CROSS†CHANNEL

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
85★★★★

※注! このゲームはネタバレが致命的な作品です。
そのため、今レビューで設定に言及している箇所は、全部反転させていただきます。どうかご協力を。

もう公然の秘密なので、これについては書いてしまうが、「家族計画」のライター氏の作品。
はっきり言って、私の彼との相性は、この2月にクリアしたばかりの「家族計画」にて激悪なものと化していたので、(レビューを見ていただけると一目瞭然)プレイ前はものすごく気が重かった。
その傷も癒えていなかったのに、同ライターの作品をもう一つ積んでいるなんて地獄の所業としか思えない。(積むなよ)
しかし、これまた世評が相当に高かったのと、公表されている設定がちょっと面白そうだったのも相まって、今回だけはあえて地雷を踏む覚悟で臨んだ。

システム周りは、搭載機能は普通。だが、微妙に使いづらい。
何をするにも画面上部にカーソルを持っていってメニューバーを出す必要があるし、既読スキップをかけるとBGMが聞こえなくなる。
おまけに、オートセーブをONにするとシナリオループが発生して先に進めなくなるという致命的なバグ。
修正ファイル必須です。
余談だが、各章ごとにセーブすることをお勧め。
じゃないと、章タイトルが分かりません。でもこのタイトルが秀逸なので、ぜひ確認するべき。

音楽はなかなか良い。どちらかというと静かな、おとなしめの旋律が多いのだが、シナリオに没頭するタイプの作品なので、
これくらいがその邪魔にならずに雰囲気を盛り上げる役割を果たせると思う。
ちなみに、ある箇所で音楽での大仕掛けがあるのだが、これに関してはシナリオの部分で後述。
主人公以外はフルボイスなのだが、男友達がやけに豪華すぎ。このキャスト、私はビビりました。
たった3人だけど、その誰もが(ボーボボ、犬夜叉、ベジータ)とかなりのビッグネームってどうなのよ!?
これのせいで、逆に女性声優陣が霞んでしまったのがちと悲しい。どうしてもこのビッグ3に比べると演技や印象の点で見劣りしてしまうのが難点と言えば難点か。キャスティング自体は悪くないと思います。

絵に関しては、薄めの色彩で特異なデザインもなく、青を基調とした、あっさりと爽やかな雰囲気。
全体的に綺麗な感じでまとめられており、ベターっとした、変な髪型や服が横行するアニメ絵が苦手なので、むしろこういった画風の方が私には馴染みやすかった。
CG枚数はちと少なめ。これはシナリオの仕掛けのために仕方がない部分もあるのだが、ここぞ、という場面ではきちんとイベント絵が用意されているし、立ち絵のときにたまに入る、イラスト状のカットインも面白い。
どうしてもシナリオのために作られた作品であるので、萌えやその他の要素を追求するのは酷というものだろう。

では、以下よりネタバレゾーンに突入させていただきます。

きた。これはきた。
はっきり言ってプロローグの終盤までは、相変わらずの笑えない上に品のないギャグと、無駄が多くテンポの悪いテキストに、「やはり『家族計画』再びか」とがっかりし、プレイし始めた自分を呪いつつ、数分単位で眠気と闘う苦行を強いられる。
もう何度途中で投げ出したい気分に駆られたことか。
こりゃあもうレビューで、メッタメタのギッタギタに「あらん限りの酷評をしちまうぞコラ」と、どす黒い情熱を燃やしかけたそのとき表示された、プロローグラストのセリフ。

「生きている人、いますか?」

一瞬でざわっとし、背筋が凍った。現時点で理由は分からないけれど、人類は死滅している。ここにいる8人を除いて。
だから。だからだからだから。人の匂いが全然しない。町にも学校にも人がいない。
夏休みだろうと、部活はあるだろうに。日中の町中は喧噪で溢れているだろうに。
BGMはあっても、ざわめきや、夏を演出するのにうってつけのセミの鳴き声のようなSEはない。
そういった、一見背景やサウンド、描写上の手抜きなんじゃないかと思われたすべてが、このたった一言の演出によって
ぴしりと一本に結ばれた鮮やかさに、眠気など吹っ飛んでいってしまった。

