1  |  2  |  3  |  4  |  5  | All pages

新・御神楽少女探偵団

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
79★★★

コンシューマーから18禁へとプラットフォームを変えた作品。なのだが。
あいたー。これは18禁にしてはいけないゲームの典型になっちまいました。
PS版ではぼかしてあったエログロの表現を遠慮なく盛り込んでしまったことで、コンシューマー版にあった魅力が損なわれてしまったという稀有な例。
そして、何よりも爽快感の薄いシナリオ。

とかくひどかったPS版の絵に関しては、さすがに老舗のエルフが手がけただけあって、原画・塗りともに隙のない高レベルなものに進化しているものの。
キャスティングも見直しが計られ、PS版で「アンタ本当にプロ?」と疑いたくなる演技をかましていた某お嬢様等、ボイス面でも大幅に改善が見られたものの。

残念ながら、キャラ立てと18禁というフィールドが噛み合っていない
前作はパッと見は「3人娘で探偵団? ウヒウヒ、エロゲな予感」な雰囲気なのだが、同梱されている移植版をプレイすると分かる通り、見た目とはうって変わった硬派の、清潔感あるAVGなのだ。
が、せっかく生き生きとした個性を持ち合わせていた3人が、「色恋沙汰」を最終目的として盛り込まれてしまったため、凡百の小娘に大変身。
おまけにそのHシーンもかなり薄く、シチュエーションも強引で、「とにかくエロを盛り込まなきゃ」という意志が空回りしている印象を受ける。
せめて、3人の個別のエピソードをもっと設け、時人との心の交流を丹念に描くべきだったと思う。
最後の最後にきて、「私、先生が好きです→いきなりH」という展開はどうにも腑に落ちないのだ。

また、肝心の快刀乱麻を断つべき探偵の時人が今作ではヘタレなのも問題。
確かに推理力においてかつての冴えを衰えさせてはいないものの、いきなりジャンキーで廃人寸前、というのはこれから推理ゲームを解くぞ! という意気込みをしていたプレイヤーを脱力させるに十分すぎる。
おまけに、目はうつろで頬は痩け、よだれと不精髭にまみれた、見るからに汚らしいグラフィックまできちんと用意してくれやがってる徹底ぶり。いったい誰がそんな名探偵像を拝みたいものだろうか。
普通、プレイヤーにショックを与えるのは奮起を促すための演出じゃないのか。これでは萎える一方だ。

そういった、「推理」以外の部分のシナリオにはかなり粗が目立つが、軸となるこちらはさすがの出来映え。
意外性の高さや複雑に絡み合う伏線、プレイヤーにほんの少しの違和感を提示するテクニックも見事だし、謎解きも時折荒唐無稽な点はあるが、納得に足るレベル。
さらに18禁ということで遠慮なくやれるようになった猟奇的エピソードと残酷描写がてんこ盛り。
人によっては目を背けたくなるグラフィックや吐き気を催すであろうシチュエーションがこれでもか、と大量に盛り込まれているので、おどろおどろしい推理物に目がない人ならかなり楽しめるはずだ。
だからこそ上記の2点が惜しすぎるのだが。

読むだけでないシステムとして「推理トリガー」を盛り込んであるので、ゲームとしてはかなり好感触。
自分で能動的に介入しないと解けないようになっているので、ダレがちな長編AVGによい緊張感を与えてくれるし、そうして謎が解けたときの爽快感もひとしお。

ただ、推理ゲームとしてはバックログを読めることが必須だと思うのだが、これがなぜかできない。
この辺のシステム周りは少々片手落ち感が否めない。
セーブもチャプターごとにしかできないので、別の選択肢をしてみたいときが面倒。
ゲームの性質上、どこでもセーブ、というわけにはいかないだろうが、尺の長いゲームでもあるので、その辺もう少し融通を利かせてくれると良かったと思う。

本格推理物、ゲーム性のあるエロゲーを求める方にお勧め。
ただし、残酷描写にお気を付けて。シャレじゃなくかなりキッツイのがありますので。

斬魔大聖デモンベイン

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
83★★★

これは好き嫌いが別れるであろう、ある意味問題作。
「"Hello,world."」ほどの明らかな失敗作でもないし、総じて手堅くまとまっている。
が、往年の虚淵玄節に慣れてしまったニトロファンには、受け入れられるテキストかどうか、というのが非常に重くのしかかってくるのだ。
あちらがコクもキレも鋭い、重厚な円熟味を感じる安定した古酒の味わいなら、こちらは若さとパンチ力に満ちた新酒といった趣。

