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少女ファイト

1巻 2巻 3巻
■1巻
「G戦場ヘヴンズドア」を終えた作者が、古巣の講談社にフィールドを移し、バレーボールを軸にして挑む新作。
それにしても、今どき、なんてアンチック体が似合うマンガなんだろう。
(※マンガ読みで知らない人などいないだろうが、写植に使用されている字体のこと)

太すぎるぐらい太くて力強いシャープな描線が、キャラのトラウマを容赦なくえぐり出し、それでもどん底から這い上がろうとする姿勢を、問答無用の迫力で描き出している。
何のてらいもなく、ひたむきに迷いや情熱や激情を描くことと、短いけれど印象的で、時に鋭い台詞回し。
この作風を確実にモノにした作者によって、今作も抜群のヒキの強さを生み出している。
理屈をこねる必要はなく、ただ、純粋にマンガを楽しみたいと思わせる作品。
これ以降、どんな奈落と希望が待ち受けているのか、楽しみで仕方ない。

死がふたりを分かつまで

1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻
■1巻
まるで当たりのなかった(←失礼。私にとってはね)ヤングガンガンにようやく注目作登場。
と言っても、原作がたかしげ宙氏なので、ある程度の面白さは保証されて当然か。

蓋を開けてみれば、作画担当のDOUBLE-S氏が大健闘。新人らしからぬシャープで洗練された描線で、非常に読みやすく、かつ高クオリティ。好きなタイプの絵だな、これ。
盲目の凄腕刀使いが、高度な予測能力を持つ少女と、コンピュータの専門家とともに現代の「仕置き人」として暗躍する――という内容は、もうそれだけで「買ったァ!」と声を張り上げたくなるほどツボにはまりまくりの設定。
「仕置き人」だが決して正義じゃない、そのバランスの危うさを理解しているキャラには凄みがあり、その言動はダークヒーローめいていて非常にスリリングで小気味良い。
この先、(原作者の傾向からして)かなりヘビーな展開が待ち受けることが予想できるが、しっかりと最後まで見届けたい注目の一作。

砂漠

単行本
伊坂流青春小説、というところか。
ごく普通の、気ままで、ユルくて、それなりに起伏のある一般的な学生の平穏な日常に、ちょっとだけ異質な体験を絡ませるというプロットなので、本来なら退屈になるきらいがあるが、テンポがいいのでさほどつらくはない。
学生生活を題材にした作品というのはすごく青臭くなりがちなものだが、嫌味がなくてさらっとしているのは相変わらず。
ただ、他の伊坂作品のように思わぬところで思わぬ伏線が明かされるサプライズはない。

基本的に、予定調和のラストはぼんやりと予想できながらも、箱庭の中の人物がちょこちょこと動き回るのを俯瞰で眺めてのんびり楽しむ、という生活シミュレーションゲームの雰囲気に近い。
とてもリアルな学生像でありつつ、現実的な生臭さを感じさせない作風が、さらにそれに拍車をかけているのかもしれない。
ちなみに、現実に西嶋みたいな奴がいたら絶対ウザい。私だったら友達になる以前に避けて通りたい。

死刑囚042

1巻 2巻 3巻 4巻 5巻
■2巻
この作者、この作品で完全に一皮剥けたね。
あまりにも見事なテーマの消化のさせ方。
デビュー作から全部買ってるが、正直、ここまで化けると思わなかった。
ただ私の好きなテイスト(ちょっとダークで猟奇、ホラー、サスペンス)を包含する作風だなー、絵も好みだしまっいいかー、とのんきな気分で作者買いしてたわけですが。
この作品はとてもいい。
登場人物の造形は計算されているし、荒唐無稽な設定も納得できるだけの要素がある。
何より、死刑・命・人間の尊厳という、極めて難しいテーマを扱いつつも、決して安易な人道論に流れず、あくまでも冷静かつ真摯に展開するストーリー、途中で息苦しさを感じさせないよう、ちょっと笑える要素を入れるタイミングも見事。

実は前作の「アンネ・フリークス」が大した出来じゃなかった(最終巻でコケた)ので、少しも期待してなかった今作でしたが。
大変失礼いたしました。これはうまくすれば作者の代表作になるかと。

ここまで作品世界を構築したからには、最後まできちんと着地してほしいもの。
名作というのはラストの扱いで決まると思っているので。

ところで、女の子の絵にアシスタントの手が入りすぎなんじゃ?
ずいぶん絵が違うような??? 作風変わったの?


