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つくとり

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
56★★

たかだか10時間もあればクリアできそうな今作を、長々と1週間以上かけて半死半生でクリアした。
最初こそ興味深くプレイしていたのだが、あまりにもツッコむところが多すぎ、途中からメモを取るのも面倒に。
かと言って笑いに転化できるほどの突き抜け感もなく、ひたすら襲い来る睡魔と倦怠感とに立ち向かった1週間。
途中で何度、「もう、ゴールしてもいいよね」(C)AIR と諦めかけたことか。
今作を説明するなら、「Win98が全盛の頃に、ラノベの新人賞一次審査で落ちた小説を元に作ったエロゲー」。
無駄と稚拙がよくない相乗効果を生み出し、今どきこれはないだろう、という古くさいパターンのゲームを作り上げている。

今作は選択肢がなく、序章後、前後編に分けられたシナリオをすべて読み終えると最終編が発生する仕組み。
個人的には、どうせ選択肢をなくすのであればノベル形式にしてほしかった。
数行しか表示されないテキストを延々とクリックし続けるのは苦行でしかない。
それに、ゲーム最大の魅力であるインタラクティブ性を犠牲にするのであれば、それにふさわしいだけの盛り上がりを見せてくれなくては。
なまじ高い金を払って、「電脳紙芝居」形式の作品を買うからには、相応の満足感くらいほしいと願ってもバチは当たらないと思うが。
とにかく作品全体が非常に安っぽく、あらかじめワゴンセール用に作られた粗製品のような印象を受けた。

さて、まずは絵。
私は基本的に絵はさほど重視しないタイプなのだが、さすがにこれは破滅的にダメだ。
シナリオとキャラクターデザインがあまりにも合っていなさすぎる。
原画は、「ブギーポップは笑わない」の挿画で有名な緒方剛志氏だが、他作品の絵と今作との間には暗くて深い溝がある。
どのキャラ絵・一枚絵にもやる気がまったく感じられず、ボリューム的にもずいぶんと寂しいのだ。
本当にシナリオ読んだ? と尋ねたくなるほどミスマッチで死んでいるキャラたち。
当然、そんな原画に意気など感じられないだろう塗りも冴えないまま。
だから、大した枚数もないそれが表示されても、まったく心を動かされることなどない。むしろ悲しくなる。

おまけに立ち絵もほとんどない。今どき、ここまで立ち絵を簡略化する作品など見たことがない。
おかげで、シナリオと整合性のない、またはミスマッチなシーンが多発し、これだけでげんなりさせられる。
背景にも乏しく、しかも質もあまり高くないとあっては、原画と立ち絵のまずさをフォローしようもない。
結果として、ビジュアル面の不備のせいでシナリオに水を差すことが多かった。
決してこの点は重視していなかったはずなのに、まさか足を引っ張られることになるとは。
やはり作品とは総合力だ。

音楽は可もなく不可もなく。OPはさすがに多少は良かったが、他は有象無象のレベル。
無音の箇所が多いのが気になるが、そもそも、楽曲のレベル自体は大したことがないのでさほどマイナスにはならない。
むしろCVがまずい。これはかなり大きい減点要素。
ここ最近、こうまで外したキャストを繰り出してくる作品に当たったことがなかったので、全力で椅子からずり落ちた。
ルルが犯罪級にダメだ。棒読み丸出し。素人臭すぎる。
他のザコキャラにならともかく、キーパーソンにこんなキャスティングをしてしまったのは予算の都合ですか?
しかも、一部主要女性キャラのみがボイス有りという仕様になっていて、彼女らに引けを取らない他のキーパーソンにすら声がないのが残念。
いっそのこと、こんな失敗したキャストなら、中途半端にボイスなど付けなければよかったとさえ思える。

演出とシステムには突出したところはない。
淡々と提示されたルートを辿るだけの作品なので、高度なシステムなど必要ないのは確かなのだが。
だが、かゆいところにはまったく手が届かない、愚直なだけの作りであることは否めない。
読むだけのシステムであるのに、まさかホイールによるメッセージ送りができないとは思わなかった。
今どきホイール付いてないマウス使ってる人、ほとんどいないと思うよ?
エンジンは椎名里緒だし、同エンジンを搭載している他作品(cx.あやかしびと)では普通に機能しているのになぜ?
どうもこの作品、各ポイントのあらゆる難が、どれもこれもシナリオへの集中を妨げようとしているように思えてならないのですが。

さて、肝心のシナリオだが。
正直言って、非常に肩すかしでがっかりした。OHPやパッケージから連想される正統派の和風サスペンス、狂気と戦慄で彩られる陰惨な物語を楽しみにしていたのに、いざ蓋を開けてみたら、しくじったライトノベルとしか言えない出来。
しかも、ストーリーの合間合間に、決して少なくはない量のギャグが入ってくる。
それだって笑えるならまだいい。笑えないギャグなど、飲食店のゴキブリほどに始末に負えない。

シナリオがダメである理由は数多くあるのだが、何と言っても設定・展開に無理がありすぎること。
今作のような、常軌を逸した閉鎖空間を演出するには、どんなエピソードを用いても許されると勘違いしている節がある。
プレイヤーがフィクションであることを忘れるくらいゾッとしたり驚いたりするには、ある程度のリアリティが絶対に必要。
それがどんなに荒唐無稽なSFやファンタジーであろうとも。
その、物語を展開するにあたって最低限必要なはずのリアリティがなさすぎて、興ざめすることが多い。

たまたま電車で乗り合わせた氏素性も分からない人間を、警察官が公務に同行させるものか。おい、守秘義務は?
そういう設定の小説やマンガは確かに多いが、それらは少しでも受け手が納得に足る裏付けをしているからであって、いきなり冒頭からそんな立場(しかも理由などない)を押しつけられたプレイヤーは呆気にとられるしかない。
そもそも、そんな無理強いをしてくる上に、口を開けば初対面の相手にくだらないギャグばかり連発する刑事キャラを、主人公がきちんとした警官として認識し、信用する方がどうかしてる。
この時点で、主人公の知能ランクは低能であると認定。それに伴い、この先の苦痛もある程度予測できる羽目に。

また、会うキャラ会うキャラが次から次へと同じボケをかまし、もはやツッコむ気すら失せる。
この村には、ツッコミを要しない人間は住んでいないのですか。全員、何かしらギャグに走らないとダメですか。
思ったよりもずっと明るくて楽しげな村デスね。もっと陰惨な雰囲気を期待していましたよ。そりゃもう、横溝ばりの。

