逆転裁判

率直に言おう。携帯ゲーム機ナメてました。本当にごめんなさい。
常日頃からレビューで、「ボリュームやCGがすべてじゃない」と言っていたくせに、いざとなったら自分がそこに囚われていたことを猛省。
まったくもって、ゲームとは「ボリュームやCGがすべてじゃない」のだ。

この、240×160のサイズをものともしないゲーム本来の楽しさは、他のコンシューマー機を凌駕してなお余りある。
美麗な3DCGじゃなくても、丁寧に細部まで描きこまれたドットグラフィックはとてもきれいで見やすく、センスの良さを感じさせるし、キャラ立ちでは定評のあるカプコンらしい、遊び心あふれるデザインも見事。
だが、何より一番驚いたのは、本来なら堅苦しく、日本では馴染みも人気も薄い法廷ミステリの要素にゲーム性を見出したこと。
当然、実際の法廷とはかけ離れた、かなり無茶苦茶なデフォルメを利かせてあるのだが、物語の骨子が実にしっかりしているため、きちんとミステリとして成立している。その辺の三流ミステリなど足元にも及ばない。
よく考えたら、勝ち負けがはっきりする裁判というのはゲームとしてはもってこいの題材なわけで、ディレクターの巧舟氏のアイディアに脱帽。

ところで、携帯ゲーム機のAVGが必ず直面する問題というものがある。
それは、一度に表示される文章量にはかなり厳しい制約があるということだ。
PCのモニタやTV画面に映す各ゲーム機とは違い、画面の大きさそのものがまず小さいのだから当然のハンデなのだが、今作はそれにもかなり気を使って書かれているようで、一度にウインドウに表示される文章は無理のない記述で非常に読みやすい。
かといって全然余裕のないガチガチっぷりでもなく、キャラの性格がよく分かるような掛け合いや、ちょっと笑える記述なんかも用意してあり、事件そのものは陰惨でも、後味が悪くならないように腐心しているのが分かる。
こういう、クリエイターの細やかな気配りとやる気が見える作品というのはだいたい良作、というのが持論なのだが、まさにそれにぴったり当てはまった。
第1話~第4話までに分けられた方式は、「空き時間に少しずつちょこちょこプレイする」というプラットフォームの特性をよく生かしているし、それぞれの話のテイストを少しずつ違えることで、飽きたり、ダレたりするのを防いでいる。
また、全話を通してようやく明らかになる伏線もあり、最終話を終えたあとの充実感は、良作の連作短編集を読んだときの幸福感に匹敵する。

肝心の裁判モードはまさにゲームとしての本領発揮だ。おかしいと思った証言に自分でツッコミ、証拠を提示するなんてこと、映画や本ではできないのだから。
それによって証言者が慌てふためき、または反論されて追いつめられる様は、かなりの知的興奮とスリルが味わえる。
時間がくれば、またはページをめくれば犯人が分かるメディアと違って、自力で解き明かさないと事件は永遠に謎のまま。
このインタラクティブ性こそがゲームの楽しさなのだから。
その、「異議あり!」の爽快感というのは、これまでの推理ゲームにはない楽しさで、ゲームとはやはりアイディア勝負なのだな、と思った。
後に大人気のシリーズとなるのも当然と思われる秀作。未プレイの方はぜひ。