■5巻
最初から最後まで冷静な視点を崩さずに描ききり、以前の感想で書いたとおり作者の代表作となったと思う。
死刑囚ではありながらやむをえない事情を持った、読者の共感を得られる主人公を配置し、死刑廃止論や人件擁護といったウェットな方向に流れるかと思いきや、決して許すことのできない、同じく「死刑囚」である卑劣な犯罪者の姿をもきっちりと描き、情に溺れず、冷酷にもならず、絶妙のバランスで描かれた骨太の人間ドラマはお見事、の一言。

はっきり言って、この作者こんなにマンガ巧者だったか? と疑いたくなるほど、同作者の他の作品群に大きく水をあけるレベルに仕上がっているため、全著作を所有している私としては、うれしいやら困惑するやら。
(他のも面白いですよ、念のため)

「法」はあくまで死刑囚である主人公の罪を赦すことはなかったけれど、彼の存在は周囲の人々に受け入れられ、その中で揺るがない地位を築いた。
彼のために涙し、奔走し、喜びを分かち合おうとした人たちによって彼は赦されたのだと思っている。
願わくば、実験が終わって刑が執行されるまでの半年間の日々が、彼にとって心穏やかなものでありましたように。

この難しいテーマに怯むことなく挑み、見事踏破してみせた作者に敬意を。

G戦場ヘヴンズドア

1巻 2巻 3巻
■1巻
今まで読んだことなくて本当にごめんなさい。>日本橋ヨヲコ作品
……Amazon特攻してきます。


■2巻
いいね、いいね。実にこなれてきてる感じ。
圧倒的な熱量を持ちつつ、実にしたたかに計算されている展開に思わずニヤリ。
熱すぎる力感は、同時にゾクゾクした緊迫感をも感じさせてくれるし、今後の展開が気になって仕方がない。
一度は手に手を取って同じ道を志した者同士が、違うベクトルでその道を極めんとするとき、彼らはどこへ向かうのか。
自ら茨の道を選び、怒りと絶望を心の糧として独り闇に進んでいく鉄男に救いはあるのか。
確実に変わりつつある自身に困惑しながらも、人間として大きく成長しつつある町蔵は、そんな鉄男の手を再び取ることができるのか。

「IKKI」の月刊化に伴い、このテンションとクオリティを維持できるかが不安だが、ぜひともこのまま最終回まで行ってほしいもんです。


■3巻
作者が初めて望んだ形での大団円。
(今までは短編以外、全部打ち切りだったらしい……)
むき出しの神経に触れるような痛みに満ちた作品の、その決着は。
あまりにも心穏やかで、すべてが幸福に収まりすぎて、ちょっと御都合に過ぎるかな、と感じないわけではなかったが。
でも、それでもいいと納得できる形だった。
彼らが幸せになって良かった。

突出した才能を持っていたはずの鉄男が編集者に、
才能は並だけれど、「漫画を書き続ける」人格を、成長する過程で備えていった町蔵が漫画家に。

初めに鉄男が手を差し伸べ、次に町蔵が鉄男を助け。
二人は共闘し、決裂し、絶望の底に落ちた鉄男を町蔵が救い。
ラスト、打ち切りの続く漫画家として、自分の不甲斐なさを自嘲しつつも、未だ魂の腐らない町蔵のネームを読み、鉄男は再び手を差し伸べる。

戦友として。
親友として。

これからも彼ら二人はこの戦場で激しく、だが穏やかに戦っていくんだろう。
著者渾身の熱量と、さまざまな計算が絶妙なバランスを生んだ、勢いのある良作でした。
次回作が楽しみです。

創竜伝13 噴火列島

新書版 文庫版
まさか本当に2年足らずで出るとは思ってなかったよ(笑)
もう待たされ慣れてるので、たま~にこういうことがあると「ラッキー」などと思ってしまう自分がちょっぴり悲しいです。ええ。
内容は、まあいつも通り。というより、少々悪ノリのしすぎのような気も。
この作品、第2部に入ってから(5巻以降)は完全に中だるみ気味だと思う。
小早川のなっちゃんが出てきてからは、作品自体のカラーがずいぶん変わってしまったし。

とりあえず、茉理ちゃんと瑶姫の邂逅シーンが省かれてしまっていたのが最大のマイナス。
そんなあっさりした描写があるかよー!!(;´д`)
今巻の「良かったで賞」は、ラスト近くの「石使い」のエピソード。
昔はこういう印象的なシーンがもうちょい多かった……と思うのは年寄りの冷や水ですか。

あと、さっき気づいたんだけど、今回の表紙ってひょっとしておーるぬーどデスか?(ぉ

スカイハイ・カルマ

1巻 2巻
■1巻
う……前作「スカイハイ」の毒々しさには到底及んでない。残念。
やはり、あの一話完結形式の方がこの設定を活かしきれると思ったのだが。
ここんとこ、高橋ツトムの切れ味が鈍ってるのがちょっと不安。
この人は変質しない作家だと思っていたんだが……。
最近ヒューマニズムに目覚めたんですかね? 人非人が出てくるケースが明らかに減ってますが。

「地雷震」の閉塞感や「ALIVE」のギリギリ感を、今作でも味わわせてくれるよう期待はしてます。
頼むよー(;´д`)

スイス時計の謎

新書 文庫
火村シリーズ短編集。と言っても、一編は中編サイズだが。
というわけで、作品ごとに小感想。

●あるYの悲劇
単純に謎解きとしては面白いが、一発ネタとしての感が否めないかも。
個人的な印象としては悪くない(むしろ笑った)が、ミステリとしてはクイズレベルか。
ちなみに、「ユメノ・ドグラ・マグロ」はセンス悪すぎ。