とにかく勢いはある。だが、対象を違う言葉で何度も繰り返して表現する手法が多用されており、ともすればしつこすぎるきらいがあるため、マシンガントークが上滑りしている印象を受ける。
虚淵氏が極力無駄を書かないことで物語のテーマや輪郭をくっきりと浮かび上がらせているのとは対照的に、訴えたいことをあらゆる方面から何度も畳みかける、この絨毯爆撃的な手法はある種諸刃の剣。
好きな人なら気にならないだろうが、一度鼻についてしまうとうっとうしさがまとわりつく。
特に、ゲーム・漫画・アニメのパロディ的なネタも多く、多少ならお遊びとして許容できるのだが、これまた相当多用されている上に、かなりシリアスな場面にも登場するのは少々やりすぎの感が否めない。
良くも悪くもライトノベル臭が強く、この手のテキストに慣れていない人はつらいかもしれない。
今回のシナリオライターは鋼屋ジン氏だが、私が以前読んだSSとはだいぶスタイルが変わっているような。
ゲームのシナリオと小説とは形態が違うので、あえてこの手の形式にしたのかもしれない。

だが、そういったテキストの方向性に目をつぶれば、ストーリー的にはかなり読ませる力作。
ニトロプラスのゲームであることを十二分に念頭に置いた、熱く、スピード感に溢れ、時には切ない各エピソードが、これだけのボリュームを持ちながら、伏線を破綻させずにきちんと収束していく様は圧巻。
ルートごとにヒロインが変わるのはもちろんのこと、それに合わせて最後の敵すらも変わってしまう。
もちろんエンディングも世界の秘密をしっかり提示し、据わりが良く、納得に足る出来であるため、死ぬほど長い苦痛を延々と与えられた挙げ句、ヒロイン全員のエンドが同じという同メーカーの超ボリュームを誇る某ゲーム(相当心の傷)とは満足度が雲泥の差。
さらに、エンディングの扱い方が相当に巧い。長大なボリューム、クトゥルー神話というネタの設定を最大限に生かし、かつ後味に爽快感を伴うという、ニトロ作品には珍しい一本となっている。

音楽は臨場感たっぷりで、ボリュームあるゲームにふさわしく曲数も多め。
曲のタイトルも奮ってるし相変わらず良い仕事をする音屋さんたちです。
テーマソングは生沢佑一氏。静かなイントロから壮大なサビへと情感たっぷりでOPにふさわしい、熱い盛り上がりを予感させる良い仕上がり。
一方音声は、せっかくの超豪華声優陣なのに、しゃべる場所が全体量から見てかなり少なめ。
尺の長い物語なので仕方がないと言えばそれまでなのだが、残念な感は否めない。
PS版はフルボイスらしいので(しかも我が愛する矢尾一樹氏や若本規夫氏、中田譲治氏という豪華っぷり!!)、ぜひこのキャストをPC版で……と嘆き悲しんでいる次第。

システムは微妙に使いづらい。私は大丈夫だったが、プロテクトの誤爆が多発しているらしいし、バックログがホイールで見られないのが致命的。
システム周りは直感的なインターフェースで操作できることが大前提で、細かい設定などは二の次だと思うのだが、今作はそれが逆になってしまっているのが残念。
大作とも呼べるボリュームのゲームなだけに、やはり気持ち良い操作感は必須だと痛感した。

シナリオは真っ向勝負の力技。
小手先のテクニックに頼らない、逃げも裏技もない愚直なまでの正面突破
虚渕氏に比べれば確かに青臭く、つたない点もあるけれど、それは個人の好みの問題だと思う。
とにかく複雑きわまるクトゥルー神話体系を題材に取りながら、これだけ綺麗かつ納得に足る帰着を見せたという点。
これだけでも、他の些末な問題点には目をつぶってもいいくらい高く評価できる。

