スイス時計の謎

火村シリーズ短編集。と言っても、一編は中編サイズだが。
というわけで、作品ごとに小感想。
●あるYの悲劇
単純に謎解きとしては面白いが、一発ネタとしての感が否めないかも。
個人的な印象としては悪くない(むしろ笑った)が、ミステリとしてはクイズレベルか。
ちなみに、「ユメノ・ドグラ・マグロ」はセンス悪すぎ。
●女彫刻家の首
謎解きより、お得意の「火村人物造形用エピソード」な短編。
私は嫌いじゃないからいいけど、最後の演出は人によって賛否が分かれるだろうなと。
ミステリに、(ネタバレ危険!→)天の裁きって受け入れられにくいと思うのですよ。
人為的な、または犯人の自裁は常道なんだけどね。
●シャイロックの密室
あ、これは小手先で書いてるな、と思わせる出来。
正直言ってこの作家、倒叙物はあまり巧くない。
犯人(主観)側の、追い詰められる際のギリギリ感がちっとも伝わってこないのだ。
犯人も完全犯罪を期したにしてはマヌケだし。
●スイス時計の謎
表題作の中編。正統派のフーダニット。登場人物も多くてしっかり読者をミスリードしてるし、謎解きも著者があとがきで書いているとおりにストレート直球ど真ん中。
いやむしろ、こういうのが読みたかったのですよ。
江神シリーズに比べて、明らかに謎解きのレベルに差があった火村シリーズだけど、これは佳作。
地味だけど端正な原点回帰、に近いかな。
新宿少年探偵団 まぼろし曲馬団の逆襲

「新宿少年探偵団」シリーズ第7作目。
二年八ヶ月待ったわりには、可もなく不可もなくといったところか。
立ち回りのシーンが多いので、テンポは良い。相変わらず脱線や無駄が少ないし。
色々な事実と伏線が明らかにされ、予断を許さない状況になってきた。
初期のシリーズ作に比べ、子供が抱える「闇」や「もどかしさ」みたいなものが薄れてきたのが少々不満。それだけ、各メンバーが「大人」になりつつある、ってことなんだろうけど。
それでも、子供に突きつけるにしてはあまりにヘビーな事実を、端正かつ冷静な筆致で書いて読み手を鬱にする技術は相変わらず大したもの。
さすがに重く苦しく、辛い話を真骨頂とする作家だけあるわ。(誉めてます)
しかし今回の伏線で、どうやってもイヤ~な展開に持ち込まれそうな雰囲気が楽しみではある。
完結まであと二冊。
ラストで私を打ちのめしてくれるよう、気合いを入れて取り組んでほしいもんです。