●女彫刻家の首
謎解きより、お得意の「火村人物造形用エピソード」な短編。
私は嫌いじゃないからいいけど、最後の演出は人によって賛否が分かれるだろうなと。
ミステリに、(ネタバレ危険!→)天の裁きって受け入れられにくいと思うのですよ。
人為的な、または犯人の自裁は常道なんだけどね。

●シャイロックの密室
あ、これは小手先で書いてるな、と思わせる出来。
正直言ってこの作家、倒叙物はあまり巧くない。
犯人(主観)側の、追い詰められる際のギリギリ感がちっとも伝わってこないのだ。
犯人も完全犯罪を期したにしてはマヌケだし。

●スイス時計の謎
表題作の中編。正統派のフーダニット。登場人物も多くてしっかり読者をミスリードしてるし、謎解きも著者があとがきで書いているとおりにストレート直球ど真ん中。
いやむしろ、こういうのが読みたかったのですよ。
江神シリーズに比べて、明らかに謎解きのレベルに差があった火村シリーズだけど、これは佳作。
地味だけど端正な原点回帰、に近いかな。

新宿少年探偵団 まぼろし曲馬団の逆襲

新書
「新宿少年探偵団」シリーズ第7作目。
二年八ヶ月待ったわりには、可もなく不可もなくといったところか。
立ち回りのシーンが多いので、テンポは良い。相変わらず脱線や無駄が少ないし。
色々な事実と伏線が明らかにされ、予断を許さない状況になってきた。

初期のシリーズ作に比べ、子供が抱える「闇」や「もどかしさ」みたいなものが薄れてきたのが少々不満。それだけ、各メンバーが「大人」になりつつある、ってことなんだろうけど。
それでも、子供に突きつけるにしてはあまりにヘビーな事実を、端正かつ冷静な筆致で書いて読み手を鬱にする技術は相変わらず大したもの。
さすがに重く苦しく、辛い話を真骨頂とする作家だけあるわ。(誉めてます)

しかし今回の伏線で、どうやってもイヤ~な展開に持ち込まれそうな雰囲気が楽しみではある。
完結まであと二冊。
ラストで私を打ちのめしてくれるよう、気合いを入れて取り組んでほしいもんです。

スカイ・クロラ

単行本 新書 文庫
私が03/01/28までの時点で、現在の森博嗣作品の中での最高傑作だと思う一品。
真っ青な空と白い雲、それを少しも邪魔しない、作中の一文が入った透明のカバー。
計算され尽くしたデザインの装丁で、のっけから度肝抜かれます。これだけで買いだろう、卑怯にも。

この本には、「作者が森博嗣である」とか、「ミステリを多く書いている」とかの情報を一切遮断し、こういう書評にも目を通さずに、まっさらな気持ちで向き合うのが一番いいスタイルだと思います。
余計なことを考えていると、きっと、読後に思ったことを失ってしまうと思うから。
というわけで、当然ネタバレも激しいので以下反転にしています。できれば既読の人のみ読んでね。

作品自体は、小説、というよりも詩的だ。
全編に漂う低い温度。
感情を排し、冷静で突き放した雰囲気が嫌いな人は絶対に馴染めない世界観だと思う。

そして、職業的戦闘機乗りだが軍人じゃない、という人物像に「子供」を設定したのがさすが。
あくまでも「パイロット」であって、それ以上でも以下でもない主人公、カンナミ・ユーヒチ。
「生」と「死」という重いテーマを抱えながら、どうしてここまで冷たく美しい物語に仕上がってるかというと、この設定に負うところが大きい。(以下引用)
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「僕たち子供の気持ちは、大人には決して分からない。
 理解してもらえない。
 理解しようとするほど、遠くなる。
 どうしてかっていうと、理解されることが、僕らは嫌なんだ。
 だから、理解しようとすること自体、理解していない証拠。」

「ただ、一つだけいえることは、
 間違っていても、生きている、ということ。
 間違ったままで飛んでいる。
 飛んでいることが、間違っていることなのだ。
 わからないだろう。
 きっと誰にも、わからないだろう。
 そして、
 誰にも、わかってもらいたくない。」
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と、永遠に子供である「キルドレ」のカンナミの姿は、礼を失しない程度に他者とは付き合うが、己の内面においては誰の干渉をもすべて拒絶し、「死」にすら大した感情を覚えない。

「僕はまだ子供で、
 ときどき、
 右手が人を殺す。
 その代わり、
 誰かの右手が、
 僕を殺してくれるだろう。」

と、語るカンナミは、ラストにおいて、「キルドレ」でありながら「永遠を生きること」を拒んだ草薙を、確固たる意志でもなく、激情でもなく、「誰のためでもなく、何も望まずに、純粋な気持ちで」「右手」によって殺す。
そしてその後、カンナミ自身の内面は何一つ変わりもせずに、物語は閉じられたまま終わる。

そこにあるのは、ただただ「純粋な空虚」。
「虚無」ではなく「空っぽ」、しかしそれは純粋であるがゆえに、読後にはこの表紙のような、果てしなく曇りのない、そしてどこか悲しい「青」を感じ取れるはずだ。

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