易しながらプレイする羽目に。
物語が陰惨な展開であるだけに、このキャラの言動に救われるという向きもあるのだろうが、私には邪魔でしかなかった。

暗く、どこまでも暗く深くて光など差さない奈落の底に。
感動はいらん。希望もいらん。嘆きと妄執と呪詛に彩られ、最後には凄惨なカタストロフを。

それこそが猟奇サスペンスの醍醐味だと思うのだが、あっさりとこう救いを用意されてはかなりしょんぼり。
(↑言っておくが私は危ないヤツではない。念のため)
人の妄執をテーマにしているわりに、そういった細部の扱いがずさんなので、心底肝が冷えるということがない。
もっとぞくりとさせてもらいたかった。

例えばラスト。(以下、超ネタバレ。未プレイの人・トゥルーエンド未到達の人は見ちゃダメ!!)
和菜は結局人知れず殺されており、主人公は入れ替わりに気付かず(どうせバカだしな)、プレイヤーのみにだけ包帯の取れた由良のCGを提示して、入れ替わりの事実に気付かせるとか。
その際は憑き物筋らしく、獣目にするとか。瞳の色が違うくらいでは全然ビビれませんわ。
当然、いずれ真実にたどり着く危険性のある妹にはご退場(殺害)願いたい。
その計画を練りながら画面フェードアウト。スタッフロール。

……のような、「救いこれっぽっちもなしED」が見たかったのです。
(↑本当にやったら、たぶん各所レビューで袋叩きに遭うと思うが。私は支持しますよ?)

ちなみに、グロ表現はかなり頑張っている。目玉抉ったり、首手足ちょん切られたり。
もちろんばっちりCGもありますので、嫌いな方はお気を付けて。

全体的にシナリオはとにかくぬるめの印象。詰めが甘いと言ってもよい。
あれもこれもとやりたい気持ちは分かるのだが、一つ一つのエピソードが煮え切らないものが多すぎ、結果的に全部が生煮えという典型的な失敗料理になりかけている。
各ヒロインのEDも、メインヒロイン以外は事件が放ったらかしになってしまうのでラブラブどころじゃないし、ほとんどがバッドエンド。
おまけに、何で出てきたか分からないような必要性のないヒロインも用意されていて、余計に事件が進まない。
シナリオ以外の部分はかなり好印象であるので、作品レベルとしては平均以上なのだが、かえすがえすもこの点が惜しい。

自分の身近な人間も容赦なく死んでしまうので、そういった惨劇に耐えられない人は回れ右。
グロいの嫌い。血なんてもってのほか。切断面なんて見たら倒れちゃいますという人も回れ右。
超本格的なミステリ物を! 破綻なんて容赦しないぜ! という人は走って回れ右。
それ以外の、エログロ猟奇・サスペンスフルなギャルゲーがやりたいな、という人にはオススメ。
過大な期待すらしなければ、そこそこ楽しめると思います。(エロゲにしては)ちょっぴり値段も安めだしね。

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