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ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ

ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ

ブラクラファンでこれを読まないのは、あまりにもでかすぎる損失。
原作丸々1冊分をうっかり読み飛ばしてるくらいに損してると断言する。

超お勧め。むしろこれを読まずしてブラクラファンを名乗ることなど誰が許しても私は許さん。
それほどまでに本編と完璧なユニゾンを奏でた、ノベライズを超えた真・ノベライズ。
元々虚淵玄ファンの私の言を差し引いても、誰がこの作品に文句を付けられるというのか。
今まで、数限りなくノベライズというものに目を通しては絶望・諦観してきたが、今作に関してはその心配はまったく不要。
ブラクラ独特のあの空気、翻訳調のセリフ回し、乾いた笑いのセンス、圧倒的な銃撃戦。
全部見事に再現されています。

何よりも素晴らしいのは、本編では触れられていない伏線を、世界観を壊すことなく見事に昇華し、しかもそれを現在続行中の本編へと違和感なく繋げたこと。
バラライカの火傷の理由、原作4巻に出てきたラプチェフとの確執の原因、誰よりも部下を大事にし、その絆を何より重んじるバラライカが(超ネタバレ!→)どうしてかつての同志を自ら葬ったのか、等々、まるで、原作者本人が描いたと思えるほど遜色のないエピソードの数々。
普通、原作者以外が付け足した設定など見苦しいだけなのに、その融合っぷりがあまりに完璧すぎて、ケチを付けるべき隙が見あたらない。
特に、バラライカの行動原理は、本編最新刊である8巻の、張とバラライカが互いのレゾンデートルについて語るシーン(P25~)に絶妙にリンクしていてぞくりとさせられる。
最新刊と今作とを同時に買うファンは多いだろうから、これは非常に小憎らしい演出と言わねばなるまい。

虚淵氏がおそらく大好きなんだろうな、と思わせる張の格好良さは大全開。
その男伊達っぷりの前には、あの強烈な個性を放つラグーン商会の面々ですらも霞む勢い。
今作は、準レギュラーの方によりスポットが当てられているので、外伝的な話が好きな人はより楽しめる。
もっとも、ブラクラの世界では準レギュラーがレギュラーを食ってしまうほど勢いがあるのは誰しも知るところだが。

男の死に際と、残酷で冷徹で熱い物語を書かせたら右に出る者はいない虚淵玄。
今作でもそのパワーを余すことなく生かしきり、この、文章にするにはかなり難しい世界を見事に書ききっている。
300ページ強とボリュームも申し分なく、ブラクラ世界のスピード感も相まって一気に読める。
これで630円は安い。私ならハードカバーでも買う。とにかくお勧め。
あ、レヴィのSM嬢姿を見たい人も必見です。

できることなら第2弾を熱望。個人的な希望としては、次はダッチが大活躍する話を読みたい。
このタイプを虚淵氏が動かしたら絶対に面白くなると思うので。

Fate-Zero

注! この本は18禁PCゲーム「Fate/stay night」の外伝です。
文中にネタバレが大いに含まれますので、未プレイの方は回れ右。


■1巻
今作は絶望が約束された物語だ。
作中、いかに高潔に戦い奮戦しようとも、セイバーはマスターである切嗣自身によって悲願を果たすことを阻まれ、その切嗣
も呪いを受けて死ぬ。
時臣は戦いに破れて帰らぬ人となり、桜は間桐から解放されることはない。
誰がどう書いてもこの結末だけは正伝がある限り崩しようがなく、また、万が一崩してしまおうものなら、それは外典としかなりえない。
その、非常に扱いが難しい素材と、ともすれば原作者以外の作家を認めぬであろう熱狂的なファンをも相手取り、正面きって殴り込みをかけてくる挑戦的な姿勢に相応しいだけの力作であると断言する。
さすが虚淵玄。さすが業界屈指のライターだ。
その筆致は相変わらず淡々としていて、時には冷徹ですらあるのに、抑圧した熱量が一気に噴出したかのような疾走感。
挿絵がなくともビジュアルをいともたやすく想起させる、躍動感溢れる描写。
正伝であれだけのエフェクトと効果音を駆使して実現したそれに、ペン一本でここまで迫れることが驚異的。
正伝に引けを取らぬ、むしろアクの強さだけで言うなら断然上回るであろう登場人物たちも奮っている。
全四巻分の一。まだ全体のうちのそれしかない状態であるのに、すでにその存在感は圧倒的だ。
萌える漢キャラを書かせたら業界随一と言ってよい氏の仕事が光る。