背筋を正して、タイトルに戻ることもなくすぐに始まった続きを始める。
最初から、プロローグとほぼ同じ展開。ってことはこれは、ループ物!?
ふふん、私はループ物にはちとうるさいぜ? 何せ、至高の作品が「YU-NO」で「DESIRE」で「腐り姫」だからな。

ごめんなさい。本当に田中ロミオ氏を見くびってました。
まさか、こんな手法を取ってくるなんて思いもよらなかったので。

このゲーム、「青春学園アドベンチャー」と銘打っておきながら、ヒロイン別の攻略ENDがない。
というよりも、EDまでプレイしても、主人公は誰とも結ばれない。
最初から最後のエンドロールが表示されるまで、タイトルに戻ることがなく、あたかも一冊の本を読むような、文字通り初回プレイにすべてをかけた綱渡り作品。
なぜならこのゲームにおいて、再プレイは諸処に張られた伏線の妙に感嘆することはできるが、初回の戦慄だけは絶対に味わえないので。
なんて危険な、そして一回限りの大バクチな仕掛けに出たんだろうと、その潔さに脱帽。
これは、一人のシナリオライターがそのライター人生上で一回しか使えない手法。もう一度やったらただのアホウ。
もちろん、他のライターがやったらただのパクリ。

とにかく設定が巧妙すぎる。ここまでずっぽり罠にはまってしまったのは久しぶりだ。
世界は交差している。まさに†マークのように。
一つは閉じた、もう一つは普通に進む二つの世界を、あたかも一つであるように見せかけていた序盤。
その世界のトリックが段々と明かされる中盤。
見る人によって、まったく解釈の異なる提示をされてしまった終盤。
どうやっても、この物語(というか舞台装置)に関して、考えずにはいられないようになっている。

はっきり言って、最後まで変わることのなかったこのテキストの質は、日本語が壊れすぎていて、決して私の好みとは相容れないものだったのだが、この仕掛けによって目が離せなくなってしまったのが痛し痒しという状況。
どうでもいい電波ギャグや死ぬほどバカな掛け合い漫才の合間に、実にさりげなく設定のヒントが紛れ込んでいるのでまったく気を抜けないし、かといって全部まともに取り合ってたら、忍耐が破滅する。
プレイ中、まるでオシロスコープのように波形が上下動する私の気分。これが、このテキストに乗れる人だったらどんなにシナリオにのめり込めるだろうかと、羨ましく妬ましく思ったことが幾度も。

精神的・肉体的に傷を負った人間ばかりが集まる群青学院。最初のうちは皆、特筆することもない普通の学生。
だが、人がいなくなった世界で、困惑はしても淡々と生きることができる彼らはやはり「普通」じゃないのだろう。
そして、きっちり1週間でループがかかり、それまでの記憶を失って再構成される世界。
そこで徐々に崩壊が始まる人間関係。彼らが学院に集ったのは故なきことではないのだと嫌でも分からされる、
「普通の人」との歪みやズレが表面化していく。
自分たちを爪弾いた優しくない世界と、自分の「群青色」との軋轢に傷つき、他者との関わりあいができない登場人物たち。
それが露呈していく様は、実に醜悪でやがて殺戮にまで発展するドロドロっぷり。

中でも、「普通の人間」としての言動を知覚してはいるが理解できていない主人公の凶悪ぶりは、こんなにプレイヤーの
共感を得られない人間を主人公に据えていいのだろうかと心配になってくるほど。
だが、「多重世界の観測者」としての立場を理解した中盤以降はまさに息をのむ展開で、彼らを補完し、在るべき場所へ
戻してやる主人公。
それによって、もう二度と彼らには会えなくなることを知っていながら。
交差とは、ただ一点。そこを抜け出した友人たちと主人公が交わることは今後一切ない。
ただ、主人公が発信し続けるラジオ放送「CROSS†CHANNEL」を除いて。
それが主人公の今まで失われていた人としてのコミュニケーション手段であり、世界との関わり方であった――。

何だこの、卑怯なまでに鮮やかすぎる幕切れは!