うわー、水の中でしゃべれるなんて人外決定ですね。さすがつくとり様は違うわぁ。
あれ? じゃあ主人公はどうしてしゃべれるの?
物語の終盤、本来なら最高に盛り上がるであろう箇所で、頭から冷水を浴びせるような真似しないでください。

そういった、笑うに笑えない「地に足のついてなさ」が先へ進めば進むほどにボロボロと出現し、脳内は、起きてしまった事象を無理矢理納得するので精一杯。
物語にのめり込むだの集中だのできるレベルじゃない。
それに、エピソード自体が風呂敷をあまりにも広げすぎたせいで、それを扱いきれずにもがいている様がみっともない。
畳みきれない風呂敷を隠すために、その上からさらに大きい風呂敷で包もうとするのだが……の連続。
当然、物語がインフレを起こし、閉鎖空間で濃密に展開するはずだった因習と連続殺人の物語は、国をも揺るがす大ドタバタ劇へと変貌。
山の民や謎の宗教集団など、いかにもサブカル好みの設定を持ってきたまではよかったが、説明力もない上に「取って付けた」感が漂い、その消化不良っぷりが無惨。
結局、ライター自身が的を絞りきれていなかったせいで、数撃った矢が全部外れるという最悪の現象に。
いっそのこと、この手の設定をばっさりカットし、純粋に町内でのみ展開する物語にしてくれれば、もう少し据わりがよくなったはずだ。
多くのクローズドサークル物がきれいに着地できるのは、そうやって、人と場所を絞るからこそ。
全員が全員とも関係者、誰しもに裏の事情があるなんて設定、扱いきれるほどこのライターは敏腕ではない。

もう一つ。物語の展開もまずいが、日本語がまずい。あの伝説のPPのライター並みだ。
誤字脱字が異常に多く、表現もズレている。「焦げ臭い」を「据えた匂い」と表現する人、初めてですよ。
「掘の深い顔」ってどんな顔ですか。「満身創意」ってすごいね。超クリエイティブ。のっぽさん?
「検討ハズレ」って言い得て妙ですね。主人公の推理に対するライター自身のツッコミなんですか?
「弱みに漬け込む」ってどんな味の糠床?
何より、死体に対して「可愛そう」はないだろ。そもそも、「可愛そう」は造語だ。なぜ普通にひらがなで書かぬ?
それくらい、文筆業を生業とする者なら常識として身に付いているはずのものだろうが。

無頓着。文章を書くということに対してとにかく無頓着。無自覚。無責任。
単なる変換ミスはデバッグが足りなかったで済むだろうが(それだって作品としてはダメだ)、ここまでくると、明らかに書いたものを推敲もせず垂れ流しているとしか思えない。
少なくとも、「こんばんは」を「こんばんわ」と書く誤用を平気で繰り出してくるライターを、私は認めない。
「てにをは」も満足に使えませんか。小学校からやり直せ。
金を取って文章を読ませてるんだから、ある程度のレベルを求めるのは当然だ。
それがエロゲであろうがラノベであろうが純文学であろうが。
媒体など関係ない。それが文筆業のプライドというものじゃないのか。

一般的にはそこそこの高評価を得ているようだったので、期待を持って臨んだ結果、あえなく玉砕する羽目に。
そもそも評点の各ポイント全部がイマイチな上、ダメな部分が絶妙に合わさり、実にトホホな合体事故が発生。
一言で表現するなら、「安っぽい」。これに尽きる。
制作者の熱量がまるで伝わってこない。絵もシナリオもその他も。
「この手のジャンルは必ず釣られるファンも多いし、とりあえず狙っとけー」みたいなやっつけ仕事臭がして、稚拙だけれども魂込めて作った! という気合いがまるで感じられなかった。
(よく比較対象にされる「ひぐらしのなく頃に」には、それがひしひしと感じられる)
OHPには、「大変な困難を経て完成した」とあったのだが、それが何なのかは我々一般ユーザーには知るべくもない。
ただ、失礼を承知で言わせてもらえば、「本当なの?」と疑いたくもなるのですよ。
水中で会話が成り立つ超人類が横行する、現代日本を舞台にしたはずの超物語を読まされた身としては。
こういうトンデモ作品が、ユーザーのジャンル離れを起こす一因になっているということに気付いてほしい。

ミステリが好きだから。サスペンスが好きだから。伝奇が好きだから。和風テイストが好きだから。
そう胸を張って言えるユーザーがまだいるのです。そういう人間から、これ以上、足場を削り取らないでください。
そしてそういうネタを扱いたいと思っているクリエイターの方々。
その手に持っているのは、足場を補強する釘か、ぶった切るノコギリかをちゃんと見極めて作品を出してください。
それだけが、私の望みです。

咎狗の血 デスクトップアクセサリ

イベント合わせのお遊びディスク。店頭売りはしていないはずなので、お求めはニトロプラスダイレクトから。
普通のアクセサリーキットならまず買わないのだが、多くの腐女子を爆笑とポカーンの渦に巻き込んだタイピングゲームが収録されているとあっては、発注ボタンをポチッとな、しかあるまい。

ソフトの中身はその名の通り、壁紙やデスクトップクロック、ウインドウストラップといったカスタマイズアイテム集。
私? マシンはパワー&スピード命。壁紙は見づらいからいらぬ。時計はツールバー内のもので充分だし、ディスプレイは
液晶だから、スクリーンセーバもまったく必要なしッ!
という、その辺の会社で使われているPCなんぞよりも、格段に色気のない仕様にて稼動中なので、残念ながら、今後も収録アイテムが使用される見込みはないかと。
でも、この中身自体はなかなかにゴージャスで、それぞれ出来も良く、こういったものがお好きな人なら満足できるレベルだと思われます。

さて、ディスクのメインであるタイピングゲームだが。
一つ忠告。おふざけシナリオがダメな人、世界観を大事にしたい人は、近寄らない方が無難。
公式サイトのエイプリルフール企画に代表されるギャグのノリが好きな人なら、ぜひやるとよろしい。
プレイヤーはニトロキラルの広報キャラである「キラルくん」。
実は彼は、ENEDの別ラインプロジェクトから生み出された、まったく新しい戦闘兵器、その名も「愛のエキスパート」。
(ちなみにエマ曰く、「別名:ラブ・エキスパート」とのこと。変わってねーよ)
相手の懐深くへと入り込み、戦意を喪失させる能力を持つキラルくんが、「骨のある者を骨抜きにする(原文まま)」という
任務を負ってトシマに赴く、という、極めてバカ丸出しの設定。(※褒めてます)

