リンダキューブ
※注! 今回はネタバレ率が高いです! 未プレイの方はくれぐれもご注意。
「天外魔境II」の脚本で一躍名を馳せた枡田省治氏が、「大作はもう飽きた」と宣言し、放った作品。
だがこの作品は、私的ランキングで、
「すごく面白いのに他人には率先して勧められないゲーム・コンシューマ部門」
(人格疑われる恐れがある&プレイヤーをかなり選ぶから)
の栄えある第一位に輝いちまった怪作です。
(ちなみに18禁部門の第一位は「腐り姫」)
なんせこの作品、
エロ描写がないにも関わらず、暴力描写によって18歳以上年齢推奨制限を受けちまった
イカすゲーム。
ハードとしての寿命が末期に入り、エロゲーの移植作すらバンバン出てきていた、規制緩和著しいPCエンジン市場において、何でこんな羽目になっちまったかというと、そのステキに直接的な描写のおかげ。
ゲーム全編にわたり、現在の、巧い具合に洗練されたえげつなさ(注:誉めてます)とはだいぶ違う、ある種グロいまでにストレートでダイレクトな表現がプレイヤーを襲います。
ちょっとしたゲーマーなら、「え? え? ここまでやっちゃっていいの? マジ大丈夫?」と製作者の代わりに心配してしまうほど。
「天外魔境II」で枡田氏のシナリオに魅せられ、このアクの強さがいいのよね、ヒッヒッヒ、と勇んでこのゲームに臨んだ私は、諸手を上げて降伏宣言をする羽目になった。
すみません。枡田氏ナメてました。
「天外」は、大作用にソフィスティケートされた仕上がりだったのですね。
むしろこれが貴方の本領だったのですね。
桝田節の切れ味は、鎌の鋭さと鉈の重さを併せ持っていると思う。
巧みな伏線によってプレイヤーに衝撃を与え、だがそれだけでは飽きたらずにその傷口をグズグズとえぐるのだ。
傷口が無惨に崩されてしまった傷跡はえてして治りにくいものだが、ご多分に漏れず、この作品につけられた傷によって脳がすっかり感染症に冒され、開ききった箇所からは、「枡田作品大好き汁」を垂れ流す重病患者になってしまった。
声優陣はきわめて豪華でベテラン揃い、もちろん演技は申し分なし。
だが、グラフィックはまるでFC並、合間合間に挿入されるアニメは美麗でも何でもない。
マップの色使いもかなり地味。戦闘画面もそっけなく、敵キャラは原色バリバリのドット絵な上、グロくてキモい。
ゲーム世界に至っては、8年後に隕石が衝突し、惑星が消滅する(しかもこれは防げない)ことが判明している。
主人公はRPGにありがちな世界の救世主にすらなれない。
と、一見、「おいおい、いいんですか?」な要素満載であるリンダ。
だが麻薬なんぞメじゃないとんでもない中毒性がこのゲームには隠されている。
シナリオはA,B,Cと3つあるが、A・Bは血みどろな上に悪趣味。
展開はスピーディで興味深い謎も秘めており、猟奇でミステリアスとくれば私が楽しめないわけがない。
もちろん登場人物は、鼻につくほどイヤになる、ベッタベタのサイコな方々がこれでもかと大暴れしやがります。
だが、2周目になると、その裏に隠された、戦慄すら覚える伏線の切れ味に震え上がる羽目になるのだが、それは後述。
シナリオCがリンダのメイン。
A・Bはリンダの世界観、システムに慣れるための練習シナリオ(あれでかよ!)と桝田氏本人が語っている通り、こちらはゲームの主目的である「動物集め」を主眼においた、ある意味分かりやすいRPG。
さらに、RPGのキモである戦闘自体が面白い。ひたすらレベルアップし、タコ殴りにすれば勝てるといった子供だましの手法は通用しない。
なぜなら、この戦闘が、
「動物を生け捕りにしなければならない」
からだ。
当然、生物としての限界を超えたダメージを与えてしまえば、その動物は「飛び散って」しまう。
よって、ゲーム終盤の向かうところ敵なし状態になったパーティでも戦闘の緊張感は持続する。
この頃になっていても、強い敵ばかりではなく、弱い敵もまだまだ捕獲しなければいけない状態にあるからだ。