大方の予想通り、私はクトゥルー関連もわりと好きで色々読んではいたが、例のダーレスによって付け加えられた設定を包含しつつ、それを効果的に生かしたストーリーには大いに感心させられた。
物語ではアルノーマルエンドにあたるエピソードだが、これは鳥肌めいたものを感じるほど印象に残った。

たった二人の善なる神。
それは邪神を封じるために永遠なる時を戦い続けるアルと九郎の姿であり、本来なら選ばねばならない道を選べず、彼と共にあることを願ってしまったアルによって顕現した世界。

誰からも責められる事のない罪。
故に。
誰からも赦される事の無い罪。
(ゲーム本文より、アルの独白)

たった一つの、ラストの選択肢によってハッピーエンドへと至れることを知っているプレイヤーなら、その切なさに胸をかきむしられるであろう心震えるラストだが、そこで彼らを善なる神として扱うことで、「邪神群を封じる旧神」を存在させたダーレスの設定を見事に説明できている。
それは、なぜ「旧支配者同士の対立」が存在するのか、という疑問への答えにもなっているという周到さ。
希望などない、邪神に支配された世界に生まれたたった一筋の光。
それがアルと九郎であり、「選ぶべき選択肢」を選ばなかったが故にハッピーエンドへ至れなかったプレイヤーに残された次への希望でもある。

ゲーム自体のボリュームと寄り道表記の多さのため、実はプレイ途中で結構中だるみしてしまったのだが、罪の意識に苛まれながらも己の幸せを貫き、痛みを伴う幸福を得るこのラストは大変に私好みのため、評価はかなり高い。
哀しくも美しいこの手の味わいのラストは、覇道瑠璃のルートでも味わうことができる。

いつ終わるともしれない、その「いつか」のために戦い続ける物語。
決して己の想いを口にすることはできず、たった一人の少女を護るために何度敗れようとも立ち上がり、回り続ける物語。
それが切なく、毅然とした印象であるがゆえに、そのループが破れたときに訪れる優しいエンディングの感動は大きい。

と、ここまで書いておいてなんだが、どうでもいいことが気になったので一つ。
瑠璃は財閥のお嬢様のくせに下着ダサすぎ
オーバドゥやラ・ペルラくらい着てろや、と思わずツッコミを入れたくなりました。
エメラルドクリーンと白のストライプはないだろう、今どき。(しかもあれは絶対綿パンツだ)
あれで超萎えたのは私だけではないはずだ……と思っていたら、ネットでは萌えてる人多数ですげぇビックリ。
やはり、オタク層には受ける記号だったのですか、エメラルドクリーンと白のストライプ綿パンは!
私が男なら、脱がした時点でその場で回れ右して帰りたくなるくらい萎えたのですが。

あと、九郎がデカすぎ。(何が? ナニが)
絶対入らねぇ。むしろ裂ける。間違いなく。しかも相手はロリだし。痛いっつーの!!
男は大きさよりテクです。これ絶対。
大きいのは痛いだけ。良くも何ともありません。これ真実。
こちとら、正真正銘の女が言うんだから間違いない。
(いや中には「大きくなきゃイヤ~ン」という方がいるかもしれないが。つーか下品ですいません)

というわけで、熱い物語、ロボット物、絶望的な状況からの逆転劇、人外ロリ、クトゥルーなどのキーワードに敏感に反応してしまう方にお勧め。

あ、ライカルートについて書き忘れた。が、ボスが違うだけで普通。特筆すべきとこはないです。私にとっては。
リューガとの殺し愛は結構ツボだったのですが。
仮面ラ●ダー的な懊悩する主人公が好きな人ならいいかもね。

沙耶の唄

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
82★★★

ニトロの屋台骨、虚淵玄+中央東口コンビの最新作。
業界の各情報誌に、
「過去の作風である『漢祭り・火薬弾薬祭り・日本刀カンフー祭り』を深く反省し、野郎キャラよりも大勢のおなごキャラを出す」
と、18禁ゲームメーカーとしては至極当たり前なのだが、ニトロファンには驚愕の野心溢るる声明文を発表し、いったいどんな作品に仕上がってくるのかと戦々恐々としていたら。
ゲーム起動開始と同時に爆笑。