そして、そこでようやく流れるED。歌曲付きであり、ライター自身が作詞したそれは強烈にネタバレを含んでいる。
単品で聞くならわりといいかな、と言うレベルなのだが、このタイミング、この場面で流されるのはもう反則に等しい。
「テーマ曲」でありながらOPですら流れず、今までのどの場面にも流されることのなかったことへの疑問が氷解し、さらに「やられた!」気分が上昇。

それが済むと、今度は実に論議を呼んだ問題のエピローグ。
や、いいんじゃないですか。私は結構好きだな。
これって要するに、「この空がなくなるその日までは……」のその日、ってことじゃないの?

空がなくなる=ループ世界が終わる=世界そのものが滅亡=主人公もなくなる

で、ループ世界で7人を殺してしまった主人公と、その7人の魂(?)のような存在が「お別れだ」と言ってるのにも説明がつくし、「世界が終わる」(分解が始まる)ことによって、元の世界と近くなったからセミの鳴き声が聞こえた、ってことじゃダメですか?
「世界がなくなった」からの、「チャンネルが閉じた」からの突然のブラックアウトじゃないの?
いずれにしても、「みんな助かって救われた、わーいハッピー」なバカエンディングではない……はずだ。

これだけ大がかりな世界で展開されるドラマ自体は意外と安っぽく、キャラにも別段魅力があるわけではない。
テーマの提示の仕方は抜群に上手いのに、そこからの論理展開が安直すぎてやはり好みじゃないし、どうしても説得力に欠ける。
ただ、元はと言えば非常に不安定な精神を持った登場人物たちでもあるので、その点を考慮すれば、普通なら気付いて当たり前の事実を終盤近くまで引っ張ってしまうのも仕方のないところか。
(この点、「家族計画」は普通の人間が気付いて当然の事実に気付いてくれないことが多すぎて私の酷評の対象になった)

どうあってもこれは構成で魅せる物語であり、そのためのストーリー展開でキャラ設定。いわば単なる小道具。
余計なことを考えず、そういう割り切り方をして捉えた方が絶対に楽しめると思う。
面白い、とかつまらない、とかそういう感想には不向き。ただ、できるなら味わってみた方がいい、としか言えない。
完全にプロットの勝利であり、

事前情報まったくなしでこのトリックを見抜くことは、まず不可能

だと断言する。
これでテキストが好みだったら、確実に神の領域に突入していただけに惜しすぎる感はあるが、これ以上ライター買いの作品が増えたら破産間違いなしなので、助かったという気も。
田中ロミオが実に予断のならないシナリオライターであることをひしひしと感じました。
秀作でも力作でもない、ただし意欲作、近来稀にみるほどの
プレイヤーをものすごく選びますので、あとは各自、勘を研ぎ澄ませてご検討を。

カルタグラ~ツキ狂イノ病~

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
78★★★

新ブランド、Innocent Grayの第一弾。
評点を見てもらえば分かるとおり、全部の水準がなかなかの高アベレージであり、安定感は抜群
猟奇サスペンスが平気な人になら、まず勧めてもいいと言えるレベルで仕上がっており、非常に手堅い作り。
だが、その分図抜けてここが素晴らしい、と言える特色もない。
そこそこ面白いのだが、想定範囲内に収まってしまっており、新ブランドが持つがむしゃらなパワーのようなものが感じられないのがやや残念。
とはいえ、シナリオが多少弱い以外は、押し並べて高クオリティを維持しており、早くも次作以降に期待できる。

システムは上々。必要な機能は充分に備えているし、CG・サウンドモードもシーン回想もある。
ホイールバックログでの音声再生も対応、エフェクトのオンオフも3段階で切り替えられて便利。
既選択肢の色が変わるのも分かりやすくて助かる。おかげで補完はかなり楽。

絵はものすごく丁寧。雰囲気も出ているし、何より、物語の尺のわりに差分なしで200枚というかなりの数のCGが用意されていることで視覚的な満足度も高い
背景も手を抜かず、彩度を抑え気味にして、陰鬱な猟奇殺人を扱う物語に相応しい舞台を作り上げている。