骨抜きにするには、タイピングによる会話を成立させるわけだが、中にはキャラが嫌う会話もあるので、それを打つと好感度が下がってしまう。
当然、ネタバレ気味のものもあり、キャラの設定を理解していないと会話自体の意味も不明なので、本編クリアは大前提
また、誤答の出現率はかなり高く、マイナス幅も大きいので注意が必要。
とは言っても、基本的にミニゲームなので、クリア自体はごく簡単にできる。

打ち込んだ会話に対してのキャラのリアクションがやたらと面白く、立ち絵もスチルも全部使い回しなのに、シナリオと演出(と一部効果音)によって、こうも違う作品になってしまうのかと驚かされた。
特にアルビトロ様は必見。元々狂言回し的なキャラだが、確実に今作の主役は彼だ。
ライターの筆もノリまくっているのがよく分かる、絶妙のバカ加減。笑いすぎて手元がおろそかにならないように注意。
お値段はそこそこ安いので、パロディが平気な人、アルビトロ様が好きで好きでたまらない人はぜひ。

天使ノ二挺拳銃 -Angelos Armas-

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
67★★

ニトロやっちまいました。ブランド名(火薬)に引火して、アチチチ助けて119番、な状態です。
この、とてもニトロ作品とは思えない点数を叩き出したすべての根元は、システムの大失敗
これじゃなくて、通常のAVGかノベルスタイルだったら、たぶん点数はニ割増しだったと思う。
(それでも80点台は付けられませんが)

悪い点が多すぎるので、とりあえず良い点から。
絵、音楽に関してはもう安定の一言。抑えた色調の中央東口氏の絵は、終末感漂うこの作品にベストマッチしている。
ニトロの他の絵師では、とてもこの雰囲気を出せないだろう。
相変わらず、チンピラ・オヤジ・化物のニトロ三大必須キャラが群を抜いてお上手であらせられます。大好きだー!
萌え絵ばかりが綺麗であとはお粗末、という作品に比べて、格段に物語に厚みを与えている。
皺や髭を付け足しただけであとは若者と一緒、という絵を描いてしまう絵師が増えてきた中で、この描き分けの達者さはかなり貴重なものだと思う。
(言っておくが女性も上手だ。というかものすごい進歩を遂げた)

音楽はおなじみ、ZIZZ STUDIO。もうコツが分かっているというか、そぐわないというBGMがほとんどないので安心して聞いていられる。
毎回質の高いボーカル曲を出してくるが、今回のEDテーマも相当に良かった。ED自体はアレだがな。

さて。さてさてさて。今回のメインぶった切られ悪役(市中引き回しの上、磔獄門)であるシステム。
いったい今までの作品の蓄積は何だったのか、と頭を抱えたくなるほどにまるでなってない。
普通、作品数が増えれば増えるほどに、システム周りは洗練されていくものじゃないの?
そもそも、セーブデータをロードするのに10秒近く待たせられるエロゲなんてプレイしたことがありません。
これはPSのゲームですか? それとも記録媒体がテープレコーダだったころのアレ?
(若いプレイヤーは知らないだろうが、パソコンにはそういう時代があったのです。しかし私はそこまで歳取ってないよ)

1G以上もフルインストさせておいて、ディスクレスにならないこと、レスポンスが激悪なことも納得いかない。
何かするたびに必ずワンテンポ遅れるし、今回初搭載のうざったらしいエフェクトも切れない。
念のため書き添えるが、私のマシンは05年8月の現時点でも比較的高スペックな方です。
なので、マシンが原因という可能性はかなり薄いはず。

一番最悪なのは、AVGでありながら既読スキップがないこと。
ぶっちゃけ、最初と最後だけ読めば、中盤はどうでもいいシナリオなのDEATHがね。
それだって、既読スキップなんて搭載されて当たり前の機能、なぜあえて外してしまったのか問い詰めたい。
小一時間問い詰めたい。
おかげでこっちは、画面眺めたままの高速スキップ併用というアホな作業を繰り返すことに。

これでただでさえイライラが募るのに、このシステム、異常に不安定で何かの拍子にいきなり落ちます。
私なんぞ、あと2,3回画面送ればエンディング、という箇所でいきなり落ちた。
当然やる気は下降線。むしろマイナス。そんな状態が幾度かあり、既読スキップもないのだから、途中、セーブしないで延々とプレイしてると確実に泣きを見ます。(ホント泣けたよ……)
私のマシンだけかと思ったが、他にもそういう事例が多々あるようなので、間違いなくバグと言えよう。

頼むよー、こんなボリュームの少ない作品でそんな致命的なミス犯すなよー。
普段のニトロなら考えられないのだが、今回は、AVGとしてのシステムを一から構築したせいで仕方ないのだろう。
だが、新しいものを導入するときは、それに見合った保守を。安全性はシステムの最根幹を担う要素だ。

そして、よりバリエーションに豊んだ演出を表現しようとして採用されたであろうこのシステム、はっきり言ってウザいだけなのは私だけですか?
マンガのようにセリフや説明が吹き出しで表現され、一枚絵の背景にそれを喋るキャラがカットインで挿入される、という手法なのだが、ただでさえ説明が多く、難解で重いテーマがある設定であるのに、それを白抜きの吹き出しで小出しにポコポコ表示されるような真似をされちゃったら、読みづらいことこの上ない。
おまけにその吹き出しの出現位置が定まらないので、視線をあちこちに動かさねばならず、文との一体感、スピード感が全然味わえないのだ。
マンガなら右から左、ノベルタイプなら左から右、といった日本人共通のお約束をいとも簡単に飛び越えられてしまい、普通のゲームスタイルに慣れていればいるほど、こちらのリズムを簡単に狂わせられてしまう。
この点、もしノベルタイプだったら、文章のリズムを崩すことなく、違和感なく世界観に入っていけたと思われるのがまず失敗の一点。

さらに、これだけどシリアスな物語をこの手法でやっちゃったら、どんなに気を付けても

下手なアメコミみたいな三文芝居

にしかなりえないということ。
カットインのタイミングや絵、画面効果などは本当に見事なのだが、すべてに吹き出しが表示されるせいで、どう好意的に見ても陳腐なデジコミとしか思えないのだ。
おかげで、世界観に入りこむ前に作品に対する熱が氷点下まで下がってしまい、物語を楽しむどころではなくなる。