私は正伝である「Fate/stay night」を何度もプレイしている人間だ。第四次聖杯戦争の結末は当然知っている。
それによってもたらされる以降の顛末も、約束された大団円も何度も経験済みだ。
だがそれでも、切嗣が純粋であるが故に自ら歩む道が悲劇に繋がると知ってもなお歩みを止めず、炎に包まれた街の瓦礫の中に士郎を見つけるまでの足跡を、そして、強固な信仰故に空虚へと至ってしまった言峰の虚無を見届けたいと思う。
残酷で無慈悲な絶望と結末を決して咎められない、それが必然である物語。
「ハッピーエンドでなくてはならない」枷を外された虚淵氏が、登場人物たちを最後の慟哭までどのように導いていくのか、これほど続きが楽しみな作品、久しぶりです。
(2007-02-14 18:32:02)


■2巻
虚淵氏、私を萌え殺す気か。
いよいよ本格的なバトルロイヤルに突入し、次から次へと各所で、ド派手で予測のまったくつかないバトルの連続。
それに加え、内面描写の充実も著しく、各キャラの懊悩を織り込まれた物語は、息が詰まるほどの緊張感。
手に汗握る、とはこのこと。
かと言って、息の抜きどころも諸処に用意してある巧みな緩急に、またもや時間を忘れて読んでしまった。
(ぱんつはいてない!)
特に、セイバーのいびつさというものが、他の王2人と対比することによって鮮やかに描き出されており、本編でいまいちしっくりこなかった人も、今作を読めば得心がいくのでは。
これは、本編の対比者が士郎という、自身がいびつで不安定なキャラであったのに対し、今作はいずれもすでに功なり覇を遂げ、王としての確固たる自我を持つキャラが当てられているがゆえの効果。

また、各人の報われぬ思いというものもいよいよ深く掘り出されており、その切なさに胸打つ相変わらずの虚淵節も健在。
ディルムッド、舞弥、雁夜、ソラウ、エルメロイ、そして切嗣にアイリ。
いずれも叶わぬ願いを抱き、そうと知りつつ走り続ける。
破滅に、破局に、失意に、絶望に、そして死に向かって。
まったくの容赦なく、その運命の鎌は次々と振り下ろされ、あらゆる想いを刈り取っていくのだろう。
その消滅までを、しっかりと見届けていきたい。
(2007-04-03 01:34:02)


■3巻
3巻まできておいて今更だが、これは、まぎれもなく最強のコラボレーションであることを実感。
この、絶望的なまでに容赦のかけらもない展開は、虚淵玄というライターの真骨頂であることを断言する。
原案や設定は確かに奈須氏。だから、この作品の魅力は決して虚淵氏一人の力というわけではない。
だが、他の誰が描いても(もちろん奈須氏本人でも)、読者をここまで容赦なく突き落とし、圧倒的に叩きのめすことはできないだろう。
切嗣の「非情な暗殺者」という設定は公式でも何度も露出していたが、それをこれほどまで完璧に表現してみせるとは。
正しき者には正しき末路を。心優しき者には相応の幸せを。
そんなまっとうな読者の願いをいともたやすく吹き飛ばしてしまう、これでもか、とたたみかけられる無情なエピソードの数々。
その筆致は滑ったところなど微塵も感じさせず、冷徹なコントロール下におかれたものだと分かるのが、さらに読者にプレッシャーを与える。
もう目前にまで近づいてきている絶望の足音が、地獄の業火の燃える音が聞こえずにはいられない。

この冬。たった一つの希望を残して、この物語はすべてが終わる。
こんなにも魅力的な生き様を見せつけたあのキャラもこのキャラも、そのほとんどが消滅し、あるいは大きな痛手を抱えてしまうことを「Fate」を経験した我々読者は知っている。
先に待つのは失意と絶望のみとあらかじめ分かりきっているのに、それなのに、どうしてこんなにやるせなくなるんだろう。
それほどまで惜しまれるキャラとエピソードを生みだした虚淵氏の力量に脱帽。そして敬意を。

死がふたりを分かつまで

1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻
■1巻
まるで当たりのなかった(←失礼。私にとってはね)ヤングガンガンにようやく注目作登場。
と言っても、原作がたかしげ宙氏なので、ある程度の面白さは保証されて当然か。

蓋を開けてみれば、作画担当のDOUBLE-S氏が大健闘。新人らしからぬシャープで洗練された描線で、非常に読みやすく、かつ高クオリティ。好きなタイプの絵だな、これ。
盲目の凄腕刀使いが、高度な予測能力を持つ少女と、コンピュータの専門家とともに現代の「仕置き人」として暗躍する――という内容は、もうそれだけで「買ったァ!」と声を張り上げたくなるほどツボにはまりまくりの設定。
「仕置き人」だが決して正義じゃない、そのバランスの危うさを理解しているキャラには凄みがあり、その言動はダークヒーローめいていて非常にスリリングで小気味良い。
この先、(原作者の傾向からして)かなりヘビーな展開が待ち受けることが予想できるが、しっかりと最後まで見届けたい注目の一作。

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