音楽も、殺害から立ち回り、哀切溢れるシーンやちょっと笑いの入った箇所まで、様々な場面を盛り上げる、しっかりとした作り。
ただ、一番印象深くあるはずのOP曲のインパクトが薄く、ボーカルの歌唱力にも難があるのが残念。
とか言ってたら、このボーカリスト結構人気ある人だったのね。すいません、無知で。
でもこの曲だけ聞いたら、歌あんまり上手くないと……思うよ?(←弱気)
ちなみに全編フルボイス。キャスティングはまぁまぁ。
が!!! 主人公の元上司で警視庁の辣腕刑事役の方、「嶋和成」氏となってますが、中田譲治氏(マイラヴ)に聞こえるのは私の幻聴ですか?
誰か真相教えて下さい。

良い絵・良い音楽が揃い、演出が問題となってくるが、今作はそれがかなり奮っている。
カットインが多用され、停滞しがちな物語に緩急をつけるのにも一役買っているし、幕間劇で殺人者や他者の視点になった際は、縦書きになるのもいい。
物語後半、犯人側にザッピングする箇所があり、倒叙物の雰囲気を味わえるのも良。
しかも、これらの挿入タイミングが絶妙で、シナリオのテンポの悪さをカバーしている。
また、少ないながらも戦闘シーンもあり、そこでの画面エフェクトもスピードと緊迫感のあるものに仕上がっており、演出に関してはかなり洗練されたものを感じた。
ただし、シーン切替時にかなりの頻度でアイキャッチが入り、これが少々うっとうしい。
エフェクトを切ればすっ飛ばせるが、この点はもう少し見せ方を工夫するべき。

そして、シナリオ。
残念ながら、当方重度のミステリ好きを自認しているため、おおよその事件のからくりが容易に見えてしまい、お手軽感が否めなかった。
それというのも、どれもこれもどこかで見たことのあるようなエピソードばかりで、ほとんどひねりがなく、特別新たなアイディアも盛りこまれていなかったから。

最後の大仕掛けであるはずの(ネタバレ→!!)生者と死者、さらに双子間の二重の入れ替わりは、大昔からそれこそ何度も取り沙汰されてきた手口だし、死体の背中に羽根を生やす・串刺しになって死ぬなんてのも、最近では「多重人格探偵サイコ」が記憶に新しい。
憑き物筋の家系に姉妹、財閥令嬢に全寮制のミッションスクールとくれば、あれあれ、それは京極夏彦では? と、そういったモチーフが透けて見えてしまって乗り切れない上に、事件自体がなかなか進展しないために途中で飽きてしまう。

おまけに、時代背景を昭和初期としているのに、それをまるで無視した台詞回しや行動が多すぎて、かなり鼻に付く。
昭和初期の人間は、普通エッチするとか言わないと思うぞ。女性が「~ッス」なんて言葉遣いもしないと思うぞ。
なのに、地の文にはふりがなを振らないと読めないような難解な言い回しが平気で使われており、そういった文章に対する無頓着さや、大雑把すぎる時代考証が気になって仕方がない。(そんなの私だけか?)
これだけでも、せっかくの舞台の雰囲気が台無しに。

また、主人公が警察を辞めることになった経緯や、過去に携わった事件の顛末等、ストーリーに密接に絡んでくるわりには
語られないことが多すぎて、どうにも消化不良気味。
事件の根幹に関わる由良との関係だって、描写が薄いせいで、「それでそんなに執着されてもなぁ」という気分を払拭できないし、事件を複雑にしすぎようとして失敗したという、中途半端な印象が否めない。

キャラ造形もちと痛い。
勘が鋭く、明敏な探偵であると言われている主人公は狂言回しでしかなく、しかも決定的に鈍臭くて頭も悪い。
肝心の探偵役すら妹(性格に相当難あり。かなり好き嫌いが分かれる。ちなみに実兄妹EDあり)に奪われてしまい、やってることはといえば、あっちの女にフラフラ、今度はこっちの女にフラフラと手を出してばかり。
(エロゲだから仕方ないが)
そのせいで、片っ端から被害者を増やしているという体たらく。はっきり言って、諸悪の根元はこいつだ。
こんなダメ主人公、久しぶりに見ました。「君望」のアホ之以来じゃないか?

