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少女ファイト

1巻 2巻 3巻
■1巻
「G戦場ヘヴンズドア」を終えた作者が、古巣の講談社にフィールドを移し、バレーボールを軸にして挑む新作。
それにしても、今どき、なんてアンチック体が似合うマンガなんだろう。
(※マンガ読みで知らない人などいないだろうが、写植に使用されている字体のこと)

太すぎるぐらい太くて力強いシャープな描線が、キャラのトラウマを容赦なくえぐり出し、それでもどん底から這い上がろうとする姿勢を、問答無用の迫力で描き出している。
何のてらいもなく、ひたむきに迷いや情熱や激情を描くことと、短いけれど印象的で、時に鋭い台詞回し。
この作風を確実にモノにした作者によって、今作も抜群のヒキの強さを生み出している。
理屈をこねる必要はなく、ただ、純粋にマンガを楽しみたいと思わせる作品。
これ以降、どんな奈落と希望が待ち受けているのか、楽しみで仕方ない。

砂漠

単行本
伊坂流青春小説、というところか。
ごく普通の、気ままで、ユルくて、それなりに起伏のある一般的な学生の平穏な日常に、ちょっとだけ異質な体験を絡ませるというプロットなので、本来なら退屈になるきらいがあるが、テンポがいいのでさほどつらくはない。
学生生活を題材にした作品というのはすごく青臭くなりがちなものだが、嫌味がなくてさらっとしているのは相変わらず。
ただ、他の伊坂作品のように思わぬところで思わぬ伏線が明かされるサプライズはない。

基本的に、予定調和のラストはぼんやりと予想できながらも、箱庭の中の人物がちょこちょこと動き回るのを俯瞰で眺めてのんびり楽しむ、という生活シミュレーションゲームの雰囲気に近い。
とてもリアルな学生像でありつつ、現実的な生臭さを感じさせない作風が、さらにそれに拍車をかけているのかもしれない。
ちなみに、現実に西嶋みたいな奴がいたら絶対ウザい。私だったら友達になる以前に避けて通りたい。

死刑囚042

1巻 2巻 3巻 4巻 5巻
■2巻
この作者、この作品で完全に一皮剥けたね。
あまりにも見事なテーマの消化のさせ方。
デビュー作から全部買ってるが、正直、ここまで化けると思わなかった。
ただ私の好きなテイスト(ちょっとダークで猟奇、ホラー、サスペンス)を包含する作風だなー、絵も好みだしまっいいかー、とのんきな気分で作者買いしてたわけですが。
この作品はとてもいい。
登場人物の造形は計算されているし、荒唐無稽な設定も納得できるだけの要素がある。
何より、死刑・命・人間の尊厳という、極めて難しいテーマを扱いつつも、決して安易な人道論に流れず、あくまでも冷静かつ真摯に展開するストーリー、途中で息苦しさを感じさせないよう、ちょっと笑える要素を入れるタイミングも見事。

実は前作の「アンネ・フリークス」が大した出来じゃなかった(最終巻でコケた)ので、少しも期待してなかった今作でしたが。
大変失礼いたしました。これはうまくすれば作者の代表作になるかと。

ここまで作品世界を構築したからには、最後まできちんと着地してほしいもの。
名作というのはラストの扱いで決まると思っているので。

ところで、女の子の絵にアシスタントの手が入りすぎなんじゃ?
ずいぶん絵が違うような??? 作風変わったの?


■5巻
最初から最後まで冷静な視点を崩さずに描ききり、以前の感想で書いたとおり作者の代表作となったと思う。
死刑囚ではありながらやむをえない事情を持った、読者の共感を得られる主人公を配置し、死刑廃止論や人件擁護といったウェットな方向に流れるかと思いきや、決して許すことのできない、同じく「死刑囚」である卑劣な犯罪者の姿をもきっちりと描き、情に溺れず、冷酷にもならず、絶妙のバランスで描かれた骨太の人間ドラマはお見事、の一言。

はっきり言って、この作者こんなにマンガ巧者だったか? と疑いたくなるほど、同作者の他の作品群に大きく水をあけるレベルに仕上がっているため、全著作を所有している私としては、うれしいやら困惑するやら。
(他のも面白いですよ、念のため)

「法」はあくまで死刑囚である主人公の罪を赦すことはなかったけれど、彼の存在は周囲の人々に受け入れられ、その中で揺るがない地位を築いた。
彼のために涙し、奔走し、喜びを分かち合おうとした人たちによって彼は赦されたのだと思っている。
願わくば、実験が終わって刑が執行されるまでの半年間の日々が、彼にとって心穏やかなものでありましたように。

この難しいテーマに怯むことなく挑み、見事踏破してみせた作者に敬意を。

G戦場ヘヴンズドア

1巻 2巻 3巻
■1巻
今まで読んだことなくて本当にごめんなさい。>日本橋ヨヲコ作品
……Amazon特攻してきます。


■2巻
いいね、いいね。実にこなれてきてる感じ。
圧倒的な熱量を持ちつつ、実にしたたかに計算されている展開に思わずニヤリ。
熱すぎる力感は、同時にゾクゾクした緊迫感をも感じさせてくれるし、今後の展開が気になって仕方がない。
一度は手に手を取って同じ道を志した者同士が、違うベクトルでその道を極めんとするとき、彼らはどこへ向かうのか。
自ら茨の道を選び、怒りと絶望を心の糧として独り闇に進んでいく鉄男に救いはあるのか。
確実に変わりつつある自身に困惑しながらも、人間として大きく成長しつつある町蔵は、そんな鉄男の手を再び取ることができるのか。

「IKKI」の月刊化に伴い、このテンションとクオリティを維持できるかが不安だが、ぜひともこのまま最終回まで行ってほしいもんです。


■3巻
作者が初めて望んだ形での大団円。
(今までは短編以外、全部打ち切りだったらしい……)
むき出しの神経に触れるような痛みに満ちた作品の、その決着は。
あまりにも心穏やかで、すべてが幸福に収まりすぎて、ちょっと御都合に過ぎるかな、と感じないわけではなかったが。
でも、それでもいいと納得できる形だった。
彼らが幸せになって良かった。

突出した才能を持っていたはずの鉄男が編集者に、
才能は並だけれど、「漫画を書き続ける」人格を、成長する過程で備えていった町蔵が漫画家に。

初めに鉄男が手を差し伸べ、次に町蔵が鉄男を助け。
二人は共闘し、決裂し、絶望の底に落ちた鉄男を町蔵が救い。
ラスト、打ち切りの続く漫画家として、自分の不甲斐なさを自嘲しつつも、未だ魂の腐らない町蔵のネームを読み、鉄男は再び手を差し伸べる。

戦友として。
親友として。

これからも彼ら二人はこの戦場で激しく、だが穏やかに戦っていくんだろう。
著者渾身の熱量と、さまざまな計算が絶妙なバランスを生んだ、勢いのある良作でした。
次回作が楽しみです。

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