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月姫

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1096

これは、すごいゲームだ。
何がすごいって、これが商業ベースで作られたんじゃないってことが。
同人ベースでここまでやられちゃ、はっきり言ってゲームメーカー形なし。
何せ、私が今までプレイしたゲームの中でも、かなり図抜けている。
惜しむらくはシステム周辺が弱いこと、音楽、CGのボリュームが少ないこと。誤字が多すぎること。
が、それを補って余りあるテキスト量。キャラ造形。作品作りに対する意気込みが全然違う。

ネタは今や「使い古し」の代名詞である吸血鬼。
そして、格式はあるが謎に満ちた旧家。いわゆる伝奇物と呼ばれるジャンルであり、非の打ち所のない「ありがち」設定だ。
しかし、それを盛り上げる緻密な設定と圧倒的なボリューム、怜悧な視点と冴えた構成。
とにかく、シナリオとテキストの力がハンパじゃない。
月姫の魅力と破壊力は、ほぼこの二つによると言っても過言でない。

知能遅れか疑いたくなるヒロインも、くだらないことにウジウジと悩みまくるヘタレな主人公も、この物語には存在しない。
エロゲーの主人公に「燃えた」のは初めてだよ。(←「萌え」じゃないよ)
全員がきちんと知性を備えており、それぞれの価値観を持って生きている。
5人のヒロイン&主人公には、それぞれに過酷な運命が待っているのだが、そこから逃げだす者はいない。
みっともなく暴れ抗う者もいない。

文体の力もあるだろうが、常軌を逸した物語設定であるにもかかわらず、そこに住む人物たちは非常に理性的だ。
皆、自分のやるべきこと、なすべきことを見極め、あるべき場所に静かに佇む。
自律のもと動く、というのは、こういうゲームでは珍しい人間像だと思う。
そしてそこが、依存心が強く、頭の弱いヒロインが多い昨今のゲーム業界の中で、ひときわ異質に見える。
こういうキャラ造形を、
「18禁」という、最も上記のヒロインタイプが好まれるフィールドでやってしまう
こと自体がすごい。
ある意味、こういうところが「同人」なのかもしれない。
だって商業ベースじゃこんな実験怖くてできないだろう。普通。

ストーリー展開は、序盤がホラー色、後半はミステリ色が強い。
伏線の張り方が巧い。注意深くテキストを読み進めると簡単にネタが割れることでも、さりげなく、そして効果的に張られた伏線によって、最後にちゃんと得心がいく作りになっている。
ネタ自体を看破するのは、ある程度の読み巧者なら簡単なことだと思うのだが、その後味を、
「ちっ、やっぱりそうだったのか。つまらん」
と思わせるのと、
「ああ、やっぱりそうだったのか。しかしこれで納得がいった」
と思わせるのでは全然違う。月姫は当然後者のタイプだ。

例えば私は、(超ネタバレ危険!→)「志貴とシキの意識の交錯」「翡翠←→琥珀の入れ替わり」なんてのはかなりの序盤から分かったが、それでも問題なく最後まで物語を楽しめた。

ちなみに、月姫の世界を存分に味わい尽くすためには、推奨ルート(アルクェイド→シエル→秋葉→翡翠→琥珀)は絶対に守るべき。
後半の盛り上がりが断然違ってくる。特に秋葉以降の遠野家ルートにおいて。

私もかなり色々なノベルタイプAVGをプレイしたが、上手下手はともかくとしても、ここまで十二分にゲームの世界観を引き立てる文章を読んだのは、月姫が初めてだ。
やや説明的すぎるきらいはあるが、簡潔に抑えた筆致で滑ったところのない硬質の文体は、この静かで冷たく澄んだ物語に深みを与えている。

