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Ever17 -the out of infinity- Premium Edition

※注! この作品は、ネタバレが致命的です。プレイ予定のある方は、くれぐれも読まないようにお願いします。

正直に告白します。ごめんなさい、KIDナメてました。
ただの、「エロゲー劣化コピーメーカー」だと思ってました。
だって、私が一番最初にやったKID作品って、そりゃもう酷い有様の「ONE」PS版だったんだもの。
それが、システム・シナリオ共に、まさかここまで本家本元を凌ぐほどの作品を出してこようとは。

それに、コンシューマーのAVGはもうほとんどがACT絡みのものにシフトしていて、オーソドックスな形のものは打ち止めか、と思いきや。
限りなく「普通のAVGの形式」を用いて、それを最大限に生かした作品が生まれるとは思ってもみませんでした。
どんなに使い古された形式だろうと、やり方・見せ方次第によってはいかようにも可能性を追求できることを証明した快作。
うっかり何かを書くとネタバレ、おまけにそれが致命的ときているためものすごく書きにくいのが実情なのだが、ぜひとも強力プッシュしたい作品であることも確かなので、自爆覚悟でチャレンジします。

まず、冒頭で挙げたシステム。
これは、おそらくコンシューマーでは最高レベル。私が知る限りでは、現時点でこれ以上のものはないと思う。
プレイが長時間に及ぶAVGを、なるべくストレスなく楽しめるように最適化された機能の数々。
選択肢ごとのオートセーブ、一度クリアしたシナリオなら随所に設定されたポイントからリスタートできるショートカット。
もちろんセーブ数は充分だし、データをロードしても、その時点から相当のバックログを見られるのも良い。
長時間に渡るプレイ中断をしてしまった場合、どういう話の流れだったか忘れてしまいがちになるが、そういうときにとても重宝する機能だ。
さらに、バックログも音声再生に対応している。PC作品ではかなりお馴染みとなった機能だが、記録メディアへのアクセスが
必要となるコンシューマーで搭載してくるとは、正直驚き。
こうした、痒いところに手が届き、しかもそれが気の利いた細やかさで、何の雑念に煩わされることもなく、作品に没頭できる。

絵や演出もなかなか良かった。
特に、近未来のテーマパークが舞台であることを疑わせない背景は細部まで手抜きなく仕上げられており、興を殺ぐという
ことがない。
人物も丁寧に塗られているし、何より、ちゃんと衣服が濡れたパターンの立ち絵があるのも良。
水没した区画では波が細かく揺れていたり、演出面でも非常に気を遣っているのが分かる。
その、「ゲームの世界観を壊さない」という徹底した意識の高さが心地良い。

音楽も綺麗な作り。だが、特筆するほどこれという曲もないのが残念。
OP曲はそれなりだが、EDはいまいち。せっかく笠原弘子氏が歌ってるのにもったいない。
キャストは豪華だしミスマッチということもなく、皆熱演で好印象だった。

さて、シナリオだが、ここまで読んできた方にもう一度問う。
未プレイだったら回れ右。この作品はネタバレが致命傷となりえます。
何一つ知らないまま、まっさらの状態でプレイした方が絶対に幸せ。
だから、なるべくネタバレには配慮しますが、そこはうちのレビュー、ポロリもあるよ。なので、できれば引き返りを。
以上、老婆心からの忠告。

この作品は、AVG史上に残る佳作であると思う。
実はプロローグで、私の大嫌いなアホっぽい子供とくだらないギャグの応酬が出てきたので、「良作との噂は嘘に違いない」と思いかけたのだが。
何とか我慢して進んでいくと、一つのルートが収束に向かうたびにどんどん深まる謎と、幾重にも張り巡らされた伏線に翻弄され、その他のことはあまり気にならなくなってしまった。
パッケージに書いてあるような、閉じ込められた人間たちの絶望的な緊迫感はあまりなく、そこは少し肩透かしだったのだが、この作品、あまり余計な要素を持たせると肝心の大仕掛けのインパクトが薄まってしまう危険性があるので、たぶんこれくらいでちょうどいい。
その他にも、薄ら寒いギャグが多かったり、無駄な恋愛要素があったりと、若干テンポを妨げる箇所はあるものの、全体的には実に巧妙に、細心のバランスで計算高く作られている。