何でこの作品でこの手法取っちゃったんだろう。これは、もっと甘酸っぱ~いメルヘンラヴな世界か、この手法の効果すらギャグとして笑えるようなコメディ作品にしか通用しないのでは。
少なくとも、私は演出方法とシナリオとの間に深い溝を感じた。
もともと大したシナリオでもないのに、演出によってさらにその魅力が半減。こんなゲーム初めてだ。
(普通は、シナリオはいいのに演出は、とかその逆が多数を占める)

カットインのセンスには並々ならぬものを感じたので演出に8点を付けたが、吹き出しだけなら3点クラス。
もう二度と使わないでほしい。頼む。本当頼む。これ以上やられたら、ディスク叩き割りたくなる。
どうしても使いたいのなら、吹き出しかノベル式か選べるようにしてくれ。じゃないと忍耐が保たない。

そして、その最悪の演出とイヤな相乗効果を生み出してしまったシナリオ。
残念ながら、このテーマを扱うには、現時点では決定的に力量不足。
同社内に虚淵玄という卓越しすぎたライターがいるもんだから、その点をかわいそうには思うし、ある程度情状酌量の余地はあるのだが、どうしても比べざるをえない。
同じライターでも、いっそのこと鋼屋ジン氏(デモンベインのライター)のように、全然違う角度から切りこめばよかったのだろうが、終末という閉塞した世界観、異形の種、狂気の愛、ポン刀銃器カーチェイス祭り、どれもこれも虚淵氏の得意フィールドばかり。
となれば、あとは地力の差が出てしまうに決まっている。

案の定、最近流行りの「アンチハッピーエンド」に仕上げてしまったのだが、それがまず間違いの始まり。

安易なハッピーエンドには罵声を。下手くそなエンドには制裁を。

アンチハッピーエンドってのはものすごーく難しいのです。受け手に衝撃を与えつつ、それでも納得に足る結末を与えなければならないのだから。
そこのところを無視して、ざらつきだけを残すようなエンドってのは、そのときは確かに強烈に印象に残っても、結局は不快感しか残っていないもの。
むしろ、最後まで右往左往してるようなおバカちんが主人公の今作では、
「お前がグズで腑抜けだからこうなっちまったんだ、ボケ!」
としか言われないのが関の山かと。

さらに、黒幕の行動原理がもうすっっっっっっっっっごくチープ

今どき、

「女にフラレた(そもそも、好かれてると勘違いしてた)」→「誰も理解してくれない」→「ボク寂しんぼ」

くらいで世界を滅ぼそうとする短絡思考の悪役がいたんですね。思わず生ぬるい微笑を浮かべてしまいました。
火曜サスペンス劇場だって、もうちょっと気のきいた動機を思いつくぞ。
どうせ鬱を狙うなら、もっと救いがなく、もっとどす黒い、魂が汚濁されるかのような理由を。
おまけに君たち天使なのに、輪廻を信じるんですか。天使はブディストだなんて初めて知りました。

とにかく、一生懸命資料に当たって勉強はしたんだろう。それは感じられるものの、付け焼刃感が強すぎて、結果的に一つのストーリーとしてまとまりがなくなっている。
風子ルートでペーターが語った嘘の定義が、実はエンディングの伏線であるなど端々に光るエピソードも結構あったし、後半のアクションシーンはスピード感も出てきてよかったのだが、いかんせん途中のダラダラした展開が長すぎて、後半に入る頃には「もういいから早く終わってくれ」と祈るしかなくなる。
こういう話なら、各人の心理描写が重要になってくるのに、それがおろそかで状況説明ばかりがくどくどしく入るため、とにかく「うざい」という印象しか持てない。

今作に新人を起用したのは大きなミステイク。メーカーとライター、双方にとって不幸な結末しか生んでないし、実験作では新人の力を測れない。
シナリオ自体、確かに力量不足の感は否めないけれど、たぶん、ノベルタイプだったらもうほんのちょっとは高評価できたであろうので、演出に邪魔されたことを差し引いて、あと1,2作は様子を見たい。
過度の期待はしないが、成長の余地はかなりある。基本的には悪くないものを持っているとは思うので、正統派のゲームスタイルで、きちんとした監修の付いたものをプレイしてみたい。
「」内に句点を付けてしまうような凡ミスに気を付けて、精進してくれることを切に願う。
(↑私はこれが許せない。今作に限らず、結構間違ってる作品多々あり。日本語勉強し直してくれ)

メーカーとしては、これ以上私を苦しませないでほしい。この演出は、個人的に再度の使用を禁止します。
ファンディスク等のギャグ系作品じゃない限り、これを搭載したら私は買わない。徹底回避させていただきます。
それにしてもウロブッチー、ホモゲーのディレクションしてる場合じゃないっすよ! 屋台骨の危機っすよ!
ここらで一発、ガツンとメインシナリオかましてください!
こんな状態が続いたら、私はきっと死ぬ。_| ̄|○~0

咎狗の血

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
83★★★

注! このゲームはボーイズラブゲームです。ホモゲーに免疫ない方は近寄らないように!
注2! 声優・エンディングに関してウルトラレベルのネタバレが含まれます。くれぐれもご注意!

とうとうやらかしてしまいました。初・ボーイズラブ(以下BL)作品。
はっきり言って、読むだけは結構読んでるのでBLという形態に特に抵抗はないのだが、それでも自分で買うというのはかなり二の足を踏んだ。
信じられないかもしれないが、今までそういった作品を1冊も所持していなかったからだ。(本当です!)

なのに何でホモゲーなんて、いきなりレベルAクラスのブツを購入するに至ったかというと、それが私の愛するメーカー、ニトロプラスの姉妹ブランドから出される作品、おまけに監修・ディレクションがあの虚淵玄氏だということで、理性のタガが一瞬にして飛んでしまったからだ。
漢祭りの第一人者がディレクションするBLゲー、これだけで脳内を爛れた妄想が駆け巡ったのは言うまでもない。

正直言って、BLゲーというジャンルはまだまだ若い業界で成熟には至らないし、良作よりも粗悪品の方が多いという評をあちこちで目にしていたので、いったいどんな代物に仕上がってくるかでかなーり不安を抱いてはいたのだが。

すんません。ニトロの底力をナメてました。さすがです。

すでにエロゲーでノウハウを確立しているだけあってシステム周りは完璧。
セーブコメント有、ホイールログ送り・バックログ対応、サウンド・シーン回想・CG鑑賞モードをもちろん兼ね備え、既読スキップや選択肢に戻るコマンドにショートカットも割り当てられていて、AVGを快適にプレイする環境は充分。
もちろんバグもないし、誤字も少ない。
CDレス起動はできないが、イメージ化は可能なのでディスクレスしたい人にも特に問題はない。

CGも、キメどころはきちんとスチルを用意しており、分量も申し分なし。
元々原画の方のセンスが好みなこともあるが、BL作品にありがちなヒョロヒョロした人体もなく、きちんと筋肉の付いた男らしい体つきの各キャラは、死のバトルゲームに参戦する、という設定に違和感のない作風。
背景や武器も、そこは親ブランドがニトロ。隙のないきっちりとした仕事。

お馴染みのZIZZ SUTDIOによる音楽もバッチリハマっていて、ハードなギターサウンドが荒廃した世界観をドラマティックに盛り上げる。
また、場面場面での音楽・SEの使い方や切り替えがかなり巧みで、今作は音楽による演出のレベルが高い。
ぶっちゃけ、今までのニトロ作品の中で、この作品の音楽が一番好きかも。(罠にはまってるぞ、私!)