何せオプションに、「グロ(画像)をそのまま表示」「フォーカスをぼかす」「明度を落とす」なんて選択があるし。
そうか、そうきたのか、ニトロ。単なるおなご祭りなんてするわけないとは思ってたよ。
さすが私の愛するメーカーだぜ!( ^ー゚)b

というわけでこのゲーム、イントロ部からいきなりグロ画像です。
それも、思いっきりスプラッタでこれでもかというくらいに緻密に描き込まれた臓物様が。
しかも、描写も微に入り細をうがち、それを引きずる音まで再現しちゃってくれてるので、この手の作風がダメな人はおとなしく回れ右した方が無難。
最初っからグロ全開でいくためにすぐ見慣れてしまい、慣れるとさほどでもないのだが。

CGはお馴染み中央東口氏。
元々異形の生物を描くのが格段に上手かった氏だが、やはり作品を重ねるに従って普通の人間を描くのも相当レベルアップしたのが伺える。
タイトルにもなっている、キーパーソンである沙耶の無邪気なかわいらしさは文句の付けようのない出来だし、抑えた色調のシックな画風は、作品の雰囲気に抜群にマッチしている。
また、高レベルな音楽でも知られるニトロだが、今回は突出した楽曲こそないものの、どれもホラー作品に相応しい不安感を煽るような曲調で、画面との相乗効果もきちんと計算されている。
もちろん、一部に有名キャストを起用したキャラボイスもハマっており、全体的にそつのない作り。

低価格作品でありながら、常時相当のレベルのものを見せつけるニトロらしく、システムにもまったく手を抜いていない。
特に、ホイールで文章を送れるのがとても便利。
私のようにものすごい勢いで文章を送る人間にとっては、クリックよりこっちの方が断然楽で早いので、これはかなりありがたい機能だった。
もちろんバックログもホイールで見れるが、残念ながら音声再生までには対応していない。

さて、肝心のシナリオ。
実は、初プレイ時には「面白いけど、虚淵氏だし当たり前。まっこんなもんだよね」と思ってました。
それがとても失礼な感想であることに気付かずに。
気付いたのは、ゲームをアンインストールして、レビューに何書こうかなぁと内容を反芻しつつぼんやり考え始めてから。

確かにプレイ時間が短すぎて食い足りない気持ちが強かったし、伏線が生かしきれなかった部分もある。
短編よりは中編くらいにすればよかったかなぁとも思う。
でも、その内容はただのスプラッタホラーじゃなかった。

あの救いのないラスト、その意図はプレイヤーによって受け取り方が千差万別だとは思うけど。
あれは、認識障害を抱えている主人公視点だからこそああいう悲しげで綺麗な美しい景色が見えるのであって、それがもし普通の一般人だったら、どんなにおぞましい狂気の世界が見えてくるのか。

そして、沙耶が異形の生物であることを知ってしまったのにもかかわらず、変わらず沙耶を愛し続ける主人公。
それは、自らが異常であることを知りつつも彼岸を越えてしまったということだ。
この一種のパラダイムシフトにプレイ時気付けなかったことが大変悔しく、その破壊力に気付いたときは後の祭り。
ああもう、これだから私はバカだ。

そこには、必ず救いが起きてしまう、ご都合主義の感動物に対する強烈なアンチテーゼが感じられる。

この、誰が見てもハッピーじゃないのに、究極に幸福であるエンド。
何て絶望的な美しさだろう。
何て邪悪なメルヘンなんだろう。
何て醜悪な純愛なんだろう。

もう、さすが虚淵玄と言うしかない。現時点で間違いなく業界最高レベルのライターの一人。
下手をすると陳腐そのものになってしまうネタをここまで散りばめておきながら、ホラーの恐怖と萌え、燃え、決して相容れない種との恋愛に起因する悲哀や寂寥を、ここまで絶妙の配置でバランス良く出してくるのは並大抵の手腕ではない。

ある意味人をかなり選ぶ作品だが、対価効果以上の余韻が残るので、スプラッタに抵抗ない人はぜひ。
旧作虚淵ファンで未プレイの人も、氏の新境地を味わえるのでぜひ。

ところで虚淵氏へ。
次はぜひともまた「漢祭り」の長編を出していただきたいと思ってるのですが。

 1  |  2  |  3  |  4  |  5  | All pages