
■2巻
この作者、この作品で完全に一皮剥けたね。
あまりにも見事なテーマの消化のさせ方。
デビュー作から全部買ってるが、正直、ここまで化けると思わなかった。
ただ私の好きなテイスト(ちょっとダークで猟奇、ホラー、サスペンス)を包含する作風だなー、絵も好みだしまっいいかー、とのんきな気分で作者買いしてたわけですが。
この作品はとてもいい。
登場人物の造形は計算されているし、荒唐無稽な設定も納得できるだけの要素がある。
何より、死刑・命・人間の尊厳という、極めて難しいテーマを扱いつつも、決して安易な人道論に流れず、あくまでも冷静かつ真摯に展開するストーリー、途中で息苦しさを感じさせないよう、ちょっと笑える要素を入れるタイミングも見事。
実は前作の「アンネ・フリークス」が大した出来じゃなかった(最終巻でコケた)ので、少しも期待してなかった今作でしたが。
大変失礼いたしました。これはうまくすれば作者の代表作になるかと。
ここまで作品世界を構築したからには、最後まできちんと着地してほしいもの。
名作というのはラストの扱いで決まると思っているので。
ところで、女の子の絵にアシスタントの手が入りすぎなんじゃ?
ずいぶん絵が違うような??? 作風変わったの?
■5巻
最初から最後まで冷静な視点を崩さずに描ききり、以前の感想で書いたとおり作者の代表作となったと思う。
死刑囚ではありながらやむをえない事情を持った、読者の共感を得られる主人公を配置し、死刑廃止論や人件擁護といったウェットな方向に流れるかと思いきや、決して許すことのできない、同じく「死刑囚」である卑劣な犯罪者の姿をもきっちりと描き、情に溺れず、冷酷にもならず、絶妙のバランスで描かれた骨太の人間ドラマはお見事、の一言。
はっきり言って、この作者こんなにマンガ巧者だったか? と疑いたくなるほど、同作者の他の作品群に大きく水をあけるレベルに仕上がっているため、全著作を所有している私としては、うれしいやら困惑するやら。
(他のも面白いですよ、念のため)
「法」はあくまで死刑囚である主人公の罪を赦すことはなかったけれど、彼の存在は周囲の人々に受け入れられ、その中で揺るがない地位を築いた。
彼のために涙し、奔走し、喜びを分かち合おうとした人たちによって彼は赦されたのだと思っている。
願わくば、実験が終わって刑が執行されるまでの半年間の日々が、彼にとって心穏やかなものでありましたように。
この難しいテーマに怯むことなく挑み、見事踏破してみせた作者に敬意を。