「音」と言えば、今作で絶対に外されないのが、異常なまでに高レベルな各声優陣の演技。
バラして恐縮ですが、列挙すると、

  アキラ:先割れスプーン(鳥海浩輔)……主人公。パーフェクト受。
 ケイスケ:何武者(杉田智和)……主人公の幼なじみ。穏やかな人格でアキラを慕っている。
   シキ:緑川光……「イグラ」最強と噂される謎の男。超俺様人格。
   リン:鬼龍院隼人(福山潤)……明るいが時折冷たい表情を見せる二面性を持つ。
   源泉:一条和矢……街の情報屋。余裕があり面倒見のよいオヤジ。
アルビトロ:菱勝(岡野浩介)……犯罪組織ヴィスキオの幹部で「イグラ」の審判役。かなり変態。
  キリヲ:富士爆発(小西克幸)……処刑人。いかにもヤヴァイあんちゃん。
  グンジ:杉崎和哉(谷山紀章)……処刑人。気まぐれな殺人狂。
    n:Prof.紫龍(山崎たくみ)……謎の男。物語のキーパーソン。

という、「お前それは反則だろ!!」と言いたくなるような巧すぎる方々を惜しげもなく投入。
この辺がさすがニトロ。「斬魔大聖デモンベイン」で見せつけてくれたキャストの妙を垣間見た気分です。
特にケイスケ役の何武者氏。彼のエロボイスのおかげで、この作品の私的気恥ずかしさ度は300%を超えました。
彼の「アキラァ……」を聞くたびに、とにかく悶絶。
ゲーム前半の善良な人格を完璧に演じていただけあって、反転してからのサディスティックさやエロさが余計に際立ち、マジで鳥肌ものの巧さ。
はっきり言って、大好きです。ファンになりました。(だから罠にはまってるぞ、私!)
他のメンツも、変態は変態らしく、鬼畜は鬼畜らしく、鬼気迫る演技力でゲームの臨場感に一役も二役も買ってます。
(でも、n役のProf.紫龍氏が、同メーカー作品の某マッドサイエンティスト『西博士』と同じ人でビックリ。
役柄は全然違うのに、今にもギターをかき鳴らして超テンションを見せつけられる気がしてシリアスな場面で爆笑しちまいました……すんません)

さて、メインのシナリオ。
正直、設定に斬新さはさほどないものの、腐女子の萌えだけに突っ走ることなく、かといってそれを軽視もせずに手を変え品を変え、ここまでまとめ上げたのは並大抵の苦労ではなかったと思う。
それに、男性プレイヤーを非常に意識した作りだと感じた。
同性同士という異様なシチュエーションを、ハードな世界観と極限状態という非常事態に紛れ込ませ、あえて幸せピンク色のイメージを表に出さなかったのは正解。
おかげで私のようなBLゲー初心者でも非常にプレイしやすかった。

テキストが硬質のしっかりした文体であるのも取っつきやすい理由の一つ。
BL小説などでは、はっきり言って読むに耐えないレベルのものが多数あるが、今作はそれもなく、感情に走ることなく意識的に抑えた筆致が世界観を損なうことなくリアルさを出すのに一役買っている。
通常のAVG群と比較しても遜色ない出来で、安心して読み進められる。

だが、正直言って、ネタの扱い方には甘さが多く見られた。
どうしても女性向け、ということが足枷になるのは仕方がないのだが、世界観が重いわりに展開が淡々としすぎ、そして早すぎる。
描写は丁寧なのだが、何となく重みに欠け、私のように、「死のゲーム」から連想される、魂を打ち倒される鬱展開を期待するプレイヤーはかなり物足りなさを覚えるだろうということ。
むしろゲーム後半、「愛」や「信頼」といった生ぬるい感情論に傾きがちになり、そこが少し興ざめ。
せっかくの、ただ一人の頂点を決める死のバトルゲームという設定なんだから、もっとハードな殺し合い、目を覆いたくなる残酷な事実、燃えバトルなどを期待するのは当然ではないだろうか。
(あれで充分残酷だ、という腐女子の皆様ごめんなさい。殺し合い大好きっ子なもんで)

結局、メインの設定であったはずのバトルゲーム「イグラ」は、詳細なルールの取り決めがあったにもかかわらず、ほとんどその描写がなされない。
これは、シナリオの根幹として(ネタバレ危険!→)「イグラ」は壮大な茶番劇である、という設定があるので仕方がないのだが、それでも表面上は闘うために街に入ったはずなのに、バトル風味がこうも薄くては何だかなぁという気分がぬぐい去れないのだ。
デスマッチ大好きっ子としては、もっと執拗なくらいに(「鬼哭街」なくらいに)バトルシーンを持ってきてもよかったように思う。
そこで段々シナリオの裏が見えてきて……という展開なら、もっと熱くなれたと思うのだが。

また、キャラ別ルートに入ってしまうと、他のキャラの扱いがおざなりになり、基本的なシナリオの謎すら明らかにはされない、といった破綻が発生する。
結局、裏で糸を引いていた人物が唐突に出てきて真相を語り、あとは攻略キャラと脱出・エンディング、といった共通の展開はいかにも駆け足すぎ、おかげでせっかくエンディングを迎えても、何だかすっきりしない消化不良感が残る。
どのルートでも、もう少しエピソードの補完をするべきだったと思う。

これは、世界観の説明も同様だ。
日本を二分するほどの勢力を持つCFCと日興連という組織について、シナリオ中でほとんど触れられていないのはいかがなものかと思う。
公式サイト・雑誌情報などでは説明されているが、こういったものはやはりきちんと作中で解説されるべき
ほとんどのプレイヤーは予備知識など持たないのだから、既知情報として扱われても混乱を招くだけだ。
こうした情報を作中で扱うことによって、世界や人々の精神的な荒廃具合に裏付けと説得力が与えられ、物語世界を一層深いものにできたであろうに惜しいことこの上ない。