各ルートで、別々の人物がある一つの事象について多角的に語ることで、最終ルートで明かされる、本来ならすぐには納得し難いこの大仕掛けを知らず知らずのうちに理解できるように導いていくテクニックも見事なら、少年視点と武視点、どちらも同じ舞台、同じ人物、でも――? という、ほんのわずかな違和感をわざと持たせる演出も見事。
それらはすべて、最終ルートの驚愕の真相に向かって焦点が合わせられたものだということに気付き、真実を知ってからまた驚愕。

実は、注意深くプレイすれば、少年視点での武と、武視点での少年の違い、また、舞台の違いということに気付くのは難しくはない。
だがそれらは、各ルートに散りばめられている伏線をつなぎ合わせると容易に推測できるレベルの謎であり、実際、私は優・沙羅・空ルートをクリアした時点で気が付いた。
ただ、この程度の謎が分かったからといって、小揺るぎもしないのがこの作品のすごいところ。
それが分かっても、肝心の、誰が・何のためにという謎には迫れないのだから。

物語の構造上、各ヒロインのルートをすべてクリアすることでようやく最終ルートが出現するのだが、この作品は、まさにこの最終ルートのためにあるようなもの。
だから、他のルートではいまいちすっきりしないエンドが多く、消化不良感が否めないのだが、それすらもこの最終ルートのための演出にすぎないことに後から気付かされる。

作中での目的は、ただ一つ。
製作サイドの目的もただ一つ。

(↓超ネタバレ! 未プレイ者は絶対見ちゃダメ!)
通常ならありえないことだが、その作中の目的と、製作サイドの目的は見事に一致している。
ゲームという形式で、プレイヤー(第三視点)が客観的視点から主観視点(ゲーム世界)へと能動的に干渉できる事象を、作品に丸ごと内包してしまうこと。
全ルートを知り、その経験を積んだプレイヤーを巻き込んだ仕掛け。そのためのルート制限。

似たようなことを試みたケースはいくつかあれど、ここまで鮮やかな成功をみせたのは、今のところこの作品だけじゃなかろうか。
この手の構造に近い作品って、だいたいは最後がグダグダか後味の悪いもの、製作サイドが設定を扱いきれず、物語を破綻させてしまうケースが多いので。

そういった綻びを起こすことなく、パーフェクトに着地を決めたこの作品は、もうそれだけで価値がある。
その、たった一つを表現するためだけにここまで舞台を整えた労力を思い、また、陳腐なオチに逃げたりせずに、最後までブレずに大テーマを貫き通した姿勢の潔さに、一ゲーマーとして、AVGファンとして、作品とスタッフに敬意を表したい。

何よりも感心なのは、文章が平易で読みやすいこと。
実に説明しにくい設定で、ともすれば分かりにくくなりがち、難解な表現に走りがちなはずなのに、それによる混乱を起こしたことは、プレイ中まったくなかった。
特にコンシューマーは年齢制限がなく、ユーザー層が広いのだから、ある程度汎用性があることを前提としなければならないはず。
それでも、これだけの説明力を持つ文章を書くというのは容易ではない。そこに、卓越した技術を感じさせた。

AVG初心者よりも、さんざんこの形式に慣れ親しんだ人にこそプレイしてほしい本作。
むしろ初心者の場合、何がそんなにすごいことなのか、そこに気付いてもらえない危険性がある。
純粋にストーリーとしても確かに面白いし、それだけでも充分楽しめる。
でも、そこに仕掛けられたトリックこそが、この作品の本質であるので。
これだけの大技を駆使し、なお着地した作品を、私はほんの数本しか知らない。

最終シナリオ、圧巻です。ルート制限とは、この作品のためにある手法だとすら言える。
それほどの衝撃性と、伏線が一点に収束していく、寒気にも似た高揚感
そして、すべてが終わった後のえもいわれぬ満足感。どれを取っても一級品。
すべてのAVGファンに。
そして、今さらプレイした自分に罰を。今回ばかりは本気で積んでたことを呪った。
発売当初に買わなくてごめんなさい。そのまま放置しててごめんなさい。メーカー侮っててごめんなさい。

CLANNAD

このゲームは全年齢対象ですが、18禁で名高いブランドの作品のため、そちらに分類されることが多いのが実情です。
そのため、レビューはあえて18禁コーナーに記載しました。こちらからどうぞ。