すでにこの頃からゲームの長大化に伴う長丁場の戦闘が台頭してきており、そのアンチテーゼとしてこのシステムが提示された功績は大きい。
もちろん、戦闘はおろか、システム上でもあの手この手で小ズルい手段を使うことが可能。
捕獲した動物は、食う、売る、バラす(解体する。体内にお宝入ってる場合あり)、武器防具に加工することも可能。
肝心の捕獲しなければならない動物だって、自分で血眼にならなくても代行ハンター(金を取られるが)に頼むことも、卵を入手して孵化させることだってできる。
金さえあれば、密猟者のオークションで買っちゃうことだってできる。
この、「目的は果たした者勝ち」というシンプルきわまりない哲学に則り、8年間、動物のケツをひたすら追いかけ回す。
これがもう楽しくてたまらない。
そして、人々の実にリアルで泥臭いセリフを堪能しつつ、プレイヤーは徐々に世界の根幹ともいえる地下施設に足を踏み入れることになる。
そこで、まるで何てことはないかのように、さらりと描かれている背景に、大多数のプレイヤーは頭をひねる羽目になる。
そして、半数のプレイヤーはここで、(ネタバレ危険!→)世界はループしているという真実に気付くはずだ。
ただでさえその事実は衝撃的なものなのに、さらにそれを裏付けるかのように、(ネタバレ危険!→)家具を買ってからもう一度その場所に行ってみると、そこにも同じ家具が増えているのだ。
かように、心胆寒からしめる演出が何気なく配置され、もちろんそれに関するヒントなど何もない。
気にしないプレイヤーはすぐに忘れてしまう程度のことだろうし、そんな小さいイベントなど見ていないかもしれない。
だが、私は頭をぶん殴られたような衝撃だったし、何より寒気が止まらなかった。
一度シナリオを終えたA・Bにしてもそうだ。
何となくまたやりたくなって再プレイを始めたときにに、初回は気付けなかった伏線にようやく気付いた。
シナリオAでは、ヒュームと主人公が野営したとき。
聞こえるはずのないアンの声が聞こえてきて、このイベント自体は1周目でも見ていたのだが、リンダを案ずる母親の思いを表したのかな、なんて人のいい寝ボケたことを考えていた私は完全にアホでした。
あれは、(ネタバレ危険!→)ヒュームはすでにアンとの合体手術が済んでおり、声は本当にアンから発せられたものだったのですね。(((((;゚д゚)))))ガクガクブルブル
シナリオBでは、ドクターエモリがサチコによく「ケン君とはAまでだよ。Bは慎みなさい」と言い聞かせていたこと。
何だよ、こんなところで中途半端にエロくてもなぁ、なんてたわけたこと考えていた私はやはり完全にアホでした。
あれは、(ネタバレ危険!→)異形の怪物に変身する兵器であるサチコの、変身形態を表す言葉だったのですね。
(((((;゚д゚)))))ガクガクブルブル
初回はただ、「死体は探すより作る方が簡単なのさ」なんて直接的な殺人サンタのセリフに喜ぶだけで、仕込まれた伏線に気づけなかったマヌケなプレイヤーだった私だが、自分の鈍くささを再プレイ時にまざまざと見せつけられ、かなりヘコむ羽目になった。
(ちなみに、上記シナリオCの謎に気が付いたのも2周目だった。マヌケすぎる……)
そうしてまた「桝田病」の傷口が広がったわけだが。
もちろん、シナリオC動物100種完全捕獲を達成するべく、連日、「うー、アンコウ(♂)」と目を血走らせて奇怪なことを口走る私を、家族は奇異の目で見ていたに違いない。
絶妙なゲームバランスと、そこに描かれる人間の図太いまでの逞しさ。
それが桝田作品の魅力であり、この作品はその原点でもある。
猟奇でサイコの仮面をかぶった、実は猥雑であっけらかんと明るい力強さのある作品。
グロい表現、血しぶきOKの方、イッちゃってる設定に抵抗のない方、ぜひどうぞ。
見た目のショボさが取っつきを悪くしているかもしれないが、この手触り、慣れると止められませんよ。(ニヤリ)