思うに、このライター氏、まだ固さが取れていない。だが、経験を積めば大化けする可能性大
潜在的な力量はかなりある。熱意もすごく汲み取れる。何より、殺愛支配愛など、「アナタ私の脳内覗いた?」と聞きたくなるほど、私的萌えシチュエーションを生み出す才能は希有のもの。
私の好み以外にも、大多数の腐女子をほぼフォローできるくらいに多彩なシチュエーションが用意されており、かなり研究したな、とその苦労を労わずにはいられない。
人によっては萌え死ぬ可能性すらある妄想の余地のあるキャラ造形は素晴らしいの一言。
おかげさまでうかつにも今作最大のバッドエンドで萌えてしまった大バカ者がここに。

ちなみにどんなエンドかというと、(ネタバレ危険!↓)

自分に密かな想いを寄せていた、普段穏やかな性格の幼なじみだったケイスケが麻薬によって黒人格へと豹変し、
大雨の中殺し合った挙げ句に恍惚と内臓引きずり出され、それを見ながら意識が遠のく(つーか死ぬ)

というもの。本当にコレ、腐女子ゲームか?(ちなみに私は変態ではない。念のため)

その他にも、とにかく一筋縄ではいかないエンディングばかりあり、BL作品特有の極甘ラブラブエンドを期待している方々には受け入れられない可能性大。(ちなみにそういうエンドもあります)
というわけで、シキエンドは激しく賛否両論らしい。
ちなみに私はシキエンド3(↓ネタバレ危険!)で萌えましたが何か?

麻薬王となったシキと、半ば精神崩壊し、シキの愛玩物と化したアキラ。
その類い希なる受パワーをもってしてシキの留守中に部下を籠絡し、帰ってきたシキの嫉妬心を引き出して二人して愛欲に狂うというバカップルエンド。

以上、新規ブランドだけに詰めの甘いところも多かったが、それでも今現在市場に溢れているBL作品とはいきなりレベルの違うところに突如現れてしまった今作、以降の業界標準となるべき作品なんじゃなかろうか。
ブランド処女作として非常に手堅い作りで、「ニトロの姉妹ブランド」というレッテルを良く生かしたという印象。
その分、冒険はあえて避けたという感じで、ぎらつく野心こそないものの、それでも心に訴えるものがあった。
とにかくこの業界に一石を投じよう、という心意気を感じる。
志、とでも言おうか。腐女子の中の漢たちが作った、とでも言おうか。私は好きです、こういう攻め姿勢。
これならニトロキラル二作目も買おうかなと思える出来だった。
BL未体験だけどやってみたい、という男性プレイヤーにもお勧め。
さほど気持ち悪さは感じない……はずです。たぶん。(ケツ穴痛そうなのは我慢してくれ)

天使のいない12月

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
63★★

Leaf東京開発室を過信したのが私の間違いだった。
もっと率直に言えば、所詮、「こみっくパーティー」のライターだった、ということだ。

とにかく、こんなにやる気が削がれたゲームは久しぶりだ。
何一つ盛り上がるところがなく、すべてが何となく進み、何となく終わる。
が、かといって「静かなゲーム」というわけでもない。それなら深みがあるだろうし、余韻もあるだろう。
まず、全体的にどんより感が漂っていて、結論をプレイヤーに丸投げしていることも相まって、最後まですっきりしない。
一本終えた後、「へんじがない。ただのしかばねのようだ」(C)ドラクエ
になりかねないくらいの倦怠感が襲ってくる。

例えば鬱ゲーならどん底に落ち込む衝撃を。
感動・泣きゲーなら心震える展開を。

そういった、最後に何かを得られるカタルシスに乏しく、「何でこんなゲームプレイしちゃったんだろう」とあまりにも虚しすぎる自己否定の感情すら覚える。
それこそがこのシナリオの主人公と同等のメンタルなわけだが。

人間関係は軽く薄く小さくがモットーであり、なにごとにもいい加減で投げ遣りな生活を送っている
(ゲーム煽り文より)

というのが主人公なわけだが、その造形からして何だかピンとこない。
私自身、無意味なポジティブは大嫌いだし、熱血やそういう鬱陶しい感情も御免被るけど、だからといっていきなり超ネガティブに走るような単細胞さは持ち合わせていない。
が、この主人公、高校生にしてすでに生きるも死ぬも面倒くさいと言っているほどの荒廃ぶり。
もしもし、君いったい過去に何があったのですか?

確かにバカだ単純だと言われて久しいけれど、それでも今どき(死語)の高校生が、こんなにも愚かで現実を見つめられないアホ野郎だとは到底思えない。
敢えて言うなら、そういう感覚から遠ざかったいい歳した大人が、世間的な情報だけで「今の若者ってこんな感じ?」と憶測でキャラを造っちゃったような雰囲気。
等身大であろうとして、かえってリアリティに欠ける。

そして、肝心のヒロイン達も、はっきり言って誰一人として魅力的じゃない。
むしろ、未だかつてこれほどまでに電波漂うヒロイン群に遭遇したことがありません、私。
絵は本当に綺麗でかわいく魅力的なのに、このシナリオのせいで、全員がもうどうでもいいキャラに成り下がっている。
そんなヒロイン群に、「本当は優しい子」だの「誠実な人」だの言われてもうれしくないよ俺。つーか迷惑。
と思うのがまっとうな人間だと思うのに、それに対していちいち揺らいでしまう結局冷めきれない主人公。
ひとたび各ヒロインと肉体関係を持ってからは右往左往すること甚だしく、心境の変化が性急すぎる。
その揺らぎっぷりが高校生らしい、といえばそうなのかもしれないけど。

だが、体のつながりだけがすべてだと考え、どこまでも恋愛感情を否定しようと理詰めで考えてしまう主人公。
その行動こそ、お前がすでに恋愛に陥ってる証拠なんだよ、と18歳以上のプレイヤーとしては、徒労感と共にやれやれとため息をつきたくなる。
ガキの独り相撲ほど、大人にとって見苦しいものはない。

そうして、修羅場もなくピンチもない、どうでもいいエピソードを積み重ねた挙げ句、はっきりした結論を提示せず、何だかもやの掛かったような、ぼやけたラストが到来する。
結局は別段鬱になるような展開が待ってるでもなく、開き直って快楽を求めきることもなく、かすかな希望の片鱗さえ見せつけるという、逆説的な人間賛歌で終わってしまうのだけれども。

