スイス時計の謎

火村シリーズ短編集。と言っても、一編は中編サイズだが。
というわけで、作品ごとに小感想。
●あるYの悲劇
単純に謎解きとしては面白いが、一発ネタとしての感が否めないかも。
個人的な印象としては悪くない(むしろ笑った)が、ミステリとしてはクイズレベルか。
ちなみに、「ユメノ・ドグラ・マグロ」はセンス悪すぎ。
●女彫刻家の首
謎解きより、お得意の「火村人物造形用エピソード」な短編。
私は嫌いじゃないからいいけど、最後の演出は人によって賛否が分かれるだろうなと。
ミステリに、(ネタバレ危険!→)天の裁きって受け入れられにくいと思うのですよ。
人為的な、または犯人の自裁は常道なんだけどね。
●シャイロックの密室
あ、これは小手先で書いてるな、と思わせる出来。
正直言ってこの作家、倒叙物はあまり巧くない。
犯人(主観)側の、追い詰められる際のギリギリ感がちっとも伝わってこないのだ。
犯人も完全犯罪を期したにしてはマヌケだし。
●スイス時計の謎
表題作の中編。正統派のフーダニット。登場人物も多くてしっかり読者をミスリードしてるし、謎解きも著者があとがきで書いているとおりにストレート直球ど真ん中。
いやむしろ、こういうのが読みたかったのですよ。
江神シリーズに比べて、明らかに謎解きのレベルに差があった火村シリーズだけど、これは佳作。
地味だけど端正な原点回帰、に近いかな。