花帰葬

※この作品は同人ゲームです。ついでにかなり女性向け。苦手な人は回れ右でお願いします。

BL業界では相当に評判の良い同人ゲーム、しかも現在(05/6月)、同人作品でありながらアニメイトでは複製原画のキャンペーン中というほど力が入ってるのだから、どれやってみるか、と重い腰を上げてみました。

確かに女性の手を感じる、実に繊細な美意識に彩られた佳作。
オープニングからシステムの細部に至るまで、きっちりと細やかに統一されたセンスが世界観と抜群にマッチしており、パッケージも含めて一つの「作品」として完璧な調和を保っている。
この美しく儚い物語を違和感なく表現するために、画面の端々にまで相当こだわりを持って作り上げたのだなぁと感嘆させられることしきり。
このこだわりこそが同人ゲームの証であり美点だ。
基本的に商業作品は一つの意志が通りにくいから、ここまでの統一感を出すことはなかなか難しい。
(多人数で作るから当たり前、かつ仕方のないことだが)

システムは吉里吉里2で作られており、動作も軽快で難解な単語にはルビを振る機能も実装しており、ファンタジー系ビジュアルAVGとして充分及第点。
メッセージウインドウなどのカスタマイズもできるが、せっかくのこのセンスをできればこのまま味わってほしいので、デフォルトでプレイすることをお勧めしたい。
AVGとして当然既読スキップもあるが、エフェクトは飛ばせないので、再プレイ時はやや作業感を伴ってしまうのが難点。
ED数は多いものの、メインシナリオからの派生となるものが多く、その補完をする際はこのエフェクトの発生が鬱陶しく感じてしまう。

物語自体はさほどボリュームもなく、最近の長大なゲームに比べれば短編くらいのサイズしかない。
だが、その中に詰まっているストーリーは、どんな最後にたどり着いても違和感なくまとめられている。
よく言えば予定調和、穿った言い方をすればどれも意外性がないのだが、下手にいじると簡単に崩れてしまいそうな、危うい均衡の上に成り立つ美しさ、とでも言うのだろうか。
とにかく、繊細で洗練されていて、まさに手のひらに落ちて消えてしまう雪のような儚い印象。
一歩間違えば(良い意味で)「乙女チック」ささえ漂う、古き良き時代のコバルト文庫ファンタジーの世界がここに。
よって、これは、BLというよりは、BL風味の作品。
はっきりと「ラブ」を匂わす描写はなされておらず、もちろんそういった行為に及ぶこともない。(ちゅーすらない)
生々しさの伴わない、プラトニックでひたすら精神的な関係は、世俗に汚れまくったねーさんにはかなりまぶしい。
そういう点で言うと、より若い女の子に好まれる作風かも。
(でも最近の小中学生ってすげーからな……)

そんな世界を最大限に盛り上げる珠玉の音楽
久しぶりにサントラが欲しいと思ったほどです。素晴らしい。
音楽に関してはあまり詳しくないのだが、奇をてらった転調や、小手先の面白さに囚われない正統派の印象。
実に品良く、旋律がそのものが幻想的で美しく、場面場面にしっかり溶け込み、演出面に多大に貢献している。
挿入歌が入るある場面などは、曲の格調高さと相まって、震えがくるほどぞくりとさせられた。
この壊れやすい世界観に音楽を付ける、という作業は並大抵の労苦ではなかっただろうに、まさに完璧な仕事ぶり。
惜しみない賛辞を贈りたい。

グラフィックもかなり頑張っている印象を受けた。
塗りもしっかり、背景にも手を抜かず、立ち絵も豊富で、とにかく丁寧な仕事。
滅びに向かい静かに進む物語ゆえ、どうしても起伏が乏しくなりがちなのだが、立ち絵の微細な表情の変化や、雪や心情の揺らぎ、夢のシーンなどで画面の視覚効果が巧みに使われており、単調になるのを防いでいる。

ただ、どう考えても人物が人間的に怪しすぎる骨格をしており(驚異のなで肩、戦慄の細腰)、淡く綺麗な絵柄ではあるが、やはりかなり少女漫画っぽさがある。ちょい前の「花とゆめ」風味。
ただ、これは好みが分かれると思うが、ハマればこの淡泊ながらもクセのある絵柄にのめり込むこと必至。
私はこの色遣いや服のデザインセンスなんかは結構好き。
でも男は肩と背中。という持論なので、筋肉の一つもなさそうな兄ちゃんたちはちょっと残念でした。
軍人ですら細っこいのってどうなのよ。私の方が強そうだよ。←おい

