プラネテス

1巻 2巻 3巻 4巻
悪食の私が、万人に、初対面の人にも臆面なく勧められる本。
(普段は人格を疑われるのが嫌なので、人に合わせて作品選びます)

何て言えばいいんだろう。この話大好きなんだけど、適切な言葉が見つからない。
いい作品、すごい作品、素敵な作品、いずれも合ってるけど、微妙にニュアンスが違うんだなぁ。
強いて言えば、「素晴らしい作品」ってことになるのか。

宇宙を舞台に繰り広げられるこの圧倒的なまでに重厚な人間ドラマ。
それでいて宇宙空間としての設定もおろそかにせず、「なんちゃってSF」になるのを防いでいる。
何より、SFでありながら分かりやすい、ってのがミソだ。
こうして、生粋のSF者にも、SFに拒否反応示しちゃう人にも受け入れられる深さと間口の広さを併せ持っておきながら、そのどちらにも偏りがないってだけで相当の力量が伺われるのだが。

1巻では宇宙の緩やかな広がり、2巻では主人公の葛藤、そして3巻ではそのすべてを許容する宇宙の大きさ、と見せつけられて、一介の読者としては、もう諸手を挙げて全面降伏するしかない、といったところか。

ツッコミ所がないんだよ、この話。完成されている。
そのくせ、「読まされてる」感がない。むしろ、むさぼり読みたい。

主人公が自分の内面と対峙し、自身が「弱さ」と思っていた部分を強引にねじ伏せ、自ら望んで盲信しようとする道に進むくだりなんかは本当に痛い。
本当は、わずかな躊躇や欺瞞を抱えつつ。その進む道の意義を誰よりも疑っておきながら。

結果、主人公の目は落ちくぼみ、頬は削げ、眼光だけが爛々と光り、ありのままの「自分」としての姿をだんだん失いながらあがき続ける。
夢に向かって努力しているはずなのに、その姿はまるで「生ける屍」のようにすら見える。
読者を突き放してるんじゃないか、と思うくらいに展開に追い込みがかけられ、そのギリギリ感で読むのをやめたくなるほどだ。

だが、そこで読者の離れかけた心をするすると引き戻す、海の中に宇宙を見出すくだり。
ひいては、
「この世に宇宙の一部じゃないものなんてないのか。オレですらつながっていて、それではじめて宇宙なのか」
と気づくくだり。
これは東洋的思想だったと思うのだが、あえて日本人にも馴染みの深いこの手の世界観を、(西洋偏重のきらいがある)SFに持ってきた、という演出の巧みさ。
月を見て、「綺麗だ」とか「美しい」より、「おいしそう」と言ってしまうマヌケさ。

この力加減の絶妙さが、未だ宇宙に馴染みの少ない我々にも居心地の悪さを感じさせない、そして、この話に引きつけてやまないキモだと思う。

読後、「ああ、この本を読んで良かった」と素直に思える貴重な良本。
続巻が楽しみです。遅筆なのがなんとも……(Tд⊂)

余計なお世話だが、この作者、デビュー作でこんなすごいのを描いちゃってどうするんだろう。
次作からがものすごいプレッシャーだと思うのだが。