このアホウぶりのせいでいっこうに事件が進まず、とにかくスピーディーに先に進みたい諸兄には不向き。
ミステリのスピード感ってものすごく重要なのですよ。
加速して、加速して、最高にスピードに乗り切ったところで崖から突き落とされるくらいの勢いがなければ、衝撃の謎解き、という感覚は得られないので。

ところがこのシナリオ、その最後の謎解きの部分ですら、自分はノータッチで次々と真実が語られていき、つくづく俺の役目っていったい何? と悲しくなる。
一方的に情報開示されるのをボケーっと聞くしかない様は、決定的にミステリの爽快感に欠ける。
その謎が、誰にも解けないような驚きに満ち溢れたものならよいのだが、最初に書いた通り、実にありがちな展開をたどるため、それもない。
せめて論理的に破綻がないようなものを。
事件の第一犯人として、それまで名前すら出てこなかったような人間を突如として挙げるのは反則です。

さらに、メインヒロインが私の「嫌いツボ」をしたたかに刺激する、
「明るく前向きでちょっとドジっ娘、一生懸命で健気」
という最悪の造形。(普通はたぶん好かれるんだと思う……独自偏見路線突っ走ってすんません)
当然、このキャラがトゥルーエンドの鍵を握るため、その脳天気で抜けた言動に辟易しながらプレイする羽目に。
物語が陰惨な展開であるだけに、このキャラの言動に救われるという向きもあるのだろうが、私には邪魔でしかなかった。

暗く、どこまでも暗く深くて光など差さない奈落の底に。
感動はいらん。希望もいらん。嘆きと妄執と呪詛に彩られ、最後には凄惨なカタストロフを。

それこそが猟奇サスペンスの醍醐味だと思うのだが、あっさりとこう救いを用意されてはかなりしょんぼり。
(↑言っておくが私は危ないヤツではない。念のため)
人の妄執をテーマにしているわりに、そういった細部の扱いがずさんなので、心底肝が冷えるということがない。
もっとぞくりとさせてもらいたかった。

例えばラスト。(以下、超ネタバレ。未プレイの人・トゥルーエンド未到達の人は見ちゃダメ!!)
和菜は結局人知れず殺されており、主人公は入れ替わりに気付かず(どうせバカだしな)、プレイヤーのみにだけ包帯の取れた由良のCGを提示して、入れ替わりの事実に気付かせるとか。
その際は憑き物筋らしく、獣目にするとか。瞳の色が違うくらいでは全然ビビれませんわ。
当然、いずれ真実にたどり着く危険性のある妹にはご退場(殺害)願いたい。
その計画を練りながら画面フェードアウト。スタッフロール。

……のような、「救いこれっぽっちもなしED」が見たかったのです。
(↑本当にやったら、たぶん各所レビューで袋叩きに遭うと思うが。私は支持しますよ?)

ちなみに、グロ表現はかなり頑張っている。目玉抉ったり、首手足ちょん切られたり。
もちろんばっちりCGもありますので、嫌いな方はお気を付けて。

全体的にシナリオはとにかくぬるめの印象。詰めが甘いと言ってもよい。
あれもこれもとやりたい気持ちは分かるのだが、一つ一つのエピソードが煮え切らないものが多すぎ、結果的に全部が生煮えという典型的な失敗料理になりかけている。
各ヒロインのEDも、メインヒロイン以外は事件が放ったらかしになってしまうのでラブラブどころじゃないし、ほとんどがバッドエンド。
おまけに、何で出てきたか分からないような必要性のないヒロインも用意されていて、余計に事件が進まない。
シナリオ以外の部分はかなり好印象であるので、作品レベルとしては平均以上なのだが、かえすがえすもこの点が惜しい。

自分の身近な人間も容赦なく死んでしまうので、そういった惨劇に耐えられない人は回れ右。
グロいの嫌い。血なんてもってのほか。切断面なんて見たら倒れちゃいますという人も回れ右。
超本格的なミステリ物を! 破綻なんて容赦しないぜ! という人は走って回れ右。
それ以外の、エログロ猟奇・サスペンスフルなギャルゲーがやりたいな、という人にはオススメ。
過大な期待すらしなければ、そこそこ楽しめると思います。(エロゲにしては)ちょっぴり値段も安めだしね。