さて、ハマる人続出、乙女系ねーさんたちに旋風を巻き起こしたシナリオだが。
大変に良くできた、究極の「セカイ系」
(当サイトのレビューを読むような方で、「セカイ系」の概念を知らない人はいないと思うので、註釈はしません。
万一知らない人はググれ)

ただ、通常のセカイ系なら味方、もしくは近い関係同士で展開するはずなのに、「世界で唯一の加害者と犠牲者」という設定を施したところが、このシナリオのキモでいやらしいところ。(※めっちゃ誉めてます)
そして、「滅びゆく世界・滅びを免れない運命」という、物語が始まった時点ですでに終局を匂わせる手練がまた憎らしい。
大抵のプレイヤーはこれで、「ちょっと、アンタたちどーなるのっ!」と釘付けになるはずだ。
ただし、この手の世界観は、もんのすんごく人を選びます。確実に受け入れられない人もいるのでご注意を。

はっきり言って、私は一般人には勧めない。
元来、セカイ系が好きなら別だが、この手の物語というのは基本的に寛大な人か、架空物語経験値の高い人じゃないと、
「苛つく・意味不明・納得不可」で切り捨てられる危険性があるので。
まぁ、同人ゲームの存在を知っていて、かつ手を出すような人なら、ある程度の素養は持ち合わせていると思うので、その辺は自己責任で。

ストーリーは短めだが、かなり堂々巡りの印象もあるのが否めない。
なんせ、主人公が選べる道は、「自分が殺される=世界は救われる」、「自分は生き延びる=世界は滅びる」しかないのだから。
極めて単純、かつ不条理な箱庭システムの中で揺れ動き、逡巡を繰り返す中で刻一刻と滅びに向かう世界。
設定はシンプルだがドラマティックで、それゆえに登場人物たちが織りなす群像劇は興味深い。
ただ、物語の下敷きに人を殺めることは絶対悪という概念があり、それでも戦争が起こってしまうのに、その描写はほとんどなされない。
どうしても主人公対関係者の理屈でのみ物語が進行してしまい、そこに物語としての薄さが出てしまう。
世界の滅び方も、「すべてが雪で白く覆われ何もなくなる」という、究極の静寂を感じさせる、ある種の美しさを伴ったものであるため、あまり「世界が滅びること」への重みが感じられないのだ。
(これは自分と世界が直結しているがゆえの、セカイ系共通の命題でもあるのだが)

そこで、いくら主人公が滅ぼしたくない、失いたくない、と言っても、「別に滅んでもいいんじゃない?」と思ってしまう私は、ひょっとして魂が魔王ですか。
まぁ、そう思わない人が多いからこそ、このゲームの支持者が多いわけですが。

別に私、この物語が嫌いなわけじゃないです。むしろその逆。
どうあっても絶対に犠牲が出てしまう、嘘のない結末は好むべき展開だし、世界を限りなくシステマティックなものとして捉えた、ある意味冷たいまでに突き放したその感性も好き。
自分に優しくなかった世界よりも、誰よりも心を寄せてはいけない、絶対の殺害対象をそれでも選ぼうとする、そのエゴイズムも大好き。
だから、各EDで誰の犠牲が出ても、人によってはそれがバッドにもグッドにもなりうるし、しかもそれが決して物語の枠組みからはみ出さない。
ED数が多いゲームにありがちな、「えっ、それはこの展開でないんじゃない?」といった違和感の発露がない。
完璧に製作者に管理されたレールの上で踊らされるのも、ここまで強固な美意識に彩られているのならむしろ快感。
最後までただ静かに、この物語の余韻を楽しみたいという気持ちにさせられる。

良くも悪くもプレイヤーの介入を許さない、確固たる世界観
キャラ萌えや妄想の余地はかなりあるので、脳内補完能力の高いねーさん方にはお勧めできます。
あと、確実に男性プレイヤーは対象から除外されてますが、それでもやってみたいのなら止めはしません。
むしろ、直接的なBL描写はまるでないので、かえって取っつきやすいかも。
でも、普通の男性的な感性の持ち主だと、さほど面白くはないのでは、と思います。
これは、まごうことなき女性による、女性のための乙女ゲームに認定。逸品です。

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