スカイ・クロラ

私が03/01/28までの時点で、現在の森博嗣作品の中での最高傑作だと思う一品。
真っ青な空と白い雲、それを少しも邪魔しない、作中の一文が入った透明のカバー。
計算され尽くしたデザインの装丁で、のっけから度肝抜かれます。これだけで買いだろう、卑怯にも。
この本には、「作者が森博嗣である」とか、「ミステリを多く書いている」とかの情報を一切遮断し、こういう書評にも目を通さずに、まっさらな気持ちで向き合うのが一番いいスタイルだと思います。
余計なことを考えていると、きっと、読後に思ったことを失ってしまうと思うから。
というわけで、当然ネタバレも激しいので以下反転にしています。できれば既読の人のみ読んでね。
作品自体は、小説、というよりも詩的だ。
全編に漂う低い温度。
感情を排し、冷静で突き放した雰囲気が嫌いな人は絶対に馴染めない世界観だと思う。
そして、職業的戦闘機乗りだが軍人じゃない、という人物像に「子供」を設定したのがさすが。
あくまでも「パイロット」であって、それ以上でも以下でもない主人公、カンナミ・ユーヒチ。
「生」と「死」という重いテーマを抱えながら、どうしてここまで冷たく美しい物語に仕上がってるかというと、この設定に負うところが大きい。(以下引用)
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「僕たち子供の気持ちは、大人には決して分からない。
理解してもらえない。
理解しようとするほど、遠くなる。
どうしてかっていうと、理解されることが、僕らは嫌なんだ。
だから、理解しようとすること自体、理解していない証拠。」
「ただ、一つだけいえることは、
間違っていても、生きている、ということ。
間違ったままで飛んでいる。
飛んでいることが、間違っていることなのだ。
わからないだろう。
きっと誰にも、わからないだろう。
そして、
誰にも、わかってもらいたくない。」
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と、永遠に子供である「キルドレ」のカンナミの姿は、礼を失しない程度に他者とは付き合うが、己の内面においては誰の干渉をもすべて拒絶し、「死」にすら大した感情を覚えない。
「僕はまだ子供で、
ときどき、
右手が人を殺す。
その代わり、
誰かの右手が、
僕を殺してくれるだろう。」
と、語るカンナミは、ラストにおいて、「キルドレ」でありながら「永遠を生きること」を拒んだ草薙を、確固たる意志でもなく、激情でもなく、「誰のためでもなく、何も望まずに、純粋な気持ちで」「右手」によって殺す。
そしてその後、カンナミ自身の内面は何一つ変わりもせずに、物語は閉じられたまま終わる。
そこにあるのは、ただただ「純粋な空虚」。
「虚無」ではなく「空っぽ」、しかしそれは純粋であるがゆえに、読後にはこの表紙のような、果てしなく曇りのない、そしてどこか悲しい「青」を感じ取れるはずだ。