家族計画

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
70★★

下で毒を吐くために、サクサクとシナリオ以外について論評してまいります。
絵。かわいいけれど、可もなく不可もなく。少し塗りが荒い。
物語の尺のわりにCGがかなり少なめなのと、重要なサブキャラに立ち絵がないのが残念。

音楽。安定以外の何者でもないI'veサウンド。が、これも可もなく不可もなく。
全編シーンにマッチはしてるけど、取り立てて「これが名曲!」と言うべき曲もなし。
ボイス無いのがかなり助かった。この長さで声なんぞ出されたら死ぬ。(どうせ切るけどな)
CD-DAなのは構わないのだが、曲が終わってループするときにもたつきがあるのが気になった。

システム。オートクリック、既読スキップ、ホイールバックログ完備、セーブ数もそこそこ。
AVGプレイする上では十分及第点。とりたてて手酷いバグもないようだが、CDレス起動できないのが難点。

演出。平々凡々。ストーリーで魅せるタイプのゲームだし仕方がない。

そしてやってまいりましたシナリオ。


注! ここより以下、猛毒地帯となりますので、このゲームのファンの方はお願いですからお戻り下さい。 俺はマゾだぜ! って方なら臨死体験でイケるレベルで突っ走らせていただきます。

あー、まあ何というか。

期待しすぎた私がバカでした、と言わざるをえません。

同メーカー・同ライターの「加奈~いもうと~」が力作であったのと、世評が相当に高かったのでものごっつー勇んでプレイしたのですが。
開始後10分してすでに諦めムードが蔓延。

とにかく無駄の多い冗長なテキスト。
いちいち面白くもないギャグを挟んだテンポの悪い会話。
「俺は○○をした(次ページへ)」「次に○○をした(次ページへ)」と、一文ごとに次へ送らねばならず、早々とオートクリックに登場いただく羽目に。
どうして真面目な会話をしているときに、非常識なギャグで場を混ぜっ返す必要があるのか極めて謎。
山田一氏ってこんなに文章下手だったっけ?

それぞれ各ヒロイン+主人公に突きつけられる事実は重いものの、そこから展開する論理が稚拙すぎて、テーマに至極真面目に取り組んでいるのは分かるのだが、描き出そうとする人と人との軋轢に重みが感じられない。
ある程度年齢のいった人なら、その青臭さにほほえましくなったり、懐かしさを覚えたりするよりも、このガキ、甘えてんじゃねぇ! とうっとうしさや苛立ちが先に立つ。

現代物をやるときには、フィクションであることをどれだけ観客に意識させずにいられるかが鍵になるが、ものすごく都合のよいドリームで世界が構成されており、しょっぱなから興醒めしてしまう。
現実は常に無慈悲で残酷、ゆえに世界に平等であるのに、この世界は中途半端に現実的で、あとはずいぶんとファンタジー。

主人公の造形も鼻につく。被害者意識が強すぎてまるで共感できないし、同じ過ちを何度も犯す。
自分の目が開いてないのを棚に上げて幼稚な主張を振りかざすし、挙げ句の果てにその過ちに気付いてからは一転、どうしようもない局面に立たされてまで独り相撲をとり続けるという成長のなさぶり。
成人過ぎて、しかも普通よりもずっとハードな生き方を強いられてきているわりには意志も弱いし、人格の研ぎ澄まされ方が鈍いとしか言いようがない。

おまけに登場人物が皆子供。姿形こそ年齢相応だけど、考え方が幼稚園児と同等のメンタリティしかないため、何かつらいことがあるたびにすぐにくじけるし逃げる。

このアホンダラが! 逃げてカタつく現実などこの世にはありゃしないのじゃあ! 泣いて済むなら警察いらんわボケ!
と張り倒したくなることたびたび。
先に進むための回り道ならともかく、言動が堂々巡りすることばかりで、お前は山手線か! とツッコミたくなる。
(乗ったことありませんが)