言いたいことは分からなくもないが、全体的に力量不足。
黙って「こみっくパーティー」みたいなおポンチシナリオ書いてりゃよかったものを、柄にもなくこんな難しいテーマに取り組むものだから、失敗なんてレベルじゃ語れないくらいに消化不良気味。
せっかくのハイレベルなCGや質の高いBGMが、まったく力を発揮できずにぽつねんと取り残されている。
Leafのような大手ゲームメーカーから発売された作品でなければ、誰一人見向きもしないはずだ。
テーマは悪くないので、やる人を選ぶ作品であることは認める。ただ、方向性が間違っているだけだ。

私には大いなる地雷作だった。
確固たる自我をお持ちの方・ポジティブ思考の方にはお勧めできません。
ストーリーはどうでもいい上に、イライラするだけで何一つ得るものがないので。
逆に原画家のファンの方には良い作品かも。
最近のLeafには珍しく、結構頑張ってエロ絵描いてますんで。

ドラゴンナイト2

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
67★★

古いね、私も(笑)
どってことない、ご褒美CGがHなだけの普通の3DダンジョンRPG。
MがPCエンジン版をプレイした際、壁をすり抜けてマップ外の場所にはみ出たのにはまいりました。
……翌月、裏技としてゲーム雑誌に載っておりました。

To Heart

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
81★★★

うぁー。評価しにくくて、今まで避けていたゲームがきた。
いや、誤解のないよう言っとくと、プレイ時はとても楽しく遊べました。
キャラによってシナリオにばらつきはあるものの、サクサク進むし、絵もかわいいし。
しかし、いまいちのめり込めないのはなぜなのか、自分でもよく分からないのですよ。
たぶん、この満面に押し出されている「幸せピンク色」な雰囲気がダメなんだろうとは思うんだけど。

どうせ私は、血と硝煙と伝奇と猟奇じゃないとダメだよ。分かってるよ。ああ分かってるとも!

DESIRE 完全版

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
76★★★★

マイフェイバリットゲームデザイナー、剣乃ゆきひろ氏の作品。ですが。

……しまった。できれば、「完全版」じゃないのをプレイしたかった。

この「完全版」でメーカーによって付け加えられたというラストが「完全」に蛇足
製作者サイドが、シナリオライターの意図を全然酌めてないってことがよく分かる。

このシナリオは、螺旋を断ち切ろうとして、それでもその螺旋に囚われ続けてしまうことにキモがあるのですが。

ハッピーエンドじゃダメなんだよ! 「To be continued Forever」なんだよ!
そこに儚いまでに美しい切なさを見出せないようじゃ、この話を理解してないも同然なんだよ。
うわぁぁん、シーズウェアのバカ! おかげで高得点付けられないじゃないかよ。

今ではもう完全版の方が手に入れやすいので仕方がないが、これからプレイする人は、(ネタバレ危険!→)マルチナ編」が終わったらそこでストップした方がいい。
その方が、ゲーム終了後の余韻が断然違うから。

ちなみにシステムは剣乃ゲーム伝統の「コマンド総当たり方式」なので、いささか面倒くさいです。

誰彼

シナリオ音楽演出システム総合評価厳重注意度
50★★★★

当レビュー初の赤点。これがあのリーフのゲームかと思うと、その没落ぶりに涙が出てくる。
あまりのすごさに、怒りを通り越して笑えるくらいの怪作。(決して遺作、臭作、鬼作の兄弟ではない)
少なくとも私はこれを許すことができないので、あえてレビューを書いた。
私は容赦のない性格なので、はっきり言わせてもらう。

シナリオがダメ。演出がダメ。文章もダメ。AVGとしての形態に意味まるでなし。

そこまで言うことないだろう、と思っている方、試しにプレイしてみましょう。
ただし、リーフ作品体験者に限る。
「誰彼」を初めてプレイして、このメーカーがいつもこんなアホゲーばっか作っていると思われては、さすがに可哀想すぎるので。

とにかくもう、マジすごい文章と矛盾極まる設定の嵐。センスのかけらも感じられないセリフ。
有名すぎて今さらだが、これだけは世界に知らしめねばならないと信じているので、あえて引用する。

「おまえがいまじている情は精神的疾患の一種だ。
          しずめる方法はが知っている。に任せろ」
(通称、「感感俺俺」)

「感じている感情」って?Σ(゚▽゚;)
このように、文章構造に欠陥があることはもう言うまでもない。

さらに、エンディング直前の最高(?)の盛り上がりを見せる場面で、今回の事件の根元でもあるヒロインが、愛する男と共に皆の前からひっそりと姿を消し、その際にたった一人の肉親である弟に残したセリフ。
(つーかこの展開がすでにひでえ)

「日本一の弟だと思っています」

よっ、にっぽんいちぃ~~~~!(←狂い気味)
ダセェェェェェェ!!!!

君(シナリオライター)にはセンスがないのかと問いたい。
問い詰めたい。
小一時間問い詰めたい。
(むしろ、並々ならぬギャグセンスに満ちあふれていることは認める)

こんなこと喋られて、ラストに感動の涙を流すアホ愉快な人物がいたらお目にかかりたい。
全編この調子で、ミステリアスでシリアスであるべき伝奇物が、電波系ギャグへと変換されている希有なこの作品。
クソゲーハンターならやってみるべし。
ただし、私は責任をとらないので各自自爆覚悟でお願いします。

月姫

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
1096

これは、すごいゲームだ。
何がすごいって、これが商業ベースで作られたんじゃないってことが。
同人ベースでここまでやられちゃ、はっきり言ってゲームメーカー形なし。
何せ、私が今までプレイしたゲームの中でも、かなり図抜けている。
惜しむらくはシステム周辺が弱いこと、音楽、CGのボリュームが少ないこと。誤字が多すぎること。
が、それを補って余りあるテキスト量。キャラ造形。作品作りに対する意気込みが全然違う。

ネタは今や「使い古し」の代名詞である吸血鬼。
そして、格式はあるが謎に満ちた旧家。いわゆる伝奇物と呼ばれるジャンルであり、非の打ち所のない「ありがち」設定だ。
しかし、それを盛り上げる緻密な設定と圧倒的なボリューム、怜悧な視点と冴えた構成。
とにかく、シナリオとテキストの力がハンパじゃない。
月姫の魅力と破壊力は、ほぼこの二つによると言っても過言でない。