各章のタイトルも秀逸。
琥珀ルートでの「カイン」なんてのは、プレイ前は意味不明以外の何者でもないのだが、章を進み、その内容を理解してタイトルを思い起こしたときに初めて衝撃が訪れる。
これ以上ないほど内容に即した、それでいて卓越したセンスを誇るネーミングには、本当に皮膚が粟立つほど戦慄した。

文字自体が持つ視覚性とイメージ喚起力、言葉の呪力(「言霊」だからね)、そういうものを知り尽くした演出。
あて字がやたらと多いのは気になるが、決してこの世界観を損なうものではない。

映像が重要視され、中でも「とりあえず見栄えのいい絵出しとけばOK」なこの業界で、最も原始的な力で、最もストレートなパンチを食らわされた衝撃。

変わったことは何一つやっていない、あまりにもオーソドックスな、だが、珠玉のゲーム。
圧倒的なコストパフォーマンスと、本当に丁寧なゲーム作りの姿勢に敬意を表し、お勧め∞。
人死にが多いストーリーに抵抗のない方、不自然なハッピーエンドなど望まない方、何を押してもどうぞ。

闘神都市II

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
75★★★

かなり古いゲームだが、名作の誉れ高かったので、初めてエロゲーのRPGをプレイしてみました。
が……

レベルアップが超!!!!! めんどくせえ!!

何せ、私はRPGは好きだが、レベルアップ面倒くさがり魔人だったりする。
おかげでRPGはいつもアンダーレベルクリアで、ラスボス付近では毎度手痛い思いをしている。
(そしてちっとも懲りず、毎度泣きを見る)
エンカウントもかなり多めなので、短気魔人でもある私、今回はちょっとばかり小狡い手を使うことにした。
(どんな小狡い手を使ったかは、あえて内緒にしておこう)

階層構造型のダンジョンは探索がかなり楽しい。オートマッピングで地図が埋まっていくのも楽しいし、アイテム集めもなかなか。
一つの階もさほど長いわけではなく、長時間ゲームをやり続けられなくても切りどころがいい。
ゲームバランス自体はさほど悪いわけではないと思う。

さて、肝心のシナリオの方だが。
序盤では「闘神都市」という設定がアホっぽいな~、などとボケッとゲームを進めていると、いきなり中盤以降からどんでん返し食らわされます。
まさか、そんな意味があるなんて思っても見なかった、というわけで。

「天使食い」の設定も面白い。
強くなるためには天使を食わなければならず(別に直接咀嚼して食うわけじゃないよ、念のため)、されど天使を食えば罪が蓄積され、プレーヤーには罪悪感が生まれる……こういうの好きです。
まー、遠慮なく食わして頂きましたが。(罪悪感はどこへ?)

このゲーム、こういう二律背反的立場に立たされることが多い。
強くなったが故の虜囚になってしまうゲーム後半。
生きるためには飲まなければならない薬、しかしそれを飲めば理性のタガが外れてしまう設定、等々。
設定やストーリー展開に意外と容赦がないのがいい。協力者があっさり死んだりするし。

が、個人的には、ラスボスの背景が不透明なのが気になる。
昔のゲームなので容量の関係か、この辺の掘り下げがちょっと浅い

なぜアプロスは堕天使になったのか。
デラスはアプロスとどこで出会い、どうして「天使食い」にされたのか。

この二人は互いを「半身」と呼び合うほどに強い結びつきがあるのに、その辺がプレイヤーにはあまり伝わらないのが残念。
何でこいつらこんなに求めあってんの? という印象を受ける。
この辺をもっときっちり書き込めば、ラストにもうちょっと深みが出るかと思ったんだが。

基本的にはRPG王道の勧善懲悪モノで、作り込みもしっかりしているので、やっても損はない。
というか、RPG部分があまりにもしっかりしているので、かえって驚きました。(←失礼)
さすが「ゲーム」であることのアイデンティティをきっちり守るアリスソフトと言うべきか。
PSあたりのクソRPGよりは、ずっと手応えが楽しめるかと思います。

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