やたらと他者に依存するキャラ、人の顔色ばかり伺うキャラ、社会性がなく傲慢以外の何物でもないキャラ等々、とにかく出てくる攻略対象キャラのほとんどが理由はあれども社会不適合者ばかりで、それを免罪符のごとく振りかざして、「私、不幸なの。だから面倒見てね」と不本意な状況を押しつけられるもんだから、個別ルートに入る前からげんなり。
せっかくプレイヤーの同情に足る設定を持っていても、肝心のキャラの肉付けがこんなだから、「仕方ねーだろ。自業自得だよ」、という気分になってしまう。

テメエのケツをテメエで拭けない奴には自己主張する権利などありません

被害者ヅラしているのに、他者を傷つけることには(やむを得ない事情をもっていたとしても)無頓着なのも問題。
突き放される、無視される悲しみを知っているはずなのに、自分もそれをやりますか?
自己犠牲で一人悦に入って、同じドジ踏むのは許されますか?
自分の事情のためには麻薬も売りますか? 相手の体を慮った言葉の一つも吐けば、犯罪行為は無に帰せますか?
売春なら傷つくのも損するのも自分一人で済むが、薬を売るのは他者を傷つける行為なのでは?
誰よりも痛みを知っているはずの各々のキャラたちがそれをやりますか? とツッコミどころ満載。

スタートラインが他者と違うのは仕方がないこと。
自分では選べないのだし、大なり小なりどんな人間だって違って当たり前。
そこからいかに生きるかが重要なのであって、環境のせいにして自省を怠り、進歩しようとしない人間は大嫌いです。

ついでにこの世の中、家族がすべてじゃありません。
血の繋がりがナンボのもんですか。直系だって他人より薄い関係なんてその辺にゴロゴロしてます。

人は所詮一人で立つしかない。

それは間違いじゃないし私の持論でもあるけれど、そのために他者を排斥するのではなく、だからこそ良好な人間関係を築かなければならないのでは?
そこに生まれた真に信頼に値する人間を大事にするべきなのでは?
そして、自らも他者の信頼に足る人間として生きねばならないのでは?(性悪説みたいだな)

そういった、至極当然の事実に物語のキャラたちが気付くのはゲームの後半。
そこに至るまでに垂れ流された、暴力的なまでにどうしようもないグダグダ論理ですでにプレイヤーの我慢は沸点寸前。
だから、いかに後半の展開で巻き返しを図ろうとも、一度はバラバラになった「家族」が、再び高屋敷家に集う大団円を迎えようとも、「ふーんあっそ。良かったね」で終わってしまい、何の感動も得られない。

そもそも、再三「家族の絆」と訴えてはいるが、それらしい結束を見せたことなんてゲーム中、ほとんどないのでは?
一緒に住んでメシ食って、それぞれ勝手に暮らしてるだけで、そこに暖かさも団結力も欠片も見出せなかった私の心が摩滅しているのですか?
結局、各ルートを終了しても、メンバーのその後はさらりと触れられるだけで、「え? 家族になったんでしょ?」と拍子抜けさせられる。
物語中でそこまで固執していたのに、一人とデキちまったら後は適当ですか? ずいぶんとクールですな。

「家族愛」物としては説得力に欠けるし、恋愛ゲーとしてはさらに大味。
各ヒロインの個別ルートが少なく、物語のほとんどは共通ルートで展開する。
そのため、とにかく初回プレイが地獄だが、これを乗り切ってさえしまえばあとは既読スキップ併用で何とかなる。
ただし、初回6~10時間、各ヒロイン2~3時間と計算し、人によっては数十時間になるであろう貴重な時間をこのゲームで浪費していいのか、という質問には残念ながらNOと言わざるをえない。

人生は短く、読める本もプレイできるゲームも限られてるんです。
悪いことは言わないから、超ピュアな感性でも持っていない限り、このゲームには近づかない方が無難。
……あ、ロリ属性のある人は結構いいかも。末莉なんてかなりソソる(だろうと思われる)キャラだったので。

私? もちろん罵殺したくなりましたよ(スマイル全開)