知能遅れか疑いたくなるヒロインも、くだらないことにウジウジと悩みまくるヘタレな主人公も、この物語には存在しない。
エロゲーの主人公に「燃えた」のは初めてだよ。(←「萌え」じゃないよ)
全員がきちんと知性を備えており、それぞれの価値観を持って生きている。
5人のヒロイン&主人公には、それぞれに過酷な運命が待っているのだが、そこから逃げだす者はいない。
みっともなく暴れ抗う者もいない。

文体の力もあるだろうが、常軌を逸した物語設定であるにもかかわらず、そこに住む人物たちは非常に理性的だ。
皆、自分のやるべきこと、なすべきことを見極め、あるべき場所に静かに佇む。
自律のもと動く、というのは、こういうゲームでは珍しい人間像だと思う。
そしてそこが、依存心が強く、頭の弱いヒロインが多い昨今のゲーム業界の中で、ひときわ異質に見える。
こういうキャラ造形を、
「18禁」という、最も上記のヒロインタイプが好まれるフィールドでやってしまう
こと自体がすごい。
ある意味、こういうところが「同人」なのかもしれない。
だって商業ベースじゃこんな実験怖くてできないだろう。普通。

ストーリー展開は、序盤がホラー色、後半はミステリ色が強い。
伏線の張り方が巧い。注意深くテキストを読み進めると簡単にネタが割れることでも、さりげなく、そして効果的に張られた伏線によって、最後にちゃんと得心がいく作りになっている。
ネタ自体を看破するのは、ある程度の読み巧者なら簡単なことだと思うのだが、その後味を、
「ちっ、やっぱりそうだったのか。つまらん」
と思わせるのと、
「ああ、やっぱりそうだったのか。しかしこれで納得がいった」
と思わせるのでは全然違う。月姫は当然後者のタイプだ。

例えば私は、(超ネタバレ危険!→)「志貴とシキの意識の交錯」「翡翠←→琥珀の入れ替わり」なんてのはかなりの序盤から分かったが、それでも問題なく最後まで物語を楽しめた。

ちなみに、月姫の世界を存分に味わい尽くすためには、推奨ルート(アルクェイド→シエル→秋葉→翡翠→琥珀)は絶対に守るべき。
後半の盛り上がりが断然違ってくる。特に秋葉以降の遠野家ルートにおいて。

私もかなり色々なノベルタイプAVGをプレイしたが、上手下手はともかくとしても、ここまで十二分にゲームの世界観を引き立てる文章を読んだのは、月姫が初めてだ。
やや説明的すぎるきらいはあるが、簡潔に抑えた筆致で滑ったところのない硬質の文体は、この静かで冷たく澄んだ物語に深みを与えている。

各章のタイトルも秀逸。
琥珀ルートでの「カイン」なんてのは、プレイ前は意味不明以外の何者でもないのだが、章を進み、その内容を理解してタイトルを思い起こしたときに初めて衝撃が訪れる。
これ以上ないほど内容に即した、それでいて卓越したセンスを誇るネーミングには、本当に皮膚が粟立つほど戦慄した。

文字自体が持つ視覚性とイメージ喚起力、言葉の呪力(「言霊」だからね)、そういうものを知り尽くした演出。
あて字がやたらと多いのは気になるが、決してこの世界観を損なうものではない。

映像が重要視され、中でも「とりあえず見栄えのいい絵出しとけばOK」なこの業界で、最も原始的な力で、最もストレートなパンチを食らわされた衝撃。

変わったことは何一つやっていない、あまりにもオーソドックスな、だが、珠玉のゲーム。
圧倒的なコストパフォーマンスと、本当に丁寧なゲーム作りの姿勢に敬意を表し、お勧め∞。
人死にが多いストーリーに抵抗のない方、不自然なハッピーエンドなど望まない方、何を押してもどうぞ。

闘神都市II

シナリオ音楽演出システム総合評価オススメ度
75★★★

かなり古いゲームだが、名作の誉れ高かったので、初めてエロゲーのRPGをプレイしてみました。
が……

レベルアップが超!!!!! めんどくせえ!!

何せ、私はRPGは好きだが、レベルアップ面倒くさがり魔人だったりする。
おかげでRPGはいつもアンダーレベルクリアで、ラスボス付近では毎度手痛い思いをしている。
(そしてちっとも懲りず、毎度泣きを見る)
エンカウントもかなり多めなので、短気魔人でもある私、今回はちょっとばかり小狡い手を使うことにした。
(どんな小狡い手を使ったかは、あえて内緒にしておこう)

階層構造型のダンジョンは探索がかなり楽しい。オートマッピングで地図が埋まっていくのも楽しいし、アイテム集めもなかなか。
一つの階もさほど長いわけではなく、長時間ゲームをやり続けられなくても切りどころがいい。
ゲームバランス自体はさほど悪いわけではないと思う。

さて、肝心のシナリオの方だが。
序盤では「闘神都市」という設定がアホっぽいな~、などとボケッとゲームを進めていると、いきなり中盤以降からどんでん返し食らわされます。
まさか、そんな意味があるなんて思っても見なかった、というわけで。

「天使食い」の設定も面白い。
強くなるためには天使を食わなければならず(別に直接咀嚼して食うわけじゃないよ、念のため)、されど天使を食えば罪が蓄積され、プレーヤーには罪悪感が生まれる……こういうの好きです。
まー、遠慮なく食わして頂きましたが。(罪悪感はどこへ?)

このゲーム、こういう二律背反的立場に立たされることが多い。
強くなったが故の虜囚になってしまうゲーム後半。
生きるためには飲まなければならない薬、しかしそれを飲めば理性のタガが外れてしまう設定、等々。
設定やストーリー展開に意外と容赦がないのがいい。協力者があっさり死んだりするし。

が、個人的には、ラスボスの背景が不透明なのが気になる。
昔のゲームなので容量の関係か、この辺の掘り下げがちょっと浅い

なぜアプロスは堕天使になったのか。
デラスはアプロスとどこで出会い、どうして「天使食い」にされたのか。

この二人は互いを「半身」と呼び合うほどに強い結びつきがあるのに、その辺がプレイヤーにはあまり伝わらないのが残念。
何でこいつらこんなに求めあってんの? という印象を受ける。
この辺をもっときっちり書き込めば、ラストにもうちょっと深みが出るかと思ったんだが。

基本的にはRPG王道の勧善懲悪モノで、作り込みもしっかりしているので、やっても損はない。
というか、RPG部分があまりにもしっかりしているので、かえって驚きました。(←失礼)
さすが「ゲーム」であることのアイデンティティをきっちり守るアリスソフトと言うべきか。
PSあたりのクソRPGよりは、ずっと手応えが楽しめるかと思います。

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